2011年08月24日

◆ スズメとオウムの近縁性

 スズメとオウムの進化的な近縁性が、遺伝子の解析でわかった、という報告がある。これは何を意味するか? ──
 
 まず、記事は次の二つだ。
 一つは、朝日の記事だ。
 スズメなどの小鳥にとって、分類上一番近い関係にあるのはオウムだった、とする新たな解析結果が、米独の研究者による共同研究で明らかになった。24日、ネイチャーコミュニケーションズ(電子版)で発表する。
 チームは、染色体上のゲノムを解析し、レトロポゾンと言われる特徴的な配列をどのように共有しているかを分析した。その結果、スズメやハタホオジロ、フィンチなどスズメ目に最も近い共通祖先を持っているのはコンゴウインコなどのオウムの仲間で、さえずりはこれまでの説より、3千万年も前の中生代に共通祖先で獲得したと見られることが分かった。
 さらに、ハヤブサやヒメチョウゲンボウなどは、同じ猛禽(もうきん)類であるワシやタカなどよりもスズメやオウムの仲間に近いことも分かった。
( → 朝日新聞 2011-08-24
 もう一つは、Nature の翻訳記事。(短信)
 《 鳥類の系統樹の再構築 》
 スズメ目の鳥類(perching bird)にとって最も近縁の現存種はオウムだという解析結果が明らかになった。この新しい系統発生上の類縁関係からは、鳥のさえずりが、これまで考えられていたよりも3,000万年も前にオウムとスズメ目の共通祖先で進化した可能性が示唆されている。この結果を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。
 A Suhたちは、中生代(およそ2億5,000万〜6,500万年前)の鳥類の進化における遺伝子の継承と近縁度を調べた。このデータは、発声学習がオウムとスズメ目の祖先で進化した可能性が高いことを示している。したがって、鳴禽類の発声学習の出現は、これまでの研究によって示された証拠から示唆された年代よりも少なくとも3,000万年さかのぼることになる。
( → Nature Communications, 2011年08月24日
 ──

 以上の二つの記事を読むと、特に目新しいことは何もないように思える。というのは、従来から、次の詳細な系統樹が知られていたからだ。
  → 鳥類の系統樹 (リンク先に系統樹の図がある)

 これと比べて、基本的には同じことを述べているだけだ。ではいったい、何が重要なのか? 

 ──
 
 まずは、原文と翻訳を示そう。
  → 原論文(英文)
  → その機械翻訳
  → 解説記事(英文)
 
 ──
 
 これらをすべて読んだ結果、次のことがわかった。

 (1) 基本

 基本的には、今回の研究は、従来のことと同じことを述べている。つまり、次の系統樹(部分)だ。

       スズメ
     <
  <    オウム
    ハヤブサ


 これは従来と同じだ。今回の結果は、特に目新しい事実を示したわけではない。

 (2) 範囲と数量

 今回の調査対象は、「さえずる鳥」、および、その近縁だけである。
( ※ これらは、鳥類のなかでは最も新しい部類に属する。これらは、種の数としてはそんなに多くないが、個体数は圧倒的に多くて、鳥類全体の半分を占める。特にスズメ目
 また、今回の調査対象は、(種の)数が限られている。三つか四つぐらいの種しか調べていないようだ。その点、百ぐらいの数を調べた以前の調査に比べると、対象の数はあまりにも少ない。
 その意味では、「従来の研究を書き換える」というような力はない。あまりにも小規模だからだ。

 (3) 手法

 従来の手法と違って、今回はトランスポゾンを使って調査した。そのせいで、系統関係の分析は信頼度が増した。従来は「たぶんこうだろう」という推定だったが、今回は「きっとそうだろう」「まず間違いなく」というほどに信頼度が増した。その意味で、従来の結論と内容は同じでも、確実性が異なる。従来の結論は、「推測」にすぎなかったが、今回の調査により「実証された」と見ていいだろう。(特に、異なる方法で同じ結論が出たとなれば、なおさらだ。)

 ※ Wikipedia では、スズメ目とオウム目の関係がはっきりしてない、と示されている。( 2011-08-24 現在。)これはやがて書き換えられるだろう。というのは、今回の研究により、類縁関係ははっきりとしたからだ。

