省エネのためにスマートメーターを普及させよう、という方針が進んでいる。しかし私は反対だ。今のスマートメーターは古臭い発想を持っているからだ。 ──
省エネのためにスマートメーターを普及させよう、という方針がある。これは前から提案されていたとおり。
→ Wikipedia
そして、このたび、その規格が決まったそうだ。(日本だけの規格。)
→ スマートメーターの規格統一、経産省が正式決定
→ スマートハウス:普及へ規格統一−−経産省
→ スマートハウスの接続インタフェースとしてECHONET-Liteを標準化
→ 経産省、スマートメーターとHEMSの接続規格を決定
この規格に基づいて、東電がスマートメーターを強制的に普及させよう、という方針がある。代金は、各家庭の負担で、電気料金に少しずつ上乗せする形。(電気代の値上げ。)
→ スマートメーター、来秋にも家庭に…東電が検討
以上は、報道された事実だ。
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ここで、私の見解を述べよう。簡単に言えば、こうだ。
「現在のスマートメーターは、技術的に遅れているから、普及させるべきではない。次世代のスマートメーターの規格を定めてから、普及させるべきだ。今のように古臭い規格のままスマートメーターを普及させても、時代遅れのゴミを普及させるのと同じで、無意味だ」
比喩的に言えば、「 ASDL の普及を進めよう」という時期に、「 ISDN の機械を全家庭に配布します」というようなものだ。すぐに時代遅れになるゴミを配布しても仕方ないのだが。
では、どこが時代遅れか? 「スマートメーターで電力の ON・OFF を制御する」という発想が時代遅れだ。
では、どうするべきか? 制御はあくまで、末端の家電の側が行なうべきだ。つまり、「スマート家電」である。
→ スマートグリッドの愚
→ スマートシティの愚
→ スマートハウスの愚
以上の3項で詳しく述べたとおり。
簡単に言えば、「 ON・OFF を制御する」という2値的な制御が時代遅れだ。むしろ、AI を使って、なめらかで複雑な制御をするべきなのだ。今や何でもかんでも AI による最適制御がなされるのに、政府や東電の推進するスマートメーターは、「 ON・OFF を制御する」という古臭い制御を取る。
では、どうするべきか? スマートメーターの側は、一切、制御をしてはならない。単に電力利用の状況だけを示せばいい。そのあと、具体的にどういうふうに省エネをするかは、家電の側に任せるべきだ。詳しくは下記。
→ スマートグリッドと家電(HEMS)
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さて。制御をしないで、電力利用の状況だけを示すだけならば、別に、スマートメーターを用意する必要はない。単に電圧を上げ下げすればいいだけだ。
・ 普段は 105ボルト以上
・ 電力不足のときには、85ボルトぐらいにまで下げる
このことで電力の状況を示すことができる。だから、スマートメーターをいちいち開発する必要はない。家電の側に電圧計を取り付けるだけだ。
また、電圧計を付けられないような簡素な機器は、単に電圧低下による効果で省エネができる。たとえば、蛍光灯や電気ヒーターなどは、電圧低下の効果で、消費電力が自動的に低下する。これでOK。下記で述べたとおり。
→ スマートグリッドの愚
→ スマートグリッドという幻想
→ 発送分離と電力安定化
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もっと根源的な問題がある。スマートメーターは、産業用には有効だが、家庭用には有効ではない、ということだ。
→ 産業用スマートメーター
家庭においては、スマートメーターの効果は小さい。なぜか? 省エネを全般的に進めるならともかく、省エネが真に必要なのは、真夏の猛暑日(数日間)だけだ。そのときには、たとえ省エネの必要性が高くても、家庭では省エネのしようがないからだ。
橋下ならば、「猛暑日に限ってエアコンを切れ」と語って、熱中症の死者を出すだろう。しかし人命を大切にする人間ならば、「普段はエアコンを切るべきだが、猛暑日に限ってはエアコンを切ってはならない」と語るはずだ。これが正しい。
とすれば、三段論法で、正しい結論が得られる。
猛暑日には、家庭ではエアコンを切るべきではない
