これをもう少し厳密にして、「太陽の変動により、地球への宇宙線が変動する」というふうに述べた説がある。(スベンスマルク効果) ──
地球温暖化の原因は何か?
「原因は炭酸ガス(温暖化ガス)だ」という見解がある。これが世間では優勢だ。かつては京都議定書などが話題になった。
「原因は太陽の変動だ」という見解もある。これについては、私は前に肯定的な評価を下した。「炭酸ガス説」なんかよりもずっと有力だと見なした。前出項目から転載しよう。
地球の内部に理由がないとすれば、地球の外部に理由があるはずだ。しかも、地球全体に影響するほどの力をもつものが。本当は何が原因であるか、と言えば、黒点ではなく、太陽の変動だ。
その視点から見ると、原因となるのはただ一つ、太陽だけである。太陽が地球に降りそそぐ太陽エネルギーは、人類が発生させる全エネルギーを圧倒的に上回る。
ただ、ここで注意するべきことがある。「太陽の変動」というのは、なかなか目に見える形では、はっきりとは現れないのだ。というのは、太陽はいつも同じ光球であるからだ。地球や火星のように、外から見たときの姿が周期的に変動するわけでもなく、いつも同様である。だから、何が起こっているのか、わかりにくい。
ただし、例外的に、「太陽の黒点」だけは明白に観測できる。そこで、「太陽の黒点が変動すると、地球の環境も変動する」という仮説が生じる。
とはいえ、黒点そのものが地球に影響するわけではない。むしろ、次のような関係がある。
太陽の変動 → 地球の変動
↓
黒点の変動
「太陽の変動」が、「地球の変動」と「黒点の変動」の双方をもたらす。ただし、「太陽の変動」そのものは観測されにくく、「黒点の変動」は観測されやすい。そこで、
「太陽の黒点が変動すると、地球の環境も変動する」
という仮説が生じるわけだ。これが「太陽黒点説」だ。ここでは、名称上では「黒点が原因だ」というふうに示されているが、本当は何が原因であるかを、間違えずに理解しておこう。
では、太陽の変動が、どうして地球の温暖化をもたらすのか? それについては、上記項目では言及しなかった。
──
さて。最近になって、「スベンスマルク効果」というものが話題になっている。これは、次の趣旨だ。
「太陽の磁場が強くなる(黒点活動で観測される)と、地球に届く宇宙線の量が減り、地球の低層雲が減る。すると雲による太陽光の吸収が減って、地球の温度は上昇する」
このような形で宇宙線の量と、低層雲の量の変化を、グラフに取ると、きれいに相関関係が見られるそうだ。
→ 池田信夫 blog : 地球温暖化と宇宙線
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これはなかなか興味深い説だ。実は、私も似たことを述べたことがある。
第1に、温暖化の根源的な理由は、太陽の変動だろう、と主張した。
→ 上記の前出項目(太陽黒点説)
第2に、温暖化の直接的な理由は、雲の量の変動だろう、と主張した。
→ 太陽と雲 (気温・温暖化)
この二つの見解に、スベンスマルク効果は合致する。その意味で、私としてはこれの説をかなり有力な説だと見なす。
──
あらましは、上記の通りだ。もっと詳しい情報を知りたければ、下記の本を読むといいだろう。
気候変動とエネルギー問題
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ただ、実を言うと、スベンスマルク効果というのは、目新しい学説ではない。十年以上前から唱えられていた学説だ。数年前には、否定的な評価が出たこともある。だから私もあまり重視してこなかった。
しかし、地球温暖化の「炭酸ガス説」のいかがわしさが広く知られるようになるにつれ、スベンスマルク効果も再評価されてるようになってきたようだ。そこで上記のような本が話題を呼ぶのだろう。
【 関連項目 】
本サイトの、いくらか関連した話題。
→ 太陽黒点説
→ 太陽と雲 (気温・温暖化)
→ 太陽原因説(地球温暖化の)
【 関連サイト 】
《 太陽黒点説のページ 》
→ 地球温暖化は太陽の活動周期によるもの = NASA
→ 米陸軍の主任科学者:地球温暖化の原因は「太陽」
→ 太陽活動が地球温暖化の原因
《 スベンスマルク効果のページ 》
→ Wikipedia :スベンスマルク効果
→ Wikipedia 英語版 から引用:
His conclusions have been controversial as the prevailing scientific opinion on climate change considers solar activity unlikely to be a major contributor to recent warming, though it is thought to be the primary driver of many earlier changes in climate.
→ 「地球温暖化の原因は太陽の活動」説を否定する新論文
→ スベンスマルク効が正解と考えられるこれだけある根拠
→ CERN (Probably) Confirms Svensmark Cosmic Ray Theory《 重要 》
→ A New Theory of Climate Change
→ 仏文ページ
→ Center for Sun-Climate Research
[ 余談 ]
オマケの話。
上記で紹介した科学雑誌ニュートン(2011-10)には、上で示した話のほかに、面白い話がたくさんある。紹介しておこう。
(1) 犬と猫は同じ祖先から進化した。猫はずっと猫だったが、犬は大幅に進化した。また、犬は小型のものと大型のものが極端に差があって、とうてい同じ種のものとは思えないほどの形態差があるが、このような大きな形態差が種内に見られるのは、犬だけだそうだ。
(2) 水生動物の足がヒレになった進化の過程。
(3) 古代ギリシアの素晴らしい彫刻。
(4) スペースシャトル30年の軌跡
(5)「高レベル放射性廃棄物」の有害性は減らせるか?