 (4) さえずり

 さえずりの点では、明らかになったことがある。
  A さえずる鳥 (スズメ・ヒバリや、その近縁)
  B オウム
  C ハミングバード (ハチドリ。羽でうなる鳥)

 この三つの系統は、それぞれ(言語ふうに)発声するが、その発声は別の系統に属する。
 三つのうち、初めの二つ(A,B)は同系統に属する。これらの共通祖先の段階で、さえずり声を出すようになったらしい。
 三つのうち、最後の一つ(C)は、系統が異なる。羽音を出す。
 ともあれ、A,B はその共通祖先の段階でさえずり声をもつようになったはずだ。では、その時期はいつか? 今回の研究では、特に具体的には年代が示されていない。「従来の説よりも 3000万年以上さかのぼる」とだけ示されている。……これはどういうことかというと、従来の説では、「スズメ目が最初に誕生したころに、さえずりは獲得された」と思われていたのだが、今回の研究により、「スズメ目とオウム目の共通祖先の段階でさえずりは獲得された」と見なされるようになったからだ。その意味で、年代が古くなる。
 これは、今回の特筆するべき業績だと言える。……ただし、価値的には、たいしたことはないですね。さえずりという形質は、ことさら大きな形質ではない。それよりは、「スズメ目の鳥は、体がとても小さくなっており、その意味では最も進化した鳥である」というふうに見なすことの方が、よほど大事だろう。( [ 付記 ] 参照。)

   cf.  関連サイトの紹介。
       → 鳥のさえずり
  
 ──

 まとめ。

 今回の研究は、特に目新しいことを述べているわけではない。鳥類全般の系統関係を知りたければ、従来の系統樹を見る方がよほどいい。(多くの種について示されている。)
 ただ、(スズメ目とオウム目のあたりについては)従来の系統樹が実際に正しかった、というふうに保証を与えることができる。そのことが重要だとも言える。
 あとは、さえずりの進化論的な時期がほぼ明らかになったが、これはまあ、どうでもいい。
 
( ※ オウム目が出現したのはいつごろか? 今回の研究には書いていないが、私の推定を言えば、6000万年前〜4000万年前ごろだろう。もっと範囲を狭めたい気もするが、私はよくわからない。)



 [ 付記 ]
 話は変わるが、鳥類の進化で大事なことは、次のことだ。
 「初期の鳥類ほど大きくて、進化につれて、次々と小型の鳥類が誕生するようになった」
   → 鳥類の系統樹 の 【 追記 】
   → 鳥の祖先種は大型だ
 
 哺乳類は、進化するにつれて、小型のものから大型のものが出現するようになった。典型的なのはゾウだ。初期のゾウは小型だったが、時間がたつにつれて、大型のゾウが登場するようになった。
 鳥類はそれとは逆である。最初は恐鳥類・巨鳥類のような大型なものが出現して、次にダチョウのような中型の走鳥類が出現した。さらに小型化して、白鳥やツルのように飛べる鳥が出現した。その後、小型の鳥が次々と派生していき、枯らすぐらいの大きさの鳥がたくさん出現した。そのれらのなかでも最も小型化したのがスズメ目である。それは空の王者と言ってもいいぐらい、圧倒的な数で繁殖するようになった。
 
 なお、一般的には、体が小さくなると、脳が小さくなる。にもかかわららず、スズメ目の鳥は頭が悪いわけではない。これは脳が「小さくても高機能」というふうに進化したことを意味するのだろう。そして、スズメ目のなかでも体が大きいカラスは、脳がかなり発達しており、知性を持っている。たとえば、道具を使ってクルミ割りをする。
  → カラス、クルミを割る
  → 動画 1動画 動画
 カラスに高度な知性があること(脳が発達していること)は、間違いない。



 【 関連項目 】
 → 鳥類の系統樹

  ※ 従来の系統樹がどうであるかは、ここで示したとおり。
    (リンクをクリックして、図と和訳を表示させる。)
posted by 管理人 at 19:12| Comment(0) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
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