2011年09月23日

◆ 光速よりも速い粒子?

 光速よりも速い粒子が見つかったので、相対論が崩壊した……というふうな論議が起こっているが、さて。 ──
 
 光速よりも速い粒子が見つかったので、相対論が崩壊した……というふうな論議が起こっている。
 《 光より速いニュートリノ 国際研究で観測 相対論と矛盾 》
 名古屋大や宇都宮大、神戸大、東邦大などが参加する国際共同研究グループは23日、素粒子の一種ニュートリノが光よりも速い、との実験結果を得たことを発表した。アインシュタインの特殊相対性理論や、近年の研究成果と食い違う結果で、大きな波紋を投げかけそうだ。
 研究グループは、スイスにある欧州合同原子核研究機関(CERN)の加速器から打ち出したニュートリノが、約730キロ離れたイタリアのグランサッソ研究所の検出器に至るまでの時間を精密に測定した。
 2009年から今年までのデータを詳細に分析したところ、ニュートリノのうちミュー型と呼ばれるものが、光よりも約60ナノ秒(ナノは10億分の1)早く到達し、速度を計算すると光速(秒速約30万キロ)を 0.0025%上回っていた。
 アインシュタインの特殊相対性理論によると、質量を持つものは、光の速さを超えることができない。今回の実験結果が正しいとすると現代物理学では説明がつかず、世界の研究者に検証や解釈をしてもらう狙いで、研究グループは結果を公表した。
 今回の観測結果は、ニュートリノが「負の質量」を持ち、時間を逆行して未来から過去へ進んでいると解釈することもできる。
 研究グループに参加する名古屋大教養教育院の小松雅宏准教授(素粒子物理学)は「素粒子物理学以外にもインパクトが大きな結果なので、現時点でこの結果を研究グループで解釈しないことで合意している」と話している。
 同様の結果は、米国などの研究グループが2007年に発表していたが、精度が低く、確定的なことはいえなかったという。
 この報を受けて、「相対論はもう終わった」というふうな騒ぎが2ちゃんねるで起こっているが、さて。どう解釈するべきか? 

 ──

 私が最初に思ったのは、次のことだ。
 「光よりも速い速度」というのは、前にも観測されたことがある。
 (1) 粒子の集団の速度は、光速以上になることがある。光速で動く集団の一部が脱落すると、(「重心」が移動するようなものなので、)集団の最頻値はほんのちょっとだけ光速よりも速くなる。
 (2) 真空中でなく物質中でならば、衝撃波などが光よりも速くなることがある。(光は物質中では屈折率の分だけ遅くなるので。)
   → Wikipedia解説サイト

 ただ、その後の続報などを見ると、上記のような「関係者には当り前」のことは、すでに検討済みだと思える。となると、上記の説明では済まない現象なのかもしれない。

 ──

 そこで、上記とは別に、新たに考え直してみると……

 第1に、相対論の当否。
 相対論(特殊相対論)は、それ自体、間違っているとは思えない。間違っているはずがない。仮に間違っているとしても、「光よりも速い粒子が存在する」(タキオンが存在する)というだけのことであって、「ニュートリノが光よりも速い」ということはありえない。ニュートリノは質量がある(らしい)と、すでに判明しているからだ。
 この意味では、「相対論が間違っている」ということは、とうていありえそうにない。どこかで間違いが現れることは、絶対にないとは言えないが、今回のような形で、「質量のあるものが質量のないものよりも速い」ということは、ありえないことだ。
 仮にそんなことがあるとしたら、これまでの物理学も何もかもすべてが崩壊してしまう。「この世のすべてはただの夢」と思う方がマシだ。馬鹿馬鹿しい。
 というわけで、「相対論が間違っている」なんていう2ちゃんねらーの声に耳を傾ける必要はない。

