2012年03月14日

◆ 防災研究所の必要性

 地震のときにどうするべきか? それを研究する研究部門が必要だ。それを「防災研究所」(仮称)とする。これを設置するべきだ。 ──
 
 菅直人が震災の翌朝にヘリで視察したことが批判された。しかし実際には、そのときには原発本部は機能停止状態だった。
  → 菅直人のヘリ視察(震災翌朝)

 一方、津波対策や地震対策の部門は、もともと存在していなかった。事後になって、「防災大臣」というものが遅まきに任命されただけだ。
  → 内閣府特命担当大臣(防災担当) - Wikipedia

 情報伝達の面でも、政府は後れを取っていた。民間の YahooGoogle がしきりに情報提供をしていたぐらいだ。

 ──

 以上の問題点を考慮した上で、次のように提案したい。
 「大地震のときに政府が何をするべきかを、あらかじめ考えておく研究部門を創設する」

 これを「防災研究所」(仮称)とする。これを設置するべきだ。
 これは理研(理化学研究所)みたいな独立行政法人にして、大学教員並みの待遇を与えるべきだろう。ここにたっぷりと予算を注げば、文系の研究者がたくさん集まってきそうだ。心理学や哲学や社会学なんかをやるよりは、もっと実学寄りで有益なので、やりたがる文系の研究者も多いだろう。

 この「防災研究所」は、災害が起こったあとの(政府の)行動方針を研究する部門だ。あくまで文系である。
 その目的は、頭の悪い政治家や官僚に代わって、「地震のときに何をするべきか」をあらかじめ提示することだ。簡単に言えば、本サイトでこれまであれこれと提言したことを、学術的に体系的に考察して提示することだ。本サイトと違うことは、「それで職業になる」ということだ。(本サイトはボランティアだが。)
  • 《 注 》
     理系の部門としては、「災害情報学会」「自然災害学会」というものがすでにある。だが、これらは、災害が起こるメカニズムを研究する、自然科学の学問であるようだ。政府の行動方針とは、あまり関係がないようだ。(いくらか影響を及ぼす程度。)
 ──
  
 このような「防災研究所」ができたら、そのあとは、政府は提言を生かして、逐次制度を整備しておくことになる。
 最終的には、次のようになる。
 「いざ大地震が起こったら、首相がなすべきことは、たった一つ。『地震対策を発動せよ』と語ることだけだ」
 「そのあとは、あらかじめ定められた『地震対策』のアクションプランに従って、自動的に次々と行動がなされていく」
 「その具体的な例は、先に『地震と非常事態宣言』で示したとおりだ。たとえば、
  ・ 自衛隊の人員の大半を向かわせる。(不要なら途中で帰還する)
  ・ 他地域からの医師派遣。
  ・ 民間輸送機関の準備。(救援物資の運送の準備)
  ・ 自動車の強制的な停止命令。
  ・ 交差点では民間人による交通整理で、緊急用車両のみを通す。
 などだ」
 「これらの措置を取るには、『非常事態宣言』をあらかじめ発しておくことが必要かもしれない。地震の規模に応じて、『非常事態宣言』が必要となる。なお、その条件は、『広域の停電』である。先の大震災の場合には、東北地域がそれに該当する。阪神大震災の場合には、阪神地域がそれに該当する」

 ──

 以上のように方針があらかじめ決められていれば、そのときになって首相があたふたとする必要はない。また、急いで防災大臣を任命する必要もない。あらかじめ定められていた役人が、急遽、臨時的に「防災庁の職員」に転じて、所定の行動を取るだけだ。たとえば、普段は別の仕事をしていた人が、「医師派遣の事務担当」になって、しきりに事務連絡をしはじめる、というふうな。
 このような行動方針をあらかじめ定めておいて、首相はそれについて「 Go!」という命令を下すだけでいい。
 
 ただ、何をするかを、あらかじめきちんと研究しておくことが必要だ。地震が起こったあとで、「ああしよう、こうしよう」なんて考えるのではなく、あらかじめきちんと研究しておくべきだ。
 具体的に例を挙げると、「ソーラー標識」なんていう馬鹿げたことは駄目だ、という指摘をしておく。さもないと、馬鹿げたことに金を無駄に使って、肝心の人命を救うどころか、かえって事故死者を増やす、というハメになりかねない。



