【 注記 】 本項には続編があります。下記。
→ ティラノサウルスと羽毛 2
続編の方が新しいので、続編を読むだけで十分です。
【 注記 】 本項は、操作ミスで、内容が続編の内容に化けていました。
( 2013年12月24日 〜 2014年05月24日 まで。)
現在では、元の内容に復元されています。
「ティラノサウルスに羽毛が生えていた」という説がある。この説自体は前からあるが、恐竜の展覧会で、その復元画像が見られる。次のサイトにある。
→ 「恐竜博 2011」
一番下の方にある画像がそうだ。後頭部から背中にかけて、羽毛が部分的に生えている。
ただし、羽毛といっても、普通の鳥の羽とは違って、ボアみたいなものだ。
この画像を見ると、まるで ウド鈴木 みたいな感じで、いかにも不様である。ティラノサウルスはこんなにカッコ悪かったのか?
これが疑問だ。
──
そもそも、羽毛をもつメリットは何か? 羽毛のメリットは、(飛ばない生物では)保温だけである。
しかしながら、大型の動物は、体の大きさだけで保温が十分なので、羽毛を必要としない。一方、幼体では、羽毛があった可能性もある。
→ ティラノサウルス
同様のことは、Wikipedia にも書いてある。
ティラノサウルスが鳥類のような恒温動物であったか、一般的な爬虫類と同じく変温動物であったかについて、決定的な結論は出ていない(恐竜#恒温動物説も参照)。ただし、彼らは羽毛恐竜として知られるコエルロサウルス類の一種で、鳥類とも比較的近縁であることから恒温動物であったとの見方も有力になっている。羽毛があったか否かについては1990年代中頃から議論の的となっている。ティラノサウルス上科の原始的な種(ディロング)に羽毛の痕跡が発見されていることから、最近では、少なくとも幼体には羽毛が生えていたのではないかと考えられるようになってきている(この説では、体の大きさで体温を保てるようになる成体は羽毛を持たない)。また、NHK のサイト にも、似た記述がある。
いま恐竜の姿がまったく新しいものに生まれ変わりつつあります。その最たるものは、羽毛をもったティラノサウルスの子どもです。直接の祖先が羽毛をもった恐竜だったことがわかり、ティラノサウルスは子ども時代に羽毛に覆われていた可能性が高くなってきました。念のために、哺乳類の大型生物を見よう。ゾウだ。
→ ゾウの赤ちゃん1 ,ゾウの赤ちゃん2 ,ゾウの赤ちゃん3
これらの画像を見ると、先の復元画像に似ている。ただし、あれほどはっきりと「生える領域/生えない領域」が区別されない。生える領域でも密集はしないし、境界も曖昧だ。
一方、キリンもあるが、こちらは羽毛がない。
→ baby giraffe の画像検索
──
以上をまとめて結論すると、次のように言える。
ティラノサウルスに羽毛があった可能性はある。ただし、次の条件で。
・ 羽毛は、羽根ではなくて、ボア状である。
・ 生えるとしても、密集しない。領域の境界も曖昧。
・ 生える場所は、後頭部、背中、前脚全面など。(ゾウの赤ちゃんと同様。)
・ 生えるとしても、幼体に限られる。成体では生えない。
・ 幼体でも生えていなかった可能性も、十分にある。何とも決めがたい。
[ 付記 ]
私の考えを述べる。
実際には生えていたかどうかというと、私は「生えていなかった」の方に賭けたい。「幼体のときだけ生えて、成体になると消える」というのでは、遺伝子的に効率が悪そうだからだ。たかが爬虫類に、それほど複雑なシステムがあったとは思えない。それよりは、「幼体のときには発熱量が高かった」という方がわかりやすいし、簡単だ。
どうせ羽毛が生えるならば、本格的に生えている方がいい。それはオビラプトルの系統だ。エウマニラプトルの系統(ティラノサウルスを含む)では、羽毛は飛ぶためにあるだけで、保温のためにあったとは思えない。
→ 恐竜と鳥の系統図
→ 鳥型生物の2系統
要するに、ティラノサウルスの先祖では羽毛が生えていたとしても、ティラノサウルスではもはや羽毛は退化した(消失した)と思える。
特に、ボア状の羽毛(未発達な羽毛)があったというのはおかしい。というのは、ティラノサウルスよりも前の恐竜(小型の古鳥類)で、すでに十分発達した羽毛があったからだ。羽毛の進化の順 からしても、それ(進化の逆行)はありえそうにない。
