2011年10月02日

◆ 地熱発電の可能性と課題

 地熱発電はコスト的には火力発電と競争可能な範囲になっている。しかし普及しない。その理由は何か? 技術的な理由ではなく、経営的な理由だ。 ──
 
 地熱発電は、普及可能ではあるが、現実には普及していない。その理由を、人々は勘違いしている。その勘違いを指摘する。

 朝日新聞日曜特集の Grobe で、地熱発電の特集をしている。大意は、次の通り。
  ・ 人口 30万人のアイスランドでは、地熱発電が 57万kW で、電力全体の 22% 。
  ・ 日本の現在の発電量は、(18発電所の総計で)54万kW で、世界8位。
  ・ 日本の地熱資源量は、2347万kW で、世界3位。
  ・ そのうち、開発可能なのは 425万kW。2050年には 1027万kW。
  ・ 70年代の石油危機で「サンシャイン計画」により地熱発電が推進された。
  ・ 90年代にはブームが起こり、9基32万kW が追加された。
  ・ 地熱発電は、発電所を増やすと、蒸気の「減衰」が起こって発電量が下がる。
  ・ 高温岩体発電は、減衰はないが、技術開発が進んでいない。
  ・ 地熱発電はニッチなので、日本企業が世界シェアの8割を占める。


 ──

 以上の話から、わかることがある。
 地熱発電は、いくら推進しても、 425万kW にしかならない。現状の 10倍弱だが、それでも、日本の総発電量 の 22607万kW のなかでは、2%にしかならない。
 ちなみに、 425万kW を原発( 100万kW )に換算すると、4基にしかならない。これを電力会社 10で割ると、1社あたり 0.4 基にしかならない。これでは企業として事業化するに値しない。

 ──

 朝日の記事は、全体としては、「地熱発電を推進しよう」という立場だ。しかし、上に述べたように、事業化という点で問題があるとわかる。つまり、あまりにも規模が小さすぎて、事業化する価値がないのだ。それぞれの電力会社にとっては。

 ここまで理解すれば、普及のための推進策もわかる。こうだ。
  ・ 事業は電力会社でなく、別の企業に任せる。
  ・ 事業は地域別でなく、全国一律でやる。

 以下で解説しよう。

 (1) 事業は電力会社でなく、別の企業に任せる

 巨大な電力会社にとっては、地熱発電というのは、あまりにも小規模な事業であるので、自社でやるにはふさわしくない。それはいわば、巨大なバケツでコーヒーカップにミルクを注ぐようなものだ。規模が適していない。
 だから、地熱発電というような小さな事業は、小さな企業が担当すればいい。その方が小回りが利くからだ。ちなみに、風力発電では、社員が 10人弱の会社がやっている例がある。( → 茨城の風力発電所
 地熱発電もまた、このように小さな事業体が担当すればいい。(工事は大手の企業に任せるにしても、事業そのものは小さな事業体で済む。)

 (2) 事業は地域別でなく、全国でやる

 1箇所の事業体は小さいとしても、全国を担当できれば、事業体の規模は大きくできる。現状のように、電力会社が各地域で個別にやるのでは、規模が 10分の1になってしまうが、全国を担当する事業体があれば、そのように小さく分割する必要がなくなる。
 問題は、その方法だ。どうすれば、全国でやることができるか? 現状では地域割りがあるから無理だ。とすれば、目的はこうだ。
 「地域別の送電会社とは関係のない、全国規模の発電業者を誕生させる」

 そのための手段は、こうだ。
 「発送分離によって、発電と送電の事業体を分離する」

 発送分離がなされれば、送電事業は地域別でも、発電事業は全国規模にできる。

 ──

 ここまで見れば、なすべきこともわかるだろう。
 大事なのは、「地熱発電を推進しよう」と声を上げることではない。また、国が補助金を出すことでもない。むしろ、地熱発電が経営に乗るように、事業化の条件を整えることだ。それはつまり、「発送分離」だ。これがなされれば、各地域を統合する地熱発電の事業体が生じるだろう。もしかしたら、孫正義が乗り込むかもしれない。その段階になって初めて、補助金が必要か否かという判断が生じる。(補助金が必要だとしても、たかが知れている。たいした額にはならない。)
 ともあれ、大切なのは、「発送分離」だ。これがあれば、地熱発電の事業体が誕生できる。これがなければ、地熱発電は絵に描いた餅にすぎない。
 


 [ 付記1 ]
 現状では、なぜ駄目か? 次の二点による。

 (i) 電力会社にやらせるのでは、規模が小さすぎて、採算に乗らない。(本文中で示したとおり。)
 (ii) 独立した事業体にやらせるのでは、規模の点では全国規模になれる(だから問題がない)。だが、電力を電力会社に買ってもらう形になるので、買いたたかれる。買ってもらえる保証もない。風力発電と同様の問題が起こる。

 以上の二点を解決するには、「発送分離」を実現するしかない。
 
 [ 付記2 ]
 発送分離でも足りない場合に、補助金の出番となる。ただし補助金を出せばいい、という問題でもないようだ。
 実は、現状では、過大な補助金が出されている。火力の発電にもなるコストをまかなうために巨額の補助金が出されている。そのあげく、温泉の枯渇という問題を引き起こしている。
  → 省エネという環境破壊

