2012年03月15日

◆ 家電各社が総崩れ

 家電各社の決算が非常に悪化している。これを考察する。 ──
 
 ソニー、シャープ、パナソニック、NEC という家電(エレクトロニクス)各社が、そろって決算を悪化させている。シャープは「定昇廃止」で、NEC は「賃下げ」というありさま。ひどいものだ。(過去の不況時よりも、もっとひどい。)
 わずかにまともなのは、家電とは言いがたいエレクトロニクスの日立製作所だけだ。だが、その日立製作所は、3年前には悲惨な状態だった。現時点の日立だって、特に優れているというわけではないのだが、それが各社のなかでは目立つというところが、他社の置かれた苦しい状況を示している。
 → 日経 2012-03-13

 ──

 こういう状況になったのは、どうしてか? シャープについては別項で述べることにして、他の家電各社に共通することは、エルピーダの場合と同様だろう。つまり、エルピーダの倒産は、家電各社の苦しさを典型的に示しているにすぎない。エルピーダの倒産は、「家電各社の倒産よりも少し先んじていただけ」とも言える。

 では、エルピーダや家電各社に共通する難点とは、何か? 
 「極端な円高のせいだ」
 「工場を海外移転しなかったからだ」
 という見解もあるが、とても認められない。

 そもそも、次の状況がある。
  ・ 収益源となるはずの新興途上国で、サムスンに負けっぱなし。
  ・ 先進国のホテルでも、ソニーが捨てられ、サムスン製になる。


 要するに、単なる金額的な問題以前に、もっと製品の質で問題が生じている。上記のことの理由は、次のことだと推定されている。
  ・ 新興国の地元の嗜好を、日本メーカーは考慮しない。
  ・ デザインがとても野暮ったい。

 これらのことが日本メーカーの難点だとされている。そして、それと正反対のことをやっているのが、サムスンだ。
  ・ 新興国の地元の嗜好を、サムスンは徹底的に考慮する。(担当者多数。)
  ・ デザインが優れている。(デザインにすごく費用をかけている。)

 要するに、マーケッティングとデザインにかける金が、天と地ほどにも違っている。さらに言えば、研究開発費も、ずいぶん違っているようだ。サムスンの研究開発費は、とても多いが、日本企業はそうではないことが多い。

 ただし、日本企業でも、サムスンと同様にまともなことをやっている企業もある。具体的な例を挙げると、キヤノン、ソニー、日産だ。これらの企業は、サムスンほどではないが、かなりサムスンに近いことをやっている。そして、これの企業は、比較的マシである。(ソニーは別の点で難点があるが。兵はよくとも将が駄目、というふうな。)
 
 また、サムスンでは、技術者がエリートとして扱われる。休養も待遇も、エリート待遇だ。
 一方、日本では、「技術者は使い捨て」である。「一流大学を出て、大いに業績を上げているのに、ひどい待遇を受けているな」と感じる技術者も多いはずだ。実際、画期的な業績を上げて莫大な特許収入をもたらしても、スズメの涙しかもらえない例が多い。
 サムスンとは雲泥の差だ。

 ──

 実を言うと、上記のことはそのままでは理由とはならない。待遇それ自体は、理由とはならない。むしろ、待遇の意味するところが問題だ。
 日本では、こうだ。
 「優秀な理系の技術者は、薄給に甘んじる。そのくせ、文系の管理職は、やたらと高給をもらっている」

 これを換言すれば、こうなる。
 「優秀な理系の技術者は、経営の決定権を得られない。技術のことをろくに知らない人間が経営の方針を取る。そのせいで、ジョブズのように先見の明で方針を取ることができない。技術のことを理解しない経営陣が、トンチンカンな方針ばかりを取る」


 たとえば、パナソニックは、「プラズマをやる」と決めたあと、それに固守し続けた。「液晶を作ってくれ」という販売店の声を断固として拒否し続けた。……そういう例がある。
  → http://www.j-cast.com/2012/03/10124619.html?p=all
 ソニーもまた、Walkman のあとで、iPod みたいな製品を出そうとしたら、社内事情で拒否されて、実現しなかった、という例がある。
 いずれにせよ、まともな経営ができなかった。

 以上から言えることは、「経営者がアホすぎる」ということだ。そのせいで、サムスンあたりの優秀な経営陣には、あっさり負けてしまう。

 ──

 このような問題を解決するには、どうすればいいか?
 ソニーの元役員(現在は退社してソフト・ベンチャーの社長)が、次の趣旨で述べた。
 「ソニーはつぶれてもいい。かわりに、新たなベンチャーが誕生すればいい。かつてのソニーがそうだったように」(朝日・朝刊・特集面 2012-03-14 )
 しかし、これには同意できない。日本ではそもそもベンチャーを育てる風土がない。たいていのベンチャーは、日本では門前払いされる。こういう事情は、米国とはまったく異なる。米国では、サンプルを出して、性能評価をしてもらって、コストが安くて性能が良ければ、採択される。日本では、そういうことはない。大企業とも取引するには、たいていはものすごい営業努力が必要となる。(酒を飲むのが主な仕事。)
 「製品が優れていれば大企業とも取引できる」と思ったら、とんでもない大間違いだ。そもそも日本の風土(企業における国民性)の問題がある。だから、「ベンチャーが頑張ればいい」ということは成立しない。

 ──

 では、どうすればいいか? もちろん、簡単に正解などは出せない。
 ただし、上記で述べたことを参考にするなら、次のようなことを提案したい。
 「優秀な理系のトップを抜擢する。その人に全権を委任して、トップダウンの部門(チームや分社など)の長に据える。失敗も成功も、そのトップ次第。そして、経営者は、そのトップを任命することの責任を負う」

