2011年07月22日

◆ ホンダの自主独立

 自動車会社のホンダの「自主独立路線」というものが、新聞に紹介されている。
 いかにも立派そうに書かれているが、私はこれを「唯我独尊」の失敗と見なす。 ──
 
 自動車会社のホンダの「自主独立路線」というものが、新聞に紹介されている。(朝日・夕刊・2面 2011-07-22 )
 多くの自動車会社が他社との連携に走るなか、ホンダだけは「自主独立」路線を保ったそうだ。その理由は、経営理念が「作る喜び・売る喜び・買う喜び」であって、株主の利益ではなかったから、という話。(松下幸之助の話にも似ている。)

 朝日の記事では、これを美談のように書いているが、「自主独立」は「唯我独尊」と紙一重だ。そして私はこれを「唯我独尊」と同等の失敗と見なす。

 ──

 なぜ失敗か? 自動車そのものについては、他社と連携しないのは、構わない。それはそれで、いかにもホンダらしい。
 しかし、自動車の周辺技術は別だ。また、特許に関する先端技術も別だ。
 たいていの会社は、周辺技術では他社と連携するし、特許に関する先端技術は他社から導入することもある。しかしホンダはあくまで自社開発にこだわる。しかしながら自社の開発資金は限られている。当然、穴や失敗が出てくる。

 ホンダの失敗の最大例は、次の二点だ。
  ・ 電気自動車に大きく後れを取ったこと。(燃料電池にこだわったせい。)
  ・ ハイブリッドで古い技術を取っていること。


 この二点は、業界では広く知られたことだから、いちいち解説するまでもあるまい。
 ( ※ 一応、最後の[ 付記 ]に書いておいたが。)

 ともあれ、ホンダには、こういう大失敗があった。そしてその理由は、「自主独立」という「唯我独尊」の路線だろう。日産もトヨタも、他社との連携を取って、自社の技術の足りないところを補おうとした。なのにホンダだけは、「すべて自主開発」という路線を取ったあげく、あれにもこれにも手を出しすぎて、どれも寸足らずのようになってしまった。

 ホンダの経営は、あまりにも頭が固すぎる。ホンダの経営の本質は、「ホンダイズム」であったはずだ。それは「自分の信じる独創性の道を進み、他の雑音にはまどわされない」ということであった。そして、それが成立するのは、自分に独創性がある場合のことだ。
 なのに、今の経営者は、自社には独創性が無いまま、単に「他人とは手をつながない」という路線になっている。それは「自主独立」ではなく「唯我独尊」にすぎない。
 ホンダの「自主独立」は、エンジン開発という、(二輪に基づいた)最優秀技術の上に成立したものだった。なるほど、エンジン開発ならば、それでいい。ホンダ以上の会社などはろくにないはずだ(った)からだ。しかしエンジン以外の、燃料電池でも、ハイブリッドでも、電気自動車でも、あれもこれも自社だけで開発しようというのは、当初の「ホンダイズム」とは縁もゆかりもないものだ。それはただの「独りよがり」にすぎない。ろくに実力もないくせに、プライドだけは人一倍だ。無能なやつほど、そういうプライドが強い。
 「自主独立」を唱えることができるのは、本田宗一郎のような傑出した人間がリーダーとなる場合だけだ。ただの凡人であるホンダの経営者が、自分の無能も理解できないまま、本田宗一郎の生き方だけを真似しようとすれば、利口のフリをするバカであるだけにすぎない。いわば、鳥の真似をして飛ぼうとして、断崖から墜落するようなものだ。

 今や、ホンダイズムが最も良く生きているのは、マツダである。小さな会社のくせに、ガソリンエンジンでは世界最高レベルに達した。(その理由は これ
 「このエンジンを開発するのは、ホンダであるべきだった」と悔しがる声がある。なるほど、その通り。もしホンダにホンダイズムが残っていれば、この技術を開発できただろう。しかし今のホンダには、ホンダイズムは残っていない。今のホンダにあるのは、格好だけ本田宗一郎の真似をした、ただの「独りよがり」にすぎない。今のホンダは、昔のホンダからは、あまりにも懸け離れたものになってしまっている。
 
