これは名案のようだが、愚案だ。
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具体的な例は、朝日新聞・夕刊 2011-06-20 に書いてある。ネットにはない。かわりの文書を引用しよう。
低炭素社会戦略センター(独立行政法人科学振興機構)の「緊急停電予防(防止)システム」のプレゼンを受けた。この夏の「電力需要の逼迫」に対して、同センターが開発した需要予測シテスムを使用して、供給余力10%(レベル1)、供給余力(6%)、供給余力(2%)程度のそれぞれの段階で「注意喚起」→「警報」→「緊急警報」を判断していき、この情報を自治体に伝えて、自治体から住民に緊急連絡網等で「電力使用抑制」を働きかけるというものだ。リンク先には、該当団体の解説文書がある。
( → 保坂展人 )
→ 緊急停電防止システム (PDF)
見ればわかるように、「手動式のスマートメーター」とも言えるものだ。次の特徴がある。
・ 専用の機器を使う。
・ いざとなったら直前に連絡が来る。
・ 連絡を受けた家庭が節電する。(エアコンを切る。)
これで節電が大幅に進むだろう、という目論見らしい。しかし、あまりにも愚案というしかない。理由は下記の通り。
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何よりも、実効性がない。
(1) この機器を大量に普及させることは不可能だ。かなり高額の機器を何千万もの世帯に普及させることはできない。(コスト的にも生産能力でも。)
(2) たとえ普及させても、人々がそれに従う保証はない。特にお年寄りは、そんな機器をまるきり無視するはずだ。およそ半数の家庭は完全無視するだろう。つまり、無意味な機械を大量に生産することになる。愚の骨頂。
(3) 機器を大量に普及させるには、莫大な金がかかる。そんなことに金をかけるくらいなら、火力発電所を増設する方がはるかに低コストだ。
(4) この機器を普及させるには、何年もかかる。何年もたったころには、(火力発電所の増設で)もはや電力不足は解消している。すると、せっかく大量に普及させた機器は、すべて無駄になる。
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さらに言えば、これは本質的に間違った方針だ。なぜか? 正しい方針と比較すればいい。
正しい方針とは、私が述べたことだ。次の通り。
「暑くなると予想されたときには、翌日休業を政府・企業に要請する。
当日になってからなら、午後の休業(半ドン)を要請する」
これは、「政府・企業への要請」だ。これは、即効的な効果がある。しかも、物の道理に適っている。なぜなら、「最も暑いときには、働かないで休め」という方針だからだ。
それに比べると、冒頭の「節電警報」というのは、正反対だ。
・ ものすごいときにも、暑さを我慢して仕事をする。
・ その仕事を優先するために、家庭の人々がエアコンを止めて犠牲になる。
要するに、(猛暑のなかであえて働く)という愚行をする馬鹿な連中がいる。で、そういう馬鹿な連中の愚行を止めるどころか、その愚行をどんどん推進するために、家庭の人々がエアコンを切る(それも最高の暑さのときに限って)、という自虐行為をするわけだ。マゾですかね。
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ともあれ、独立行政法人科学振興機構であれ、朝日新聞であれ、莫大な金をかけて、人々を自虐行為をするように推進する。呆れるほかはない。もう、狂気の沙汰ですね。
[ 余談 ]
こういうふうに「狂気の沙汰だ」と書くと、文句を言ってくる読者がいるが、口に蓋ができません。「人々が愚行をするのを黙って見逃す」「人々があえて苦しむのを放置しておく」というのが、できない性分なので。申し訳ないが、仕方ないですね。 (^^);
ま、私みたいに口が悪い人間はともかく、紳士的で上品な人は、素晴らしく上品な言葉で(たとえばエコなどの言葉で)、人々を狂信的なエコ行為に追い込むといいでしょう。それで儲けることもできそうです。(下記。)
【 関連項目 】
→ エコ詐欺
【 関連サイト 】
→ 節電商品の記事 (産経)
→ 節電商品のリスト
私のように口の悪い人間はともかく、上品な人は、これらの節電商品を売りつけて、無知な人から金をたんまりと召し上げるといいでしょう。
上品な人は、そうするものです。(上品な詐欺師は……)
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これまでのデータから緊急事態はある程度予測がつく。そして本当に危ない赤信号のときに関西で一斉にエアコンを切るメッセージ。これを災害情報と同じように民放テレビがテロップを流してくれるかですね。普段は、政治とメディアは距離を置かなくちゃいけない
→ http://j.mp/jT6GoF
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これは、節電警報よりは、はるかにマシだ。余計な機械を使わないで、大半の世帯に情報が届く。愚案とは言えない。
ただし、ほぼ無効だろう。最高に暑いときにエアコンを止めろといわれても、止めたがる人はいない。少なくとも私は、止めませんね。他の日にはエアコンを止めても、最高に暑いには止めません。
家庭にばかりしわ寄せをすればいい、という橋下府知事の方向は、まったく方向が狂ってる。節電するべき箇所を間違えている。
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府知事はこうも言う。
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しかしエアコン切れ!という行政のメッセージに関しては、メディアに協力をして欲しい。これさえできれば、今のようにバンバン原発を稼働させる必要がない。
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どの面下げて、そんな勝手なことを言うんだ?
「私は他人の言うことを聞く気はありません。しかし他人は私の言うことを聞いてください」
「関電の頼む節電は聞く必要がないが、俺様の命じる節電は聞く必要があるのだ」
それは独裁者の発想だよ。私が「ヒトラーだ」「駄々っ子だ」と批判したら、池田信夫まで「ヒトラーだ」「駄々っ子だ」と何度も言い出している。
私は悪口を言うのが上手だからかな。 (^^);
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とにかくね。ピーク時に切るべきものは、エアコンじゃない。生産電力だ。そしてまた、エアコン以外の一般部門で 15%の節電をすることだ。
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エアコンを切る、そんなことで原発依存度が本当に下がるのか。皆さん半信半疑でしょうが、今夏やってみましょう。繰り返しますが、いざというときに切るだけです。ただ関西全体で切らないといけない。でもこんなことで、原発リスクが減るんだったら楽なもんです。うちは早速扇風機2台買いました。
http://j.mp/iGY42y
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金持ちの発想で、庶民の発想になっていない。
扇風機なんて、私の家ではたくさんあります。庶民はエアコンよりも扇風機です。扇風機を十分に買っていなかった橋下家は、いかにエアコンをつけっぱなしの生活をしていたか、よくわかる。エネルギー浪費家。そいつが省エネを言うんだから、噴飯ものだ。
私の場合は、ものすごく暑い日にしか、エアコンをつけない。なのに、「ものすごく暑い日に限ってエアコンを消す」というふうに命じられたら、エアコンをつける日が一日もなくなってしまう。一夏をエアコンなしで過ごすことになる。エアコンがあるだけ無駄ということになる。
そんなアホなことはありえない。「普段はともかく、猛烈に暑い日だけは(耐えきれずに)エアコンを使う」というふうにしている。そういう家庭は多いはずだ。
我慢というものをしていないやつに限って、「我慢なんて簡単だよ。楽なもんです」と言い張る。
美食ばかりしているグルメに限って、「粗食のダイエットなんて簡単だよ」と言い張る。
やったこともないくせに「楽なもんです」と威張るな! ……という批判が襲いかかるはずだ。
独善の極み。無能よりもひどいのが独裁者だ。こういう人間が首相でないだけ、日本はマシだ。こいつが日本の首相になったら、日本中、停電だらけになっていただろう。