 第2に、ニュートリノの性質だ。
 相対論というものは、まぎれもない形で真実性が信じられるが、ニュートリノというものは、そうではない。質量があるらしいことは判明しているが、質量がどれだけかも判明していない。質量があるらしいということさえ、近年になってようやく判明したことにすぎない。それも間接的にだ。
 つまり、ニュートリノというのは、現段階ではあまりよくわかっていないのである。そういうものが、たまたま「光よりも速い」というふうに見える現象が見つかったとしたら、それはどういう意味をもつか? 私だったら、こう思う。
 「ニュートリノの不明確さに、またしても新たな不明確さが加わった」
 比喩的に言うなら、ニュートリノというのは、お化けみたいなものなのだ。姿は見えるが、はっきりとつかめない。存在するかどうかも、はっきりとしていなかった。重さもよくわからない。形もよくわからない。そういうふうに、ろくにわかっていないものなのだ。そいつが今度は、「光速よりも速く移動する」というふうに見えた。ではそれは、本当にお化けが光速よりも速く移動したのか? それとも、別の現象だったのではないか? 
 というわけで、私としては、「ニュートリノという不明な粒子に、新たに未知の現象が見つかった」というぐらいに解釈しておく。もともとニュートリノなんてものは、よくわかっていないのだから、よくわかっていないものについて、その速度がどうのこうのと言うなんて、馬鹿馬鹿しい。まして、それをもって、「相対論が崩壊した」なんて考えるのは、物理学のセンスがなさ過ぎる。

 ──

 ちなみに、「光速以上の速度が出る」という現象は、仮説を考えることができる。次のように。

 超球理論では、量子は波として移動する。たとえば電子ならば、次のように移動する。

   T1:   )))
   T2:        )))
   T3:             )))


 ところが、ニュートリノの場合には、これにともなって衝撃波が前方に発生する。(物質中に限るが。)


   T1:   ))))
   T2:        ))) )
   T3:             )))  )


 そして、この衝撃波を込みにして測定すると、「ニュートリノ & 衝撃波」という集団は、光速よりもほんのちょっとだけ速いことになる。たとえば 0.0025% だけ速い。
 というわけで、今回のような結果が観測されることになる。

 ──

 ま、本当にそうかどうかはわからない。上のはあくまで仮説の一種だ。
 ただ、今回のように、「 0.0025% だけ速い」というような現象は、あまりにも差がわずかなので、「光速度不変の原理」を揺るがすような何かがあるのではなくて、非本質的な副次的効果がともなった、と考えた方がいい。
 つまり、見かけ上、光速よりもほんのちょっとだけ速い現象が見つかった、というだけのことだ。物理学が根本的に揺るがされるようなことが起こったとは思えない。
 今回の現象は、将来的には、「コロンブスの卵」みたいな形で、「なあんだ、そうだったのか」というふうに解決されるだろう。物理学の原理そのものは何ら揺るがされない、とわかるだろう。
 というわけで、今回の現象は、「ニュートリノの未知の現象」というふうに扱うだけで足りる。「相対論が覆された」なんて思う必要は、さらさらない。……がっかりさせてしまったようだが。 (^^);
   


 [ 付記1 ]
 なお、単純に言えば、「ニュートリノが光よりも速い」というのは、不思議でも何でもない。
 光は真空中では最も速い。しかし光は物質中では、屈折率の分だけ、速度が遅くなる。一方、ニュートリノは、物質中であっても関係なく、すり抜けてしまうらしい。とすれば、物質中では、ニュートリノの方が速くなっても、ちっとも不思議ではない。
 今回の測定結果では、もちろん、そのくらいのことは考慮してあるだろう。
 ただ、新聞報道では、「光よりも速いのは不思議だ」という報道が目立つので、「いや、ちっとも不思議ではない」というふうに、ここに注記しておく。
  
 [ 付記2 ]
 仮に、ニュートリノなんていう不明なものでなく、電子・中性子・陽子というような明確な粒子において、光速以上の現象が観測されたら、「相対論は崩壊した」と言っていいだろう。
 しかし、今回は、そういう現象が観測されたわけではない。あくまで「ニュートリノ」という、もともとよくわかっていないものにおいて、さらによくわからないことが追加されただけだ。



 [ 余談 ]
 この世には、ちょっと不思議に思える現象など、掃いて捨てるほどある。手品師の手品は、たいていがそうだ。今回の現象について頭をひねるくらいなら、手品の種明かしを考える方がよほどマシだ、と私は思う。
 たとえば、下記。



人間を一瞬にして、数百キロも離れたハワイへ瞬間移動させるマジック。

  
 