(6)「科学的に正しい」とはどういう意味か? 統計の効果は?
というふうな話題だが、本サイトで取り上げる話題と大幅にかぶっている。本サイトの話を読んで、興味深いと感じる人は、上記のニュートンを買って読むといいだろう。
ニュートンという雑誌は、たいていはちょっと面白い話題が一つか二つある、という程度出あることが多いのだが、今回に限っては、すごく面白い話題がてんこ盛りだ。購入して、保存しておく価値がある。
── 引用開始 ──
CERNにいる8000人の科学者たちは、仮想のヒッグス粒子を発見できないかもしれないが、気候モデルの見直しを促して、環境物理学に重要な貢献を果たした。
CLOUD(Cosmics Leaving OUtdoor Droplets)と名付けられた実験装置(宇宙と雲のつながりを調査する新しい実験)の初の結果が、25日に学術雑誌『ネイチャー』で発表された。宇宙線はイオン誘発核生成を通じて雲の形成を促進していることが確認されたのだ。
水蒸気と雲は地球の気温を決定する上で大きな役割を果たしているため、この論文は気候科学にとって重要な意義がある。全球雲量のわずかな変化は、比較的大きな温度変化をもたらす可能性があるのだ。
当然のことながら、気候変動に対する「人為的」アプローチよりも、「太陽を中心として考えた」アプローチを支持するものであるため、政治的に微妙なテーマである。太陽が上層大気に到達して、宇宙線量を調節するのに大きな役割を果たしている、と考える。
── 引用終了 ──
なお、出典は、 → http://seetell.jp/18595 (2011年08月26日)
文中にある「水蒸気と雲は地球の気温を決定する上で大きな役割を果たしている」という話については、私もずっと前に述べたことがある。
→ http://openblog.meblog.biz/article/1763415.html
「太陽光発電が近い将来に普及するのであれば、化石エネルギーの利用はなくなり、炭酸ガスの排出もなくなる。だから、『地球温暖化の抑止のために炭酸ガスを抑制せよ』という主張は論拠をなくす。いちいち抑制しなくても、自動的に抑制されていくからだ」(要旨)
→ http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20111113/1321198912 (山形浩生)
──
なるほど! 目からウロコだ。感心した。
細かいことを言えば、電力以外にも自動車などの利用するエネルギーもあるが、これも電気自動車や燃料電池車に移行するので、長期的には問題は消える。そして、「地球温暖化の抑止」は、長期的な問題(100年後?)だから、結局のところ、何もしなくていいわけだ。炭酸ガスが増える速度よりは、太陽光発電の開発の技術スピードの方がずっと速いからだ。
というわけで、少なくとも、温暖化阻止のために炭酸ガスを削減することを、今すぐに推進する必要はない、と言える。あと十年ぐらいは、太陽光発電の技術開発が予定通りに進むかどうかを見ればいい。そのあとどうするかは、十年後に決めればいい。今のうちに20年後や30年後の方針を決める必要はまったくない、と言える。(そんな先のことを言えば鬼が笑う。)
→ http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/f2e2996ab0cdf8fe5e7f49c116e8f559
このたび、スベンスマルクさんが来日し、横浜で講演されることになりました。ご関心があれば、平日の昼間ではありますが、ぜひ、足をお運びください。
「気候変動の原因は何か」横浜シンポジウム
【日時】2014年3月31日(月)10時30分開場、11時00分〜18時10分
【講師・パネリスト】ヘンリク・スベンスマルクさん(デンマーク国立宇宙センター、太陽・気候研究所所長)、桜井邦朋さん(早稲田大学理工学部総合研究センター招聘研究員、神奈川大学名誉教授)、丸山茂徳さん(東京工業大学大学
院理工学研究科教授)、宮原ひろ子さん(武蔵野美術大学専任講師)、室田武(同志社大学経済学部教授)(逐次通訳あり)
【会場】「横浜市開港記念会館」講堂
〒231-0005 横浜市中区本町1丁目6番地
【アクセス】みなとみらい線「日本大通り駅」1番出口、横浜市営地下鉄線「関内駅」1番出口、JR京浜東北線・
根岸線「関内駅」南口
【参加費】一般:2500円、学生:1500円
(参加費が高めとなっておりますが、海外ゲストの招聘費用、通訳費用などがかさみますので、御理解ください。)
【主催】「気候変動の原因は何か 横浜シンポジウム」実行委員会
室田武(実行委員長・同志社大学経済学部教授)、齋藤武光(事務局長)、和田喜彦(企画委員・同志社大学経済学部教授)、滝澤寛(企画協力・京都大学附属花山天文台)
【お問い合せ先】齋藤武光:sai-eye@alpha.ocn.ne.jp 携帯:090-9137-2437,
電話:03-3739-1368【予約不要】