( ※ 安全性についての話題。) ──
中国の新幹線で事故が起こった。では、なぜ、こういう事故が起こったのか?
「中国は技術が低いからだな」と思う人も多いだろう。しかし、よく見ると、それほど話は単純ではない。
車両は日本製だが、システムは別の外国製。いろいろと技術が混在している、という状況があった。これも理由の一つ。
また、突貫工事が問題だったらしい。
中国メディアによると、高速鉄道路線の建設は、測量と設計と施工を同時に進めるという、短期集中型の工法で進められている。あまりの突貫工事ぶりに、建設に携わった技術者自身が「自分は絶対に乗らない」と、安全性に疑問を呈する発言をすることもあった。──
北京−上海線は、中国共産党創設90周年(7月1日)に間に合わせるため、2012年の開業予定を大幅に前倒ししたことから、突貫工事や手抜き工事による安全性の不安も指摘されている。
( → 読売新聞・朝刊 2011-07-24 [紙の新聞のみ] )
ここまで見ると、事情が透けて見える。「政治の都合でスケジュールが変更されて、大事故が起こる」というのは、前にも例があった。それはスペースシャトルの事故だ。
ファインマンが事故の原因を見つけて、「Oリングに欠陥があった」と指摘した。そのことで問題の解明が済んだように見えるが、それは本質ではない。なぜなら、同じ部品は、前にも何度も使われていたのに、事故は起こらなかったからだ。しかるに、このときに限り、事故が起こった。なぜか? Wikipedia から引用しよう。
予報によれば、1月28日の朝は異常に寒く、発射台周辺の気温は打ち上げを実施可能な下限値である摂氏−1℃の近くまで下がるとされた。この異常寒波に対し、SRBの製造とメンテナンスを受け持つサイオコール社の技術者は強い懸念を抱いた。27日の夜、サ社の技術者と幹部は、ケネディ宇宙センターとマーシャル宇宙飛行センターにいるNASAの幹部と遠隔会議を開き、気象条件に関する討議を行った。何人かの技術者――中でも特に、以前にも同様の懸念を表明したロジャー・ボイスジョリー(Roger Boisjoly)――は、SRBの接合部を密封するゴム製Oリングの弾力性が異常低温によって受ける影響について不安を表明した。このように、危険性は懸念されていたのにもかかわらず、あえて危険な状況で打ち上げを決行した。何が何でも打ち上げを決行する必要があったらしい。
(中略)これが重大な懸念だったのは、Oリングが「致命度1」に指定されていたからである――これはもし主および副リングが故障した場合はバックアップはなく、その故障は軌道船や乗組員を破壊しうることを意味していた。
氷対策班は徹夜で氷を除去したが、シャトルの主契約企業であるロックウェル・インターナショナルの技術者たちは引き続き懸念を表明した。カリフォルニア州ダウニーにあるロ社本部から発射台を監視していたロ社の技術者たちは氷の量を見て戦慄した。彼らは打ち上げの際にSRBの排気ガスの噴流が引き起こす吸引力によって氷が振り落とされ、シャトルの耐熱タイルを直撃するのではないかと恐れた。ロ社の宇宙輸送部門責任者であるロッコ・ペトローン(Rocco Petrone)と彼の同僚たちは、この状況を打ち上げに対する障害と見なし、ケープ基地にいた同社の幹部たちにロ社としては打ち上げを支持できないと伝えた。ところがケープ基地のロ社幹部たちはこれらの懸念をしっかりとは伝えず、結局ヒューストン基地の計画責任者アーノルド・アルドリッチ(Arnold Aldrich)は打ち上げを決行することにした。
ではなぜ、そのように強引に打ち上げは決行されたか? 次のように疑われている。
チャレンジャー号は当初1月20日に打ち上げが計画されていた。しかしその前のコロンビア号が技術的トラブルで打ち上げが遅れたため5日後の1月25日に延期されていた。さらにこの打ち上げも天候悪化の理由ですでに3日遅れになっていた。この程度の遅れはそう珍しくない。しかしNASAは打ち上げを急がなければならない理由があり強行したという疑いが持たれている。これと同じ話は、あちこちで記されている。すべてはレーガンの政治ショーのためだったのだ。
その理由は毎年1月下旬に行われるアメリカ大統領の一般教書演説である。レーガン大統領のこの演説の原稿に民間人の乗ったチャレンジャー号の打ち上げがすでに書かれていたのであった。ホワイトハウスは大統領の演説前にチャレンジャー号を打ち上げる様にとNASAに圧力をかけたというのである。もしそれが本当であればこのチャレンジャー号の悲劇はつまらない政治的ショーによって引き起こされたことになるのだ。
( → スペースシャトルの誤算 )
──
こうしてみると、中国の事故も、スペースシャトルの事故も、「セレモニーに合わせるために、危険性を無視して、強引に実行した」という共通の事情にぶつかる。
そして、それを一言でいえば、 安全性の無視 といえる。
ここまで来て、ようやく、物事の本質にたどり着いた。安全性というものは、金にはならないし、実益にはならない。安全性は、何らプラスをもたらさない。なぜなら、安全性とは、マイナスを防ぐだけであって、プラスになるようなものではないからだ。
