今回の報道は、産経だけで報道された。
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《 光吸収100倍の太陽電池を開発 岡山大、生活排熱で発電も 》
光の吸収率が従来のシリコン製の100倍以上の太陽電池を、岡山大大学院自然科学研究科の池田直教授のチームが「グリーンフェライト(GF)」と名付けた酸化鉄化合物を使って開発している。
この太陽電池はこれまで吸収できなかった赤外線も発電に利用できる可能性がある。池田教授は「赤外線は熱を持つものから出ている。太陽光以外に、火を扱う台所の天井など家中、街中の排熱でも発電できるかも」としており、2013年の実用化を目指す。
GFは粉末状で、土台となる金属に薄く塗る。1キロワット発電する電池を作るコストは約千円が目標で、約100万円かかる従来のシリコン製に比べて大幅に安い。パネル状になっている従来型では難しい曲げ伸ばしができ、煙突や電柱に巻き付けるなど設置場所は幅広い。
( → 産経新聞 2011-09-19 )
だが、「光吸収率がシリコン製の 100倍以上の太陽電池」というのは、そもそも意味を持たない。というのは、太陽光発電は、光の「吸収率」ではなくて、「変換効率」が問題だからだ。吸収率なんて、どうでもいい。単に「真っ黒だ」という意味ぐらいしかない。
しかも、従来のシリコン型の太陽電池は、たいていが真っ黒である。
→ Google 画像検索
光の吸収度は、90%ぐらいはあるだろう。それが 100%になったとしても、1.1倍程度にしかならない。100倍というのは、原理的にありえない。
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これと似たものは、前にも報道されたことがある。「夜にも発電できる太陽電池」という触れ込みだ。
→ 岡山大学理学部にあるアーカイブ
情報を見ると、「赤外線の利用効率が高い」ということなので、赤外線に限っては 100倍になるのかもしれない。しかしそんなことは、たいして意味がない。
また、「夜間に発電できる」というのも、眉唾だろう。(いかに赤外線を利用できるとしても。)
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どうも、あれもこれも調べると、にわかには信じがたい。冒頭の記事では、
「1キロワット発電する電池を作るコストは約千円」
ということだが、それが事実なら、家庭の発電をたったの2000円ぐらいの初期投資ですべてまかなえることになる。以後は永久無料。……まさか。そんなことになったらエネルギー革命だ。
記事によれば、この価格は、あくまで「目標」ということだから、実現の見込みは全然立っていないのかもしれない。ラグビーで日本代表が「2勝を目標」と語ったあとで、トンガに大惨敗したようなものか。「目標はあまりに高く、現実はあまりに低く」ということか。
記事によれば、「 2013年の実用化を目指す」とのことだが、これもあまりに楽観した目標かもしれない。「めざすけれど、できませんでした」でおしまいになるだけかも。というか、「高い目標をめざしているけれど、現実には何もできていません」ということかも。
この件については、トンデモマニアが登場した方がよさそうだ。(まともな新技術を紹介する)私の出る幕じゃないですね。
( ※ 仮に 2013年に、「1キロワット発電する電池を作るコストは約千円」というのが実現したら、私はシャッポを脱ぎます。とうていありえない、と思いますけどね。)
( ※ なお、仮にそれが実現したら、ノーベル賞は間違いなしです。21世紀最大の発明になるでしょう。人類の歴史を書き換える大発明だ。常温超伝導よりもずっとすごい。人類史上最大の天才的業績と言ってもいいぐらいだ。)
【 関連サイト 】
(1)
今世紀最大の詐欺師?
(2)
ドラえもんの動力が太陽光へ? (虚構新聞社)
→ http://newsofsolarcell.blog.shinobi.jp/Entry/3482/
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どのくらい有望か? という質問には、上記の数字で答えることができる。「開発費を 2000万円かけるぐらいには有望だ」と。
それに比べて、太陽光発電やバイオ燃料には、たぶん(世界総額で)兆円単位の開発資金が投じられているはずだ。
ま、上記の記事によると、1cm角程度の試作品を将来的に作る予定だという。いまだに試作品さえできていないのに、「素晴らしい技術です」と吹聴して、2000万円も集めるのだから、その口車には、まったく脱帽だ。(普通は試作品ぐらいは作ってから、金を集めるものだが。)
私が述べているのは、目標数値の出ている試作品。つまり非量産品。プロトタイプ。
ベネッセが資金を提供した段階では、まだ1cm角程度の試作品も出来てなかったこと自体は確かなんだから。
それはそうと、光の吸収率がシリコン系の100倍の製品は、すでに普通に出回ってますよ。
CIS(CIGS)型がそう。調べてみてください。
こんな用語の違いも区別できないとすると、非常に怪しい。
やっぱり、の経過だったようですね。