2011年11月26日

◆ 蓄電池と燃料電池

 太陽光発電の不安定さを解決するために、蓄電池と組み合わせよう、という方針がある。(スマートグリッドなど。) しかし、蓄電池よりは、燃料電池の方がマシだ。 ──
 
 太陽光発電や風力発電は、発電量が変動する。これを解決するために、蓄電池と組み合わせよう(そうやって電力を安定しよう)、という方針がある。
 この方針は、スマートグリッド・スマートシティ・スマートハウスなどの概念で説明されることが多い。
 このような方針については、私はかねて批判的だった。次の趣旨で。
 「蓄電池は、実用性がない。1日ぐらいの変動ならばともかく、数日間の変動を吸収するのは無理だ。それでいて、コストは莫大にかかる。こんなものよりは、火力発電とスマート家電を組み合わせる方がいい」

( → 前項

( ※ たとえば、梅雨期には太陽光発電がろくにできない期間が、20日間ぐらい続きそうだ。その間の電力を、蓄電池でまかなうことはできない。蓄電池には、そのように、「容量の問題」が避けられない。)

 ──

 一方、本項では、別の観点から批判しよう。こうだ。
 「どうしても蓄電池みたいなものを使いたいのであれば、蓄電池よりは燃料電池の方が、まだマシである」


 実を言うと、燃料電池については、私はかねて批判的だった。次の趣旨で。
 「1996年のころから、『5年後には実用化します』と言い続けてきたが、毎度毎度、先延ばししてきた。これじゃ永遠に『5年後には実用化します』と言い続けることになる」
 
 ところが、最近になると、メーカーは「3年後には実用化します」と言いだした。理由は、大幅なコストダウンの実現である。
 「2000年ごろには、コストは2億円(1台あたり)だったが、現在では1千万円にまで下がった。コストは数十分の1にまで下がった。あと3年で、現在の電気自動車と同程度にまで下がるだろう」
 とのことだ。(トヨタ自動車の話。GMやホンダも同程度であるらしい。なお、出典は、雑誌「ベスト・カー」の最新号。)

 このように、燃料電池車は、実用化がかなり近づいているらしい。

 ──

 とすれば、将来的には、燃料電池車が廃棄されたあとの燃料電池(つまり 10年間使ったあとの中古・燃料電池)が、大量に余るはずだ。その中古・燃料電池を大量に使うことで、太陽光発電の電力を蓄電できそうだ。

 このこと(燃料電池による蓄電)は、普通の蓄電池(たとえば電気自動車のリチウム電池)に比べて、圧倒的な優位性がある。こうだ。
 「燃料電池車の燃料は、水素なので、水素を蓄積することで、大量の蓄積が可能である。また、長時間の連続運行が可能である」

 たとえば、太陽光発電で電力を大量に使って、水素ガスを溜めておく。その水素ガスを使って、燃料電池で 20日間ぐらい発電し続ける。……これならば、梅雨期も、何とか乗り切れそうだ。つまり、容量の問題を回避できる。

 というわけで、蓄電池よりは、燃料電池の方が優れている、と言える。蓄電池によるスマートグリッドという発想は、全然ダメだ。



 [ 付記1 ]
 では、以前から述べている「火力発電とスマート家電」という発想に比べると、どうか? もちろん、そちらの方がいい。燃料電池は、全然太刀打ちができない。コスト的に高価すぎるからだ。(たとえ中古の燃料電池を使うにしても、だ。)

 ただし、である。それは近未来のことだ。
 一方、遠い未来は、事情が異なる。たとえば、50年後か 100年後には、化石燃料が枯渇しているかもしれないし、非常に高価格になっているかもしれない。一方で、太陽光発電は、劇的に安価になっているかもしれない。……その場合には、安価な太陽光発電の電力を使う方がいい。そして、そのときには、「燃料電池による蓄電」も、十分に考慮の対象になる。

 従って、結論は、次のように場合分けされる。
  ・ 近未来 ……… 火力発電とスマート家電
  ・ 遠い未来 …… 太陽光発電と燃料電池


 一方、「太陽光発電と蓄電池」という組み合わせは、永遠に起こらないだろう。
 仮にそれが起こったら、梅雨期には「お日様が三日照らなかったら、国中が電力不足でマヒ状態」というふうになりかねない。
 「土方殺すにゃ刃物はいらぬ、雨の三日も降ればよい」
 というのに似て、
 「日本殺すにゃ刃物はいらぬ、お日様三日も隠れりゃいい」
 というふうになりかねない。

 で、そういう馬鹿げた状態をめざして、必死に努力しているのが、スマートグリッド,スマートシティ,スマートハウスというやつだ。
 愚の骨頂

 [ 付記2 ]
 蓄電池が何とかなるとしたら、大容量の電力を安価で蓄える仕組みが必要で、そのためには、通常の電池やキャパシタでは駄目だろう。たぶん、超伝導だけが、唯一の解決策だろう。それが実現するには、あと数十年かかる。
  


 [ 余談 ]

 私は本項で、「愚の骨頂」みたいな悪口を書いているが、別に、誰かを馬鹿にしたいのではない。お間違えなく。私としては、日本が正しい方向に向かってほしいだけだ。というか、日本を破滅から救いたいだけだ。
posted by 管理人 at 20:02 | Comment(2) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。

蓄電池については全く同感。ただ、燃料電池については私は管理人さん以上に悲観的です。少なくとも定置型で使うのはコストを別にしても筋が悪すぎる。

燃料電池の発電効率は決して高いものではありませんから、定置型で意味があるのは熱を使い切れるコジェネ利用だけです。現状のガス改質家庭用燃料電池は出力わずか1kW程度。それでもしばしばお湯が余るので実効はそれ以下だと聞きます。そんなわずかな発電のために複雑な装置を家庭に置くのはナンセンスで、それなら素直にガスで沸かすかヒートポンプ(COP3以上ならこの方が有利)で沸かした方がいいなと。

燃料電池に意味があるとすればやはり自動車用だけでしょう。しかしそれは「内燃機関の部分負荷利用の効率が低すぎる」からで、ハイブリッドなら定格負荷に近づくから燃料電池車の優位性はそれだけでもう怪しい。車のコストが相当下がっても純水素の供給インフラとか水素の電気分解ロスまでを考えるとまだ蓄電池車の方がマシなように思います。

もちろん遠い先の技術はわからないので「太陽電池+燃料電池」の可能性はゼロではないと思いますが、そこまで開発をつなげていく需要はどうも思いつかない。どうせ飛躍が必要なら、それこそ安定出力できる宇宙太陽光発電に賭けたほうがいいようにも思えます。夢もありますしね(^^);
Posted by 深海 誠 at 2011年11月27日 19:11
このエントリとは直接関係があるわけではないですが、
ドイツでは余剰電力を水素に変換してガス管に流しこむようです

http://www.eon.com/en/media/news-detail.jsp?id=10738&year=2011
Posted by KM at 2011年12月02日 13:43
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