2011年12月04日

◆ ペットボトル・リサイクルの愚

 ペットボトルのリサイクルについて、環境省が「再資源化」を推進しようとしている。しかしこれは省エネに反する。 ──

 「省エネを」「エコを」というスローガンを掲げて、現実には省エネにもエコにもならないことをやる……というのは、エコ・キャップが有名だ。
  → リサイクル詐欺(エコキャップ)

 これと似たことを、環境省がやろうとしている。その趣旨は、次の通り。
  ・ ペットボトルの回収をする。
  ・ 回収したペットボトルを、再資源化しようとする。
  ・ しかし、自治体は、回収したペットボトルを業者に売却する。
  ・ そのせいで、ペットボトルの再資源化が進まない。
  ・ 環境省は、再資源化の促進のため、自治体の名前を公表する。(制裁する)

 
 しかし、これは、環境省による犯罪である。なぜか? 自治体がやっていることは、悪ではないからだ。悪ではないことを「悪である」と見なして、大々的に宣伝することは、「誹謗中傷」であるだけでなく、「営業妨害」(虚偽風説流布業務妨害:刑法第233条)という明白な犯罪に相当する。国家が堂々と犯罪をするわけだ。
 その理由を示す。

 ──

 環境省は、「ペットボトルの再資源化」を目的とする。しかし、ペットボトルの再資源化は、省エネでもないし、エコでもない。なぜか? まず、回収のために、自動車などのエネルギーを必要とする。さらに、次の二点がある。
  ・ 汚れたペットボトルの浄化のために、エネルギーを必要とする。
  ・ PET というプラスチックを石油戻す化学過程で、エネルギーを必要とする。

 以上の各所でエネルギーを必要とするので、ペットボトルを回収して石油に戻しても、ほとんど省エネになっていない。簡単に言えば、エネルギー回収率が低い。要するに、大いなる無駄が発生している。

 一方、自治体がやっているように、業者に売れば、この問題はない。
  ・ ペットボトルは、いい加減に浄化するだけで済む。
  ・ 浄化したあとは、裁断して、中国でぬいぐるみの詰め物に使われる。

 いずれの場合も、使用するエネルギーは少なくて済む。比較的ローコストで、ペットボトルの再利用が進む。再資源化ではなく、再利用が進む。……この場合には、エネルギーの無駄は少ない。だからこそ、中国は高い値段で、回収済みのペットボトルを引き取れるのだ。
 
 ──

 結局、次の対比がある。
  ・ 再資源化 …… エネルギー回収率が低い。コストがかかり、非・省エネ。
  ・ 再利用  …… エネルギー回収率が高い。コストがかからず、 省エネ。

 現実になされているのは、「再利用」だ。この方がコストがかからないからだ。(高値で売れる。)
 環境省がめざしているのは、「再資源化」だ。この方がコストがかかり、多大な無駄が発生するが、あくまでそれをめざす。
 環境省というのは、それほどにも愚かなのである。

