日本政府や欧州政府は、「太陽光発電を推進しよう」という方針を取っている。これによって(自国で)次世代の産業を推進しよう、という動きもある。
しかし、太陽電池は中国がすごい安値で発売している。日米欧は太刀打ちできない。こうなるともはや、この産業にはもはや将来がないだろう。そのことが最近の情報からわかる。
太陽光発電で、「中国がダンピングした」と米国が言い張って、争いになっているのだ。
アメリカと中国が再び貿易摩擦です。中国から輸入される太陽電池関連製品が安すぎるとして、アメリカ政府がダンピング調査を始めたことに、中国側が猛反発しています。別に中国がダンピングしているわけではないだろうが、ダンピングしていると思えるぐらい中国製品は安い、ということだ。実際、先進国製品に比べて、3割ぐらい安い。(人件費が安いから。)
アメリカの太陽電池関連企業7社は、中国の製品が政府の補助金などによって不当に安い価格でアメリカに輸入されているとして、今月、アメリカ商務省にダンピング調査を求めました。
( → テレビ朝日 )
これで性能が同等なのだから、もはや先進国製品には競争力はない、と言えるだろう。競争力があるのは、中国に「太陽光電池の製造機械設備を売りつける会社」だけだ。(それは先進国の会社だ。)
→ 太陽電池産業の育成
一方、実際にその設備を稼働して太陽光電池を製造するのは、中国である。先進国メーカーは、もはやコスト的に競争力をなくしている。
実際、国内でも大手企業は「もう中国製品とは競争できないので、新規の設備は投資しない」(既存設備で生産するだけにする)と言っている。(数日前の新聞にそういう記事があった。)
近年では、シャープが太陽光電池の工場を堺市に建設した。
→ 太陽光発電の問題
これは 2008年の時点の話だ。この時点では、シャープは新工場を作ったが、今では後悔しているはずだ。2011年の時点では、シリコン型の新工場を作ろうとしている会社はないはずだ。やるだけ無駄だろう。(中国製品に対抗できないので、赤字を生産するだけだ。)
たとえば、パナソニックは、国内に太陽電池の工場を作る予定(既存工場の転換)だったが、市況の悪化を受けて、あわてて予定を中止し、かわりに、マレーシアで生産することにした。
→ 太陽電池の底なしの価格下落 パナソニック新工場の試練
なお、CIS型(CIGS型)ならば、
→ ホンダ、寄居工場にメガソーラー発電装置を設置へ
→ 昭和シェル、太陽光発電所を工場跡地に建設する可能性
つまり、新規工場を作らずに縮小体制( or 現状維持体制)にあるのは、シリコン型だけだ。CIS型(CIGS型)は、拡大傾向にあるようだ。国内でさらに研究開発をするとしたら、シリコン型以外だろう。
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結論。
従来のシリコン型の太陽電池は、もはや中国製には勝ち目がない。かろうじて対抗できるのは、CIS型(CIGS型)だけだ。
とすれば、「従来型の太陽電池を大量生産でコストダウンする」という方針は、まったく成立しない。莫大な補助金をかけても、中国メーカーを育成するだけだ。また、コストダウンは、大量生産のおかげではなく、中国の安い人件費のおかげである。(大量生産してもコストはほとんど下がらない。)
( ※ シリコン型は、もはや中国製品に、太刀打ちできそうにない。規模の点でも負けているから、研究開発でも後れを取ることになりそうだ。……ただ、それが悪いとは、言い切れない。シリコン型は、もはや先が袋小路かもしれないからだ。そこに入って抜け出せなくなるより、早いうちに撤退する方が、賢い戦略かもしれない。)
( ※ かわりにできることは? 「新技術の開発」だ。それは「シリコン型」とは別の分野で可能となる。それならば、日本の企業も勝負になる。しかし、それを推進するには、「大量生産のための補助金」とは別の施策が必要だ。それは「技術開発援助」だ。)
→ 昭和シェル、太陽光発電所を工場跡地に建設する可能性
この2件は、太陽電池の工場じゃないですよ。