猛暑日には、全国では電力消費量を下げるべきだ
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猛暑日には、家庭以外で電力消費を下げるべきだ
かくて、「猛暑日には、産業界(≒ 家庭以外)で電力消費を下げるべし」という結論が得られる。それはつまり、「猛暑日には猛暑休業にせよ」ということだ。
→ 猛暑休業 (サイト内 検索)
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ひるがえって、「猛暑日にはスマートメーターがエアコンの電源を自動的に OFF にする」なんていう方針は、人殺し政策も同様だ。熱中症による死者が続出するだろう。特に、スマートメーターの操作法もわからないお年寄りは、エアコンを動かそうとしても動かすことができず、オタオタしている間に、汗を出して死んでしまいそうだ。
東電は、原発では死者を一人も出さなかったが、スマートメータによって多数の死者を出すことになる。そして、それを推進するのが、政府だ。
国民は、金を払ってスマートメーターを購入させられたあげく、そのスマートメーターによって命を奪われる。踏んだり蹴ったりとはこのことだ。
政府 「必要なお金を払ってください」
国民 「何のお金?」
政府 「あなたに死んでもらうので、毒薬代をいただきます」
[ 付記1 ]
欧州の例として、熱中症で大量の死者が出た、という実例がある。フランスで 14000人、ドイツで 7000人。エアコンがなかったせいで、これだけの死者が出た。特にお年寄り。
→ 大阪の熱中症死亡(警告)
現状のスマートメーターが普及すれば、日本もこうなりそうだ。
( ※ 昨夏の大阪では、熱中症の死者が出なかったようだが、それは大阪人が公共心が低くて、エアコンをがんがん効かせていたからだ……という説もある。それが正しいとすると、公共心のある東京では、多数の死者が出そうだな、……という推測も成り立つ。善人ほど早死にするのが、世のならい。)
[ 付記2 ]
「電圧を上げ下げすることなんかできるのか?」
という疑問が生じそうだが、実はすでに実現済みだ。昨夏の電力逼迫時には、電圧が普段の 105ボルトから 90ボルトぐらいまで(15ボルトぐらい)低下したことが観測されている。読者調査。
昨夏に電力消費量が低下したことの一因は、電圧低下にもあったのだ。
( ※ 計算すると、[単純な]電力消費量は電圧の2乗に比例するので、電圧が 85%になると、電力消費量は 72%となるので、電力消費は 28%も低下する。スマートメーターで機器を 28%も OFF にすることは容易ではないから、ただの電圧低下の方がずっと有効だ、とも言えそうだ。)
【 追記 】
本項は「スマートメーターはまったく不要だ」と述べているのではない。誤解しないでほしい。
スマートメーターが必要な場面は考えられる。たとえば、
「風力発電や太陽光発電の電力が急激に変動して、電力需要を瞬間的に急減させなくてはならない場合」
である。この件は前に述べた。
→ スマートグリッドと家電(HEMS)
→ スマート家電 > 蓄電池
ただ、上記項目でも述べたように、この調整を実行するのは、スマートメーターではなくて、スマート家電の側であるべきだ。スマートメーターは、細かな調整はせず、単に電力情報を与えるだけだ。
ここで注意すべきことがある。
「スマート家電が個別に作動すると、いったん電力需要が縮小したあとで、しばらくして電力需要が急拡大することがある。そうなると、かえって電力の需要超過(電力危機)が発生しやすい」
これでは逆効果だろう。
では、どうすればいいか? こうだ。
「スマート家電が個別に作動するのではなく、国全体のスマート家電の全体がシステムを構成して統合制御される」
ここでは「システム」という発想がある。このような発想のもとで、電力情報や電力消費は統合制御されなくてはならない。かくて、スマート家電の全体が統合制御される。(国全体というよりは、電力管内の全体だが。)
そして、そうとすれば、スマートメーターやスマート家電もまた、そのための機構を備えている必要がある。しかしながら現在の規格では、家庭内の情報のやりとりだけが想定されていて、国全体の情報を制御するという発想はない。
