2011年09月09日

◆ 超球理論の数式 5 (振動と確率)

 前項の続き。(補足的な話題。) ──
 
 前項で述べたように、超球理論は「場の量子論」のモデルである。その意味で、超球理論は、これまでの量子論の発想(「量子は粒子の双方の性質を持つ」という発想)を大きく乗り越えるものだ。その発想を取ることで、二重スリット実験や、シュレーディンガーの猫におけるような問題(「粒子や状態の重ね合わせ」という概念を取ることの問題)を回避できる。

 核心的なことはすでに述べたとおりだ。このあとは、補足的なことをいくつか述べよう。

 ──

 (1) 複素数の調和振動子

 量子は調和振動子である。ただし超球理論の発想では、それは「複素数の調和振動子」である。次のような。
   cos θi sin θ
 ここでは、実数部分の振動と、虚数部分の振動とがある。その双方が合成されると、複素平面上の円となる。
 ここで、「虚数部分がある」というのが、量子の特徴的な点だ。
 仮に、虚数部分がなければ、実数部分だけがあることになる。その場合には、普通の古典力学的な調和振動子となる。
 (例としては、水面の波を思い浮かべるといい。もう少し正確に言えば、スプリングたくさん並んでいるベッドマットを思い浮かべるといい。これらは実数次元の調和振動子の集合だ。)

 ──

 (2) 存在振動

 量子は、複素数の調和振動子だが、そこには実数次元の振動だけでなく、虚数次元の振動がある。では、虚数次元とは、何を意味するか?
 虚数の特徴は、「2乗すると -1 になる」ということだ。それは何を意味するか?
 虚数次元は、実次元に直交する。エネルギーが虚数次元に逃げ込むと、実数次元にあるものは消えてしまう。その後、ふたたび、虚数次元に逃げたエネルギーが出現してくる。ただしそのとき、虚数次元から現れたものは -1 という値を取っている。つまり、元の  1  が反転している。これはつまり、「粒子が反転する」ということだ。

 式で書くと、次のように言える。
 量子は、  cos θi sin θ という式に従って、 θ に ともなう変化をなす。
 θ が π/2 (つまり 90度)になったときには、cos θi sin θ の値は i となる。このとき、エネルギーはすべて虚数次元に逃げる。
 その後、 θ が π (つまり 180度)になったときには、cos θi sin θ の値は -1 となる。このとき、エネルギーは虚数次元からふたたび現れるが、存在性は反転している。
 
 これが「存在振動」だ。
 それは、「粒子」と「反粒子」との間で、波の形で変化する振動だ。
 それは、振り子のような振動子と、変化の形はそっくりだが、変化する量が異なる。変化するものは、実数世界における物理量ではなくて、実数世界では見えない量だ。
 ただし、存在振動を、モデル的に示すことはできる。
 「粒子と反粒子」というものを、次の形で示すことができる。

  ・ ○ と ●
  ・ 白 と 黒
  ・ 赤 と 緑

  
 このように対比すれば、存在振動は、「この二つの間でなだらかに変化していく質的な振動だ」というふうに表現できる。
 たとえば、次のように。

    0     π/2     π    3π/2     2π
                     

 
 これは、白と黒の例だ。
 同様に、赤と緑を例にすれば、その中間となる混合色も考えていいが、いっそのこと、色相環をとってもいい。( → Wikipedia

colorring.gif

 この色相環をグルグル回るようにして、色が質的に変化すると考えるといい。そのことが、複素数の回転に相当する。
( ※ モデル的な理解。質の変化の振動を2次元平面の円周回転で理解する。)

 ともあれ、このような「質の振動」は、実数世界では表現しにくい。それは(3次元の)空間的な量ではないからだ。
 このような「質の振動」は、実数世界の次元(3次元)に直交する次元の量として理解することができる。そういうときには、虚数次元という認識をするとわかりやすい。
  • ( ※ よくある話だが、4次元空間というものがあると、3次元世界のものを反転させることができる。たとえば、ゴムボールがあるとして、球面の外側が赤色で、球面の内側が緑だとする。このゴムボールを、4次元世界に逃がしてから、また元の3次元世界に戻すと、赤と緑とが反転している、というふうにすることが可能だ。……それは、2次元平面上のコインを、3次元を経由させることで反転させることができるのと、同様である。)
  • ( ※ なお、「ボールが自身を通り抜けることができる」という奇妙な条件を付け加えると、トポロジー的に反転することは可能だ、という話もある。これは数学マニア向けの話だが。 → 球の反転
 ──

 (3) 超球の回転

 量子における複素数の振動は、超球理論では「超球の回転」というモデルで示される。では、それは、どのような量か? 

