蓄電池によって供給を安定させる必要はない。 [ 発想の転換!] ──
本項ではかなり重要なことを述べる。世界的にエネルギー政策を根本的に転換させるような、重要なことだ。
現状では、太陽光発電や風力発電の電力の不安定さを解決するために、次の方針が取られる。
・ 蓄電池
・ 既存の発電所(火力・水力)
これらはいずれも、供給側の調整だ。
一方、需要側の調整も考えられる。次のような。
・ 工場の停止(需給調整契約)
・ 家庭の強制的な電源 OFF (スマートメーター)
このような需要側の調整は、弊害があまりにも大きい。必要な電力が使えなくなってしまうからだ。
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そこで、本項では新たなものを提案しよう。それは「スマート家電」だ。これは需要側の調整ではあるが、IT技術を使うところが新しい。
似たものとしては、前に、次のものを提案した。
→ スマートエアコン
これは、次のようなものだった。
「電力需要が急上昇したときに、エアコンの電力を自動的に OFF にしてしまう」
こういうのは、かなり乱暴な(横暴な)ものである。ただ、夏のピーク時の大規模停電を回避するという目的であったから、かなり乱暴なものを提案した。
一方、本項で提案するものは、ちょっと毛色が違う。上記のを「旧スマートエアコン」と呼ぶなら、本項のは「新スマートエアコン」と呼ぶべきものだ。その特徴は、次のことにある。
「太陽光発電や風力発電で、電力の供給量が急激に変動したら、その急激を吸収するように、エアコンの側がインバーター回路で調整する」
具体的には、次のようにする。
「エアコンの側で常に(電源の)電圧を監視しておく。電圧が急激に低下した状況を検知したら、供給不足になっていると判断して、エアコンの側が自動的に電力消費を落とす。その後、数分して、電圧が元に戻ったら、電力消費をふたたび開始する」
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ここでは、スマートエアコンというものを提案したが、同様に、スマート冷蔵庫も提案する。総称して、スマート家電と称する。
スマート家電の役割は、こうだ。
・ 一時的に電力供給が急変動したら、それを需要側で吸収する。
・ 数分間を経れば、水力発電と火力発電の側で、急変動を補填できる。
その時点で、スマート家電の果たした役割を、水力発電と火力発電に委ねる。
・ スマート家電が機能を回復するときには、なだらかな増加とする。
以上によって、供給側の急激な変動を、需要の側で吸収する。
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具体的なイメージを示そう。まず、太陽光発電の発電量は、どの程度か? NTTファシリティーズ の資料(PDF)によると、次のデータがある。
晴れの日には変動が少ない。

だが、曇りの日には変動がきわめて大きい。

曇りの日には(晴れたり曇ったりするので)、これほどにも発電量の変動が大きい。各地において変動が相殺されるとしても、ときどきは系統電力に対して大きな変動をもたらすことがあるだろう。
このような変動に対して、「蓄電池で吸収しよう」というのが、普通の発想だ。しかしながら、蓄電池で吸収するとしたら、太陽光発電の発電量全体と同じぐらいの蓄電池が必要となる。それは途方もない量だ。
しかも、それだけの変動が発生するのは、ごく稀にすぎない。たとえば全国の大半の太陽光発電がそろって急激に発電量を落とす、というふうな。そんなことはめったにあるまい。なのに、そのときのために、莫大な蓄電池を用意するというのは、あまりにも無駄である。
蓄電池によるという案は、現実的には不可能も同然だ。
一方、スマート家電があれば、何も問題はない。電圧低下を検知したら、その時点で即時的に、電力消費を落とすことができる。
これが、産業用の「シリコン製造装置」や「自動車製造装置」などだったら、急激に電力消費を落とすことはできない。しかしながら、家庭用のエアコンや冷蔵庫は、急激に電力消費を下げることが可能だ。なぜなら、5分間ぐらい電力を切っても、何も問題はないからだ。また、今のエアコンや冷蔵庫は、インバーター回路を組み込んでいるからだ。
→ エアコン インバーター - Google 検索
→ 冷蔵庫 インバーター - Google 検索
もちろん、インバーター式でない安価な低級品もあるが、それは今は問題とならない。私が提案するのは、次のようなものだ。
・ インバーター式の高級な家電がすでにある。
・ それにさらにスマート回路を組み込んで、スマート家電とする。
・ このようなスマート家電に対して、多額の補助金を出す。
・ 補助金の原資は、電気料金(の値上げ)。
要するに、同じように金を使うにしても、電力会社( or 太陽光発電事業者)が莫大な金を掛けて蓄電池を用意するかわりに、電力会社が家庭向けにスマート家電を普及させるわけだ。
平均的に言えば、次のようになるだろう。
・ 蓄電池の場合 …………… 1家庭あたり 200万円のコスト
・ スマート家電の場合 …… 1家庭あたり 2万円のコスト
2万円を 10年で割れば、毎年 2000円。1カ月 200円程度で済む。技術が進歩すれば、さらに低額になるだろう。これは十分に負担可能な額だ。
一方、蓄電池を導入するとしたら、その 100倍のコストがかかる。それはとうてい無理だろう。
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結論。
