2012年03月09日

◆ EV蓄電と太陽光発電

 EV(電気自動車)の蓄電池の中古品を、太陽光発電の蓄電に使おう、という試みがある。劣化した中古の蓄電池を、別用途に再利用する、というわけ。うまいアイデアに見えるが。…… ──
 
 電気自動車のリチウム電池の中古品を、太陽光発電の蓄電に使おう、という試みがある。日経と産経の記事を紹介しよう。
 《 使用済みのEV蓄電池、再利用 実証実験始まる 》
 神奈川県は1日、電気自動車(EV)の使用済みバッテリーを県有施設の蓄電池として再利用する実証実験を開始した。 太陽光発電設備で発電した電力を使用済み蓄電池に充電し、EVの充電や災害時の非常用電源として活用する仕組みを作る。
 日産自動車と住友商事が出資するフォーアールエナジー(横浜市)が、使用済み蓄電池を各施設に10キロワット時ずつ設置した。4〜5万キロメートル走行したEVタクシーのリチウムイオン電池を活用する。
 EVバッテリーは繰り返し使うと充電容量が減る。自動車では使用できない容量になってもビルや住宅向けでは十分機能するという。
( → 日経 産経 2012-03-02
   ____

 《 「蓄電プロジェクト」実証試験スタート 神奈川県 》

 神奈川県は電気自動車(EV)の使用済みリチウムイオン電池の再利用を目指す「蓄電プロジェクト」の実証試験を今月から、横須賀と海老名の県有2施設で始めた。再利用電池の実用化により電池の価格を下げることで、太陽光発電と組み合わせた蓄電システムの普及を図る。
 EV用電池は、充電機能が6、7割に低下し交換が必要となる目安が走行距離約10万キロとされる。だが、電池を構成するモジュール(小さく分割した単位)のうち、劣化していないものを選んで組み直せば新品同様に使えるとされており、試験で実証する。
 黒岩祐治知事が打ち出したスマートエネルギー構想の「蓄エネ」の一環。発電した電気を使わないときにためることで、災害時の非常用電源などに活用できる。
( → 産経 2012-03-06
 つまり、
 「電気自動車では、リチウム電池を使うが、古くなると性能が劣化する。そこで、中古のリチウム電池の二次利用として、太陽光発電の蓄電に使えば、不用品の有効利用になる。これなら、一石二鳥だ」
 というわけだ。これは一見、うまいアイデアに見える。だが、本当にそうか? 

 ──

 話を転じよう。
 この手のアイデアでは、新品の EV 蓄電池を使うことで、次のアイデアもあった。
 「 EV の蓄電池を、災害の停電時に利用する」
 ……(*
 これも、うまいアイデアに見えた。
 しかし、これは駄目である。理由は下記だ。
  ・ たったの2日間程度で電力が空っぽになってしま。
  ・ 自動車が電池切れで動かなくなってしまう。


 対案としては、もっといいアイデアがある。
  ・ 小型の発電機を使う。(安価だし、燃料があれば長時間利用可能。)

 大事なのは、コストだ。後者ならば、コストは非常に低く済む。しかも、効果は大きい。ゆえに、(*)のアイデアは無意味なのだ。
 以上のことは、前に述べたとおり。
  → 家庭用の蓄電池

 ──

 似た例で、次のアイデアもあった。やはり新品の EV 蓄電池を使う。
 「 EV の蓄電池を、太陽光発電の蓄電に利用する」 ……(**
 これも、うまいアイデアに見えた。
 しかし、これも駄目である。理由は下記だ。
  ・ 昼間に蓄電すれば、電気自動車を動かせなくなる。
  ・ やたらと充電に利用すると、電池が劣化する。


 対案としては、もっといいアイデアがある。
  ・ 太陽光発電の電力を、系統電力に流す。

 こちらは、現状そのままだ。そして、これが、王道である。この場合は、コストは(現状通りだから)全然かからない。こういう対案があるのだから、(**)のアイデアは無意味なのだ。
 以上のことは、前に述べたとおり。
  → 太陽光に蓄電池は不要

 ──

 さて。以上のように、「新品の EV 蓄電池を使う」というアイデアは、もともとあったが、いずれも駄目である。「災害などの停電時」であれ、「太陽光発電の発電の平準化」であれ、どっちにしても、高価なリチウム電池を使うのは、コスト的に成立しない。それはいわば、「水道水の不足を解決するために、ミネラルウォーターを使う」というような、コスト的には本末転倒な方法なのだ。(たとえは、まずいけど。)

 ここで、新たなアイデアが出た。
 「新品を使うのはコスト的に無理だとしても、中古品を使うならば問題あるまい。どうせ中古の電気自動車が大量に出るのだから、それらを廃棄するかわりに、中古のリチウム電池として再利用すれば、無駄がないはずだ」
 こうして、「うまいアイデア! ユーレカ!」と思った人がいるのだろう。そこで、冒頭の記事のようになるわけだ。

