(1) 企業の休業の増加 (需要減)
(2) 自家発電設備の稼働(供給増) ──
スマートメーターというと、家庭用のスマートメーターがしばしば話題になる。その意図は、「エアコンを止める」ということだ。
→ 日経
だが、エアコンを止めるというのは、人間性を無視した発想だ。人間は生きることをやめることはできない。また、人間は猛暑のような苦痛には耐えがたい。(高齢者では死ぬことすらある。)
「電気が足りなければ人間を苦しめればいい。そのためには料金値上げで電気を使えなくすればいい」
という発想は、ほとんど迫害者や独裁者の発想であり、人間性を失っている。(そんなことを唱えるのは、橋下府知事みたいな、人間性を喪失した人ぐらいだ。)
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しかしながら、家庭では無理でも、産業では可能だ。なぜなら、人間は生きることをやめられないが、企業は活動することをやめることができるからだ。(ここが決定的な違い!)
この意味で、スマートメーターの導入にともなって、企業を営業停止に導くことが可能となる。次の手順で。
・ スマートメーターを導入する。
・ 需要のピーク時には料金を著しく上げる。
・ その時期をあらかじめ明示しておく。
このうち、三番目が重要だ。具体的には、次の通り。
「7月20日から8月5日までの需要ピーク時(午後1時〜午後5時)の電気料金を著しく上げる。そのことで、夏季休業( or 夏季半ドン)へ導き、ピーク時の電力需要を抑制する」
このようにして、産業用のスマートメーターによって、大幅な需要減をもたらすことができる。
( ※ そのためには、該当の時間帯の電気料金を 10倍ぐらいにすればいい。その一方で、他の時間帯の料金を5%ぐらい下げればいい。)
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以上の制度を整えた場合、「需要減」だけでなく「供給増」ももたらせる。それは「企業における自家発電設備の稼働」である。特に、病院やホテルや企業本社などにおける、非常用のディーゼル式自家発電設備を稼働させることだ。
7月20日から8月5日までの需要ピーク時の電気料金を著しく上げても、夏季休業を取りにくい企業もあるだろう。たとえば、ホテルや商業施設だ。これらの企業では、もともとある自家発電設備を稼働すればいい。(たいていは非常用のディーゼル式自家発電設備だ。)
これらの非常用のディーゼル式自家発電設備は、運転コストが高いので、万一の場合以外には、使われないのが普通だ。しかしながら、スマートメーターの導入にともなって、「7月20日から8月5日までの需要ピーク時の電気料金を著しく上げる」というふうになれば、その割増料金(10倍?)よりも、自家発電の方がコストが下がる。そこで、これらの企業では、自家発電の設備を稼働するようになる。
つまり、ピーク時に限り、(本来は眠っていた)非常用のディーゼル式自家発電設備が稼働されるようになる。
これは、基本的には、「ボトルネックの解除」という発想そのものだ。次の本にも説明されている話がぴったりと当てはまる。
ザ・ゴール ― 企業の究極の目的
この本で示されているように、ボトルネックを解除するには、ボトルネックを解除するための、専用の供給を使えばいい。その専用の供給は、部分的には高コストであってもいい。(ディーゼルなどにより高コストであってもいい。)
一方、システム全般の供給能力を高めるのは、愚策である。それではコストがかかりすぎる。また、ピーク時以外には、システムの全体の稼働率が下がり、システムの全体が無駄な部分をたくさんかかえる。(たとえば大型の火力発電所を増設すれば、ピーク時以外にはそれがまるまる無駄になる。)
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まとめ。
スマートメーターの導入により、可変的な料金制度が導入されば、産業用の需要と供給をともに変動させることができる。そのことで夏のピーク時の電力逼迫を解除できる。このことは産業用ではきわめて有効だ。
一方、家庭用にスマートメーターを導入することは、本質的に間違った方針だ。それは「数字のつじつま合わせ」だけを考えており、人間性を喪失した発想だ。(橋下府知事など。)
[ 付記1 ]
需給調整契約とはどう違うか?