太陽光発電や風力発電の電力供給は、不安定だ。この問題を解決するために、現状では、高価な蓄電池を開発しようとしている。
しかし、発想の転換をするといい。供給側で調整するのでなく、需要側で調整すればいい。
しかも、スマートメーターのように強制的に電源を遮断するのではなく、IT技術によって各種機器の側が自発的に電力消費を低減すればいい。
その技術の基本となるのは、インバーターだ。これと、電圧の変動を検知する機器を組み合わせることで、スマート家電を導入できる。
莫大な金を掛けて巨大な蓄電池を整備するよりは、IT技術を使って需要の側を調整するべきなのだ。その方が圧倒的に少ないコストで済む。大事なのは、発想の転換だ。
( ※ 蓄電池の側で新技術を開発する必要はない。たとえ開発しても、その新技術を使う場面はない。コストが多大になりすぎるからだ。)
[ 付記1 ]
本項では、「電力の不安定さの解消」を目的とした。そのために、電圧の変動を検知する回路を使った。
一方、「総需要の調整」(大停電の回避)のためにも、同じシステムを使うことができる。
たとえば、夏季の猛暑日に電力の総需要が増えて、電力需要が逼迫したとしよう。その場合は、電力会社の側が、意図的に電圧を下げればいい。(人為的な電圧低下。)
このことをスマート家電の側が検知すれば、こう判断する。
「いつもは 110ボルトなのに、今日は午後2時から95ボルトになっているな。どうやら電力の需要が増えているようだ。それじゃちょっと遠慮して、エアコンの利きを弱めよう。当家のユーザーは、気温を 24度に設定しているが、今日は電力が足りないのだから、利きを弱めて、26度ぐらいにしておこう」
こういうふうにスマート家電の側が判断して、自動調整する。かくて、総需要についても、自動調整が可能となる。
[ 付記2 ]
ついでだが、スマートメーターというのは、これほど賢くはない。勝手にエアコンを切ったり冷蔵庫を切ったりするだけだ。メーターの側は、電源の ON・OFF を調整するだけで、利きについて強弱を調整できないからだ。
スマートメーターというのは、頭が悪い(= not smart )。スマートメーターというのは、あまりにも古臭い発想の機器であり、ほとんど前世紀の遺物である。それはITとは何の関係もない、一種のサーモスタットみたいなものだ。 (^^);
こんなふうに頭の悪いスマートメーターのかわりに、頭のいいスマート家電を導入するべし、というのが、本項の提案だ。
人工知能を搭載したスマート家電ならば、力ずくの蓄電池なんかを使わなくても、知恵を使うだけで電力の安定化が可能なのだ。
[ 付記3 ]
「スマート家電」という用語は、従来から使われている。しかしその目的は、[ 付記2 ]のことだ。つまり、電力の逼迫時の需給調整だ。
しかし本項で主眼にしているのは、[ 付記1 ]の方である。つまり、太陽光発電・風力発電の不安定さを解消することだ。
当然だが、供給が過剰気味のときには電力消費を増やす、というような対応も考えていい。(たとえば冷凍庫を3分間だけ強く稼働させる。そのことで電力網を安定させる。)
このようなシステムは、[ 付記2 ]のようなシステムよりも、かなり高度な制御を必要とする。電力会社の側と、家電メーカーの側が、協力して製品を開発する必要もある。
機械がスマートになるためには、(技術開発する)人間もまたスマートにならなくてはならない。……その点を啓蒙するのが、本項の意義だ。
本項で開発を促しているのは、従来にないまったく新しいタイプの電力制御だ。(自動車で言えば、ガソリン車にかわるハイブリッド車みたいな、新世代の家電だ。)……関係者の努力が望まれる。
[ 余談 ]
家電メーカーに勤めている人は、早速、スマート家電の開発を急ぎましょう。また、( 東芝 みたいに)スマートメーターの開発をしている会社は、さっそくスマートメーターの開発をやめましょう。
ガラパゴスという時代遅れの電子出版をやったあげく、生産中止にしたシャープを「他山の石」とするといい。その二番煎じにならないようにしましょう。
【 関連項目 】
蓄電池の開発については、下記項目で言及した。
→ 蓄電池よりも良い案
→ 家庭用の蓄電池
→ 太陽光に蓄電池は不要
(2011年9月15日21時08分 読売新聞)
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韓国で15日午後3時半ごろから、ソウルを中心に全国規模で大規模な停電が発生、停止したエレベーターに人が閉じこめられるなど、混乱が広がった。
韓国電力公社によると、午後8時前に完全復旧するまで、全国の事業所と家庭162万か所が影響を受けた。
残暑による冷房利用増などで電力需要が供給能力の限界に迫り、急きょ、予告なしに電力供給が止められたためだ。電力供給の不安が続く日本でも人ごとではない。
オフィスや高層マンションが密集するソウル中心部の麻浦区では、午後6時半ごろ、片道2車線の道路の信号は消え、乗用車がのろのろなんとか進んでいた。
飲食店の店主の男性(53)は「10分ほど前に突然電気が消えた。停電は7年ぶりだ。料理もできず、商売にならない」とまくし立てた。
ソウル市消防災害本部によると、ビルのエレベーターに閉じこめられたという救助要請は93件に上った。
金融監督院などによると、全国の金融機関417か所で、現金自動預け払い機(ATM)が動かなくなったり、決済できなくなったりした。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110915-OYT1T00973.htm