エルピーダを再建するには、どうすればいいか? 経営コンサルタントの方法を取ればいい。 ──
エルピーダを再建するには、どうすればいいか?
この問いに対して、次のように反論する人も多いだろう。
「エルピーダは倒産してしかるべきだ。あえて再建する必要はない。政府が再建資金を投じるなんて、とんでもない。市場原理のもとでは、駄目な企業はさっさと倒産するのがベストだ」
池田信夫やその賛同者ならば、そう語るだろう。しかし、米国の自動車会社の GM の例を見よう。池田信夫は GM についても同じことを言った。「市場原理のもとでは倒産させるのがベストだ」と。しかし現実には、オバマは公的資金を投入して、GM を再建した。結果的に、GM は再建されて、投入された公的資金はすべて回収された。巨大な会社の巨大な設備や人員は、ただのゴミになるかわりに、立派な健全な資産に生まれ変わった。
ここからわかるように、「倒産させるのがベストだ」ということは成立しない。倒産させるのは、「現状のままでは悪化が続くから、現状を停止すること」ということを意味するだけだ。それはつまり、「赤字の拡大を止める」ということであり、「マイナスを増やさない」ということだから、「プラスを生む」ということにはならない。それは決してベストではない。
一方、GM を再建するように、エルピーダを再建すれば、プラスが生み出される。その方がずっといい。そちらがベストだろう。
要するに、(馬鹿の一つ覚えみたいに)市場原理に任せるよりは、もっと頭のいい方法があるのだ。
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では、エルピーダを再建するには、どうすればいいか?
前項の発想によれば、こうなる。
「ステッパーを、ニコンやキヤノン製でなく、世界トップのものを使う」
これはこれでいい。しかし、それだけで問題がすべて解決するとは思えない。それはたぶん問題のうちの最大のものであって、他にも多くの問題があるはずだからだ。倒産するような企業は、馬鹿でかい癌みたいな病巣のほかに、数多くの病巣をかかえているものなのである。
では、どうすればいいか?
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このように「倒産した企業」を再建するには、一般に、経営コンサルタントが役立つ。まともな企業には役立つとは限らないが、駄目な企業の駄目な点を浮かび上がらせるには経営コンサルタントは役立つ。
では、経営コンサルタントは、なぜ役立つのか? 業界のことを何も知らない素人連中が、どうしてあっというまに駄目企業を再建することができるのか? そこには、秘密がある。
経営コンサルタントは、業界のことを何も知らない。そして、知らないということが、かえって強みになる。
一般に、業界人は、「自分は業界のことを何でもよく知っている」と自惚れている。そのせいで、他人の意見をちっとも聞かない。思い上がって、独りよがりだ。そのせいで、自らの欠点に気づかないまま、唯我独尊の方針を突っ走り、大赤字を生み出す。
その典型が、エルピーダだ。「技術のエルピーダ」というふうに社長は自惚れており、ちっとも反省ができない。
似た例がある。かつての日産自動車だ。「技術の日産」というふうに経営陣は自惚れて、ちっとも反省ができなかった。
そこへ、ゴーンが出てきて、日産自動車を抜本改善した。では、どうやって?
ゴーンは日産自動車のことなど、何も知らなかった。そこで、経営コンサルタントの方針を取ったのだ。
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経営コンサルタントの方針とは、何か? こうだ。
「徹底して従業員にヒアリングする」
つまり、何かを語ろうとしたのではなく、何かを聞こうとしたのだ。
諺にも、こうある。
「人は一つの口と二つの耳を持つ。それは語る二倍、聞くためだ」
( We have two ears and one mouth so that we can listen twice as much as we speak. )
ゴーンは就任に当たって、従業員の声を徹底的に聞いた。
経営コンサルタントも、同じことをする。現場のことよく知っているのは現場の従業員だ。彼らの声をよく聞くことで、問題点がどこにあるかを、隅々まで把握できるようになる。そのうちの一つが、「ステッパーの問題」だろう。
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現在のエルピーダの社長は、それができなかった。自分が正しいと思った方針だけを進めた。それというのも「エルピーダの技術は優れている」と思って、自社の長所ばかりを見て、自社の短所を見なかったからだ。つまりは、おのれに盲目になっていたからだ。これでは倒産は避けがたい。
そして、そう悟れば、エルピーダ再建の方法もわかるだろう。
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ただ、方法を理解すればそれでいい、というものでもない。再建の方法を知ったあとは、強い実行力が必要だ。強い意思が必要だ。また、高度な判断力も必要だ。過去にとらわれない若さも必要だ。