つまり、規格としては、あまりにも時代遅れなのである。それはいわば、「コンピュータはスタンドアローンで使われ、LAN やインターネットでつながれることはない」というような、時代遅れの発想である。NEC は昔、「C&C」という言葉で「コンピュータ&コミュニケーション」というキャッチフレーズを使ったが、今のスマートメーターは「家庭内 C&C」にすぎない。それはあまりにも時代遅れだ。
だから、スマートメーターを整備するならば、現状よりもはるかに発展させた次世代型のものでなくてはならない。しかるに、そのようなものは、まだ十分に開発されていない。どのようなものを開発するべきかすら、明瞭にはわかっていない。(実験すれば、いろいろと問題点が見つかるのだろうが、実験的な利用さえもなされていない。)
とすれば、スマートメーターは、今はまだ普及させるべきではなくて、開発途上ということにした方がいい。今のスマートメーターは、ISDN みたいに時代遅れの規格なのだから、今のところはあわてて配備する必要はない。
今なすべきことがあるとしたら、スマートメーターではなくて、次のことだろう。
・ 省エネブームによる、人々の節電
・ 夏季の電圧低下による、電力消費抑制
・ 電気料金の値上げや料金制度変更による、需要抑制
・ 産業向けの、需給調整契約
これらのことの方が、はるかに有効だし、効率的だ。
ひるがえって、スマートメーターなんて、莫大なコストがかかる割に、効果はごくわずかでしかない。さらには、「勝手にエアコンを切られる」ことなどによる死者さえも出る。愚の骨頂。
結論。
スマートメーターは、まったく無効というわけではないが、現在の規格は時代遅れのものなので、今のところは採用するべきではない。
当面は、次世代型のスマートメーターやスマート家電の規格策定を考える方がいい。また、実施のためには、全体制御するための「制御センター」も必要となる。
これらの規格が固まったら、まずは狭い範囲で実験するといい。そして少しずつ改良するといい。
ろくに研究も実験もしないで、いきなり大量に機器を普及させるなんて、暴挙である。それは原発の暴走にも似ている。
(国や東電の体質。かつて原発推進に突っ走ったように、今度はスマートメーターに突っ走る。)
【 関連項目 】
スマートメーターに関しての過去記事
→ スマートメーター (サイト内検索)
2012年02月28日
過去ログ
タイムスタンプは 下記 ↓
そもそもスマートメーターの話は入っていないのでは。
http://www.echonet.gr.jp/echo/index.htm
制御についても文字通りのオンオフではないのでは。今回公開された仕様をみると、たとえばエアコンに関しては温度取得及び温度設定値変更、設定温度に対する相対設定(X℃上げるなど)など細かい操作を可能にしているようです。
http://www.echonet.gr.jp/spec/spec_v321.htm
http://www.echonet.gr.jp/spec/spec_v100_lite.htm
http://www.echonet.gr.jp/spec/spec_app_a.htm
機器が複数だと、設定はあまり変えずに交互に使ってピークを下げることも可能ですが、機器側だけで判断制御となるとメーカーを越えた機器間通信や複数エアコンを束ねた制御も必要になります。
各家電がそれを持つのは無駄が多いです。家電には通信機構だけ持たせて、コントロールセンタは1つにまとめて電力計や電力供給側との通信機器とまとめてしまう(=スマートメーター)のもこの仕様が可能にすることではないでしょうか。
中央制御なら電圧制御でいいとおっしゃっていますが、インバータ制御が多い今の家電の中、電圧を落とせば素直に消費電力が下がる機種がどれだけ多いかも疑問です。調光対応照明みたいに電圧に応じてパワーを変える家電をつくってもいいでしょうけど・・・
どんな頭を作るにしても、家電がコントローラブルでなければどうにもならないです。その部分だけでも定まっていたら先行させるのは悪いことではないと思います。
家電業界としては、買い換え需要とホームネットワーク(エコ+セキュリティ)を売り込みたい思惑があるのでしょうが。
http://www.echonet.gr.jp/spec/pdf_v321/SpecVer321_01.pdf
言っていません。その逆です。誤読。
> インバータ制御が多い今の家電の中
前に別項で考慮済み。本項でもその箇所は一部留保を付けています。
