50Hz / 60Hz に分かれている電力の周波数は、統一した方がいい。このことはかねて指摘されている。しかし現実には、それを実現することは困難だ。
周波数を統一するには一方あるいは両方の地域の発電機を総て交換しなければならない(あるいは応急処置的に発電する段階で周波数を変換する設備を組み込み、それを通す)うえ、周波数を変更する際に停電が伴ったり、さらに周波数に依存する機器(後述)を交換するかそれに対策を施す必要があるため現実的には殆ど不可能に近い。後述する周波数変換所によって東西間の電力供給は可能だが大規模災害などの場合を除いて需要に投資が見合わないとされ変換できる電力は100万kW(東清水変電所が本運用になっても120万kW)と少なく、前述の戦後間もない頃の周波数の統一が頓挫したことが残した弊害の一つとされる。それでも、強引に統一しよう、という構想もある。(自民党)
( → Wikipedia )
自民党の小坂憲次参院幹事長は10日までに、東日本と西日本で異なる電源周波数を今後25年間で統一する電力政策の改革試案をまとめた。かなり無理筋な提案ではあるが、ともあれ、こういう提案もある。
試案は周波数を統一させ、電力を融通しあうことに主眼を置いた。負担を公平にするため、政府と全電力会社による「統一基金」の創設を提唱。これを活用した上で
(1)10年間をメドにすべての家電で新周波数への対応を義務化
(2)20年間をメドに民間工場の機械を新基準に更新
(3)25年後に発電施設の切り替えを終了−との工程を提案した。
周波数統一には、発電所一つあたり数百億〜数千億円の費用が必要とされる。一般の工場でも大型設備の改修などが必要となり、「経費は天文学的数字にのぼる」(経済産業省幹部)との指摘もある。
( → 産経 )
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そこで、私としては、新たな提案をしたい。こうだ。
「超長期的に、少しずつ周波数を変動させる」
実現するのは、50年後でも 100年後でもいい。とにかく、「周波数統一」という目的に向けて、少しずつ現実を変化させていく。ここでは、次の二点が重要だ。
・ 時間は数十年の長期を見込む
・ 変動は、一挙にやるのではなく、逐次的。一度に1Hz ぐらいで。
・ 最終的な統一周波数は、中間値の 55Hz にする。
たとえば、次のプランを採る。
・ 10年後には 51Hz と 59Hz にする。
・ 20年後には 52Hz と 58Hz にする。
・ 30年後には 53Hz と 57Hz にする。
・ 40年後には 54Hz と 56Hz にする。
・ 50年後には 55Hz と 55Hz にする。
こうして、 50年後に統一が実現する。 (^^)v
「 50年後じゃ遅すぎる!」と思うかもしれない。だが、仮に、50年前の先人がこの方針を取っていたら、今ごろはとっくに統一が起こっていたはずなのだ。(先人はおろかだった。)
逆に、現状のまま何もしないでいれば、50年後もやはり 50Hz と 60Hz のままである。その場合は、子孫がわれわれのことを「何という愚かな先人だ」と思うかもしれない。
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なお、電器製品については、現実の商品は大半が 50Hz と 60Hz の共用であるから、特に問題は起こらないだろう。洗濯機や電子レンジなどは、共用が不可能だが、10年間もたてば壊れて、買い換えされているはずだ。
また、こわれなくても、1Hz か 2Hz の変動ならば、吸収できるだろう。50年前の機器を使うという例も、あるかもしれないが、それでも最大限で 5Hz の変動だから、大事故にはなるまい。
その意味で、一般の家電商品では、特に問題はないはずだ。
問題があるとしたら、発電設備だが、こちらも、耐用年数から考えて、順次交代されていくだろう。一部の発電機については、ちょっとした改造で済むはずだ。
ただ、改造にともなって、発電機の負担が増えそうだ。その場合には、発電機の発電出力を絞ればいい。たとえば、 50Hz のものを 51Hz に改造したら、同時に、発電機の出力を3%ぐらいダウンさせればいい。これで発電機の負担が下がり、故障もしにくくなる。
