燃料電池は、自動車には向いていない。このことは、これまでも何度も述べてきた。
まず、実用化が非常に遅れている、ということがあった。
→ 燃料電池車の休眠
→ 燃料電池の死
→ 燃料電池の死2
→ 燃料電池の死 3
この点(技術的困難さ)については、最近になってコストダウンの技術が急速に進んだらしく、かなり実用化に近づいたようだ。自動車会社は3年後の実用化をめざしている。
しかしながら、この問題が解決しても、まだまだ残る問題がある。
・ 触媒の白金の量が限られていること (大量生産は原理的に無理)
・ 発電効率が低いこと
前者は、広く知られているので、ここでは論じない。
後者は、前に述べたとおり。
→ 燃料電池車を推進するな
というわけで、燃料電池車は、たとえ可能であっても、将来的に広く普及する目はない。
一方、家庭用の燃料電池は、触媒なしでも済むし、お湯を利用することで熱効率が非常に優れているので、有望だ。(ただ、現時点では、まだまだ高額だが。)
→ 太陽電池か 燃料電池か
→ 蓄電池と燃料電池
→ 燃料電池の補助金
以上のすべてをまとめて考えると、次のように結論するのが妥当だろう。
「家庭用の燃料電池を普及させて、高い熱効率( 80% )によって発電と熱を利用する。熱は家庭用の給湯や暖房に使う。発電は家庭または系統電力で使う」
この方針の下で、次のアイデアも成立しそうだ。
「家庭用の燃料電池で発電して、その電力を電気自動車で使う」
これはかなり頭のいい方法だ。燃料電池車の熱効率はとても低い(30%以下だ)が、家庭用燃料電池の熱効率はとても高い。そこで、電気は電気自動車で使い、熱は家庭で使えば、無駄なく絵練りギー利用ができる。また、発電効率も、かなり高くなる。
さて。それとは別に、新たな情報を示そう。
家庭用の燃料電池には、「固定酸化型」というタイプがある。これは、性能は優れているが、技術的に困難だった。それがとうとう実用化が近づいているという。
以下、朝日新聞( 2012-02-15 夕刊 11面)からの要約。
・ 家庭用の燃料電池には、「固定酸化型」というものがある。
・ 電極は酸化物。白金は使わない。
・ 現在の主流は「固体高分子型」だが、それを上回る将来性がある。
・ 現段階の性能や価格は、どちらも同程度。熱効率は 87%。
・ 違いは発電効率。固定酸化型は 45%で、高分子型の2割増し。
・ 実証研究で発電効率が 60%を超えたこともあるそうだ。
・ 発電時の温度は 800度。高分子型の 80度よりも大幅に高い。
・ 水素の純度が低くてもOK。水素作成装置を簡素・低コストにできる。
これほど圧倒的な性能を持つ燃料電池がある以上、自動車に掲載されるタイプの高分子型燃料電池( PEFC )を、圧倒することになるだろう。
高分子型燃料電池( PEFC )の唯一の美点は、小型化ができることだ。しかし、小型化ということなら、上記のように、電気自動車を使えば済むことだ。そちらの方がまともだろう。
・ 高分子型の燃料電池車
・ 酸化型の家庭用燃料電池 + 電気自動車
この比較では、後者があらゆる点で圧倒的に優れている。ゆえに、前者のような燃料電池車は、死ぬしかあるまい。
[ 付記 ]
本サイトはこれまで「燃料電池の死」というタイトルで、何度もこの問題を扱ってきた。そのタイトルは、ちょっと表現が不正確だったようだ。次のように書くのが正解だったろう。
誤 燃料電池の死
正 燃料電池車の死
ま、タイトルはとも書く、内容はその通りであったから、あまり気にすることもないかもしれないが。
【 補足 】
細かな話題をいくつか。
(1) 燃料電池車の効率
燃料電池車は電気自動車に比べて、効率が悪い。Wikipedia から引用しよう。
燃料電池の効率は水や天然ガス、バイオマス等から水素を生成し、貯蔵の為に圧縮や液化する必要があり、利用者に運び燃料電池で電気に変換する過程において損失があるために限界がある。実際に使用するまでに約25%が減る。'風力から車輪'の効率を比較した場合、風力発電の電力を水素に変換して燃料電池自動車で使用するより電気自動車に充電する場合の方が3倍効率が良い。
( → Wikipedia )
(2) 燃料電池車の加速
燃料電池車は、特に、加速性に劣るそうだ。それを補うためには、補助的なバッテリー( or キャパシタ)を必要とする。しかし、これでは電気自動車そのものになってしまう。燃料電池と普通の電池をどちらも積んでいる状態だ。馬鹿馬鹿しい。
この点については、次の記述がある。
→ 燃料電池車って、レンジエクステンダーなEVに過ぎない