2011年08月08日

◆ 内陸部への移転

 震災の被災地で、被災した人々が高台へ移転しようとしているが、難航しているという。理由は二つ。
  ・ 移転先の高台で、遺跡が見つかり、調査に時間がかかる。
  ・ 土地所有権が複雑で、被災地の買収も、移転先の買収も、進まない。 ──
 
 この二つの問題は、別々の問題だが、本項でまとめて論じよう。問題を指摘し、解決策を示す。

1. 高台の遺跡


 被災した人々が高台へ移転しようとしているが、難航しているという。 移転先の高台で、遺跡が見つかり、調査に時間がかかるせいだ。
 《 被災地高台、遺跡だらけ 住宅移転に思わぬ難題 》
 東日本大震災からの復興に、思わぬ難題が生じている。被災地が移転構想を進めている高台には歴史上の遺跡が点在している可能性が高いため、発掘調査で移転が遅れかねないのだ。復興か、文化財保護か。
( → 朝日・朝刊 2011-08-08 。紙の新聞のみ)
 この問題についての解決策を示そう。まずは、次の項目を参照。
  → 復興を急ぐな
  → 復興の幻想を捨てよ

 上の記事のテーマは、「移転には長い時間がかかるが、どうすれば速やかな移転が実行できるか」だ。
 しかし、実を言うと、その問題自体が間違っている。移転というものは速やかに実現できるものではない。移転先に遺跡があろうがなかろうが、移転というものは速やかに実現できるものではない。もともと短期間であっという間にできるものではないのだ。
 今回の被災は、あまりにも多大だ。ガレキの撤去だけでも、長い時間がかかる。さらに住居や工場家屋の建築ともなると、ものすごく長い時間がかかる。一箇所だけなら1年でも足りるだろうが、莫大な場所ですべて復興するには、とても長い時間がかかる。(建設能力に限界があるからだ。)
 とすれば、復興には優先順が付く。そのなかで、遺跡のある土地については、「後回し」にすればいい。どうせどこかを「後回し」にする必要があるのだから、遺跡のある土地については、順位を下げて、「後回し」にする。その間に、遺跡で文化財の調査をすればいい。
 
 なお、記事では「鮹の浦」における例が示されていたが、よく調べると、この問題はたいしたことがない。
  ・ 被災地で遺跡があるのは、この場所ぐらいしかない。(記事による)
  ・ 鮹の浦では、やや内陸部に、土地はたくさん余っている。

     → Google 地図
 記事では、「海に近い平坦な高台は、ここしかない」ということだが、別に、海のすぐそばである必要はない。海のすぐそばだから、縄文時代の遺跡がある。しかし、少し内陸部に入れば、平坦な高台はいっぱいある。距離にして 400メートルぐらいだ。そのくらいの距離を、ものぐさがるべからず。
 被災地の人はあまりにもものぐさすぎる。都会ならば通勤に1時間をかけるのは当然なのに、「通勤時間はできるだけゼロにしたい。海から 500メートル以上も離れるのはいやだ」と言い張る。
 こういう主張には、「ものぐさがるのも、いい加減にしろ」と一喝するべきだ。今では電動自転車だってある。ちょっとした坂道を電動自転車で登ることは容易だ。というか、自分の足で歩けばいい。都会の人だって、最寄り駅までは歩く人が大半だ。(自宅のそばで 10分、会社のそばで 10分、計 20分ぐらい。……いや、もっと多い。)
 鮹の浦には、余った土地はないが、鮹の浦の内陸部には、余った土地がたくさんある。そこを利用すればいいだけだ。被災者のものぐさ( or 贅沢)に付き合う必要はない。
 それにしても、「田舎の人ほど歩きたがらない」というのは、本当だな。都会ならば、通勤で往復 40分(片道 20分)ぐらい歩くのは、ざらだ。なのに田舎の人は、たったの5分を歩くのも、ものぐさがる。そして「被災者を救ってくれ」と泣きつく。呆れてしまうね。
 