 ──

 以下では、情報を示す。
 まずは、新聞記事から。
 国内でリサイクルすべき使用済みペットボトルが、回収先の自治体から海外へと売却されるケースが後を絶たないため、環境省が、来年度から海外売却をしている自治体名を公表する方針を固めたことが3日、分かった。貴重な再生資源の消失となるほか、国内のリサイクル業者の経営悪化を防ぐためだ。ただ、海外の方が高値で購入してくれるなど、自治体にとっては国の方針に素直に応じにくい事情もあるようだ。
 容器包装リサイクル法によると、家庭から出たペットボトルは市町村が回収し、飲料・食品メーカーなどで構成する国の指定法人「日本容器包装リサイクル協会」に引き渡すことになっている。同法は企業に廃棄物の削減義務を課し、再資源化を促す目的で制定された。協会が市町村と業者の仲立ちをし、業者に入札を通じてペットボトルを売却、業者が再商品化する仕組みだ。
 ペットボトルは石油を原料としており、再商品化されれば、卵パックなど食品トレーや、自動車関連部品、建築資材、衣服など用途は多岐にわたり、リサイクルによって資源の節約につながる。
 ところが近年、原油高を背景に再生資源としてのペットボトルの価値が上昇すると、回収品を海外に売却する自治体が増加。環境省によると、指定法人に引き渡さない「独自ルート」を利用する自治体は平成22年度で約670にもなる。
 PETボトルリサイクル推進協議会によると、独自ルートに流れる量は14年度は3万トンだったものが22年度は9・2万トンへと3倍に増加。20年以降は減少傾向にあったが、23年度は再び増加に転じる見通しだ。協議会では、そのうち約4割が海外に流れているとみている。
 関係者によると、海外に向けた使用済みペットボトルの9割以上が中国へ流出。中国は日本の取引価格の約3倍で購入するため、中国向けの輸出は5年前の4倍になったという。
 日本製は品質が良いため、高値で購入しても、リサイクルした商品を売れば元が取れるようだ。
 海外に売却している、ある自治体の担当者は「指定法人ルートよりも高く販売できるから」と返答。また別の自治体では「量が多いときに迅速に引き取ってもらえるなど柔軟に対応してもらえる」と、独自ルートに流す理由を話す。
 環境省は20年度から毎年、「(ペットボトルの独自処理は)基本方針に違反しており、リサイクル法の趣旨にも反している」という趣旨の通知を自治体に出している。だが通知には強制力はなく、この4年間で独自ルートに流す自治体の数は変わっていない。
 危機感を強める環境省では「国内のリサイクル制度を堅持し、業者を保護するためには、方針を守らない自治体名の公表も辞さない」と話している。
( → MSN産経 2011-12-04
 次に、事業団体のサイトから。
 再生処理事業者によって再商品化(フレーク化、ペレット化、ポリエステル原料化)が行われ、再商品化製品(原材料)となって、さまざまな製品にリサイクルされます。再商品化製品は、利用事業者に販売され、利用製品となって活用されます。
(  → PETボトル リサイクルのゆくえ



 [ 付記 ]
 環境省はどうして、こういう馬鹿げたことをするのか? 次の発想があるからだ。
 「ペットボトルを再資源化すれば、その分、石油を節約できる。しかし、外国に輸出したのでは、石油を節約できない」
 これはまあ、日本国内で見る限りは、正しい。しかし、ペットボトルが中国に輸出されれば、中国における石油消費は減るのだから、地球規模ではちゃんと石油が節約できている。
 一方、日本で再資源化すれば、再資源化のためにエネルギーが消費される。その分は、だいたい、50%前後だ。
  ・ 日本で再資源化 …… 50%が再利用で、50%は再資源化のエネルギー消費。
  ・ 中国で 再利用  …… 100%が中国で再利用。(日本国内では効果ゼロ。)

 地球規模で見れば、中国で 100%を再利用した方がいい。しかし、国内だけを見れば、50%だけでも再資源化した方がいい、となる。( 50%は無駄に消えてしまうが。)
 ここまで見れば、環境省がどうして再資源化にこだわるか、わかるだろう。要するに、馬鹿だからだ。
 


 【 関連サイト 】

 ペットボトルをいちいち石油(というか液体)に戻してからふたたびプラスチック類に成形し直すには、多大なエネルギーを要する。この点については、どこかで情報を見た覚えがあるが、今は出典をうまく見出せない。
 とりあえずは、次のサイトが見つかった。
  → ペットボトル・リサイクル率の計算

   ※ 著者が武田邦彦だという点が、信頼性の低さになるが。ま、とりあえず。
posted by 管理人 at 20:21 | Comment(1) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
関連情報の紹介。以下、転載。
 ──
脂にリサイクルされる量は
僅か10%の3万トン
残りの9割は海外に輸出されるか
「サーマルリサイクル(焼却の熱で温水プールの電力などに再利用するリサイクル)」の名の下に
焼却されているのです

ではペットボトルの分別回収にはどのくらいのコストが必要かと言いますと
分別せずに可燃ごみと一緒に燃やした場合は1.8円なのに対し
ペットボトルの分別回収の人件費、送料、ラベル・キャップをはずす作業も込みで一本あたり26円
そこからサーマルリサイクルにまわさずに樹脂リサイクルするとさらに7.6円

資源面で言うならばペットボトルの製造に必要な石油に比べて3.5倍のエネルギーを必要とするのです

具体的な数値で表せばペットボトル一本の製作に必要な石油量は約40グラム
リサイクルされた樹脂原料は190グラムの石油(元のペットボトル分40gを含む)が必要になるのです
 ──
 → http://blogs.yahoo.co.jp/yokosanman/49739655.html
Posted by 管理人 at 2012年10月02日 12:40
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