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このようにして周波数を統一すると、何かメリットがあるか? 便利さの点でもいろいろとメリットがあるが、一番のメリットは、エネルギー効率の向上だ。
現状では、機器の大半が 50Hz と 60Hz の共用である。これはどういうことかというと、 60Hz でも大丈夫なように、60Hz の機器として設計しておきながら、50Hz の地域では 60Hz 用の機器を 50Hz で利用する、ということだ。そのせいで、60Hz の地域では効率がいいが、50Hz の地域では効率が下がる。実際、エアコンでも冷蔵庫でも、60Hz の地域で使う方が効率がいい。(カタログの効率データを見ればわかる。)
では今後、55Hz に統一されたら、どうなるか? 60Hz のときに比べて、効率はかえって下がるか? 60Hz 用の機器ならば、効率は下がる。しかし、最初から 55Hz に最適化された機器を使えば、55Hz でも、 60Hz のときとほぼ同様の効率が得られるはずだ。(そういうふうに最適設計されているからだ。)
要するに、東西で周波数が統一されれば、どの地域でも、その周波数に最適化された製品を使える。そのおかげで、日本中の製品で電力の効率が上がる。つまり、省エネだ。(エコだ。)
一方、現実には、50Hz の地域では 60Hz 用の機器を 50Hz で利用することになる。そのせいで、東日本では、効率が低下している。……この弊害をなくせるのが、周波数統一の効果だ。
( ※ 引っ越しのときに便利だ、というようなメリットは、二の次だ。)
またおかしなことを。50Hzより60Hzのほうが効率がいいのは、そもそも電圧が同じなら振動数が高いほうがより多くのエネルギーを運べるからです。よって55Hzにしたなら、50Hzの地域は効率向上しますが、60Hzの地域は必ず効率低下します。
いっぱいエネルギーを運んで、いっぱいエネルギーを食ったら、効率は特に向上しません。出力は向上するけれど。
仮に、周波数が上がれば上がるほど効率が向上するなら、交流の周波数は滅茶苦茶に高くなっているはずです。(現実には、そんなことはない。)
> 60Hzの地域は必ず効率低下します。
それはそうです。
・ 60Hzに最適化した機械を60Hzで使う
・ 55Hzに最適化した機械を55Hzで使う
この二つを比較すれば、前者の方がほんのちょっとだけ効率は上です。
しかし現状では、
・ 60Hzに最適化した機械を50Hzで使う
という量がとても多い(日本の半分以上だ)ので、日本全体としてみれば、統一による効率向上があります。
本項では、60Hz と 55Hz とを対比しているのではありません。「混在と統一」とを対比している。国全体としての効率を論じている。
ただ、移行期間が長く続きすぎると、その弊害もある。
また、50Hz のものを60Hz で使う場合に、トラブルが起こる可能性を否定できない。
一番大きな点は、メリットがあまり大きくないことです。55Hz でも 60Hz でも、大差はありません。
細かなメリットを言い出したら、70Hz に統一とか、100Hz に統一とか、いつまでもずっと移行期間が続きます。それは馬鹿馬鹿しい。そっちのデメリットの方がずっと大きい。
小エリアごとに停電して少しずつ変えるというのも,系統連係や潮流による系統変更等の問題で難しいんじゃなおでしょうか。
エイヤで停電して一斉変更のほうがまだ現実味がありそうです。
改造後は、あるときいっせいに周波数変更装置を作動させます。すると50Hzから51Hz へと変更されます。(その移行には1時間ぐらいかけてもいい。)
ま、簡単じゃないけれど、そのくらいの技術力はあるでしょう。
大型高速回転体のバランス調整はピンポイントに近いシビアさなので,使用回転数を徐々に変えるというのは難しいんじゃないでしょうか。
或いは、発電した電気を、一旦、直流で送電とか(環日本海諸国や東南アジア・オーストラリア等との「スーパーグリッド」と並行して考えると良いのですかね)。
不安定な風力や太陽光発電の安定化に有意な、揚水発電所にも、周波数変換の機能が有りますので、これを増やすのも良いでしょう(具体的には、従来の物より建造好適地が増える、地下揚水発電所や海水揚水発電所)。
→ 周波数変換よりも発電機
http://openblog.meblog.biz/article/7914262.html