2011年09月22日

◆ グリーンフェライト(池田直)

 「光吸収率がシリコン製の 100倍以上の太陽電池」というのが、またしても報道された。不思議な報道なので、とりあえずまとめてみる。 ──

 今回の報道は、産経だけで報道された。

 《 光吸収100倍の太陽電池を開発 岡山大、生活排熱で発電も 》

 光の吸収率が従来のシリコン製の100倍以上の太陽電池を、岡山大大学院自然科学研究科の池田直教授のチームが「グリーンフェライト(GF)」と名付けた酸化鉄化合物を使って開発している。
 この太陽電池はこれまで吸収できなかった赤外線も発電に利用できる可能性がある。池田教授は「赤外線は熱を持つものから出ている。太陽光以外に、火を扱う台所の天井など家中、街中の排熱でも発電できるかも」としており、2013年の実用化を目指す。
 GFは粉末状で、土台となる金属に薄く塗る。1キロワット発電する電池を作るコストは約千円が目標で、約100万円かかる従来のシリコン製に比べて大幅に安い。パネル状になっている従来型では難しい曲げ伸ばしができ、煙突や電柱に巻き付けるなど設置場所は幅広い。
( → 産経新聞 2011-09-19
 ──

 だが、「光吸収率がシリコン製の 100倍以上の太陽電池」というのは、そもそも意味を持たない。というのは、太陽光発電は、光の「吸収率」ではなくて、「変換効率」が問題だからだ。吸収率なんて、どうでもいい。単に「真っ黒だ」という意味ぐらいしかない。
 しかも、従来のシリコン型の太陽電池は、たいていが真っ黒である。
   → Google 画像検索
 光の吸収度は、90%ぐらいはあるだろう。それが 100%になったとしても、1.1倍程度にしかならない。100倍というのは、原理的にありえない。

 ──

 これと似たものは、前にも報道されたことがある。「夜にも発電できる太陽電池」という触れ込みだ。
  → 岡山大学理学部にあるアーカイブ

 情報を見ると、「赤外線の利用効率が高い」ということなので、赤外線に限っては 100倍になるのかもしれない。しかしそんなことは、たいして意味がない。
 また、「夜間に発電できる」というのも、眉唾だろう。(いかに赤外線を利用できるとしても。)

 ──
 
 どうも、あれもこれも調べると、にわかには信じがたい。冒頭の記事では、
 「1キロワット発電する電池を作るコストは約千円」
 ということだが、それが事実なら、家庭の発電をたったの2000円ぐらいの初期投資ですべてまかなえることになる。以後は永久無料。……まさか。そんなことになったらエネルギー革命だ。
 記事によれば、この価格は、あくまで「目標」ということだから、実現の見込みは全然立っていないのかもしれない。ラグビーで日本代表が「2勝を目標」と語ったあとで、トンガに大惨敗したようなものか。「目標はあまりに高く、現実はあまりに低く」ということか。

 記事によれば、「 2013年の実用化を目指す」とのことだが、これもあまりに楽観した目標かもしれない。「めざすけれど、できませんでした」でおしまいになるだけかも。というか、「高い目標をめざしているけれど、現実には何もできていません」ということかも。

 この件については、トンデモマニアが登場した方がよさそうだ。(まともな新技術を紹介する)私の出る幕じゃないですね。

 ( ※ 仮に 2013年に、「1キロワット発電する電池を作るコストは約千円」というのが実現したら、私はシャッポを脱ぎます。とうていありえない、と思いますけどね。)
 ( ※ なお、仮にそれが実現したら、ノーベル賞は間違いなしです。21世紀最大の発明になるでしょう。人類の歴史を書き換える大発明だ。常温超伝導よりもずっとすごい。人類史上最大の天才的業績と言ってもいいぐらいだ。)
   


 【 関連サイト 】

 (1)
  今世紀最大の詐欺師?



 (2)
  ドラえもんの動力が太陽光へ? (虚構新聞社)
posted by 管理人 at 19:33| Comment(8) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ベネッセが開発資金として 2000万円を提供するそうだ。
 → http://newsofsolarcell.blog.shinobi.jp/Entry/3482/

 ──

 どのくらい有望か? という質問には、上記の数字で答えることができる。「開発費を 2000万円かけるぐらいには有望だ」と。
 それに比べて、太陽光発電やバイオ燃料には、たぶん(世界総額で)兆円単位の開発資金が投じられているはずだ。

 ま、上記の記事によると、1cm角程度の試作品を将来的に作る予定だという。いまだに試作品さえできていないのに、「素晴らしい技術です」と吹聴して、2000万円も集めるのだから、その口車には、まったく脱帽だ。(普通は試作品ぐらいは作ってから、金を集めるものだが。)
Posted by 管理人 at 2011年10月02日 21:26
記事に載っている写真が試作品じゃないの?
Posted by ほえー at 2011年10月29日 05:19
記事のは目標数値の出ていない試作品。そんなものは何の意味もない。ただのオモチャ。
 私が述べているのは、目標数値の出ている試作品。つまり非量産品。プロトタイプ。
Posted by 管理人 at 2011年10月29日 09:14
素直に勘違いしてたと言えばいいのに(笑)
ベネッセが資金を提供した段階では、まだ1cm角程度の試作品も出来てなかったこと自体は確かなんだから。
それはそうと、光の吸収率がシリコン系の100倍の製品は、すでに普通に出回ってますよ。
CIS(CIGS)型がそう。調べてみてください。
Posted by あじゃぱ at 2011年10月30日 00:39
吸収率じゃなくて、吸収係数が 100倍でしょ。全然別のことです。吸収係数が 100倍というのは、「厚さが 100分の1で済む(かもしれない)」というだけのことで、効率とは関係ありません。コストが安くなる可能性があるだけ。

 こんな用語の違いも区別できないとすると、非常に怪しい。
Posted by 管理人 at 2011年10月30日 00:50
いやだからグリーンフェライトのほうも、実は吸収係数がシリコン系の100倍という話に過ぎない、という可能性が高いのではと指摘してるだけなんですが。
Posted by あじゃ at 2011年10月30日 09:11
2013年も終わろうとしています。
やっぱり、の経過だったようですね。
Posted by 余人 at 2013年12月25日 18:06
たしかに太陽電池なら変換効率や発電コストで比較するべき。糞の役にも立たない係数やら効率が高かろうが太陽電池としては開発の意義はない。今の太陽光発電の変換効率が20%程度だから5倍が限度で二倍にするだけでも世界が変わる。磁性体としての基礎研究としてはすばらしいし大切だが全く同じ報道が2013年末にも出てる。報道してる方が問題なのかもだが夢の太陽光発電がすぐにでも出来るような報道に違和感を覚える。言い方は悪いが開発の目処が全くないのに上手い言い方で資金を集めるだけの詐欺に見えてくる。この技術で将来的には夢のような太陽光発電が出来る可能性は否定できないけど、身の丈に合った開発目標を設定すべきだ
Posted by 2014になったね at 2014年01月30日 23:37
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