 地熱発電は、場所ごとの適性があり、事業化が困難である例も多い。あまり楽観できる見通しはできない。
 そもそも、最大限に実現しても、可能な発電量はごく少ない、とわかっている。やってもやらなくても、大差ないだろう。節電による節約量に比べると、圧倒的に小さな量でしかない。節電の工夫でもした方が利口である。
  
 [ 付記3 ]
 より細かな技術的な話は、コメント欄を参照。
 以上の本文中の話では説明しきれていないことがある。それをコメント欄で補足しておいた。( ※ 読者の疑問に答える形で。)
posted by 管理人 at 10:11| Comment(5) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
現在の制度でも、独立した事業体により(地熱などで)発電をすることは可能です。また、その事業体が独自に料金設定して顧客企業に販売することも、あるいは電力会社以外の小売事業者(PPS)に卸売りすることも可能です。現実に火力・バイオマスや一部の風力では全国規模でそのようなビジネスがなされていますし、その意味で管理人さんのおっしゃる条件はすでに整っていると思われます。

【参考】特定規模電気事業者連絡先一覧
http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/genjo/pps/pps_list.html

ただ、自力で販売するわけですから当然ながら需要と供給を時間単位で一致させなければなりません。出力が不安定な風力や出力一定の地熱でそれを満たすのは難しく、コストの高さもあってビジネスとしてはなかなか厄介なのが現状です。

昨今言われている「発送分離」は、電力会社の持つ既存の発電所を強制的に切り離して別事業体にしようという考え方です。これについては別途議論の余地があると思いますが、「地域別の送電会社とは関係のない、全国規模の発電業者を誕生させる」目的のために前提となる条件ではないと思います。
Posted by 深海 誠 at 2011年10月02日 12:49
> 自力で販売するわけですから当然ながら需要と供給を時間単位で一致させなければなりません。

 これを不要とするために、発送分離が必要となります。単一事業体では不可能である(非常に高コストになる)からです。

 発送分離があれば、東日本(50Hz)全体で帳尻を合わせればよく、ある地方の特定の一事業所だけで帳尻を合わせる必要はありません。

> 「地域別の送電会社とは関係のない、全国規模の発電業者を誕生させる」目的のために前提となる条件ではないと思います。

 現状のままでは、たとえ全国規模の事業体ができても、地域ごとに分割された形で扱われます。名と実が異なってしまう。

 ──

 発送分離は、私もちょっと考えが整理できていませんでしたが、おっしゃることを聞くうちに、だんだん理解できてきました。
 単に分離することが大切なのではなく、分離した上で、送電会社を大規模に統合することが重要なわけです。「全国規模」というよりは、「半・全国規模」で。(周波数帯ごとに二分する。)
 ここでは、送電網自体が重要なのではなく、電力の安定化システムが重要となります。その安定化システムができれば、自然エネルギーの購入が容易になります。一方、現状では、無理です。(他社からの電力を受け入れる安定化システムができていない。)
 この安定化システムのもとでは、他社の変動を吸収してくれる会社には、特別料金が支払われることになるでしょう。その結果、独立した火力発電事業体がかなり有利になるでしょう。
Posted by 管理人 at 2011年10月02日 13:25
早々にコメントありがとうございます。

あまり深入りしたくはないのですが、一応制度の事実関係だけ再度 (^^);

> 発送分離があれば、東日本(50Hz)全体で帳尻を合わせればよく、ある地方の特定の一事業所だけで帳尻を合わせる必要はありません。

現状でも、10年ほど前からの自由化により、【参考】に掲げた事業者の多くで広域的な運用がなされています。別の場所にある風力と火力を組み合わせたり、別の会社から市場で電気を買ったりして全体で需要との帳尻を合わせるなど。また、東西連系線の空きがあればそれを使って全国レベルで帳尻を合わせることも行われています。その意味で、制度的には現状でもほとんどのことができる状態です。

発送分離(≒全面自由化)については、大まかにいうと「スケールメリット・需給調整のしやすさ」と「大きすぎる事業体による非効率・市場支配力」の折り合いをどこでつけるかという、ちょっと性質の違う問題になるかと思います。前者が制度的・技術的な問題なのに対し、こちらは競争政策的な側面が強いとも言えます。

ま、しかし、自然エネルギーについては、一部の好地点を除いてこれらの市場ベースに乗るに至っていないのが現状でしょう。だからこそ市場と無関係に高値で買い取らせる法律がないと今は増えないということです。良し悪しは別として。

長期的に自然エネルギーを普及させるためには、やはり相当な技術革新と、そのような電力を好む顧客への地道なマーケティングが必要なように思います。
Posted by 深海 誠 at 2011年10月02日 14:49
上記コメントについては、次項の後半に 【 補説 】 として示しました。
Posted by 管理人 at 2011年10月02日 20:38
はじめまして。

>そのうち、開発可能なのは 425万kW。2050年には 1027万kW。

開発出来難くなっている土地での規制を緩めるのも重要ですね。
最近、そういう方向の話も出ましたが、上手くやって欲しい物です。

地熱も減衰などで不安定化する事も有る由で。
水素やメタン生成や、燃料電池製造と言う形での貯蔵・活用も、並行して考えても良いかもです。
Posted by ポポイ at 2012年04月06日 17:44
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