 他にも奇想天外な手品はいろいろとある。
   → マジックの動画
  


 【 追記 】
 次の仮説が考えられる。
 ニュートリノを発射するとき、AニュートリノとBニュートリノという二種類が発射される。Aニュートリノが出たあと、少し遅れて、Bニュートリノが出る。このうち、発射点で観測されるのは、Bニュートリノだけである。
 その後、AニュートリノとBニュートリノがともに進行していくが、途中で、AニュートリノがBニュートリノに変換される。到達点では、その全体がBニュートリノとして認識される。すると、「AニュートリノからBニュートリノに変換したもの」については、実際には光速で走っているだけだが、見かけ上、「Bニュートリノが光速以上で走った」と見える。

  BA
  ∩∧     →      ∩∩ 


 上の図で ∧ は観測されない。すると ∩ が光速以上で走ったように見える。
  


 【 関連サイト 】

 その後、原論文が公開された。ここだ。
  → http://static.arxiv.org/pdf/1109.4897.pdf (PDF 4.7MB )
 


 【 追記 】

 本項の続報があります。重要な話が記してあります。

  → 続・光速よりも速い粒子

 ここに書いてある推定に従えば、「光速よりも速い粒子がある」ということが、見かけ上は成立するとわかります。(見かけ上だけは。)
 
 ──

 後日、さらに新情報が出ました。今回の報告は、再実験の結果、否定されました。
  → 続々・光速よりも速い粒子
posted by 管理人 at 19:30| Comment(15) | 物理・天文 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
光速を越える一つの例として上げているものは,空気シャワーのことでしょうか?電子がその物質中の光速を越えることで起きる花火みたいに綺麗な現象です.高エネルギーの宇宙線として地球に降り立つことで観測されます.これ自体がグラビトンによるミニブラックホールを生成した結果としても捉えられています.

2007年以前に,ルビジウム光だかが光速を越えていた,という話はありました.

光速を越える物質を自由に創りだせれば嬉しいのですが,やはり難しいです.この話がカイラル対称性の破れを埋める話になれば面白いと想います.フェルミオンの質量獲得の手がかりになるかもしれません.
Posted by のりボン at 2011年09月24日 00:57
日経の報道

> 村山斉・東大数物連携宇宙研究機構長の話
> 現代の理論物理がよって立つアインシュタインの理論を覆す大変な結果で、本当ならタイムマシンも可能になる。
http://j.mp/nHfuql

 ──

 ボケ。
 ニュートリノが超光速だったとしても、電子や陽子が超光速になるわけではないのだから、タイムマシンになるわけがないでしょうが。
 物理学者がこのくらい馬鹿が多いとしたら、今回の測定も馬鹿の結果だった、ということになるかも。
Posted by 管理人 at 2011年09月24日 09:12
本日の読売新聞朝刊によると、真空中の光は
  速度 = 299792.5 km / s
 だが、今回のニュートリノは、
  速度 = 299799.9 km / s

 差は 7 km / s 以上ある。
 測定誤差は最大でも 1 km / s ぐらいだという。
Posted by 管理人 at 2011年09月24日 12:26
時間方向に一定の分布を持ったビームを発射し、到着地点で測定した分布を発射分布と突き合わせると、差異が見つかり、速度に換算すると、報告の内容になる。と仮定します。

発射ビームに量子エンタングルメントがあり、発射時間差が、測定時には無くなるため、分布差が発生する。

と考えると「光速より早い」が説明可能かもです。
Posted by 安藤和浩 at 2011年09月24日 14:33
次の疑問があった。

> 「光よりも速い物体が存在すること」が「なぜタイムマシーンの存在を可能にする」のか、自分には、よくわからない。
http://blog.logcom.jp/?eid=864982