ティラノサウルスのような大型恐竜では、羽毛など不要だし、あるだけ邪魔だ。そんなものはない( or 退化して消失した)と考える方が妥当だ。
「ティラノサウルスには羽毛があっただろう」
という発想は、
「恐竜が進化して鳥類になった。そしてティラノサウルスは進化した恐竜だから、羽毛をもっていたはずだ」
という推理に基づく発想だ。しかしながら、私の考え方では、
「羽毛恐竜には二系統ある。そのうち、エウマニラプトルの系統(ティラノサウルスを含む)は鳥にはならなかったが、オビラプトルの系統は鳥になった」
というふうになる。とすれば、エウマニラプトルの系統(ティラノサウルスを含む)の系統に羽毛があったからといって、その後期に当たるティラノサウルスが羽毛をもっていたということにはならない。むしろ、羽毛を退化させた(消失した)と考える方が理に適っている。
[ 補足 ]
「幼児期だけ羽毛がある」というのは、生存戦略としては優れていない。無駄があるからだ。
むしろ「初夏に誕生する」という方がいい。初夏に誕生して、夏を過ごして、秋にはも体が大きくなっている。(ティラノサウルスの成長速度はものすごく速い。)……この方がずっと有利だ。実際、たいていの爬虫類や鳥類はそうしている。哺乳類の多くもそうだ。
ここまで考えると、「幼児期だけ羽毛がある」というのは、馬鹿げているので、およそありえそうにない、とも思える。ゾウの赤ちゃんの体毛だって、たいして機能性はない。あんなものはなくてもいいのだ。
「幼児期だけ羽毛がある」という学説は、「恐竜は鳥の先祖だ」という発想から生まれた、理屈倒れの発想だろう。
( ※ 恐竜が鳥の先祖だ、という説から、「鳥の先祖であるティラノサウルスには鳥に似た羽根があっただろう」と推定するわけだ。しかしながら、そもそも、ティラノサウルスは鳥の先祖ではない。鳥の先祖は、オビラプトルの系統である。前述の通り。とすれば、「鳥の先祖であるティラノサウルスには鳥に似た羽根があっただろう」という推定は、もともと成立しない。ティラノサウルスのようなエウマニラプトル類に関する限りは、「恐竜は鳥の子孫だ」という逆順が成立するとも言えるかもしれない。ただしここで言う「鳥」とは、現在の鳥につながる新鳥類ではなくて、始祖鳥のような古鳥類[鳥型恐竜]のことである。)
ティラノサウルスの精密模型
【 関連項目 】
→ ティラノサウルスと羽毛 2
※ 本項の続編です。続編の方が新しい認識です。
(いくらか考えを改めました。)

とりあえずはググってみてください。
新種ティラノ、全身に羽毛 中国・遼寧省で発見
→ http://j.mp/HKTaVc
これは、「ティラノサウルスに、本格的な羽毛をもつ新種があった」というものだが、本項には矛盾しない。
ポイントは、「白亜紀前期」ということだ。普通のティラノサウルスは、白亜紀末期だ。一方、今回のニュースは、きわめて古い時代だ。
本項の趣旨は、
「エウマニラプトルの系統(ティラノサウルスを含む)の古い時代のものには、羽毛はあっただろうが、白亜紀末期のティラノサウルスでは、羽毛は退化したのだろう」
というものだ。
今回のニュースは、それに矛盾するものではなく、むしろ、それを補強するものだ。
今回のティラノサウルスの新種は、普通のティラノサウルスのことではなく、「ティラノサウルスの古い祖先種」と見なす方が妥当だ。
なお、「ティラノサウルス」または「ティラノサウルス・レックス」が羽毛をもっていた、という報道があるが、不正確だ。 or 間違いだ。
今回の恐竜は、いわゆるティラノサウルス(= ティラノサウルス・レックス)ではなくて、その仲間である古代種・祖先種である。比喩的に言えば、人間に対する類人猿みたいなものだ。類人猿が長い体毛をもっていた、という化石が見つかったからといって、人間が長い体毛をもっている、ということにはならない。祖先種と子孫種を混同してはならない。
報道では、この混同が見られる。「ティラノサウルス」言葉を聞いて、ほぼ同一種か兄弟種だと思っていうのだろう。実ははるかに古い祖先種なのだが。
→ http://openblog.meblog.biz/article/20270234.html
( 2013年12月24日 〜 2014年05月24日 まで。)
現在では、元の内容に復元されています。