これらのすべてをもつ人材は、そう多くはない。たぶん、日本人にはいないだろう。日産がゴーン社長を招いたように、海外から人材を招くのが、一番だと思える。
そして、日産のゴーン社長のような人材を得れば、エルピーダは十分に再建できるだろう。
ひるがえって、池田信夫流は妥当でない。
「駄目な企業はつぶすのが一番だ」
「半導体産業は国内では成立しないから海外に出るしかない」
こんな方針を取れば、海外で同じ失敗を繰り返すだけだ。
繰り返す。再建のためには、自らの問題点(短所)を探り出すことが大切だ。それなしに、口先だけで、知ったかぶりの経済理論を振りかざしても、現場知らずの頭でっかちになるだけだ。
[ 付記 ]
以上のように考えると、エルピーダの問題は、日本の企業のほとんどすべてにひそんでいる、とわかるだろう。
たいていの企業は、経営陣が老人ばかりで、トップダウンばかりやっていて、現場の声を聞かない。
経営陣が老人でなくても、同様だ。たとえば、橋下は典型的な唯我独尊で、現場の声を聞こうとしない。その点では、老害の石原都知事とよく似ている。
エルピーダの問題は、日本の企業のほとんどすべてにひそんでいるのだ。決して他人事ではない。
( ※ 優良企業とされたキヤノンでさえ、最近になって、とんでもない老人が天下ってきた。この分だと、キヤノンもエルピーダやソニーの二の舞となり、日本企業は総崩れになりかねない。生き残れるのは、ゴーンのいる日産ぐらいか。……そう言えば、日産は、ルノーの子会社であり、日本企業じゃなかった。だから大丈夫なのかも。)
【 追記 】
次の記事がある。
→ エルピーダ 複数企業から支援の申し出
社名は明らかになってはいないが、エルピーダを再建する( or 吸収する)形で支援する企業が出てきているようだ。多くの資産をタダ同然( or 超低価格で)で入手できるとなると、再建または支援することは可能だろう。
ただ、その会社は、東芝ではないようだ。
→ 東芝は支援困難
これは不思議ではない。東芝もまた、かなりの低収益体質だからだ。理由はたぶんエルピーダと同じで、ニコンやキヤノンのステッパーを使っているからだろう。同じ病気にかかっているのだから、東芝がエルピーダを再建できるはずがない。(同病相憐れむ、に近い。東芝は自分が倒産する時期を考えているのかもしれない。)
では、どこの企業が支援するか? ……こう考えているうちに、突拍子もないアイデアが思い浮かんだ。それは「サムスンがエルピーダを買収する」という案だ。そして、サムスンが日本国内で、DRAM を生産する。 (^^);
これはなかなか面白いアイデアだ。しかも、十分に成立する。池田信夫みたいは人は、「エルピーダがサムスンに買収されて、日本国内で生産する」というのを見たら、口あんぐりとなるだろう。
エルピーダはかなり多くの特許をもつし、高い技術力もある。それを、その価値にふさわしい価格で買収することは無理だが、その価値にふさわしくない低価格(タダ同然)で買収することができるなら、大いに魅力的だ。
サムスンがエルピーダを買収する可能性は十分にある、と指摘しておこう。
( ※ サムスンの経営は優れているから、サムスンがエルピーダを買収すれば、十分に事業を継続できる。日本の技術の粋を捨て値で買えるとしたら、素晴らしい魅力だろう。……だからこそ、上記の記事のように、「複数企業から支援の申し出」となるわけだ。)
2012年03月03日
過去ログ

ヤフー・ジャパンの新CEOに44歳の宮坂氏 他の経営陣も大幅若返り
http://jp.wsj.com/Japan/Companies/node_401676
タイムスタンプは 下記 ↓
この項で指摘された「ステッパー」に代表される高収益部門の苦境を
見ての判断であれば、とんでもない皮肉ですね。
そういえばあの企業は「強誘電性〜」とか「バブル〜」とか、
標準化よりこだわりを選択する癖がありますから、
それが老害とセットになったらどうなりますやら...
韓国にくれてやるくらいなら、つぶして関係者は全員切腹じゃ!
「あげてしまえ」という意味ではなく、「そうなる前に対処しましょう」という警告なんですが。文意が読み取れませんか?
ちょっと難しかったかな。ま、日本語をお勉強しましょう。
そうなったら消費者は悲劇です。
(1) 低コスト化の技術は劣っている、ということに気づいていない。
(2) 技術は優れているが、経営が悪い。
いずれにしても、経営者の責任となる。その意味で、愚かな社長や経営陣は退陣するべきだ、という結論になる。
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こう思ったあとで、ネットを探してみたら、最近の報道記事は次の論説が一つあるだけだった。
→ http://bit.ly/zdeHpE
趣旨は次の二点。
・ 社長は(過去の功績はあるが)退陣するべき
・ ウォン安と円高のせいだ、というのは間違い。
どちらも私の見解と合致する。特に、後者の点は、池田信夫とは正反対の意見だが、私としてはきちんと実証されたことで、好ましく感じる。