多くの日本企業が衰退しつつある。特に、IT系で。
理由は何か? 多くの事例で共通点が見られる。それは「ハード偏重」ということだ。 ──
多くの日本企業が衰退しつつある。特に IT 系で。
・ ソニーの衰退
・ パナソニックの大幅赤字
・ シャープの液晶事業の衰退
・ 各社がテレビ事業から撤退
・ RAM などの半導体事業からも撤退
・ ケータイ電話では敗北の連続
・ ホンダは米国で評価が急落
・ 日産の電気自動車はろくに売れない
・ トヨタは営業利益が日産の半分
このような衰退は、業界の構造的な問題か? いや、違う。韓国企業は進展しているからだ。
・ サムスンはケータイも半導体も大幅躍進
・ 現代自動車は北米で評価がトップ(日本車を超える)
・ サムスンも現代自動車も、利益は莫大
つまり、業界は衰退しているわけではないのに、日本企業ばかりが衰退している。
この件については、前に論じたことがある。
→ 日本車 vs 韓国車 (韓国車を作っているのはドイツ人だ)
→ エティオスとティーダ (デザインでは日本以上)
→ 映画「あしたのジョー」 (韓国車はデザインに金をかけている)
このうちの最後が重要だ。韓国車やサムスンはデザインに金をかけているが、日本の会社はデザインに金をかけない。そのせいで、製品がいくら性能的に優れていても、ろくに売れない。
その典型は、日産の電気自動車リーフだろう。リーフは、この1年間に2万台売れた。「すごく売れた」という評価もありそうだが、計画台数は年間5万台である。3万台分の設備は遊休している。ひどい無駄だ。大赤字に近い。
では、なぜ? 性能が悪いからか? いや、自動車雑誌(ベスト・カー)の計算によると、各種費用を勘案して、プリウスよりも費用は安く済むそうだ。それでも売れないのは、デザインが悪いから。あまりにも不格好なので、ちっとも魅力がない。特に、カエルみたいな のっぺりした顔が不人気だ。この点、かっこよくて大人気だったプリウスとは、正反対だ。
日産の GTR も同様だ。あまりにもカッコ悪いので、「醜い」という評価が世界的に確立している。「 GTR はすごい車」というより、「GTR はすごいけど醜い車」という評価だ。
日産車だけじゃない。日本製の電器製品はみんなデザインがひどい。
IT系でも同様だ。FF(ファイナルファンタジー)のキャラクターは、あまりにも冷たい感じなので、非常に評価が悪い。それというのも、制作者のトップが、優秀な人材をどんどん首切りしていったせいらしい。(人件費を下げるのが目的で。コスト削減を第1の狙いとした結果、優秀なデザイナーはみんな退社した。)
このような傾向が典型的に現れたのが、映画業界だ。下記で言及した。
→ 日本映画がコケるわけ (脚本が安すぎるので事業失敗)
また、人材軽視は、次の項目でも言及した。
→ 先端技術の国外流出 (ソニーの先端技術者がまとめてサムスンに流出)
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以上のことから、共通点がわかる。こうだ。
「ハードばかりに着目して、コストの削減ばかりを狙ったあげく、優秀なソフトパワーを失った。優秀な機械を安価に作ることばかりに熱中して、優れたソフト(デザインやアイデアなど)の製作を無視した。「安けりゃいい」ということばかりを狙ったあげく、『安かろう悪かろう』となって、商品の魅力が著しく低下した。だから売れなくなった」
それと正反対の経営方針を取ったのが、韓国企業だ。
・ サムスンはデザインのコストを非常に高めている。(人材も優遇。)
・ 現代自動車も同様で、欧州でデザインしている。
これだけ違えば、売れ行きに大差が出るのも、当然だろう。
簡単に言えば、韓国企業は、スティーブ・ジョブズみたいな路線を取っているのに、日本企業は、昔の韓国企業みたいな路線を取っている。これじゃ、差が付いて当然だ。
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結論。
日本企業が衰退しつつある。それは当然だ。ハードばかり重視して、ソフトを軽視するからだ。アイデアやデザインを軽視するからだ。
一方、アイデアやデザインを重視して高収益を上げたのがアップルであり、そのあとを追っているのが韓国系の企業だ。
しかるに日本企業はいつまでたってもハードばかりを追っており、アイデアやデザインをすっかり軽視している。アイデアやデザインのためには金をかけないし、アイデアやデザインをもつ人材を冷遇する。日本企業がめざしているのは、コストダウンであり、そのためには、社員の給料を引き下げたり、正社員を派遣社員にしたり、……ということばかりだ。
こういう間違った経営方針を取るばかりだから、日本企業は衰退するばかりとなる。その没落の最たる例は、ソニーだろう。かつてのソニーには、アイデアやデザインがあったが、今のソニーは、そのような面影はすっかり消えている。他社も似たようなものだ。こんなことでは、いつまでたっても、アップルには追いつけない……じゃなくて、韓国企業に置いてきぼりにされるばかりだ。
2012年02月04日
過去ログ
→ 苦悩のNEC、「第2の創業」か「最後のともしび」か
http://j.mp/xJIA6v
飽きれば仮の、惨憺たる状況であるようだ。
> デザイン専門家の日本人・福田民郎氏は経営の問題点とデザインの重要性を指摘した報告書を会長に提出。
http://biz-journal.jp/2012/12/post_1218.html