しかしながら、その安全性を無視するから、突発的に、巨大なマイナスが生じる。……そのことが、中国の事故と、スペースシャトルの事故とに、共通する原理だ。
──
そして、そう理解すると、新たなことに気づく。これと同様のことは、日本にもあったのだ、と。それは、ほかならぬ原発の事故である。
福島の原発事故でも、「安全性の無視」があった.それこそが事故の本質的な原因であった。
のみならず、同様の「安全性の無視」は、現在でも一部で主張されている。それは、「浜岡原発の再稼働」だ。
「浜岡原発を停止すると、電力不足が発生するかもしれない。それは日本に致命的な損失を与えかねない。企業が国外に逃げ出すだろう。また、莫大なコストがかかって、大損するだろう。だから、浜岡原発を停止させてはいけない。浜岡原発を停止させた菅直人は無能だ。次の首相は浜岡原発を再稼働させるべきだ」
というふうな主張だ。池田信夫などが、そう主張している。
実は、夏の電力不足が起こるとしても、夏の数日間にすぎないのだから、浜岡原発をいちいち再稼働させる必要などは、ちっともない。かわりに企業が数日間、夏休みを取ればいいだけのことだ。
にもかかわらず、「何が何でも浜岡原発を稼働させたい」と主張する人々がいる。そこにあるのは、「金儲け」というプラスを見る発想だ。そして、そこには、マイナスを見る発想が欠けている。つまり、「安全性」という発想が欠けている。
そして、こういう「安全性の無視」から、大事故が起こるのである。……たとえば、浜岡原発大事故により、首都圏が壊滅する、というふうな。
──
なるほど、「安全性の無視」をした中国は、愚かだ。しかし、中国が愚かだとしても、日本人ほどではない。同じく「安全性の無視」をするにしても、「首都圏を壊滅させる危険」を、中国は起こさない。彼らの事故によって起こったのは、死者数十人(負傷者込みで 200人あまり)という被害だけだ。しかるに日本は、一国の中枢を破壊して、国全体をマヒさせるという、ウルトラ級の危険を冒そうと企てているのだ。
現時点では、その野望を、菅直人が止めている。しかし、中電はすでに、浜岡原発の再稼働に向けて、行動を取り始めている。
→ 浜岡の防潮堤(改良案)
このあとでは、菅直人が退陣するだろう。そして、次期首相は、「無能」と呼ばれないために、自民党との協調路線を取るだろう。そして、自民党というのは電力会社の傀儡にすぎないのだ。前項の再掲になるが、ここにも記そう。
《 自民個人献金、72%が電力業界 》こういう状況であるから、菅直人の退陣後には、浜岡原発は再稼働するはずだ。そして、その後、中国の事故をはるかに上回る、超弩級の大事故が起こって、日本は壊滅するのである。
自民党の政治資金団体「国民政治協会」本部の2009年分政治資金収支報告書で、個人献金額の72.5%が東京電力など電力9社の当時の役員・OBらによることが22日、共同通信の調べで分かった。
( → 共同 )
池田信夫は言う。「浜岡を再稼働させたからといって、今すぐ東海大地震が起こると言えるのか」と。
なるほど、「今すぐ東海大地震が起こる」とは言えない。しかし、そういう発想を取ったからこそ、3月11日の東北沖大地震では、とんでもない被害に見舞われたのだ。「今すぐ東北沖大地震が起こる」とは言えない、とだけ考えていて、「いつかきっと東北沖大地震が起こる」ということを忘れていたからだ。
日本人は中国人を笑えない。「浜岡停止」を唱えた菅直人が退陣したあと、有能な首相のもとで「浜岡再稼働」がなされて、その直後、東海大地震が起こるかもしれない。そうなったら、日本は世界中の笑いものになるだろう。
1度穴に落ちれば、同情される。同じ穴に2度も落ちれば、笑われるだけだ。笑われるのは、技術の低い中国ではなく、知性の低い日本なのだ。
( ※ 日本人の誰もが愚かというわけではないが、それでも日本は全体として、愚かな方向に向かいつつある。つまり、自滅の道に向かいつつある。「浜岡再稼働」という形で。)
【 関連サイト 】
→ 手抜きだらけの高速鉄道、作った技術者「恐くて乗れない」
似た話で、次の例もある。
手抜きだらけの浜岡原発、作った技術者「怖くて作動させたくない」
そのわけは
→ 浜岡原発の危険性
→ 原発再開の条件
政治的に無理な日程(工程表)をおしつけられ、日本製・アメリカ製・フランス製・日本製のフローシステムをつなぎ合わせて試運転もそこそこに実用とする。
バックアップシステムあるいは並列システムを作る話がなかなかオープンにならず(or マスコミが流さず?)心配の声が上がる中、特攻的運転を行う。約1ヶ月の運用実績が50%台
だけど、「ゆっくりして遅らせるべき」と言えないのが、玉に瑕か。 (^^);
違う分野を持ち出して比較するのはフェアではないです。
安全管理の仕方は、分野によって違うのは当たり前です。同列に並べるべきではないです。
(福島原発事故に問題が無いと言っているのではありません)
要するに、中国の電車・新幹線と比較すべきは、当然日本の電車・新幹線の事故率と事故の内容です。
日本の”核技術・核管理”と比較すべきなのは、もちろん中国の”核”です。