 ──

 実を言うと、別の問題もある。そもそも、文化財の遺跡よりも、もっと先にやるべきことがある。それは、「都市計画の策定」だ。
 「都市計画の策定」もなしに、復興だけ先走って実行しようとしても、意味がない。遺跡がどうのこうのという前に、まずは「都市計画の策定」をするべきだ。
 この件は、後述する。

2. 土地所有権の制限


 朝日新聞の「ニッポン前へ委員会」の委員たちが、次の提言をしたそうだ。
 《 土地所有の見直しを提言 朝日新聞社ニッポン前へ委員会 》
 朝日新聞社の「ニッポン前へ委員会」は7日、土地所有のあり方を見直す提言をまとめた。
 (1)津波被災地の住宅移転を進めるため、自治体による定期借地権を設定しやすくし、土地の公共利用を促す
 (2)震災復興という「公共の福祉」を目的とする場合には、所有権を一部制限する可能性もありうる
 ……という内容だ。
 政府は被災者の集団移転を目標に掲げているが、進展していない。この現状について、委員会では「土地所有権の壁」を指摘する声が続出した。そして本来、土地は公共的なものであるとの観点から「戦後日本できわめて強かった土地所有権を根本から見直し、震災復興のためには何らかの形で私権を制限する方策を検討すべきだ」との見解で一致した。
 具体策としては、自治体が契約期限を区切って借り上げる「定期借地権」を設定しやすくして、土地の公共利用を優先できるようにする。たとえば、所有者の一定割合以上の同意で設定できたり、所有者のわからない土地も、いったん自治体が借りて賃料を供託できたりするようにする。
( → 朝日新聞 2011-08-08
 これは、ごもっとも。
 ただし、その前に、やはり「都市計画の策定」をするべきだ。これは、私がかねて述べてきたことだ。
  → サイト内検索
 つまり、復興に先だって、復興のプランを出すべきだ。そのために、都市計画委員会を導入するべきだ。
 復興の建設には、時間がかかる。その時間を、無駄にするべきではない。今なすべきことは、「復興を急げ」「復興を進められない菅直人は辞めろ」とやみくもに喚くことではない。むしろ、復興のプランを策定するべきだ。そのために、都市計画委員会を作るべきだ。
 プランもなしに先走って建設すれば、とんでもない乱雑な荒廃状態になりかねない。それを避けるためにも、整然たるプランが必要だ。
 そして、そのプランを実行するためには、さまざまな助力が必要だ。その助力の一つが、朝日の委員会の唱えた「土地所有権の制限」だ。
 要するに、「土地所有権の制限」が大切なのではない。それは、問題の核心ではなく、問題の周辺部の一つにすぎない。問題の核心は、「都市計画の不在」である。ここを解決する必要がある。つまり、都市計画を策定する必要がある。その際、周辺的な話題として、「土地所有権の制限」もまた一つの話題となる。
 もちろん、他にも細かな問題はある。都市計画が実現するまでの数年間、被災した人々をどこに住まわせるか。また、その人々の生活をどうやって保証するか。
 私としては、次のようなプランも考える。
  ・ 一時的に被災地を離れることの援助
  ・ 土地を売却して、それを生活費に充てることの援助

 こういうことと組み合わせて、「土地所有権の制限」が話題になる。
 しかし、それには何よりも、「都市計画の策定」が必要だ。その際、都市計画委員会から、自治体や国に要望が昇るだろう。その要望を聞けばいい。
 ともあれ、今は、「都市計画委員会」の設置が必要だ。各地で都市計画委員会を設置するべきだ。

 遺跡の問題であれ、土地所有権の問題であれ、それらに対する対処としては、「都市計画委員会」の設置を提言したい。



 【 関連項目 】

  → サイト内検索 「都市計画委員会」



 【 関連サイト 】

  → 復興計画前に遺跡情報把握を ネットで公開へ
 
  → 「『復興構想会議提言』への意見書 (PDF)
    ※ 土地利用の共用化などの提言
posted by 管理人 at 20:29| Comment(1) |  震災(東北・熊本) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
既存の都市計画審議会をうまく活用することが出来れば良いのですが。
Posted by けろ at 2011年08月09日 01:15
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