2012年01月16日

◆ ハイゼンベルグの不確定性原理の修正

 ハイゼンベルグの不確定性原理は破られた、……という趣旨の報道が出ているが、これは不正確だ。ハイゼンベルグの不確定性原理は、否定されたというよりは、補正されただけだ。 ──
 
 ハイゼンベルグの不確定性原理は、否定されたのか? いや、補正されただけだ。
 比喩的に言うと、X ≧ 4 という従来の式のあとで X ≧ 3 という新たな式が出た、というだけだ。
 つまり、従来の式が否定されたわけではなく、従来よりも精密化しているだけのことだ。「少しほころびがあったので、修正された」というだけのことだ。全面的に否定されたわけではない。今回は、新たに補正項が追加されて、補正項の分だけ、修正されたにすぎない。
 → 朝日新聞の記事
 ま、元のハイゼンベルグの不確定性原理が間違っていたといえば間違っていたことになるが、全面的に間違ったというよりは、若干のズレがあったというだけのことだ。そのズレの分だけの補正をすればいい。

 なお、以上の趣旨の話は、はてなブックマークで簡単にコメントしておいた。そうしたら、それを見た人がいたらしくて、同趣旨の話を Wikipedia で詳しく書いていた。その解説も、なかなか有益なので、これも読むといいだろう。
  → Wikipedia 不確定性原理
 また、日経の記事も参考になる。
  → 日経サイエンス
 専門的な話は、数式を使った詳しい説明もある。
  → CiNii 論文



 [ 付記1 ]
 日経の記事では、「破られた」という表現を使っているが、大げさすぎる。
 なるほど、「ハイゼンベルグの不確定性原理には当てはまらない例が見出された」ということで、「例外の証明」にはなる。その意味で、元の命題が否定されたことになる。それは、論理的は正しい。
 しかし今は論理学の真偽を言っている場合じゃない。「カラスは黒い」という命題にたいして、「白いカラスが少しだけいた」という例外を示して、「カラスは黒いというのは間違いだ!」と騒ぐようなものだ。馬鹿馬鹿しい。別に、「カラスは黄色い」という命題が見つかったわけじゃない。単に例外があると修正すればいいだけのことだ。
 今回も同様だ。補正項の分を修正すればいいだけのことだ。
 不確定性原理の意味は、「ある種の量(誤差のような量)には下限がある」ということを示して、古典力学的な決定論を否定したことだ。その下限の値が、今回は修正された。しかしながら、「下限がある」ということ自体は、まったく否定されていない。
 「不確定性原理は否定された」としたら、「下限は存在しない」ということになる。古典力学ふうに。……だが、そのようなことはありえない。下限は存在する。ただし、その数値が、いくら修正されただけのことだ。

 [ 付記2 ]
 歴史的に言えば、このような補正は、学問上ではしばしば起こる。特に珍しいことではない。もちろん、今回の業績が、ハイゼンベルグの業績に匹敵するというようなことはない。ハイゼンベルグの不確定性原理は、歴史に残る金字塔であるが、今回の業績が、それに匹敵するというようなことはない。あくまで「補正」の扱いだ。
 ただ、ハイゼンベルグの不確定性原理を修正する、という試みは、1世紀ぐらい起こらなかった。その意味で、今回の業績は、1世紀ぶりに起こった補正だから、並みの補正に比べれば、圧倒的に大きな業績だと言える。ノーベル賞をもらえるほどの独創性はないが、文化勲章ぐらいはもらってもいいだろう。
 教科書はどうなるか? 「ハイゼンベルグの不確定性原理」のかわりに、「小澤の不確定性原理」が教科書に載ってもいいだろう。ただ、単に「量子論の不確定性原理」と呼ばれるようになるかもしれない。あるいは、初歩的には、この補正項の分を無視して、ハイゼンベルグの不確定性原理が一般的に残るかもしれない。(小澤の不確定性原理は専門家の間で利用されるだけかもしれない。)
 ともあれ、今回の業績は、「歴史的にはハイゼンベルグの不確定性原理の補正」という扱いだが、「まれに見る大きな補正であり、非常に重要な業績だ」とは言える。
 また、その着眼点では、「測定誤差と、量子ゆらぎとを、区別した」というのも、センスのある着目だ。
posted by 管理人 at 23:53| Comment(0) | 物理・天文 | 更新情報をチェックする
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