> その部分だけでも定まっていたら先行させるのは悪いことではないと思います。
実験としての意味ならあります。しかしそれなら実験としての規模にするべきでしょう。
実用上の効果は皆無です。夏のピーク電力を下げる効果はない。というか、下げてはならない。エアコンを切ったり冷蔵を切ったりしてはならない。若干のタイムシフト効果があるが、スズメの涙程度。
実用上の効果を持つとしたら、夏のピーク電力を下げることではなく、風力や太陽光のエネルギーの変動を吸収することです。しかし今は風力や太陽光が普及していないので、時期尚早です。スマートグリッド普及させるとしたら、風力や太陽光の電力が1割を越えたあとでしょう。それは十年以上先のことになります。
http://www.tepco.co.jp/corporateinfo/procure/rfc/index-j.html
> 「スマートメーター(計器部分)の仕様提案募集に関する説明会」
だそうなので、駄目ですね。私の提案はシステム設計なので。計器部分だけについて言うなら、「そんなのやめちまえ」としか言いようがない。
実効力を出すためには、制御できる範囲が十分に多いことが前提なので、だからこそ「強制普及」という方針が必要なんだと思います。
だからって、この方針が正しいと思いませんが。
管理人さんのアイデアは面白いと思いますが、電圧で調整するのは方法がファジーすぎて、技術者視点で見ると動作の保障が難しく採用しがたい気がします。それより、電源そのものに特殊な信号を載せる方が現実的な気がします。
電源ケーブルに普通の通信を乗っける技術は昔からあって、ただ電波的な干渉を発生させてしまうのでほぼ消えた技術なんですが、パルス的な短い信号であれば問題なく送れる気がします。
もちろん、制御なんてやらせたら大変なことになるので、2,3週類の情報の通知だけが役割となります。
無意味だと思いますよ。人々が「我慢しよう」という意識があれば、自発的に設定温度を上げて節電に協力します。昨夏はそれで大幅な節電に成功したようです。
一方、人々が「我慢しよう」という意識がなければ,「ちょっと暑いから設定温度を下げよう」と思って手動で設定温度を下げてしまいます。
要するに、数字じゃなくて体感温度。「数字で決める」という人はあまりいないでしょう。「暑いから温度を下げる」というふうに、体感温度が基準です。
下手をすると、「何か暑いから温度を2度ぐらい下げよう」と思う人が続出して、「スマートメーターのせいでかえって消費電力が増えた」というふうになります。
「人間は機械に従うはずだ」という技術優先の発想は、たいてい裏切られます。
──
パルスによる制御というのはありえますね。私も似たことを書いたことがあるような気がします。そのときは周波数のFM変調というような方法だったかもしれない。パルス電波だと、ON/OFF の雑音電流と混じって誤動作しやすいので。
パルス電流と電圧変化の双方というアイデアは、成立しそうです。
ただ、電圧制御の方が簡単だと思いますよ。通常時から 10ボルト以上も下がれば、それを検知するのは難しくないはず。ダイオードだけで何とかなる。また、検出器のない照明灯などでもOK。
そもそも,検出エラーがあっても、別に問題ない。全体の8割の機械が検出してくれればそれで十分。
そこはいのですが、、
>全体の8割の機械が検出してくれればそれで十分。
うーん、発想としては良く分かるのですが、実際の導入プロセスを考えると、それじゃあシステムは普及させられないと思います。
説明すると長くなるので「一技術者確信」としてのみお伝えしておきます。
緊急事態であることを広域に通知する仕組みがあればよいので、電波そのものを使うのも1つの手かもしれません。
スマート家電向け緊急通報、って仕組みですね。
同時に電力ケーブルに信号のせてもいいし。
普及の問題なら、現在の方式 HEMS だって普及しないと思いますよ。HEMS 搭載で価格が少し上がった機器を買うかというと、誰も買わないでしょう。自分自身には(勝手に停止させられるという)デメリットがあるだけで、しかも価格が上がるんだから。踏んだり蹴ったり。
基本的には、節電目的の自動調整機構は必要ない、というのが私の立場。電圧式の自動調整機構を特に推奨しているわけじゃありません。もっと高度かもっと低度にすべし、と言っており、現状の中途半端な規格を否定するのが趣旨。