 [ 付記1 ]
 理系ではなくて文系の研究所が必要だ、というのが本項の眼目だ。
 このことを具体的に示すには、気象庁の津波予想が良い例となる。

 気象庁の仕事は、津波を正確に予想することであり、津波の被害を減らすことではない。このような本質的な難点のせいで、津波被害が拡大してしまった。たとえば、南三陸では、気象庁の「6メートル」という津波予想を聞いて、「6メートル」だと信じた職員が、実際には 16メートルだった津波に溺れて死んでしまった。
  → 南三陸の津波被害
 また、津波のあとで1時間も避難せずにいて、津波に呑まれた自動車学校の職員や生徒もいた。
  → 地震と道路封鎖
 ここでも、「6メートル」という津波予想を真に受けていたのが理由だったようだ。というのは、次の二つのことからだ。
 第1に、気象庁のサイトは、昨年3月11日の過去データで、次のように示していた。
 宮城県 …… 6メートル (津波の高さを示す地図)
( → 気象庁の過去の報道
 第2に、今現在でも、気象庁は次のように示している。
 津波警報 …… 大津波 : 高いところで3m程度以上の津波が予想されますので、厳重に警戒してください。
( → 気象庁「津波予報・津波情報について」
 この二つからわかるように、気象庁には、次の難点がある。
  ・ 全般的な津波の高さを示すだけである。
   (リアス式海岸の奥まで来た津波の高さを示していない。)
  ・ 津波に対しては「警戒してください」と語るだけである。
   (「危険なのでただちに退避してください」とは語らない。)

 
 これらをまとめると、こう言える。
 「気象庁は、事実を科学的に研究することばかりを考えていて、人命を救うという防災の観点がまったく欠けている」
 この件は、前にも述べたとおり。
  → 津波の気象予報
  → 南三陸の津波被害

 このような役所は、学術研究をする学者としてはいいだろうが、国民の利益を図る政府部門としてはまったく役立たずだ。
 その意味で、理系的な「事実研究」とは別の、文系的な「行動指針の策定」をする部門が必要なのだ。そのような部門として、本項では、「防災研究所」を提案した。
 ただ、以前にも、別の形で似たようなものを提案したことがある。
  → 震災予防の省庁
 ここでは「環境省と合体した『自然省』の創設」を提案している。ま、どっちでもいい。「自然省」の場合には、この自然省の下に、「環境庁」や「気象庁」や「防災庁」(防災研究所を含む)などがぶらさがることになる。企業で言うと、持株会社ふう。

 [ 付記2 ]
 「防災庁」と「防災研究所」とは異なる。
 「防災庁」は、いざ地震が起こったときに、ただちに行動する政府部門だ。職員は役人である。
 「防災研究所」は、地震が起こる前に、「防災庁は何をするべきか?」を研究する部門だ。独立行政法人の形を取る。職員は研究員である。ときどき提言して、提言内容を防災庁に実行準備させる。
 ここに多額の予算をかけるべきだ。いくら多額の予算をかけても、地震で被害を減らすことができれば、十分に報われる。特に、1万人以上の死者は、何としても減らす必要がある。今回の死者のほとんどは、死なずに済んだ命なのだ。そのことを理解しておこう。
( ※ 津波が来るまでには1時間以上もあったのだから、十分に逃げられた。津波の被害による死者は、ゼロにできたはずだ。……もし「防災研究所」があったなら。)

 [ 付記3 ]
 地震の後でも、震災情報の提供など、情報伝達の仕事がある。Yahoo や Google にまかせず、政府が一元的に情報の交通整理をするべきだろう。
 特に、緊急避難所の情報は、草の根レベルで集めるのではなく、あらかじめ一元的に情報管理しておくべきだ。その時点でどうなっているかという現在情報は得られなくても、「地震のときにはこうなるはずだ」という予定情報を提供できるはずだ。その情報を得れば、地震のときに、人々はどこに行くべきかを知ることができるはずだ。