 ──

 ごもっとも。
 実を言うと、相対論の主張は、次のことだ。
 「光よりも速い物体が存在しないこと」が「タイムマシーンの存在を不可能にする」

 そして、
 「光よりも速い物体が存在すること」が「タイムマシーンの存在を可能にする」
 としたら、それは,相対論が正しいことを前提とした主張になる。
 つまりそこでは、
 「相対論が正しくなければ、相対論によってタイムマシーンが可能となる」
 というわけだから、自己否定文を含むことになる。次の発言と同様だ。
 「私の言っていることが正しくなければ、タイムマシーンが存在することを保証します」
 この人の発言が正しくても正しくなくても、タイムマシーンが存在することは保証されない。
 ゆえに、自己否定文のパラドックスゆえに、タイムマシーンが存在することは成立しない。
 要するに、今回の現象が正しかったとしても、タイムマシーンが存在することは結論されない。これは物理学からではなく論理学からの結論だ。(物理学者は論理がわかっていない、ということだ。シュレーディンガーの猫に似ている。)
Posted by 管理人 at 2011年09月24日 14:52
最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2011年09月24日 15:44
ほんと、東大の村山さんのコメントはぼけてますよね。

でも、以下のコメントには説得力ありますね。

鈴木氏は、昭和62年に小柴昌俊氏がニュートリノを検出した実験で、超新星爆発で出た光とニュートリノがほぼ同時に観測されたことを指摘。「両者の速度に今回のような違いがあるとすると、ニュートリノは光よりも1年は早く地球に到達していなければおかしいことになる」と語る。
http://sankei.jp.msn.com/science/news/110924/scn11092400300000-n2.htm
Posted by ひゃま at 2011年09月24日 16:56
実験における測定方法。
  → http://journal.mycom.co.jp/articles/2011/09/25/neutrino/

 分布の波形を比べて、差が最小化するようにしているだけで、直接的に速度を測定したわけではない。
 本項最後の  【 追記 】 に記した仮説のようなことが成立している可能性は十分にある。
Posted by 管理人 at 2011年09月26日 12:12
原論文の入手先を最後に記した。
 ここ。
  → http://static.arxiv.org/pdf/1109.4897.pdf
Posted by 管理人 at 2011年09月28日 00:12
原論分読みました。
計測システムとして不確定な怪しさがありますね

The two time-stamps are related by TOFc, the expected time of flight assuming the speed of light [13].

1、マスタークロックが2箇所である。
2、TOFc実測でない。

今回の実験は光速に比べての主旨なので、1か2かどちらかが完全に信頼できないといけない。
違う主旨で構成された計測システムですね。
Posted by ひゃま at 2011年09月28日 04:22
>そして、この衝撃波を込みにして測定すると、「ニュートリノ & 衝撃波」という集団は、光速よりもほんのちょっとだけ速いことになる。たとえば 0.0025% だけ速い。

相対論は込みの速度(光速近くの飛行体が前方に光を放射しても光速)が光速以下、としていたように思うのですが。。
Posted by 素人ですが一カ所だけ気になりまして at 2011年10月17日 14:26
目の付けどころがいいですね。

ただ、私が述べた仮説は、「光速よりも速い物体がある」ということではありません。「そうではないのに、(見かけ上は)そうであるように見える現象がある」ということです。

比喩的に言うと、人間が瞬間移動する現象があるということではなくて、人間が瞬間移動するように見せかける手品がある、ということです。
Posted by 管理人 at 2011年10月17日 19:17
超光速素粒子ニュートリノ、27日から検証実験 相対論の行方、世界が注目
産経新聞 10月23日(日)1時29分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111023-00000505-san-soci
こうした指摘を受け研究チームは今月27日から、再びニュートリノを発射する追加実験を行う。陽子の通過時刻だけでなく、新たな検出器を設置して発射直後のニュートリノの通過時刻もとらえ、時間計測の正しさを立証する計画だ。実験は約10日間の予定で、結果を論文にまとめる

これなら、検出から検出なので+衝撃波の問題はでず、光速以下が観測されますか?
Posted by ひゃま at 2011年10月23日 16:45
衝撃波の仮説は、ただの仮説の例です。私自身、これを信用していません。「何らかの仮説はありうるだろう」という以上のことは、何も言えません。
Posted by 管理人 at 2011年10月23日 16:47
本項の初めのあたりで、仮説 (1)(2) を示しましたが、そのうちの (2) については、続報に示した新たな実験で否定されました。
 詳しくは下記。

 → http://sankei.jp.msn.com/science/news/111119/scn11111907330002-n1.htm

 ※ 測定対象の時間の幅を短くすることで、(1) の仮説は否定されました。
Posted by 管理人 at 2011年11月19日 12:35
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