2011年09月14日

◆ 蓄電池よりも良い案

 地震対策や停電対策や節電のためには、蓄電池を使えばいいか? いや、もっといい案がある。「自家発電」と「蓄熱」だ。 ──
 
 太陽光発電の電力は不安定だ。これを解消するために蓄電池を、という案がある。だが、それはコスト高なので駄目だ、と前に批判した。
  → 太陽光に蓄電池は不要
 ( ※ 蓄電池よりも火力発電の方がいい、という趣旨。)

 一方、「地震対策として蓄電池を」という案がある。最近ではけっこう話題になっている。これについて論じよう。

 ──

 (1) 蓄電池?

 「地震対策や停電対策や節電のために蓄電池を」という方針がある。次のように。
  → 家庭用蓄電池、参入相次ぐ
  → ソニー、家庭用小型蓄電池を発売
  → NEC 250万円の蓄電池に問い合わせ殺到
  → NTT 停電対応型太陽光発電システム
  → 被災地に蓄電池産業の萌芽

 このように蓄電池がもてはやされるのは、「蓄電池があれば、電気が止まっても電気を使える」ということによる。
 しかしこれは、あまりにも非科学的・非合理的な発想だ。たぶん文系の素人の発想だろう。理系の人ならば、真実に気づくはずだ。──「蓄電池を用意しても、意味はない。なぜなら、数時間しかもたないからだ」という真実に。

 蓄電池はすぐに「種切れ」みたいになる。つまり、ある程度以上の時間にわたって発電を続けるためには、蓄電池では能力不足なのだ。それでは実用にならない。
 とにかく、ソニーなどの蓄電池は、ほとんど気休めにすぎない。そのくせ、莫大なコストがかかる。
 にもかかわらず、政府は、莫大な補助金を出して、蓄電池を普及させようとする。
  → 経産省、蓄電池普及へ補助制度創設
 しかし、このような補助金政策は、「無意味な太陽光発電のために莫大な補助金を出す」というのと、同様の無駄だ。
 このような方針(蓄電池の普及の促進)は、やめるべきだ。

 ──

 (2) 自家発電

 では、蓄電池のかわりに、何を使えばいいか? (地震・停電対策として。)
 前に示したのは、小型発電機(非常用発電機)だ。
  → 家庭用の蓄電池
 これならば、燃料を注ぐ限り、いつまでも発電し続ける。

 ただ、それとは別に、「自家発電」という案もある。これは、「非常用の発電設備」という意味ではなくて、「常用する自家発電」である。そのためには、「コジェネ」という方式を取れば、低コストで実現できる。詳しくは、前項を参照。
  → 地震対策に自家発電を
 というわけで、「蓄電池に莫大な補助金を」という政策は、やめるべきだ。
 また、ソニーや NEC などの大手企業も、馬鹿げた商売をやめた方がいい。特に、「電気自動車が蓄電池になる」という状況が将来的に発生するのだから、「万一のために用意する蓄電池」なんかに百万円以上を掛けるのが、いかに馬鹿らしいか、気づくべきだ。というか、消費者に、その真実を教えるべきだ。さもなくば、詐欺産業となる。
( ※ ゴミみたいなものを「素晴らしい商品ですよ」と誇大宣伝して、馬鹿高い値段で売りつける詐欺師。はるかに性能がいい小型発電機が5万円で買えるのに、圧倒的に性能の劣る蓄電池を百万円以上で売りつける詐欺師。)

 ──

 (3) 蓄熱

 まったく別の案として、「蓄電池」にかわる「蓄熱」という発想がある。前に述べたとおり。(具体的にどんなシステムがあるかも紹介されている。)
  → 蓄熱による電力ピーク回避
 これはなかなかいい案だ。電気は溜められないが、熱は溜められるからだ。
 そもそも、「電気は溜められない」という性質があるのに、その原理に逆らって、「化学的な過程を経由することで、見かけ上は電気を溜める」という方式( 電気 → 化学的変化 → 電気 )は、効率が悪すぎる。
 電気は溜められない。これが原理だ。(超伝導を使うならば別だが、それははるか先の夢だ。)
 というわけで、蓄電池なんてものはあっさり諦めて、もっと実用化の容易なものを使えばいい。それが「蓄熱」だ。具体的には、夜間電力で蓄熱して、昼間にその熱を使う。冬ならば温熱。夏ならば冷熱。これならば、あまり無理なく「電力のピークシフト」ができる。
 とにかく、「電気を溜める」よりは「熱を溜める」方がいい、というふうに、発想を転換するべきだろう。やたらと「蓄電池」と騒いで、莫大な補助金を出そうとするのは、馬鹿げている。(太陽光発電と同様の馬鹿馬鹿しさ。)
 


 [ 付記 ]
 大地の蓄熱能力は、相当に高い。今年の夏が比較的涼しかったのも、6月ごろに気温が低くて、その冷熱が大地に蓄積されていたからだ。実際、水道の水温が高くなったのは、かなり期間が限定されていた。
 蓄熱するという発想は、かなり有効なのである。(ただし低層の家庭や工場のみ。高層ビルには無理ですね。もちろん。)



 【 追記 】
 蓄電池には NAS 蓄電池というのもあり、いくらか有望らしい。だが、画期的というほどでもないようだ。
 それよりは、「燃料電池」の方が有望だ。白金(プラチナ)の稀少性がネックになっていたが、白金を使わない燃料電池が開発された。
  → ニッケル使った燃料電池開発
 
 人々が蓄電池なんかを推進しようとしている間に、世界は燃料電池の方向で大転換するかも。
( ※ といっても、燃料電池の燃料には炭素や水素が必要だから、温暖化阻止という面では心許ないかも。だけど温暖化というのはもともと信頼性の薄い説だ。)
( ※ ま、いろいろと技術があるので、あれこれと見るといいだろう。少なくとも、家庭用の小型蓄電池というのが、筋が悪い、ということだけは事実だ。……政府はそれを推進しようとしているが。)
   


 【 関連サイト 】

 自動車の蓄電池を、蓄電池のかわりに使う、というアイデアについては、下記にも情報がある。
  → 日産が給電機能付きリーフ
  → i-MiEV の電力でアウトドア料理

 これは、特に悪くはない。普段は電気自動車として使えるからだ。電気自動車に 200万円を出して、自動車として使うのならば、特に無駄はない。

 一方、蓄電池として 200万円を出して、普段は何にも使わないで眠らせておくだけ、というのは、愚の骨頂である。本項で批判しているのは、こういう無駄である。
posted by 管理人 at 22:11 | Comment(2) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
僕も蓄熱は面白いと想います.熱しにくいが冷めにくい水.以前どなたかがここに書かれていた,カーボンナノチューブに温水をかける発電がフラーレン同様蓄電にも向きそうです.グラファイトの構造がこのごろかなり素晴らしく見えます.ベリー位相を駆使してグラファイトを越えるものを見つけてみたいです.

なんとなく想うのですが,ケプラーの予想だかで六方最密充填が一番充填率が高い構造と言う話はここにつながりそうな気がします.こりゃぁ,単なるバカの妄想にすぎないですかね.
Posted by のりボン at 2011年09月14日 23:17
> 大地の蓄熱能力
アイヌ民族の「チセ」など、昔から知恵はあったようです。

> 高層ビルには無理ですね。
超高層では無理ですが、ある程度でしたら高層でも問題ありませんし、かなりの大規模施設でも採用されています。かなり昔から。
Posted by けろ at 2011年09月14日 23:29
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