 地震のときにもテレビは生きている。とすれば、ワンセグを使うことで、テレビ情報は得られる。
 また、ケータイはパンクしても、wi-fi は生きているだろうし、光回線や ADSL 回線も生きていそうだ。それならノートパソコン経由で情報は得られそうだ。(たとえ停電になっても。)
 だから、これらの情報経路を使って、きちんと情報提供できるようにするべきだ。先の震災のときの首都圏もそうだったが、欠けているのは、情報手段というよりは、情報そのものだったのである。だから Yahoo や Google が情報を集めようとした。
 そうではなく、むしろ政府自身が自ら情報収集できるようにするべきなのだ。(首相に情報が全然上がってこない、というようなことでは困る。)

 [ 付記4 ]
 特に重要なのは、被災地の上空における情報収集だ。この面では、自衛隊の役割が大切だ。地震が起こったらすぐさま、自衛隊は航空機を飛ばして、被災地の上空で撮影を開始するべきだ。それを無線で基地その他に送り、そこを経由して首相官邸に届くようにするべきだ。いや、首相官邸ではなく、防災庁に届くようにするべきだ。



 [ 余談 ]
 私が以上のことを書いている最中に、また地震が来て、びっくらこいた。
 千葉沖で震度5の地震。銚子付近で発生したらしい。
 「地震は他人事じゃないよ」という、自然からの警告かもね。  (^^);
  
 なお、前回の千葉の地震は、2月19日です。
  → 2012年02月19日 「twitter で地震情報」
 このときよりは、今回の方が、大きく揺れた。震源地が近いせいだろうか。震源地が三陸沖から、どんどん東京に近づいてくるようだ。
 あと数カ月たつと、東京直下の地震になるかも。そのときは震度7か8で、阪神大震災の再来となり……

 それまでに本項の対策が取られるといいですね。 (ムリムリ (^^); )
 となると、東京大震災の死者は、5万人ぐらいかな。ドジョウ首相なんだから、やむなしか。ナマズに似ているし。
posted by 管理人 at 21:21 | Comment(4) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私の知るところ、その名もズバリのような「京都大学 防災研究所」(http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/web_j/index_topics.html)という組織があり、その中の「総合防災研究グループ」というのが、言われるような役目も期待されているのかも知れません(現状では文系の度合いは小さそうですが)。ただ、研究となってしまうと、着々とした成果が求められるため、どうしても現実の後追いのような仕事になりがちのようにも見えます。
Posted by hagiwara_m at 2012年03月15日 12:21
仰る通りですね。私も「防災研究所」の設置が必要だと思います。
良い考えなので国会議員に陳情したいと思います。

群馬大学広域首都圏防災研究センターが8年前から釜石市で実施してきた防災講習会が、見事に約3千人の子ども達の生命を救った事例を見ても、防災研究の重要性と有効性は明らかだと思います。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110409/dst11040923530082-n1.htm
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20110915/368768/
Posted by 平井 at 2012年03月16日 17:20
hasegawa_mさんのおっしゃる通り、京大にも防災研はありますし、千葉つくばにも国交省の研究機関があって対策指針など研究しているようです。

しかし、研究や検討は多いものの、実際に使えるものがあまり出てきていない点は、文系要素の足りなさかと思いました。
情報収集や機動力においては政府、自治体よりも自衛隊の方が圧倒的に優秀であることは多くの事例からわかると思います。リアルタイムの状況把握や情報伝達には自衛隊からの情報を利用できるようにしたらいいんじゃないかと思います。

気象庁に防災の目線が欠けているという事に関して、現状
@現在の省庁に(おっしゃる通り)防災など現場を考慮する性質がない
Aそのことを多くの人が理解していない
という事が問題ではないかと思いました。

長々と失礼しました。
Posted by たかはし at 2012年11月25日 17:56
この程『絵本榎並八箇洪水記』を上梓しました。神戸や東北への行政の災害対応が、江戸時代から継承したものだということを証明した史料の翻刻です。享和3年につくられた史料でマンガ的手法で淀川氾濫・大洪水をルポルタージュしています。収蔵図書館はネットでご確認ください。
Posted by 大野正義 at 2015年05月27日 08:01
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