2011年10月31日

◆ 防災林の整備へ

 巨額のコンクリの防潮堤なんかよりは、防潮林と内陸堤防を整備せよ、というのが私の主張だが、そのうち、防潮林(防災林)を整備するという方針が決まった。 ──

 津波の被害を軽減するには、防潮林(防災林)が効果があった、と判明したので、これを整備する方針が決まった。
《 防災林、津波軽減に効果…林野庁が再整備へ 》
 東日本大震災で壊滅的な被害を受けた被災地の海岸防災林を、林野庁が「天然の防波堤」として再生する。同庁の調査で防災林に津波の威力を軽減させる効果があることが判明したためで、今後はより津波に流されにくい植林方法も導入する。
 今回の被害面積は、東京ドーム約780個分に相当する約3660ヘクタールに上り、すべてを再生するには10年近い歳月がかかるが、今年度中には着手したい考えで、第3次補正予算案で関連費用数百億円を計上する方針。
 「防災林がなかったら、被害はもっと大きかったかもしれない」。仙台市若林区の町内会長、庄子義(ただし)さん(75)は言う。同市の海岸沿いは高さ約7メートルの津波に襲われたが、防災林の後背地に位置する自宅付近に来る頃には高さ約40センチになり、床上浸水は免れた。津波による町内での死者もいなかったという。岩手県や福島県でも、漂流していた車や漁船などが防災林でとどまり、住宅地に流入するのを防いだ例が10件近く確認された。一方、防災林のない港湾施設などの背後では大きな被害が出た。
 同庁が森林総合研究所(茨城県)に委託した調査では、高さ16メートルの津波が起きた場合、防災林がないと約18分後には海岸から600メートル離れた地点に秒速約10メートルの波が押し寄せるが、防災林があれば到達時間を約6分間遅らせ、津波の勢いも秒速2メートルに落ちた。
( → 読売新聞 2011年10月6日
 ──

 紙の新聞によると、高さ3〜5メートルの盛り土をして、防潮林の幅を 200メートルぐらいにするそうだ。
 これは、幅は十分だが、高さが不足する。一部を高くした凸状の形状にすれば、最大の高さを 10メートル以上にすることができるはずだ。
 特に、海岸に近い部分には、高い盛り土をした上に、土の防潮堤を作るといい。高さ 15メートルのコンクリの防潮堤を作るには超巨額が必要だが、高さ 5〜10メートルの盛り土をした上に、中央部で高さ5メートルの堤防を作り、コンクリの護岸をすれば、同等以上の効果があり、かつ、コストは格安で済む。
( ※ 盛り土の内部材料に、ガレキや汚染土を使えば、コストは事実上ゼロで済む。ガレキや汚染土の処分費用がかかるだけだ。これはもともと必要なコスト。)



 [ 付記 ]
 前に述べた私の方針は、次の通りである。( → 前出項目
 (1)  沿岸部の低い防潮堤 (台風の場合など)
 (2)  内陸 100メートルにある低い防潮堤 (巨大な津波の勢いを軽減するため)
 (3)  内陸 500メートルにある高い防潮堤 (巨大な津波の勢いを阻止するため)

 (A).  (1) の海側は、砂浜とする。(津波の直撃を避けるため)
 (B).  (1) と (2) の間は、防潮林と資材置場。(建築物は無し。せいぜい倉庫)
 (C).  (2) と (3) の間は、水産工場などだけ。(商業施設や住宅は無し)

 理由は、次の通りである。( → 前出項目
 「防潮林などを植えるといいだろう。その目的は、津波の勢いを弱めることだ。」


 防潮林は、津波を止めるのではない。高さ 10メートル以上にもなる津波を止めることはできない。しかしながら、「抵抗」の形をとって、津波の進行を遅らせて弱めることはできる。高さ 10メートル以上にもなる津波が、横に進むには、陸上を這い進む必要があるが、そのとき、防潮林が抵抗の形になって、津波の進行を阻害する。
 そうやって津波の進行を遅らせているうちに、津波は(波の)山と谷とが交替する。高さ 10メートルの津波のあとで、低さ 10メートルの谷が来る。山と谷の周期は、何分間にもなるので、通常ではどちらか一方になる。しかしながら、防潮林で津波の進行が遅らされていれば、津波の山が十分に進まないうちに、津波の谷が来る。そのことで、津波の被害が緩和される。(山と谷が混じるからだ。)
 通常の平野部では、津波の山が訪れたあと、それは何にも阻害されずに、どんどん奥地まで進行していく。しかしながら防潮林があれば、津波の山は、防潮林で手こずっている間に、やがてくる津波の谷に追いつかれてしまう。そのせいで、津波の山と津波の谷の入り混じった弱い津波が、防潮林の先の方へ進むことになる。

 この意味では、防潮林は、「沿岸部の低い防潮堤」よりも後方に置くべきだ。逆に言えば、防潮林の海側には、低い防潮堤を設置しておくべきだ。そして、低い防潮堤を乗り越えた津波についてだけ、防潮林が進行を阻害する。
 そして、防潮林を乗り越えて押し寄せた津波については、最後の砦ともいうべき内陸堤防が津波を阻止する。ただしそれは、すでに「沿岸部の低い防潮堤」と「防潮林」によって大幅に弱められた津波であるから、5メートルぐらいの平凡な堤防で間に合う。数百億円もかかるような、巨大なコンクリの防潮堤は必要ない。
posted by 管理人 at 21:17 | Comment(1) |  震災(東北・熊本) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ニュースから。
 ──
防潮林、堤防以上の効果も 千葉大が旭市の津波調査

 東日本大震災による千葉県旭市の津波浸水域。水色の斜線域が浸水域、緑の斜線域が防潮林、赤線が堤防を示す(千葉大の丸山喜久准教授提供)

 東日本大震災の津波で死者・行方不明者15人の被害が出た千葉県旭市では、防潮林の方が堤防より内陸への津波の浸水を抑える効果が高かったとの調査結果を、千葉大の丸山喜久准教授(地震防災学)がまとめた。

 大震災では、岩手県陸前高田市のように巨大津波で防潮林がなぎ倒されたケースがある一方、宮城県石巻市では防潮林の背後で家屋が壊れず残った例もある。

 丸山准教授は「防潮林だけで全てを守るのは難しいが、効果はある。津波に対しては、ソフト面も含めさまざまな対策を組み合わせることが大切」としている。

 http://www.47news.jp/CN/201206/CN2012060101001210.html
Posted by 管理人 at 2012年06月01日 22:29
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