日本の庶民がどう思っているかはともかく、諸外国は核技術を区別しません。
原発があれば、原爆もあると判断するのが国際社会です。
http://www.youtube.com/watch?v=2lG9JfUVN5I
http://www.youtube.com/watch?v=EFTbRJOJe_A
http://www.youtube.com/watch?v=tpt5DJDsWdA
私個人としては、どちらも問題だと思っています。
ただ正直なところ、中国で毎日の様に細かい爆発事故が起こっていますが、大きな福島事故が
起こってしまった事により、単純に中国の事を笑えなくなってしまったのは偽りなき本音ではあります…
別に誰かと喧嘩しているわけじゃないんだから、フェアとか何とかは関係ありません。
「他山の石」とか「人の振り見てわが振り直せ」みたいな話です。あるいは、「全然別の分野にある共通点を見出す」という話。
ともあれ、「新たな視点を見出す」というのが本サイトに一貫した方針ですから、そういう方針がいやだったら、教科書や百科事典にある標準見解だけ見ていればいい。
基本的には、たいていの安全問題は、ヒューマンエラーが理由なので、分野が違うからと言って失敗例を切り捨てると、常に事後的な手遅れとなります。
> ただ正直なところ、中国で毎日の様に細かい爆発事故が起こっていますが、大きな福島事故が 起こってしまった事により、単純に中国の事を笑えなくなってしまったのは偽りなき本音ではあります
そこが核心です。ちゃんと理解しているじゃない。
志の問題だと思います。
志を高く持ち、
世のため、人のため、
日本のため、世界のため、
そういう高い志を持てば、
自然と正しい道へ、
進むのです、
戦後の日本のリーダには、
少なくともそういう志が、
あったとおもいます、
政治家にしろ、
企業家にしろ、
エンジニアにしろ、
松下氏、本田氏、
全てそうです、
いつのまにか、
アメリカナイズされた、
合理主義、
悪く言えば金儲け主義に、
毒されてしまっているんですよ、
金のため、
権力のため、
自分の保身のため、
我欲のためという、
醜く低い志だから、
ろくな道へすすまないのです。
全ては只それだけです、
先のエンジニアの流出も
にせのホンダイズムも、
何もかもです。
──
バスで2時間半かかる広州市と珠海市を30分で結ぶとのことで、利用してみました。しかし、開業から1か月以上たっていたにもかかわらず、鉄道の公式サイトにも地図にも駅の場所が載ってない。仕方なくタクシーで向かったのですが、20分かけてたどり着いたのは荒野のど真ん中。さらに広州に到着しても市内中心部に出るまで地下鉄を乗り継いで40分もかかった。結局、乗り換えもなく、運賃も安いバスとトータルの時間も変わらない。本末転倒ですよ
──
http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20110725/zsp1107250945000-n1.htm
何より日本国民の不断の努力によって成り立っているものだという事は既知の範囲であります。
表題の事故に関してですが、中国は早速電車を埋めて証拠隠蔽を始めているようです。
中には、埋めている電車から人の手足が見えているという情報もあります。
遺族の悲しみは計り知れないレベルと思いますが、
こうなってくると先の核実験の被害と同じく隠蔽される事でしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=hQzsoZS9Sp0
http://s.cyrill.lilect.net/uploader/files/201107260232060000.jpg
与党民主はこの中国共産党のやり方を”同じ視点に立っている”と言い、
また全力で支援する方向のようです。(この辺りは政治的であり、物は言い様でもありますが)
(それと、結果的に遺体ごと電車を埋めるのを支援(=日本人の税金を使用)するとか勘弁して欲しいです)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110726/plc11072611240013-n1.htm
ですが、真っ当な日本人は、こんな中国共産党にお金をあげるのではなく、
今こそ管理人の言う通り己の反省及び精進に繋げるべきと思います。
こんにちは。カミタクこと神山卓也
http://homepage2.nifty.com/kamitaku/
と申します。
私の個人公式ブログ「カミタク・ブログ」内の日記記事「「新幹線」と「単なる高速鉄道」の違い〜中国の鉄道事故に思う」
http://kamitaku.cocolog-nifty.com/rock/2011/07/post-f3e0.html
の中から、この貴ブログ記事にリンクを張りましたので、その旨、報告申し上げます。
私は、中国の新幹線事故の背景には、「トータルなシステム」について発想が無い点があると思っております。上記のリンク元の拙ブログ記事では、それについて触れております。