 しかし、よく考えると、これも駄目である。

 ──

 そもそも、「蓄電池を使う」という方法が、根源的に言って、コスト的に成立しない。なぜか? 「太陽光発電の電力の平準化」であるならば、先の (**) で述べたように、「系統電力に流す」という方法が取れるので、いちいち蓄電する必要がない。「蓄電の必要があるから蓄電する」のではなくて、「古い蓄電池の利用法を考えるために蓄電する」という順で考えるから、「必要もないのにわざわざ蓄電する」という馬鹿げたことをするハメになる。
 比喩。「コンビニで賞味期限の来たミネラルウォーターの利用法を考えました。コーラ工場に運んでから、加熱処理して、コーラの水に使えばいいんです。これなら無駄なく有効利用できます!」→ 莫大な輸送料がかかるので無駄。単にコンビニで捨ててしまう方がマシ。頭を使って有効利用すると、かえって無駄が生じる。

 「古い蓄電池で太陽光発電の蓄電」なんてことは、たとえ実用化できたとしても、利用するメリットは何もない。現状通りに、系統電力に流し込めば、コストは全然かからないからだ。(ただの現状維持だからコストゼロ。)
 それに比べると、「リチウム電池に蓄電する」なんて、莫大なコストがかかるから、まったくの無駄だ。「中古のリチウム電池ならば、新品の蓄電池の 200万円に比べて、ずっと安い 60万円で提供できます。性能は3割減ですが、価格は7割減です。圧倒的にお得です」なんて言われても、対案となる「現状維持」ならばコストはゼロなのだから、「 60万円もかかる」というシステムが成立するはずがない。
 神奈川県も、日産自動車も、「新品の蓄電池の 200万円に比べて、ずっと安い 60万円で提供できますと思っているのだろうが、ライバルは、新品の蓄電池じゃなくて、現状のシステムだ。それはコストが実質ゼロだ。そのことを勘違いしている。

 ──

 さて。ここで、話を転じよう。
 日産自動車は、大量に発生する中古の電気自動車について、「どう処分しようか?」と頭を悩ませているのだろう。
 そこで私が日産自動車にかわって、名案を示そう。それは「電気自動車の再利用」つまり「耐用年限の延長」である。つまり、こうだ。
 「 10万キロで廃車するのではなく、消耗品を交換して、再利用する。20万キロまで使う」
 「 20万キロまで使ったら、また消耗品を交換して、再利用する。30万キロまで使う」
 「 30万キロまで使ったら、全部バラして、材料を再資源化する」

 これはどういうことか? 次の点がポイントだ。
 「自動車の鋼材部分は、ほぼ半永久的に使える。エンジンもボディも、30万キロ以上、使える。さすがに 30万キロぐらいになると、ガタが来るが、30万キロぐらいまでは、十分に使える。特に、電気自動車のように、都市専用の自動車ならば、30万キロぐらいは余裕しゃくしゃくだ」
 「ただし、鋼材でなくゴム部分は、劣化しやすい。エンジンで言えば、タイミングベルトやゴムホース類は、劣化しやすい。しかし電気自動車には、タイミングベルトやゴムホース類はないから、この点は問題ない」
 「一方、(サスペンションの)ブッシュ類は、劣化する。そこで、このブッシュ類のみ、10万キロごとに交換する。消耗品の扱いで」

 ──

 電気自動車のリチウム電池は、使用頻度が増えると、劣化する。しかし、劣化しても、実用性がなくなるわけじゃない。7割ぐらいの能力が残っていれば、十分に実用の役に立つ。5割残っているぐらいでも、大丈夫だ。「安ければその方がいい」と思う人は多いだろう。加速性が少しぐらい劣っても、航続距離が半減しても、「安いことの方が大切だ」と思う人は多いはずだ。
 だから、電気自動車は、中古のまま長く使えばいい。ガソリン自動車は、10年ぐらいで廃車にする人が多いようだが、電気自動車ならば、もっとずっと長持ちするのだ。だから、電気自動車は、「バラしてから電池だけ再利用しよう」とするよりも、「電気自動車のまま長年使おう」と思う方が、ずっといい。それが最もエコである。
( ※ 電気自動車が長持ちすると、自動車会社にとっては、新車が売れなくなるので、困るだろうが。……とはいえ、中古の下取価格が高くなるとすれば、新車の売れ行きには有利かも知れない。値落ちが少ないということは、新車の実質価格が安くなるのと同じ効果をもつ。)

 なお、古い電気自動車には、新品のリチウム電池を追加してもいい。たとえば、今の電気自動車が売れたあとで、十年後の 2022年に、その時点での最新のリチウム電池を追加で搭載する。そのころのリチウム電池はすごく性能が向上しているはずだから、小さくても大出力だ。それをトランクに搭載する。……その結果、トランクはスペースを少し失うが、もともとある電池の劣化の分は、新しい電池で補われる。
 かくて、「古い電池 + 新品の電池」という形で、古い電気自動車が補修されて、古い電気自動車がそのまま十分に継続利用される。
( ※ 新品電池をレンジエクステンダー[距離伸ばし装置]とする、というような発想。)
( ※ 単純に2種類の蓄電池を直列利用することは無理だから、並列にして、交替利用することになる。……いちいち言わなくても当り前ですね。工学的には。)
posted by 管理人 at 21:17| Comment(1) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
《 記事の紹介 》
三菱自動車、EVから電力を供給できる「MiEV power BOX」発売 14万9800円  (EV本体は別途 200万円以上)
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120309_517794.html

《 商品案内 》
Amazon 発電機 (10万円以下)
http://amzn.to/wOh6ZD
Posted by 管理人 at 2012年03月10日 06:54
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