2011年11月25日

◆ スマートシティの愚

 スマートグリッドを都市全体で実行しようという発想で、「スマートシティ」という構想がある。しかしこれは、馬鹿げている。 ──
   
 スマートグリッドを都市全体で実行しようという発想で、「スマートシティ」という構想がある。下図は、国交省のサイトから。

smartcity.gif

 現実的にも、横浜市で実現しつつある。
 《 消費電力効率管理 横浜市地域全体で実証実験 》
 家電ごとの電力使用量を手元の端末画面で見て、その端末を使って使用量の多い部屋のエアコンを消す――。
 東日本大震災後の電力不足を背景に、このように電力使用量をコントロールできる次世代住宅が県内でも広まりつつある。自治体も普及を後押しする考えで、横浜市は、地域全体で電力の使用をコントロールする実証実験を行う計画だ。
 横浜市港北区の東急東横線大倉山駅から徒歩6分の場所に三井不動産レジデンシャルが建設中のマンション「パークホームズ大倉山」。横浜市が推進する「横浜スマートシティプロジェクト」に参加する次世代マンションだ。
 各住戸と共用部分にそれぞれエネルギー管理システム(EMS)を備える。居住者は、タブレット型の端末でエアコンや給湯器などの操作ができ、端末で全体の電力使用量やそれぞれの機器の電力使用量も確認できるのが特徴だ。使用状況を見えるようにすることで節電意識が高まるという。
( → 読売新聞 2011-11-22
 これはスマートメーターを見ながら、利用者が電力を手動で削減する、というもの。(自動的に冷蔵庫やエアコンが切れたりするわけではない。)
 
 ──

 しかし、このようなスマートグリッドのシステムよりは、スマート家電の方がいい、と先に述べた。
  → スマートグリッドの愚
 上の例で言えば、人間がいちいち冷蔵庫やエアコンのスイッチを入れたり切ったりするより、機械が自動的に最適処置を取る方がいい。
 たとえば、冷蔵庫は、午前中に強冷にして低温にしておき、午後に弱冷にすればいい。こういう自動制御を機械が自分でやればいい。人間がいちいちやる必要はない。

 ──────────────────

 本項ではさらに、本質的なことを述べよう。こうだ。
 「電力不足が問題となるのは、一年に数日間だけ、特別に暑い日だけだ。それ以外の日には、いちいち制御する必要はない。そして、その特別に暑い日には、機械が制御してエアコンを切るよりは、企業が休業する方がいい」

  → 猛暑休暇を用意せよ
  → 需給調整契約を拡張せよ
  → 産業用スマートメーター
 
 要するに、「電力不足のときに家庭で節電しよう」という方針が、根本的に狂っている。つまり、「スマートシティ」や「スマートグリッド」という方針が、根本的に狂っている。
 IT技術を使えば先進的なことができるだろうと思っているのだろうが、いかに IT 技術によってスマートグリッドが可能であろうと、そんなことはあまりにも馬鹿げたことなのだ。莫大なコストをかける割に、効果はほとんどない。「百害あって一利なし」とは言えないが、「百害あって一利あり」にすぎない。一利を得るために、莫大な損失を出している。(その意味では、エコキャップと同様の、巨大な無駄だ。単に「無駄」と呼ぶのが最も適切だ。省エネのために、金と資材を莫大に費やすからだ。)

 なすべきことは何か? すぐ上の各項に示したとおりだ。つまり、「産業界における猛暑休暇」だ。そして、そのためには、「需給調整契約」を推進し、産業界にスマートメーターを設置すればいい。
 つまり、スマート化するべきなのは、家庭ではなく、産業界なのだ。この場合には、ごくわずかなコストで、莫大な効果を出すことができる。(産業界の電力消費は莫大だからだ。1事業所で家庭の1万世帯分の電力を消費する例も多い。その場合も、スマートメーターはその事業所に設置するだけで済む。1万世帯に設置するのとはわけが違う。)

 ここのところを履き違えているという点で、スマートグリッドやスマートシティという発想は、根本的に狂った発想だと言えよう。「エコをITで推進する」というと、いかにもカッコいいことのように見えるが、それは、エコキャップと同じで、馬鹿丸出しであるわけだ。
 それにしても、こんなこともわからないとは、人類というのは相当にアホだ。猿みたいな知識レベルしかない、と言える。しかも、私が何度も書いているのに、ちっとも世間に伝播しない。ネットの情報伝播力というのも、非常に弱いようだ。

( ※ 太陽光発電が駄目だというのは、私は前からずっと言っていたが、2009年11月に、「スパコンの悪口を書くより太陽電池の悪口をかけ」と池田信夫に告げた。すると、その後、池田信夫が太陽光発電の悪口を書くようになった。それ以後、ようやく、太陽光発電のバカらしさが世間に知れ渡るようになった。 → 前出
( ※ スマートグリッドの愚かさについても、池田信夫が語るまでは、世間に周知されないかもしれない。……もっとも、池田信夫も、それを理解できるかどうかは、おぼつかない。)
 


 【 関連サイト 】

 スマートシティについてのサイト (リンク集)

  → スマートシティという視点〜 - - 国土交通省
  → スマートシティとは
  → スマートシティの動き、日本でも本格化
  → スマートシティ 電機各社、海外展開視野に提案 (
  → スマートシティが復興の起爆剤に
  → スマートシティーを形成する要素
  → 横浜スマートシティ・プロジェクト (PDF)
  


 [ 付記 ]
 スマートグリッドには、次の要素もある。
 「太陽光発電で発電してから、その電力を蓄電池にためる」
 しかし、これが馬鹿げているということは、何度か示したとおり。簡単に言えば、蓄電池があまりにも高コストすぎる。5年や 10年で解決する見通しはない。現在は存在しない画期的な新技術でも誕生しないと、電力の蓄積は無理だろう。(その最有力候補は、超伝導による蓄電だ。今のところは夢段階だが。)
 太陽光発電をする場合、電力の変動を解消するには、最も良い方法がある。次の二つを組み合わせることだ。
  ・ 火力発電による調整 (分単位の変動に対処する)
  ・ スマート家電による調整 (瞬間的な急変動に対処する)
 この件は、別項で述べたとおり。
  → スマート家電 > 蓄電池

 なお、将来的には、電気自動車の電池や、燃料電池車の電池が、大量に廃棄されるので、それを利用することで、安価な蓄電池を使えるだろう。しかしそれを 1000万kW 単位で大規模に構築することは、ほとんど不可能だと思える。コスト的にも、とうてい成立しない。
 やはり、上記の二点(火力発電・スマート家電)による方式が、本命だろう。これなら、特に問題点はない。



 [ 余談 ]

  → スマートコンセント (アンサイクロペディア)

    ※ 冗談項目です。 (^^);
posted by 管理人 at 18:57 | Comment(0) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
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