まずは朝日の記事から。
防衛省は日本独自の無人機開発を本格化する方針を固めた。──
福島第一原発事故の際、米軍の無人偵察機グローバルホークで原発の状況を把握した経緯を踏まえ、菅直人首相が指示した。
防衛省は2004年度〜10年度にかけて、約100億円を投じて多用途の小型ジェット無人機の開発に乗り出し、計4機の試作機を作製。だが、飛行試験中のエンジントラブルで2機が海中に落下して水没するなど実用化に至らず、今年度予算では調査費100万円のみを計上した。
今回はロボット技術の研究開発なども対象に含め、今年度を大幅に上回る調査費を計上する。防衛省は当面、災害派遣を見据えて開発を本格化させるが、開発が軌道に乗れば将来的な軍事転用もにらんでいる。
( → 朝日新聞 2011-08-17 )
これを読んで私が思ったのは、「ホンダ・ジェットを使えばいいのに」ということだ。それならば少なくとも、有人飛行の能力はある。また、コストも激安だ。
なのに、ゼロから作ろうとして、約100億円をかけたのに、それでできたのは、エンジントラブルで墜落する試作機(できそこないのオモチャ)だけだ。壮大なる無駄。呆れるほかはない。
製作したのはたぶん三菱だろう。三菱なんて、MRJ のエンジンを自作することもできない会社なんだから、こんな会社に頼るべきではないのだが。(ホンダはエンジンも自力開発。)
【 追記 】
読者コメントによる指摘だと、富士重工が担当しているそうだ。
なお、自動操縦技術というのは、自動車会社が先行している。また、ロボット技術も、ホンダが先行している。あれもこれも、すべてホンダがぴったりとなる。
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たった一つ、難点があるとすれば、ホンダは兵器開発には乗り気ではない、ということだ。しかしこれを解決する方法がある。
それは、この無人機を軍用に使わないことだ。軍用にしないで、ただの偵察機にすれば(つまり、原発などの監視用の専用にすれば)、ホンダにとって支障もなくなる。
軍用にしないとなると、敵地の攻撃もできなくなる。しかしこの点も、問題はない。日本はもともと敵基地の攻撃をしないことが原則だからだ。(専守防衛。)したがって、ミサイルなどの攻撃装置をもたず、ただの観測器だけをもつ偵察機にする。それならば、特に支障ないはずだ。
また、敵基地の攻撃には、ステルス化が必要だが、今回はそこまでは求めていないはずだ。無人ステルス機の開発なんて、有人ステルス機の開発のあとになるが、日本はまだ有人ステルス機さえもっていない。無人ステルス機は、はるか先の話となる。
以上の点からかんがみて、ホンダ・ジェットに無人操縦装置と観測装置をつけるだけで、無人偵察機ができる。開発費としては、飛行機本体の開発費はゼロ。自動操縦機構の開発だけが必要だが、ホンダとしてはありがたいだろう。政府のおかげで先端技術が開発できるからだ。
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ただし、である。この構想には、たった一つ、難点がある。「軍事用」にしないとなると、防衛省の所管にはならない。海上保安庁や原子力安全庁の所管となる。そうすると、防衛省がすごく抵抗しそうだ。
しかし、「いざとなったら防衛省の目的にも使えますよ。観測だけですけどね。そちらの依頼に応じて、北朝鮮にでも飛ばしますよ」と言えば、防衛省も文句を言わなくなるだろう。
たった一つ、最後まで文句を言うところがあるとしたら、三菱重工だ。ここだけは「仕事を取られる」と文句を言いそうだ。無能な会社ほど、文句を言って、邪魔をする。そういうものだ。
[ 付記 ]
この無人機は、将来的に攻撃機に発展するだろうか? 発展しない、と私は思う。なぜなら、攻撃機にするには、爆撃するために、積載量を大きくする必要があるからだ。そのためにはホンダ・ジェットでは力不足であり、やはり、(最低限でも)タイフーンのような力持ちでないと駄目だろう。
敵地攻撃用は、有人ステルス戦闘機を改造した有人ステルス爆撃機になるはずだ。そのためには、今回の小型無人機は、まったく対象外となるだろう。
【 関連サイト 】
→ “無人機”を開発に心血注ぐ中国
※ 日本がぐずぐずしている間に、中国はさっさと開発中。
そのうち日本にも、中国製の無人機が飛んできそうだ。
→ 球形の飛行ロボット
※ 室内のような狭い領域を飛行するロボット。観測も可能。
→ 自律航行するヤマハの無人ヘリコプター
※ GPSセンサーとジャイロセンサーを利用し、高精度な飛行制御。
→ 無人ヘリコプターを中国へ不正輸出した(?)という疑惑の真相
※ 実は輸出されたのは、自律航行機能のない農業用のもの。
→ 2ちゃんねるの軍事オタクのスレ
※ 冒頭の記事を読んだ軍事オタクがさっそく騒ぎ出す。急に菅直人を褒める。
【 注記 】
本項はロボットの話題としてのものです。
軍事の話題としてのコメントは、掲載しません。軍事の話題をしたければ、上記のような、2ちゃんねるに行ってください。
>製作したのはたぶん三菱だろう
なぜ最低限検索することもせずに書けるのか分かりませんが、開発しているのはTRDIと富士重工です。
>MRJ のエンジンを自作することもできない会社なんだから、こんな会社に頼るべきではないのだが
エンジンはアメリカのテレダイン社製です。
そもそも航空機のエンジンはエンジンメーカーが開発するもので機体と同じメーカーが開発すること自体が殆ど無いことです。
>自動操縦技術というのは、自動車会社が先行している
自動車の技術レベルと航空機の技術レベルは雲泥の差があります。
航空技術に比べれば自動車技術はお遊び程度のものです。
