2012年01月30日

◆ デマンドバスのコスト計算

 バスは大幅赤字なので、小型バスをこまめに走らせる、デマンドバスという事業がある。経費は 2500万円で、自治体負担が 2000万円。大幅赤字なので、廃止するべきか? ──
 
 普通の大型のバスは、維持費がものすごくかかるので、大幅赤字になる。そこで、維持費の少ない小型バスを使って、電話を受けた利用者のそばにに走らせる、……という事業(デマンドバス)がある。バスとタクシーの中間的な存在だ。
 この場合、経費はバスよりも少なくて、年間 2500万円で済むという。しかし収入も少ないので、年間 2000万円が自治体の負担だ。赤字率は 80%と、きわめて高い。
 では、このような事業は、廃止するべきだろうか? 
 
 ──

 朝日の記事を紹介しよう。(朝日・朝刊 2012-01-29 )
 民主党の事業仕分けでは、「ただちに廃止」と判定された。08年度に創設されたのだが、今年度から、過疎地を対象とする別の事業に変更されたそうだ。それでも、都市近郊では今年度も実施されている。
 埼玉県北本市の場合、人口7万人のうち5千人が事前登録しており、うち4分の3が高齢者。4月からの9カ月間に延べ 15300人が利用した。バスの台数は3台。経費は 2500万円で、市の負担が 2000万円余り。

 ──

 単純に計算すると、赤字率は 80% 以上だから、「無駄の典型」と思える。
 しかし、実際に大切なのは、赤字の率ではなくて、赤字の額である。比喩的に言うと、市が子供に 100円ずつのノートを配れば、赤字率は 100%。一方、市が子供に「ノートパソコンの半額補助」をすれば、赤字率は 50%だが、赤字額は超巨額になる。どっちが問題かは、言わずもがなだろう。……だから、率よりは、額が問題となる。

 では、額はどうか? 
 利用者は 5000人で、市の負担が 2000万円だから、一人あたり 4000円だ。これで高齢者の交通手段が確保される。特に高い金額ではあるまい。(高齢者が自宅に閉じこもりになると、かえって健康被害が生じて、健保や介護のコストがかさんでしまうかもしれない。数十万円単位で。)

 一方、次の制度もある。
 「『地方では自動車が生活必需品だ』という理由で、健康な大人に対して、自動車の税を大幅に減免する。特に軽自動車という制度では、数十万円を減免する。一家で2〜4台ぐらいの軽自動車をもつ家庭も多い。それらの家庭では年間百万円以上も税や保険料を減免される」

 つまり、「自動車は生活必需品だ」という理由で、健康な大人に対しては百万円以上を補助し、一方で、「生活必需品である自動車さえも使えない」という高齢者にはたったの 4000円の補助すらもやめてしまう。
 その理由は? たぶん、次の算式だ。
 「 4000円の赤字は、赤字率が 80%なので、大損だ。しかるに、百万円の赤字は、赤字率が 50%程度なので、ちっとも損ではない。だから、4000円の損をやめて、百万円の損をすれば、大儲け」
 これが民主党と政府の発想だ。

 何だか、笑い話みたいだが、これが現実だ。
posted by 管理人 at 19:33 | Comment(0) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
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