需給調整契約は、直前に決まるので、会社は「営業しながら業務停止」という形になる。たとえば、社員が出社して、会社で休んでいる。これは多大なる無駄だ。そんな無駄をしたがる会社は少ない。だから 320万kW という限られた量でしか削減できない。
本項の提案によれば、「7月20日から8月5日まで」という形で事前に決まるので、その該当日をあらかじめ全休(出社なし)にすることができる。これはただの休業日であるから、無駄はない。したがって大規模に実施することが可能で、大規模に電力消費を抑制できる。
たとえば、全企業が5日ずつかわるがわる夏休みにすれば、7月20日から8月5日までの産業用の電力消費を3分の1にできる。欧州のようにバカンスを取って7月20日から8月5日までをまるまる休むことにすれば、産業用の電力消費をゼロにできる。(それは日本ではちょっと無理だが、欧州では小売店でさえ長期のバカンスを取っている。都会にいるのは旅行者だけ。ホテル以外の店が開いていないので、途方に暮れる。)
[ 付記2 ]
家庭用のスマートメーターは、次の意味でなら有効である。
「万一の場合に、自動的にエアコンを10分間ぐらい止めることで、瞬間的な電力需要の大幅上昇を止める」
現状では電力需要に「余裕」が必要だが、その余裕をなくすことが可能である。つまり、常に電力を 100%利用することが可能である。仮に 100%を超えそうになったら、その部分を自動的に OFF にできるからだ。
これは「停電回避」策としては有効である。
→ スマートエアコン
→ 大停電を防ぐには
ただ、このこと(スマートメーターによる家庭用のエアコンの自動 OFF による需要減)の効果は、あまり大きくない。せいぜい数%であろう。その程度であれば、「電圧を下げる」ということでも、対処が可能だ。(それによって照明や冷蔵庫やテレビの電力消費を下げる。)
数%程度の調整であれば、家庭用エアコンの OFF よりも、電停化に頼る方がいい。そのことで常に電力を 100%利用することが可能である。
なお、仮に 100%を超えそうになったら、家庭用のスマートエアコンに頼るよりも、揚水発電( 650万kW )や、需給調整契約(320万kW)に頼る方が、ずっと効果が大きい。合計で 970万kW もある。家庭用のスマートメーターでは、これほど大規模に減らすことはできない。
[ 余談 ]
冷たい飲料を提供する自販機は、電力をたくさん消費しそうに思える。そこで石原都知事が噛みついた。
→ 工場止めるより自動販売機止めたほうがよっぽど国民の役に立つ
しかしこれは都知事の勘違い。自販機は、あらかじめ冷却を強めることで、午後1時から4時までの電力消費を停止する。ピーク時における自販機の電力消費は、ごく微小である。
→ 飲料自販機の夏場の「ピークカット機能」
→ 日本コカ・コーラ「自動販売機の節電」
ピーク時という概念を正しく理解すれば、正しい対処を取ることができる。(独裁的なお馬鹿な知事には無理だが。)
【 関連項目 】
→ 自家発電の電力
※ 産業用の自家発電をうまく利用することで、電力の需給逼迫を回避できる、という話。
回路も一般負荷に供給できるようにはなっていません(まあ、改修すればよいのですが)。
飽くまで非常用でほとんど運転されないことが前提のため機器仕様自体が常用と異なり、長時間or頻繁な発停をかけると壊れてしまいます。騒音規制にも引っかかります。
常用非常用兼用で設置されている建物で稼働率を上げてもらう(既に実施中ですが)とか、機器更新時に非常用専用から兼用に改修を促進(もしくは優遇、義務付け)するとか、そういう方法もあるかと思います。(燃料貯蔵が一番ネックだったりします)
ある程度の規模の施設になると電気料金抑制の観点からデマンドコントロールをしていることも多いでしょうから、デマンド設定値を下げることで施設ごとにピークカットを促進することも可能かと思います。
今後の新設や改修の際には、デマンドコントローラーは義務付けたほうが良いのかも知れません。
そうですね。
ただ、私の狙いは、一年に数日ぐらいは試運転した方がよくて、それを夏場のピーク時に持ってきてはどうか、ということです。
新聞記事によると、あるとき非常用電源を試しに動かしたら、煙が出てきて、大騒ぎになったそうです。これじゃ役立たずだ。ゴミみたいなもの。
だから、一年に数日間ぐらいは、試運転した方がいいと思います。
その時期に、売電はしなくても、自家用の電力に組み込めれば、需要を減らせる。問題は、系統電力との共存が可能かどうかで、そこがポイントになりますね。できなきゃ、仕方ないけど。
おっしゃる点はいろいろと参考になりました。