2011年06月24日

◆ 太陽電池か 燃料電池か

 原発や火力発電に代わるものとして、太陽光発電が話題になっているが、別の有力候補がある。燃料電池だ。 ──

 太陽光発電に代わるものとして、コジェネ型のガス発電(エコウィル)というものを調べていたのだが、使い勝手が悪く、発電装置としてはあまり適していない。
 一方、燃料電池ならば、その問題がない。

 燃料電池は、今のところは普及初期段階だが、その点は太陽光発電(太陽電池)だって同様だ。どっちもコスト的には、ちょっと無理がある。
 ただし、太陽光発電の方は、莫大な補助金で普及させよう、という動きがある。
 しかし、それだったら、燃料電池を補助金で普及させても、同じことだろう。
 要するに、どちらも似たようなものだ。

 ──
 
 燃料電池は、次の特徴がある。
  ・ 自動車用と違って家庭用は大型である。(小型化の必要がない。)
  ・ その分、コスト的には有利である。
  ・ 熱効率は 80%ぐらいになる。(発電と給湯の双方に使うので無駄がない。)
  ・ 安定的な発電が可能なので、系統電力への組み込みも可能。
  ・ 発電タイプとしては、火力式の自家発電。(都市ガスによる)


 ──
 
 燃料電池は、すでに有名なものがある。コマーシャルを見た人もあるだろう。
  → エネファーム (エネゴリくん)
  → パナソニック

 ──

 ともあれ、太陽光発電と燃料電池は、どちらも似たような段階にある。普及させるにはコスト高だが、技術開発による将来性の見込みは有望である。
 だったら、片方だけにこだわるのも変だ。両方を同時に後押ししたらいい。(過度にならない範囲で。)
 これが私の結論だ。

( ※ つまり、「太陽光発電」ばかりをやたらと後押しせず、「燃料電池」も同じぐらい後押しすればいい、……というわけ。太陽光発電には世界中が注目しているが、こういうときにこそ、逆張りで、人々があまり注目していないところに研究開発で注力すると、ひょっとしたら世界の家庭エネルギーの大半を支配することができるかも。……青色 LED で逆張りして大成功した例もあるし。)
( ※ 要するに、他人と同じことをやっていても、大成功の目は少ない、ということだ。)
 


 [ 付記 ]
 太陽光発電については、コスト論とは別にエネルギー論から擁護論が出そうだ。「自然から産出されるので、エネルギー的な元手がかからない」と。
 しかし、その点で言えば、燃料電池の方が上だ。燃料電池は、熱効率が 80%だ。これはつまり、熱効率 40%でお湯を沸かすのに比べると、廃熱の 60%で発電していることになる。60%のうちの 40%で発電し、20%を捨てている。
 とすれば、これまでは無駄に捨てられた 40%の熱が有効利用されるわけだから、 40%の分だけ、地上を冷却する(正確には加熱しない)効果がある。つまり、夏季には都市温暖化(ヒートアイランド)を阻止する効果がある。エネルギー的には、元手がゼロであるどころか、使用されるエネルギーがマイナスという夢のような状況にある。(打ち出の小槌みたいなものだ。)
 熱効率の向上というのは、それほど素晴らしいものなのだ。元手がゼロの自然エネルギーよりも、はるかに素晴らしい。
( ※ 逆に、太陽電池は真っ黒なので、熱を吸収し、ヒートアイランドの効果があって、逆効果だ。 → 太陽電池の熱吸収
  


 【 関連サイト 】
 
 (1) シリコン式太陽電池の難点

 → 太陽電池と燃料電池どちらが有利?
 
 シリコン式の太陽電池は有望ではない、という話。
 現状は半導体製造の残りとしてのシリコンを使っているが、シリコン式の太陽電池を大量に使うと、その残り物が足りなくなってしまいそうだ。
 つまり、「大量生産するとコストダウン」という説が成立しなくなる。原料となるシリコンの需給が逼迫して、かえってコストアップになってしまうかも。
 菅直人みたいに、補助金を出せば出すほど、シリコンが足りなくなって、かえって太陽光発電のコストはアップしてしまうかも。……ま、それほどひどくはなくても、コストダウンは足踏みしそうだ。

( ※ 高純度シリコンというのは、産出量が限られており、ある意味では、レアメタルみたいな稀少資源だ。こんなものに頼るシリコン太陽電池というのは、お先は暗い。なのに「補助金で普及させよう」というのは、アホすぎる。)
 
 (2) 自動車用燃料電池の難点

 → 燃料電池とは
 電気を溜め込む蓄電池の技術が進んでしまえば、わざわざ 燃料電池のような発電機まがいのものを自動車とか家庭に設置しなくとも、太陽光発電とか潮力発電とか何処かで効率よく電気を作って、蓄電池に溜め込んだ電 力を上手に使うって方向が良いのでは無いか
 ごもっとも。
 燃料電池車なんて駄目だ、と私は前から言っていたが、上の話を読んで、いっそう確信した。
 燃料電池がいいのなら、家庭で燃料電池を使えばいいのだ。そして、それで発電した電気を、電気自動車に蓄電すればいい。……こうすれば、現段階で実用化している技術だけで、実用化ができる。あとはそれを洗練させるだけだ。
 家庭用燃料電池というものを小型化するというだけのために、莫大なコストをかけるなんて、愚の骨頂である。
 それはいわば、原発を小型化して自動車に搭載するために、莫大なコストをかける、というようなものだ。そんなことをしなくても、素直に原発で発電した電力を電気自動車に蓄電すればいい。それなら「原子力自動車」ができたのと同じことになる。いちいち「原子力自動車」を作るなんて、馬鹿げている。で、そういう馬鹿げたことをやっているのが、燃料電池車だ。

 ともあれ、すでに実用化段階に達した家庭用燃料電池を洗練するために、いろいろと技術開発を援助するといいだろう。
posted by 管理人 at 19:10 | Comment(2) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
本項と直接の関係はないが、太陽光発電について興味深い記事があった。
 神奈川県の調査によると、太陽光発電は一括発注によって、コストを4割ぐらい引き下げることができるそうだ。(パネルだけなのか、パネルと工事費の総計なのかは、不明。たぶん後者。)

 出典は紙の新聞だが、ネットにも下記の情報がある。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110621-00000039-kana-l14
http://www.senmonshi.com/archive/02/028ANL1q01U79O.asp
Posted by 管理人 at 2011年06月25日 00:46
ホンダ等の自動車メーカーが燃料電池の開発に多額の研究投資をするのは次の理由です。

リチウム電池より小型軽量、安価に出来る可能性がある。

走行距離を電気自動車より長く出来る可能性がある。

車の中核技術を自社で製造できるので他社と差別化が出来る。

標準化された外販の電池を使用した電気自動車はメカ的には似たり寄ったりのものとなり差別化が難しく、最も高い付加価値部品を他社に依存することになる。

車用燃料電池の開発は極めて困難ですが、自動車エンジニアがロマンを感じるのも同じ機械技術者としてよく分かります。
Posted by 本多敏治 at 2011年06月25日 07:53
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