( ※ 用語の話です。言葉レベルの話。) ──
この用語は、「自然エネルギー/再生エネルギー/再生可能エネルギー」という三通りが出回っている。このうち、「自然エネルギー」という用語について、池田信夫が噛みついた。
ニューズウィークにも書いたことだが、「自然エネルギー」という言葉を使うのは、エネルギー問題を理解していない人の特徴である。化石燃料はもちろん原子力も、太陽を見ればわかるように自然のエネルギーである。人工のエネルギーなんかありえないのだから、自然か反自然かということは意味をもたない。( → 池田信夫ブログ )いかにも利口ぶった書き方だが、これは例によって「誤訳」に近い。以下で説明しよう。
すべてのエネルギーは自然の産物なので、自然エネルギーという言葉はナンセンスだ。太陽エネルギーや風力エネルギーは、再生可能エネルギーと呼ばれる。化石燃料のように燃やしたらなくなってしまう資源ではなく、いつまでも使うことができるという意味だ。( → ニューズウィーク・池田信夫 )
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まず、英語では natural energy という言葉は使われず、 renewable enegy という言葉が使われる。どうしてかというと、 natural という言葉は natural gas (天然ガス)のように「天然」という意味になるからだ。
ここで、 natural gas という言葉が使われるのは、人工のガスがあるからだ。たとえば、プロパンガスなど。これらの人工のガスが普及していたころに、天然に発生するガスもだんだん普及してきたので、「天然ガス」という言葉が使われるようになった。(「人工のエネルギーなんかありえない」という池田信夫の説は、プロパンガスも理解しない無知蒙昧の発想だ。)
さて。 natural energy と言えば、天然ガスなど(石炭や石油といった天然資源を含む)のことになる。それは太陽光発電や風力発電を意味しない。だから、 natural energy という言葉は不適切なのだ。
一方、日本語では、「天然」と「自然」とは区別される。LNG を「天然資源」と呼ぶことはあっても、「自然資源」とは呼ばない。
つまり、 natural と「自然」は同じではない。また、natural energy と「自然エネルギー」は同じではない。言葉は1対1で対応しない。
その意味で、 natural energy が駄目だからといって、「自然エネルギー」が駄目だということにはならない。
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次に、「再生可能エネルギー」という言葉だが、 「再生」というのは、「死んだものを生き返らせる」という意味だ。
したがって、「再生エネルギー」とは、(語義的には)「いったん失われたエネルギーをよみがえらせたエネルギー」のことだ。具体的に言えば、次のようなものが該当する。
・ 工場などで無駄に捨てられた廃熱を有効利用して発電する。
・ 木材工場などで無駄に捨てられた木材チップでバイオ発電をする。
・ ゴミ工場でプラゴミなどのエネルギーを回収してゴミ発電する。
これらの例では、捨てられたエネルギー(いったん死んだはずのエネルギー)を回収している。その意味で「再生」という言葉にふさわしい。「リサイクル」という概念に近い。(「リサイクル」もまた「再生」と訳される。)
→ グローバル英和辞典 recycle
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一方、renewable という言葉は、「また新しくすることができる」という意味だ。
→ グローバル英和辞典 renewable
これを「再生」ないし「再生可能」と訳すのは、いかにも苦しい。では、どうするか?
(1) 文字レベルで直訳するならば、「再生可能」ではなく、「再新可能」または「回新可能」だろう。(何のことだかよくわからないが。)
(2) 意味レベルで訳すならば、「再産出・可能」となるだろう。これでは文字数が多くなりすぎるというのならば、似た概念で、「続出」という言葉を使うといい。意味的には「非枯渇エネルギー」(次々と絶えることなく産出されるエネルギー)という意味だから、「続出」という言葉が合致する。
(3) もうちょっとうまい訳語を探るならば、「再出」という言葉が良さそうだ。これならば、直訳に近い感じだし、意味的にも何とか合致させることができる。使い慣れれば、問題ないだろう。
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以上のいずれもが気に食わないというならば、「環境エネルギー」もしくは「エコエネルギー」でもいい。しかしちょっと、きれいに見せかける詐欺的な言葉だという感じもする。 (^^);
その点では、「自然エネルギー」の方が、ずっとマシだろう。これならば小学生が読んでも、「太陽光発電や風力発電のことだな」と理解できる。「天然ガスのことだな」と思う人はいないはずだ。
( ※ 自然と天然の区別ができないのは、池田信夫ぐらいだろう。)
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というわけで、私としては、次の二通りのどちらかがお勧めだ。
・ 再出エネルギー or 再出可能エネルギー
・ 自然エネルギー
一方、「再生エネルギー」なんてのは、とても受け入れがたい。その言葉が意味するのは、バイオチップ発電やゴミ発電など(で回収されたエネルギー)のことである。
「再生エネルギー」なんて言葉を使って、これを renewable の訳語だと思っている人は、あまりにも言語センスがひどい。
もうちょっとまともな言語センスを持ってほしいものだ。
【 関連項目 】
本項の話題は、前にも簡単に述べた。次の項目の最後。
→ http://openblog.meblog.biz/article/4695875.html
※ 同じ話の蒸し返しなので、「読んだことがあるぞ」と思った読者も多いだろう。
済みません。ちょっと重複しています。
つまり、大臣が特定企業に有利な値段を定めたら、その企業が発電した電力は競争もなく固定料金で買い上げられ、その代金は国民が支払うのです。
案では、買い取り価格は電力会社の発電コストの2倍。
大臣による特定企業への露骨な利権誘導でしかありません。
そして、これを推進する孫正義はメガソーラー事業に着手しています。
太陽光発電プラントを作って、そこで発電した電力を売れば、現在の電力市場価格の2倍で、確実に売うれるんです。菅が以前に言っていた、発電送電の独占を崩すどころか・・・
金儲け至上主義の孫正義の甘言に乗せられた菅が踊らされているだけ。
最低の法案ですよ。
ただ、無駄に捨てられていたエネルギー(木屑や廃プラからの発電など)については、これもまた再生では無くて、残ってるエネルギーを絞り出して回収している、回収エネルギーと言った方が、よりふさわしいのではないかと思いました。