( ※ それは、真のホンダイズムではなくて、格好だけを真似した、エセ・ホンダイズムである。そして、それを称賛するのが、朝日の記事だ。)
( ※ ただし、フィットシャトルのあたりには、まだホンダイズムが生き残っているようにも見える。先代フィットもそうだったな。)



 [ 付記 ]
 ホンダの失敗の二点を示す。(本文参照)

 (1) ホンダは燃料電池車にこだわりすぎた。そのせいで、電気自動車の開発には後れを取った。日産のリーフのような車もなく、トヨタのプラグイン・ハイブリッド・プリウスのような車もない。はたまた、日産のようにNECと提携することもなく、トヨタのようにサンヨー・パナソニックと提携することもない。GSユアサと提携しているが、相手があまりにも弱小すぎる。それだったら韓国メーカーの方がまだマシだろうに。
 それでも、電気自動車を一応、発売する。しかし私としては、とても期待できない。
   
 (2) ホンダのハイブリッドは、パラレル方式。これは「低コストだ」という触れ込みだが、別に低コストではない。ハイブリッドシステムそのものは低コストだが、トランスミッションを省略できないので、その分、コストがかかる。総合的には、トヨタ式のハイブリッドよりも大きく劣る。燃費の点でも、プリウスには遠く及ばず、マツダの次期デミオと同程度だ。次期デミオ や、将来の プリウスC(燃費は超優秀)が出現したら、現在のフィット・ハイブリッドはほとんど売れなくなるだろう。



 【 関連サイト 】

 (1)
  → ホンダイズムの話
  
 (2)
  → 兼坂弘の話
 トヨタが中でももっとも真剣に兼坂弘さんの提言に耳を傾けているようで、兼坂弘さんが取材に訪れるとそれぞれのオーソリティー6,7人が出席してくれるそうです。これに対しホンダは 「担当でないから分かりません」 ということが多く、「担当者を連れてこいっ」 といってもこないそうです。
 ホンダは兼坂弘さんの毒舌に腹を立てて取材拒否したこともあるそうです。大人気ないですね。




 【 追記 】
 似た話がある。
 アップルのジョブズの創業者精神について連続ツイートした、まとめ。(茂木健一郎)
 → http://togetter.com/li/164954

 最後に、こう結論する。
 「停滞する日本には、ジョブズの精神が少しは必要なはずだ。」

 しかし、そういう「ジョブズに見習おう」「ジョブズの真似をしよう」というのを、凡人がやれば、「無能なくせにプライドだけは人一倍」というホンダみたいなことになる。
 
 p.s.
( ※  一般的に言って、凡人は天才のマネをするべきではない。では何をすればいいかというと、優秀な人が頑張るのを(邪魔せずに)援助すればいい。それが最も能率を上げるコツだ。)
( ※ たとえば、あなたが経営者ならば、最も優秀な人間を探り出し、その人に権限を与え、その人を補佐する人をまわりに配置すればいい。)
( ※ 最悪なのは、無能な人間がトップになって、トップダウンですべてを決めることだ。菅直人とか橋下とか石原とかがそうだ。……強力なリーダーがいるとしても、そのリーダーが無能か有能かで、結果は正反対となる。無能なリーダーが有能なリーダーの真似をするのが、最悪である。たとえば、茂木健一郎とか池田信夫とかがリーダーになったら…… (^^); )
posted by 管理人 at 19:57| Comment(2) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2011年07月23日 13:17
自主独立ということは、「他人の独創は評価しない」ということでしょう。

自分に創造性があるから他人と手を組まないというのはおかしな話だと思うのだが。

独創か模倣かが問題なんじゃなくて、独創性を発揮しないと究極のものは作れないから天才は独創性を発揮しなくてはならなくなるというだけでしょう。

独創性を発揮しなければならないというのが凡人の発想だと考えれば納得がいく。

天才は独創性を発揮する人じゃなくて、独創性を発揮しないと実現しないものを求める人なんだよきっと。
Posted by まだら at 2011年08月29日 07:59
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
過去ログ