再生エネ法案が可決される見込みとなった。ただし、電力が安定しない場合には、電力会社は購入を拒否できるという規定がある。そして、太陽光や風力は、電力が安定しない。とすれば、いくらでも購入は拒否可能だ。
気になるのは「安定供給に支障が出る場合」は除外が可能という規定だ。これまでも、電力会社はこの言い分で、新たな風力発電計画への接続を何度も断ってきた。実際、北電はこの条項をタテに、「購入拒否する」胸を声明している。
同じことが繰り返されては、独占を守りたい電力会社の都合が優先され、自然エネルギーが伸びてゆかない。
( → 朝日・社説 2011-08-13 )
北海道電力は、風力など自然エネルギーによる発電の全量買い取りを電力会社に義務づける「再生エネルギー特別措置法」が施行されても、風力発電の新たな買い取りをしない方針であることが12日、明らかになった。電力の安定供給のため同社が独自に定めた風力発電の買い取り上限(風力発電連系可能量)である36万キロワットが既に満杯のためで、同法の下でも新規の買い取り拒否は例外規定で認められるとしている。──
( → 北海道新聞 2011-08-13 )
ま、もっともな話ではある。となると、再生エネ法案は、有名無実となりそうだ。
では、それを避けるために、不安定な電力を、強制的に購入させるべきか? しかしそういうのは、頭が悪すぎる。もっとうまい方法を考えた方がいい。
アイデアの一つとしては、「風力発電に蓄電池を付ける」という案がある。次の例がある。(電力卸売会社の自然エネルギー発電は、系統電力に結ばれにくいという例。)
東北で風力発電された電力は不安定だからという理由で東京まで託送できない。※ ここで言う「ほとんど唯一の例外」というのは、眉唾だ。実際、風力発電は、かなり多くのところで売電されているからだ。(電力卸売業者に、でなく、大手電力会社に。)……この件は、本項末の 【 追記 】 を参照。
ほとんど唯一の例外が六ヶ所村の二又風力開発が発電した電力を出光興産が三菱地所の新丸ビルに供給しているケースで、これは蓄電池付きの風力だから例外的に認められた。
( → 河野太郎ブログ )
このように、蓄電池をつけて電力を安定させる、という案もある。しかし、蓄電池は、価格が滅茶苦茶に高い。
→ 太陽光に蓄電池は不要
安定化のために蓄電池を使うよりは、系統電力そのものを蓄電池のかわりにした方がずっといい。しかしそれでは、電力会社が「不安定な電力」をいやがる。
この問題を解決するには、どうすればいいか?
──
私が提案するのは、「市場原理で」つまり「価格調整で」というものだ。要するに、次のことだ。
・ 安定的な電力は、高価格で買い取る。(蓄電池で安定化)
・ 不安定な電力は、低価格で買い取る。
たとえば、現在の風力発電は、不安定だからという理由で、たったの 3.3円で買われている。
RPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)が施行された2003年4月以降、北海道に発電風車を建設した事業者は、それまで1kWh当たり10数円で売っていた電力を、北海道電力には「電力分」の同 3.3円でしか売れず、残りの「環境貢献分」(最高同11円)は他の電力会社に販売するしかなくなった。いくら何でも、 3.3円は安すぎだろう。別項 の【 追記 】 でも述べたように、全体の 10%程度の変動は、系統電力で吸収が可能だ。また、ドイツの例では、風力発電変動を常にモニターすることで、風力の変動をかなり正確に予測できるようになっている。(気象条件も知ることで。)このような「予測」が可能であれば、火力や推力によって変動を補うことも可能だ。とすれば、安い風力発電は電力会社にとっても有利であるはずだ。
( → 価格公表を阻む電力会社 )
とすれば、ここで必要なのは、電力の変動を予測するITシステムだ。それさえあれば、電力の変動を、系統電力で補完することができる。
──
まとめ。
再生エネ法案には、穴がある。「不安定な電力は購入しなくてもいい」という条項だ。そのせいで、太陽光や風力は、購入されないで、法案は有名無実化しかねない。
この問題を解決するために、「蓄電池を使う」という方針がある。しかし蓄電池は非常に高価であり、コスト的には賢明ではない。
蓄電池を使うかわりに、系統電力で変動を補完すればいい。そのためには、次の二点を用意すればいい。
・ 安定性に応じて、購入価格を変える。(購入か拒否か、ではなくて)
・ 不安定で安価な電力には、系統電力の側のITシステムで補完する。
これはまあ、ドイツでやっていることと、だいたい同じだ。再生エネ法案を導入するなら、その運用において、本項で述べたような賢明な運用をすることが求められる。(第三者の委員による価格決定の場で。)
[ 付記 ]
安定性の点では、メガソーラー(大規模な太陽光発電設備)は、劣っている。狭い範囲に大量のソーラーパネルがあるからだ。それらのソーラーパネルは、一つの雲に収まってしまうぐらいの範囲にあるので、あるとき急にすべてが雲の陰に入り、あるとき急に雲の陰から脱する、ということが起こるだろう。その速度は、雲の流れる速度に依存するが、1分間もかからないだろう。そういう短時間に、大規模な出力変動が起こる。
その点、住宅上のソーラーパネルなら、広い土地に分散しているから、出力変動はかなり和らげられる。うまく行けば、出力変動はゼロで済む。下記の図を参照。(上から下へ、時間軸)
10秒 □□□■□□□□□□□
20秒 □□□□■□□□□□□
30秒 □□□□□■□□□□□
40秒 □□□□□□■□□□□
50秒 □□□□□□□■□□□
つまり、雲の陰に入る場所は次々と変化するが、陰に入る部分の総量は常に1箇所分であって、変動がない。
一方、ひとつの場所だけにメガソーラーがあれば、そこにおいて急激な変動が起こる。
メガソーラーがこのように安定性のない電力であるからには、住居用の太陽光発電に比べて、低めの買い取り価格にすることが妥当であろう。風力発電だって、安定性が低いと不利なのだから、メガソーラーも同様に扱うべきだ。
( ※ 故障の点でも、同様だ。一般に、小さいものほど、故障が起こりやすいが、それらがすべて同時に故障する確率は非常に小さい。あちこちで小さな故障が少しずつ起こるのはたいして問題がない。一方、メガソーラーが一挙に機能停止することは、なきにしもあらずで、その点では、メガソーラーの方が心許ない。たとえば、地震によって該当の送電線が一つ倒れるだけで、その場所のメガソーラーは全体が一挙に機能停止する。いくら発電しても、送電できないからだ。台風で送電線が切れた場合も、また同じ。)
【 追記 】
東北電力の売電については、次の記事があった。
現状でも風力発電の系統連携は「安定供給」を口実に厳しく制約されている。連携できる風力発電の枠は各電力会社が抽選で事業者に割り当てる。
東北電力が昨年末実施した抽選では、約260万キロワット分の応募に対し、実際に系統連携を認めたのは1割だけだった。
( → 日経 2011/08/11 )
【 関連サイト 】
→ 青森県の風力発電量が1.4倍に
※ この風力発電の会社の筆頭株主は、ソフトバンク。
→ ソフトバンク 苫前で風力発電検討 全国最大30万キロワット超
※ ソフトバンクは、北海道でも、風力発電の事業に乗り出している。
タイムスタンプは 下記 ↓
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おかしいな、と思ったら、国会がお盆休みに入っていた。 (^^);
→ http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110813k0000m010118000c.html
というわけで、再生エネ法案については、私の記事の更新もなくなるかもしれない。
→ 宇宙太陽光発電
http://openblog.meblog.biz/article/3942258.html