 そもそも、その振動には、実数部分が含まれる。つまり、その振動は、実数世界のなかでも確実に存在する振動である。(虚数次元だけで振動するのではない。)

 ここで、その振動が起こると同時に、量子そのものが進行している。すると、その振動は、サインカーブを描くだろう。(実数次元のなかで。)

 ──

 (4) 振動のサイズ

 では、振動のサイズは、どのくらいか? プランク定数ぐらいのサイズだ。つまり、きわめて小さいサイズだ。
 では、その小さなサイズの振動は、観測されるか? もちろん、観測されない。なぜなら、そのくらいの量になると、「不確定性原理」が成立するからだ。

 「不確定性原理」というものを聞くと、「小さな量が決定されないのは変だな」と思う人が多いだろう。しかしそれは、古典力学的な発想を取っているからだ。量子論(超球理論)の発想を取れば、「量子は常に微小に振動している」とわかるから、「小さな量が決定されない」というのは、ごく当たり前のことだとわかる。
 モデル的には、自転車を考えるといい。自転車は、遠目から見ると、等速直線運動をしているように見える。しかしその車輪は、回転している。車輪のうちの1点(空気注入口)に着目すると、この1点は「サイクロイド曲線」を描いているのがわかる。
   → サイクロイド曲線の図
 この1点の軌跡は、直線ではない。つまり、空気注入口は等速直線運動をしていない。なぜなら、自転車自体は等速直線運動をしているが、その間に、車輪は回転しているからだ。
 同様のことは、量子にも当てはまる。量子は常に回転しているので、そこには微小な振動が備わっていることになる。

 「不確定性原理」の本質は、このこと(超球の回転)にある、と考えていい。
 一方、単に数式だけを見ると、次のように表現されることがある。
 「位置の不確定さと、運動量の不確定さの積は、プランク定数よりも大きい」

 ここまではいい。このあと、さらに、次のように言われることがある。
 「位置の不確定さがゼロに近づくと、運動量の不確定さは無限大になる」

 これは妥当か? 数式を見た限りでは、妥当だ。しかし、超球理論のモデルを見れば、妥当ではないとわかる。なぜなら、位置の不確定さも、運動量の不確定さも、どちらもプランク定数ぐらいのサイズをもつからだ。そのうち一方だけがゼロに近づくということはありえない。ゆえに他方が無限大になるということもない。
 こうして、モデルを理解することで、不確定性原理の意味もいっそう明らかになる。(数式だけを理解すると、そのことがわからない。)

   ※ 不確定性原理の件は、すでに「超球と超ヒモ」でも同内容を述べたことがある。

 ──

 (5) 確率

 量子は(すでに述べたように)調和振動子としての振動をしている。(実数次元と虚数次元で。)
 その振動は、古典力学にはありえない根源的な不確定性をもたらす。そのこと(振動による不確定さ)から、必然的に、量子の確率的な性質が発生する。
 
 古典力学的な発想では、次の考え方がなされる。
 「世界の状況を厳密に測定すれば、現状から将来は数式によって一義的に決まる」

 これは「決定論」的な認識だ。そして、未来を予測することができないとしたら、それは単に現状における「観測精度」が粗すぎるからだ、ということになる。仮に観測精度が徹底的に厳密に判明すれば、未来をきちんと予測することができるはずだ、と。

 量子論(超球理論)の発想では、次の考え方がなされる。
 「世界の状況を厳密に測定することは、根源的に不可能である。それゆえ、現状から将来を決めることは、根源的に不可能である」

 これは「非決定論」的な認識だ。量子はもともと細かく振動しているのだから、観測精度がどれほど向上しても、量子の物理情報を厳密に知ることはできない。(不確定性原理の幅の不確定さが備わる。)それゆえ、古典論的な決定論は成立しない。
 ただし、何もわからないわけではない。1回ごとの現象は断言できないにしても、数回の現象があれば、それらについて、統計的な予測をすることができる。
 物理現象がミクロ的な現象であれば、その統計には、量子論ゆえの波が観測されることもある。(たとえば二重スリットの干渉縞。)
 一方、物理現象がマクロ的な現象であれば、その統計には、量子論の効果が及ばないのが普通だ。(たとえば二重スリットに、電子でなく銃弾を通した場合。)
  →  二重スリットと銃弾の図(英文)
 
 ともあれ、量子力学においては、数値が確率的になる理由は、以上のようにして説明された。その理由は、量子そのものに不確定さがあるからだ。その不確定さは、振動(または超球の回転)に由来する。
 超球理論のモデルを取れば、量子論がどうして根源的に確率的であるかもわかる。
 そしてまた、「シュレーディンガー方程式の Ψ を「確率波」と解釈するようなトンチンカンな認識からも決別することができる。
 そもそも、「確率波」なんてものは、数学的には認められていない。「重ね合わせ」というものも、論理的に認められていない。「確率波」とか「重ね合わせ」とかいう、量子論に特有の奇妙な概念を使うと、物理学はどんどん非科学の性質を帯びてしまう。どのような数学でも論理学でも使われない、量子論独特の数学や論理学を使うことになってしまう。それでは物理学が科学でなくオカルトになってしまう。(量子の状況を決めるのは人間心理だ、というのも、オカルトだ。)
 
 超球理論の目的は、量子論を独りよがりな「非科学」の領域から救い出し、客観的な「科学」の領域に入れることだ。その目的がすでに達成されているということは、ここまでの話を読めばわかるだろう。
 
 

        ── 「超球理論の数式」シリーズ、完 ──

 


 【 関連項目 】

 本項シリーズの補足編が、このあと三つぐらいあります。(次項以降。)
 




 【 関連サイト 】

 これ以外については、元のサイトのトップページから。

  → 量子論/量子力学 …… その最前線
posted by 管理人 at 21:41| Comment(2) | 物理・天文 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後に [ 付記 ] を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2011年09月10日 00:12
承認されないかもしれないけど、さすがですねえ、
3次元空間でみると、1= -exp(iθ)
光の空間力バイアスでみると、c0^2=c^2+v^2
Posted by ひゃま at 2011年09月18日 17:22
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