>ホンダ・ジェットに無人操縦装置と観測装置をつけるだけで、無人偵察機ができる
有人機は初めから人が操作することを前提に機体、アビオニクスが設計されています。
有人機を改修して開発できるのは単純な標的機くらいです。
デマの拡散にならないように、簡単に調べられる程度のことは調べてから書くことをおすすめします。
ただし、少々加えると……
> 自動車の技術レベルと航空機の技術レベルは雲泥の差があります。 航空技術に比べれば自動車技術はお遊び程度のものです。
だからこそ、小型機を作ったことのないメーカーに任せて墜落させるようなことのないように、最低限、飛ぶ能力を持つ機体を作れる会社に任せた方がいい、ということになります。三菱重工や日産自動車を素人とすれば、ホンダはプロでしょう。私は別に、日産に任せろといっているわけではありません。勘違いしないように。
また、自動操縦技術に関していえば、富士重工だって最高度の自動操縦技術を持っているわけじゃないですよ。アメリカならばもっているだろうが、富士重工はまだ未熟。だから開発するわけだが。
富士重工の場合、そもそも会社が航空機部門に注力していないのが問題。お荷物扱いされているらしい。頼りにならない。まともな技術者を投入してくれるかどうか疑問。そもそも富士重工には一流の技術者が入社しない。中島飛行機ならともかく。
> 有人機を改修して開発できる
だれもそんなことは言っていません。改修してできるならば、費用は10億円で済みます。現実には千億円近くはかかるでしょう。それを改修とは言わない。ベースにするだけ。
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なお、富士重工の無人機は、翼が小さくて、旋回機能が弱いはずだ。これでは多用途にはならない。偵察するためにステルス性を優先したのだろうが、偵察ぐらいならスパイ衛星でも足りる。かといって敵地攻撃能力もない。何らかの積載能力もなさそうだ。
この無人機は、巡航ミサイルに転用することぐらいしか、用途が思い浮かばない。
なお、偵察が目的なら、こんな高額な無人機を飛ばす必要はなく、カメラ付きのラジコン機をたくさん飛ばす方がずっと安上がりだろう。
もし敵の対空ミサイルが撃墜のために飛んでくるなら、かえってありがたい。敵の対空ミサイルは、ラジコン機を撃ち落とすためにすべて使われてしまうから、あとは対空ミサイルが空っぽの、すかすかの基地になる。
そう考えると、無人機の開発は、ラジコン機を大型にするのが一番いいかも。今はラジコンのジェット機もあるんだし。
http://youtu.be/vpnn-Eq7Qv4
富士重工は、作ったことあるから。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%8C%E5%A3%AB%E9%87%8D%E5%B7%A5%E6%A5%AD#.E7.B4.8D.E5.85.A5.E5.AE.9F.E7.B8.BE
>だれもそんなことは言っていません。改修してできるならば、費用は10億円で済みます。現実には千億円近くはかかるでしょう。それを改修とは言わない。ベースにするだけ。
>>飛行機本体の開発費はゼロ。自動操縦機構の開発だけが必要だが
あなたの言ってることがそうとしかとれない。
多用途小型無人機について以下参照
http://obiekt.seesaa.net/article/113220879.html
http://keenedge.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/tacom-2b5f.html
http://www.heinkel.jp/yspack/ysf_tacom.html
わかってます。私の方が先にそれを読みました。他のページも読みました。
大失敗作ならば作ったことがある、というのは意味がない。
作ったことはあるけど、実質的にはないのも同然。そういうこと。
これも含めて、どれもこれも、言葉の行き違いみたいなもの。本質的な話題じゃありません。どうせならラジコンジェット機の話でもすればいいのに。それならば実質的な話になる。
揚げ足取りはつまらない。
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基本的には、富士重工が百億円の予算で作ったオモチャに依存するか、ホンダが数千億円をかけてつくった世界一クラスの実用小型ジェット機をベースにするか、という問題。
大量生産するなら、新規開発もいいですが、たった5機程度の無人機を開発するのに、一から全面開発するかどうか、という経営判断の問題です。
だいたい、百億円ぐらいでまともな無人機ができるなら、F-35のかわりになる戦闘機も3百億円ぐらいで開発すればいいんですよ。何でもかんでも、安上がりに開発すればいい。(その結果がどうなるかは、富士重工の例が教えてくれる。)
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ついでに思ったが、富士重工の無人操縦機部門はかなり人材がいるようだから、富士重工の航空機部門をホンダが買収するといいですね。それでホンダが無人機開発を引き受ければいい。
政府がその方針を示せばいいのに。どうせ富士重工にとって航空機部門はお荷物なんだから。渡りに船でしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=Kj43I7mkcqA
http://www.youtube.com/watch?v=ywevap3U2Wo
こっちに注力した方がいいかも。予算は激安だし。原発でもこれを使えた。