電力不足の問題を解決するには、どうすればいいか? 供給を拡大するには、何年もかかる。もっとうまい方法がある。需要を調整することだ。それには、需給調整契約を拡大するといい。
需給調整契約は、現段階では、次の二通り。
・ 計画調整契約
・ 随時調整契約
前者は、普段の電力平準化に協力するもの。(休日稼働)
後者は、緊急時の突発的な電力停止。その細目は、下記の通り。(河野太郎ブログによる)
緊急時調整契約B約款ここでは、次の特徴がある。
対象 事前の連絡により、3時間以上継続して契約電力の20%以上または1000kW以上の調整をできる顧客。
調整依頼 調整の3時間前までまたは1時間前までに依頼をする。
調整時間 1回につき原則として3時間。
・ 当日の直前に連絡が来る。(3時間前 or 1時間前)
・ 電力を止める時間は、1回につき原則として3時間。
これではあまりにも使いにくい。なぜか? 工場が遊休してしまうからだ。工場も人員も、出社しているのに、操業停止するしかない。これでは莫大な損失が発生する。人件費だけでも莫大になる。クーラーなども動かす必要があるから、その電気代も馬鹿にならない。莫大な損失が発生する以上、電気代を少しぐらい負けてもらうからといって、割に合わない。
したがって、このような契約を受け入れる企業は、あまりないと思える。実際、東電の契約した量は、今夏では 320万kW にすぎない。産業電力全体の1割程度だ。必死になって努力して、この程度だ。来年以降では、もっと減るだろう。(たいていの企業は馬鹿馬鹿しくて協力したがらない。損するから。)
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そこで、新たな制度の導入を提案する。
「前日の午後1時までに、東電が停止要請を通告する。その通告を受けて、企業の側は、前日(つまり通告の翌日)の休業(または午後半ドン)を決める」
この場合には、企業の側には、損失が発生しない。なぜなら、社員は出社しないからだ。何らコスト増は起こらない。(単に収益機会が失われるだけだ。そして、その分は、休日出勤や秋出勤によってまかなえる。損失は何も生じない。)
この方式ならば、ほとんどの企業が受け入れることが可能だろう。ゆえに、この方式の導入を提案しよう。
( ※ 前から私が何度も述べたことそのまんまだが。ただ,それを、「需給調整契約」という形で、正式に制度化するわけだ。)
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なお、企業の側は、次の二者択一だ。
・ 全日の休業 (午前10時〜午後6時までを含めばいい。)
・ 午後半ドン (午後1時〜午後5時までを含めばいい。)
( ※ 前者の方が、休む時間が長いので、優遇される度合いが高い。)
企業は、そのどちらを選んでもいい。任意に選べる。
一般的には、前者を選ぶだろう。半日だけ休むならば、全部休んだ方が面倒がない。
しかし現在の自動車産業ならば、後者を選ぶだろう。前に休んだ分を、増産によって、必死に回復したがっているからだ。その点、午後半ドンならば、午前中に十分に働ける。そのことで、(毎日少量ずつの生産する)「ジャストインタイム」の要望にも、きちんと応えられるはずだ。
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ともあれ、全日の休業であれ、午後半ドンであれ、その前日に決めるということが大切だ。そのことで「いきなり通告を受ける」ということの損失をなくすことができる。それゆえ、多くの企業で、この制度を受け入れることができる。
現在の制度は、東電の側の都合ばかりを考えていて、企業の側の都合をまったく考えていない。需要家にとっては、「いきなり止めろ」と言われて、「はい止めます」というふうにすることになっている。ひどい制度だ。
電力会社は、こういう殿様商売みたいな権力的な発想をやめて、需要家本位の発想に改めるべきだ。そして、そのことが、日本全体の電力危機を避けることにつながる。
頭の使い方一つで、電力危機が起こるか起こらないかも決まる。来夏までには、きちんと決めておいてほしいものだ。できれば、今夏のうちにも決めてほしいものだ。
(お盆明け以降には電力危機が発生する可能性が少しはある。特に、東北と関西が危ない。)
[ 付記 ]
「来夏には電力不足が起こるかもしれない」ということから、池田信夫(など)は「原発を再稼働させよ」と主張する。ま、それはそれで一案だが、古い原発や危険な原発をやたらと稼働させなくても、単に需給調整契約だけでも解決ができるのだ。
しかも、それをやれば、夏の猛暑日にいちいち働かなくて済む人々が増える。人々にとってありがたい制度だ。とすれば、そういう制度を導入する方が、利口というものだ。
だいたい、夏の数日間だけ発せうする特別なピーク日だけのために、多くの原発を再稼働させるというのは、効率を考えても、あまり賢明とは言えない。需要の急激な変動(突発的な需要増加)に対しては、「需要の平準化」という方法の方が、はるかに懸命なのだ。
頭をうまく使いましょう。
【 追記 】 ( 2011-12-19 )
需給調整契約における料金減額は、「契約を結んだこと」に対して金額が決まるのではなく、実際になされた休業に対して金額が決まる方がいい。
たとえば、契約を結んだ会社が4社あるとして、この4社に同様の基準で料金減額が起こるのではなく、各社ごとに実際に休業した分についてだけ料金が起こる。次のように。
・ A社は、3日休業したので3日分。
・ B社は、2日休業したので2日分。
・ C社は、1日休業したので1日分。
・ D社は、半日休業したので半日分。
このような形で、実際に休業した分だけ、料金減額が起こる。
なお、契約を結ぶ企業が少なくて、需要減少が不十分であるときには、減額の料金を大幅に上げればいい。たとえ大幅に上げても、問題はない。理由は二つ。
(1) 実際に料金減額がなされるとは限らない。契約する会社が2倍になれば、実際に料金減額の対象となる会社の割合は半分になる。(実際の休業する会社の数は、契約した会社の数には比例しない。気候によってのみ決まる数だ。)
(2) どんなに減額する料金を増やしても、その分、電気代を上げれば、何も問題は起こらない。単に、「休業する会社」と「休業しない会社」との間で、損得が起こるだけだ。前者が得を指定、後者が損をするだけだ。電力会社の損得には関係しない。富の配分の比率が変わるだけだ。