私の考えでは、シリコン型では無理だろう。普及のためには、「シリコン型以外で、大幅な技術革新があれば」という条件が必要だろう。
《 注 》 あとで一部修正しました。 ──
※ 横線 ─── で消してある箇所の正誤については、最後に解説しています。
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太陽光発電は、長期的には普及するだろうか? 換言すれば、価格は大幅に低下するだろうか?
この問題に対して、「価格は大幅に低下するだろう」という肯定派の見解がある。しかしその理由を聞くと、「棒線グラフではそうだったから、このまま推移すれば」という「延長法」の発想だ。それは、バクチやヤマカンの発想であり、科学の発想ではない。
科学的に考えると、どうか? これまでの価格下落の理由は、こうだった。
・ ドイツやスペインにおける補助金政策
・ 中国系企業における価格下落
前者(補助金)は、単に補助金で販売価格を下げるだけだから、あまり意味はない。「大量生産」の効果は、少しはあるが、基本的にはコストの低下はごくゆるやかだ。
後者(中国)の効果は、人件費の安さによるものであって、1回限りのコスト下落だ。今後も同じように下落し続けるわけではない。
以上のことから、次のように結論できる。
・ 太陽光発電のコスト下落には、技術革新が必要だ。
・ しかしながら技術革新は停滞している。
さらに言えば、価格上昇の可能性もある。
「半導体製造の残り物としてのシリコンが安価で入手できたが、それも数に限度がある。太陽光発電の普及にともなって、シリコン不足が起こりそうだ。そうなると、原材料のシリコンの価格はかえって上昇する」
総合的には、価格が上昇することはないだろうが、
──
シリコン型の太陽電池には、発展の見込みが
しかしながら、これらは、いまだ技術革新の途上にある。有望ではあるが、まだまだ普及段階には達していない。普及しているのは、相も変わらず、シリコン型だ。
そこで、結論としては、こうなる。
「
要するに、先の見通しは不明である。
そして、ここから、補助金政策については、次のように結論できる。
「シリコン型の普及に大量の補助金を投入しても、無駄である。それで普及するのはシリコン型だが、シリコン型がいくら普及しても、それはシリコン型の価格低下をもたらさない。補助金を投入するならば、薄膜型の太陽電池がコストダウンしてからだ。そのあとで、薄膜型の太陽電池を大量に普及するために、低額の補助金を投入すればいい」
──
こうして、何をすればいいかがわかるし、何をしてはいけないかもわかる。「シリコン型の普及のために大量の補助金を」という方針は、明らかに間違っているのだ。それは、効果がない(補助金が無駄になる)ばかりでなく、有害ですらある。なぜなら、それによってシリコン型の太陽電池工場がいくつも建設されれば、それが無駄になったときに、莫大な損失が発生するからだ。たとえば、シャープは工場の負担のせいで、倒産する危険がある。
[ 付記 ]
私が思うに、シリコン型の太陽電池は、もう先が見えている。最先端の技術とは言えないと思う。日本がやるなら、研究開発だけは日本でやって、工場は中国に建設するべきだ。あるいは、研究開発も中国に置いて、日本は資本だけをもっていてもいい。
いずれにせよ、シリコン型の太陽電池は、もはや先端産業ではない。中国企業に任せた方がいい。
実際、太陽光発電のシェアでは、すでに中国企業(サンテック)が世界トップになっている。日本でも、ヤマダ電機で購入しようとすると、サンテックの製品を推奨してくる。なぜか? コストパフォーマンスでもいいが、25年の出力保証という品質面で優れているせいらしい。(日本企業はたったの 10年保証だ。)
日本企業はもはや勝ち目がないと思う。工場を作って、投資負担に耐えかねて、倒産するのは、馬鹿げている。さっさと撤退した方がマシかもしれない。
シリコン型の太陽電池というのは、かつてのパソコンに似た状態になってきている。こんなものは中国企業に任せた方が良さそうだ。
ちなみに、ドイツの太陽光発電の企業は、補助金政策のおかげで大幅に売上高を伸ばしたが、現在では中国製品との競争で大幅に業績が悪化している。もしかしたら倒産するかもしれない。日本企業(特にシャープ)は、その危険性がある。シャープは「日本では最大の太陽光発電の企業です」と宣伝しているが、そのせいで、かえって倒産の危険が高まっているのだ。勝ち目の薄いバクチに、莫大な金をかけすぎている。私だったら、シャープの株だけは買いませんね。(空売りならしてもいいが。……結果が出るのは数年先だから、空売りはちょっと無理。)
