2011年07月24日

◆ 気候工学(気象工学・地球工学)

 気候工学(気象工学・地球工学・ジオエンジニアリング)という手法がある。温暖化対策として、工学的な方法によって地球冷却化の方法を取る、というもの。一種の環境改造である。 ──
 
 環境保護というと、「現状をなるべく改変しない」という保守主義が基本だ。環境保守主義。
 それとは逆に、「変化する環境を逆方向に変更することで中和する」という革新的な発想もある。これは「地球改造」とも見なされるので、保守的な人々の憤激を買いやすいし、また、「トンデモ」扱いされることもある。
 しかしながら、「現状をなるべく改変しない」という方法に比べると、効果は劇的であり、同じ効果のために、非常に低いコストで目標を達成できる。たとえば、「炭酸ガスを増やさない」という目的のために、あれこれと効率改善のための方法を取ると、ものすごくコストがかかるが、「地球を冷やす」という目的のために、別の方法を取ると、非常に低いコストで済むそうだ。(炭酸ガスを減らすのではなくて、微粒子によって太陽光を遮蔽する。)

 このような発想は、気候工学・気象工学climate engineering )・ 地球工学(ジオエンジニアリング geoengineering )と呼ばれる。

 興味深い話がいくつかあるので、紹介しよう。
 コロンビア大学の気象学者ウォレス・ブローカーとクラウス・ラックナーは、石炭火力発電所のCCS技術を大気圏全体に応用できるのではないかと考えている。だが、大気中のCO2を回収するのは気の遠くなるような作業だ。
 世界中の工場や自動車から排出されるCO2は年間約300億トン。それを液化して、レマン湖の容量に匹敵する地中スペースに充填するには、4年弱の時間がかかると予想される。しかも、この試算はCO2排出量が毎年 1.8%増加することも、過去100年間に大量のCO2が既に大気中に蓄積されていることも(具体的な量について信頼できる推定値はない)考慮していない。
 研究者は、地中の奥深くには液化CO2をすべて吸収できるだけの多孔質岩があると考えている。だが、そこまでCO2を送るには長い年月と莫大なコストが掛かる。将来的にCO2の除去に掛かる費用が現在の1トン当たり200ドルから50ドルに下落すると仮定しても、現在の年間排出量を回収するだけで1500億ドルに達するだろう。
 ──
 大気中のCO2濃度はいずれ産業革命前の水準の2倍に上昇、550ppmに達するとみられているが、およそ150万トンのSO2があれば、その影響を相殺できるという(現在のCO2濃度は385ppmだが、何らかの地球工学計画が実施されない限り、さらに上昇することは避けられない)。ピナトゥボ山が放出した 2000万トンに比べて、はるかに少ない量だ(この噴火で放出された火山灰の大半は地表付近で「浪費」され、気温への影響はなかった)。別の研究者は 500万トンのSO2が必要だと試算するが、それでも数十億ドル掛けて飛行機部隊を飛ばせば、散布は不可能ではない。
 この低コストはかなりの驚きだ。06年にイギリスで発表された報告書によると、地球の気温を安定化させるのに必要なCO2排出削減のコストは、世界の年間GDP(国民総生産)の合計の約1%。なかには4%という推定もある。
 太陽光を遮って地球を冷やす案はそれよりはるかに安く、GDPの 0・001%で済む。この方法なら「氷河期も起こせる」と、カルガリー大学のキースは言う。
( → Newsweek
 もちろん、バラ色の話ばかりではなく、デメリットも心配されている。
 手法はさまざまだ。外洋に鉄を散布して植物プランクトンを増やし、大気中の二酸化炭素を減らそうという「海洋肥沃化」もその一つ。専用船で海水を噴霧して低層雲の反射率を高める「太陽放射光管理」による技術も検討されている。
 上空の成層圏に、鏡のように光る硫酸ミスト(霧)を漂わせ、太陽からの熱を宇宙にはね返してしまう技術もある。
 化石燃料を減らさずに、硫酸ミストでの帳尻合わせに踏み切る国が出てくると大変だ。粗雑な技術では、激烈な副作用が予見される。例えば、アジアモンスーン地域における降水量の減少見通しなどである。
 にもかかわらず、米英を中心に研究はますます盛んだ。特定国家による暴走の抑止、温暖化防止の最後の手段としての見極めといった理由が、研究を後押ししている。科学倫理や国際政治の角度からも真剣に検討されている。だが、傍らではベンチャー企業が動く。自然征服への願望も見え隠れする。
( → 産経
 ──

 どちらかと言えば、否定的な見解の方が優勢だろう。「地球改造なんて、とてもおこがましい。人間がそんなことをするのはけしからん」というふうな。

 しかしながら、意識しなくても、人間はいつのまにか地球改造をなしている。「炭酸ガスの増加」とか「フロンの増加」とか「緑地の破壊」とか「海洋資源を奪い尽くす」とか。……こういうことをやっているのを無視して、「人間が地球を操作するのはけしからん」というのは、あまりにも物事を半面的に捉えている。それはつまり、
 「意識して改造しなければ、改造しているのを、容認していい」
 ということだ。言い換えれば、
 「わざと破壊するのでなければ、破壊しても罪はない」
 ということだ。素朴すぎて、お話にならない。

 人間は意識しようとしまいと、すでに地球を改造してしまっている。すでに手を汚してしまっている。その事実を直視することが必要だ。「あえて地球改造をしなければ、構わない」なんていう発想では、地球破壊の罪は免罪されないのだ。

 比喩的に言おう。
 人間がある土地を丸裸にして、砂漠にしてしまった。そのあと、どうすれば許されるか? これ以上、何もしなければいいか? いや、あえて植林するべきだ。そのような形で、既存の自然を改造するべきだ。悪い方向に改造したならば、良い方向に改造するべきだ。そうしてこそ、罪はあがなわれる。逆に、「砂漠のまま放置する」というのでは、砂漠化はいっそう進んで、いっそう広い土地が砂漠化してしまう。(その例がオーストラリアだ。緑豊かだった大陸が、いつのまにか砂漠化してしまった。 → サイト内検索
 
 ──

 私の立場を言おう。
 私はもともと、このような「気候工学」と同様の発想を取っていた。
  → 地球緑化計画
  → 海洋緑化計画
  → 炭酸ガスの固定炭酸ガスを南極で封入

 私としては、これまでは「炭酸ガスの固定。ただし南極で」という方針を取っていた。ただし、上記の記事によると、炭酸ガスの固定は(普通の方法では)コストがかかりすぎるらしい。
 というわけで、他の方法などを、本項では紹介しておいた。
  


 [ 付記 ]
 地球工学(地球改造)の発想が成功している例を、二つ掲げる。

 (1) 砂漠緑化

 砂漠を緑化するに際して、単に人手で緑化するかわりに、工業技術によって緑化する、という方法がある。
  → 砂漠緑化のチューブ

 (2) 植樹による海洋資源回復

 陸地で植樹して、森林を回復させる。すると森林の肥沃な成分が川に流れて、海洋に達して、その湾口部のあたりで海洋資源が回復する(豊漁になる)。
  → 森で海を救おう植林事業



 【 関連サイト 】
 
 → 地球工学 - Wikipedia

 → Geoengineering - 英語版 Wikipedia

 → 地球工学ベスト10 (トンデモ扱いの批判記事)



 【 関連書籍 】

     

気候工学入門        地球の論点

posted by 管理人 at 13:01 | Comment(1) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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Posted by 管理人 at 2011年07月24日 18:07
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