 これは、「合議制」という一見民主的な経営(多数決の経営)とは、まったく異なるものだ。

 ちなみに、このような独裁的とも言える経営は、歴史上にはときどき見られた。かつてのカリスマ的な経営者のもとで、ときどきなされた。
  ・ ソニーの盛田
  ・ キヤノンの賀来
  ・ 日産のゴーン

 これらの経営者は、しばしば独裁的な経営を取った。ただし、それは、「周囲には有無を言わせずに反対を押し切る」というものではなかった。「最初は賛成意見が自分一人で、他の重役はみんな反対している。だが、彼らを説得することで、その少数意見に同意してもらう。そうして多数決で決める」
 
 こういう例は、アップルのジョブズの例に似ている。そこに共通していることは、「経営者にビジョン(先見の明・洞察力)があった」ということだ。
 そして、そのような経営者が抜擢されるような、経営システムが必要なのである。そのためには、優秀な理系の人々のなかから、経営的なセンス(特に洞察力)をもつ人物を抜擢することが大切だ。

 日本企業はそれができなかった。アップルやサムスンはそれができた。……そのことが、業績を左右する分け目だろう。それは決して、「ベンチャーか否か」というようなことではない。むしろ、経営における根源的なものだ。



 [ 付記1 ]
 なお、人材の問題ではない、と私は思う。(日本人そのものが馬鹿だからではない、ということ。)
 たとえば、ゴーン社長のような人物がいたとする。その人が日本の会社にいれば、その人は会社の社長にはなれないだろう。
 一方、その人が外国の会社にいれば、その人は会社の社長になれるだろう。たとえば、ゴーンは理工系エリートの養成校であるエコール・ポリテクニークを卒業したあと、ミシュランに入社し、27歳で工場長になり、31歳でブラジル・ミシュラン社の社長となり、のちにルノーの副社長となった。こういう経歴を経て、45歳で日産の社長になったのだ。
 仮にゴーンが日本の会社に就職したら、このような出世はありえなかった。逆に言えば、日本の会社がいかに人材を生かさずにいるか、よくわかるというものだ。
 要するに、人材を生かせない経営システムのせいで、ボケ老人ばかりが経営者となっている。それが日本企業衰退の根本原因だろう。

 [ 付記2 ]
 ちなみに、エルピーダの例では、経営者は優秀ではなかった。社長は、理系の技術者ではなく、体育大学出身の、技術音痴だった。
  → 「倉庫係」からノシ上がった坂本社長
 それでも独学で半導体の知識を得たようだが、しょせんは付け焼き刃みたいなものだ。あくまで素人の域を出ない。
 しかし、そんな素人社長でさえ、それ以前の社長よりはずっとマシだったようだ。それというのも、以前の社長は、文系の技術音痴か、老年の時代遅れか、いずれかだったからだろう。
 エルピーダの社長は、「それ以前の社長よりはマシだ」とは言えるが、しょせんは技術については素人にすぎなかった。これではサムスンに対抗できるはずがない。本来ならば、もっとずっと前に倒産していてしかるべきだった。
 その意味では、坂本社長は、「素人にしてはよく頑張った」とは言える。……とはいえ、サムスンと張り合おうなんて、向こう見ずというものだ。
 日本にはまともな経営者がいないのであれば、外国人の経営者を招くべきだった。それができないのであれば、会社を丸ごと外国に売却するしかあるまい。

( ※ ついでだが、オリンパスの例を見ても、「外国人の社長に任せることができない」という日本企業の体質の古さは、あまりにもひどい、と言える。会社を抜本改革する機会を得ても、それをつぶしてしまうのが、日本の会社だ。呆れるほかない。)
( ※ つまりは、オリンパスのひどい例と、エルピーダや家電各社が駄目なのは、どっちも根っこは同じところにある、ということだ。……そこに気づかないと、どうしようもないね。)
posted by 管理人 at 19:59| Comment(4) | コンピュータ_03 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>「優秀な理系の技術者は、薄給に甘んじる。そのくせ、文系の管理職は、やたらと高給をもらっている」

 城繁幸氏が、似たような事を指摘していますね。
「実は2000年前後に大手製造業で行われたリストラは、そのほとんどが製造ライン対象で、事務系はほとんど対象となっていない」
「現場で年収一千万の職長クラスのベテランを早期退職させつつ、本社には生産性ゼロの 担当〇長などがゴロゴロしている光景は、どこの大手でもありふれたものだ」
「この十数年というのは、『モノづくりを大事にする』と言いつつ、全然逆のことをやっていたケースが結構あったのではないか」
http://jyoshige.livedoor.biz/archives/4131072.html
Posted by 市場原理主義過激派 at 2012年03月16日 15:47
経営陣にはCEO(経営方針)だけではなくCTO(技術担当)もいますよ。
Posted by おにぎりとDRAM at 2012年03月18日 15:37
> CTO(技術担当)もいますよ。

apple がそんな体制だったら、apple は今ごろ大赤字だったでしょうね。
Posted by 管理人 at 2012年03月18日 16:19
理系の技術者が60歳をすぎたら今までやったことのない部署に回されてこんなこともできないのかと年下の人間に罵倒されさっさと出て行けという扱いをされ
かつての部下たちはお前みたいなのを雇う金のせいで俺たちの給料が安いんだと厄介者扱いされる
これじゃ腹いせにサムスンに技術を売り飛ばしてやろうと考える人間はいくらでもでるでしょうね

さらに特許権は企業に属するという法律改正がなされますので優秀な人間はさっさとサムスンなりアップルなりに転職するでしょう

もはや日本の製造業は先進国の技術を大金で買ってやる後進国になるんでしょう
Posted by ツナマヨ at 2013年06月07日 06:05
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