【 関連項目 】
→ リンク集(太陽光発電)
→ 太陽光発電の将来と地域 (朝日新聞夕刊 2011-05-25 の紹介。)
※ 太陽光発電量が世界で最も多いのはドイツだが、そのドイツでさえ、
たったの2%にすぎない.そのことは朝日新聞自身が報道した。
【 追記 】 (修正について)
本文中の一部に横線を引いて、取り消しました。次の趣旨。
誤 シリコン型の太陽電池はもはや値下がりの余地がない。
正 シリコン型の太陽電池はさらに値下がりの余地がある。
これはどうしてかというと、新しい技術開発にメドが立ったからだ。
私が本項を書いたときには、いちいち情報を調べなかったので、2〜3年前の古い情報に依拠していた。しかしこの2〜3年の間に、状況は一変していた。
シリコン型の太陽電池の発電効率は、ここのところ、ほとんど上昇していない。
しかしながら、シリコン製造の技術については、急激な技術革新が見られた。それまでは CPU などの高純度シリコンの余り物を使っていたのだが、新たに純度が低めのシリコンを大量生産する技術が開発されつつある。この技術を使えば、太陽電池用のシリコンを数分の1のコストで製造できるようになりつつある。
→ Wikipedia 「ソーラーグレードシリコン」
というわけで、シリコン型の太陽電池にも、コストダウンという面では、かなり明るい面が出てきた。そして、それは、「補助金で大量生産する」というのとはまったく異なる、技術開発によってなされたのだ。
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この先、太陽光発電の主役が、シリコン型になるか、薄膜型になるかは、はっきりしない。ただ、ひところは、「シリコン型はたぶん衰退するだろう」と思われたのに、ここ1〜2年では逆転して、かなり有望になってきた、と言える。
では、どうすればいいか? それは、先に何度も述べたとおり。「様子見」だ。つまり、こうだ。
「太陽光発電の勝者が、シリコン型になるか薄膜型になるかは、今のところ様子見する。そして将来的に、火力にも対抗できるような実力を備えたものが出現したら、そちらを補助金で普及させる」
この場合、相対的な勝敗は関係ない。対抗馬は、火力だ。火力に対して、どちらも勝者になるかもしれないし、どちらも敗者になるかもしれない。いずれにせよ、火力に対する勝者に対してだけ、補助金を出せばいい。どちらも敗者なら、どちらにも補助金を出さなければいい。
( ※ 夜間には発電できないような太陽光発電には、もともと補助金を出す価値はろくにない。たとえば、「日中には発電できますよ」という太陽光発電の宣伝文句に引かれたら、「夜間には発電できませんよ」という現実のせいで、夜間にはクーラーを使えなくなる。そうなったら、踏んだり蹴ったりだ。)
逆に薄膜でもCIS型では銅とインジウムが高騰して価格が下がりません。
ところでシリコン型と言っているのは結晶型の事ですよね。薄膜でもシリコンは少量ですが使ってますから。
ご趣旨に沿って、本文を大幅に修正しました。(一部は削除して、最後に 【 追記 】 を加筆しました。)
火力、特に最近のLNG発電は優秀です。しかし、はっきりしていないとはいえCO2問題が無視できないなら、資源ある限り使い続ける訳にもいかず、火力の使用量削減が必要だと思います。
太陽光はじめとする自然エネルギーは必然的に発電量の不安定性を持っています。蓄電池はまだまだ高コスト、揚水発電はこれ以上開発の余地はないです。基本的に不安定エネルギーは火力・水力の調整力が頼りで、不安定性を火力で補いつつ火力の燃料使用量を減らすのが少なくともここ20年の使い方ではないでしょうか。もちろんコスト高の間はコスト低下誘導しつつ全体量を制限しながら、過大負担にならないように工夫が必要と思います。今の家庭用でやってる設置補助金の年間件数・総額制限などは重要かと思います。
遠い未来には火力にとってかわる可能性も語られていますが、これは蓄電供給平準化込みでコストダウンが成し遂げられるか、火力のコストが跳ね上がる、かなり遠い将来の話かと思います。
セル単体なら、市販品がとうに20%を越えています。パネルでも19.5%までは上昇しています。
URL書いてると受け付けないようなので、HIT230とSunpower E19で検索お願いします。