夏に向けて節電に努めている企業が多いが、その大半は間違った節電をしている。
そこで、悪い節電と、正しい節電とを示す。 ──
夏に向けて節電に努めている企業が多い。朝日新聞・夕刊 2011-06-20 にも「高層ビルの節電」という記事があったが、ほぼ同内容の記事が日経にも見つかる。かなり長い記事だ。
→ 日経「超高層の節電大作戦」
両方の記事をまとめると、次のような節電法が掲げられている。
・ 遮光フィルム
・ 照明カット
・ 扇風機停止
・ 早朝始業 (社内サマータイム)
・ 午後6時以降のエレベーター停止
・ 午後6時以降の冷房停止
・ 残業の短縮
これらのうち、はっきりと有効なのは、「遮光フィルム」だけである。(赤外線をカットするのが大きい。)
一方、他のものは、はっきりと有効だとは言えない。「場合によっては有効」と「まったく無効」のものとがある。
以下では、個別に説明しよう。
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(1) 照明カット
場合によっては、照明をつけた方が節電できる。それは、窓際の日光を遮断した場合だ。たとえば、シェード(ブラインド)を下ろすと、それだけで窓際の温度は5度ぐらい下がる。(朝日の記事による。) この場合、熱を遮断した上で、照明をつける方が、空調の電力を節電できるので、かえって節電になる。節電か否かは、ケースバーケースとなる。
(2)扇風機停止
扇風機を停止するのは、明らかに節電に反する。扇風機をつければ、その分、空調の温度を下げることができるからだ。扇風機で20ワットを節約して、空調で 1000ワットを消費するのでは、何をかいわんや。(朝日の記事にある馬鹿げた例。)
(3) 早朝始業 (社内サマータイム)
早朝始業は、有効に見える。ただし、「午後5時終業を早めること」とセットである。午後5時の終業を早めないで、単に早朝始業にしても、何の意味もない。
たとえば、早朝始業にともなって、残業を(夜中の)午後 11時から 10時に早めたとしても、節電の意味はまったくない。なぜなら、午後 10時から 11時時までの時間帯は、ピーク時間帯ではないからだ。
節電が意味を持つには、ピーク時間帯である午前11時から午後5時までのピーク電力を下げる必要がある。それ以外の時間帯で節電しても、節電の意味はない。(無駄な節電。無意味節電。)
(4) 午後6時以降のエレベーター停止
これも同様だ。ピーク時間帯とは別の時間帯で節電しても、何の意味もない。
(5) 午後6時以降の冷房停止
これも同様。
(6) 残業の短縮
これも同様。残業というのは、いくら規制しても、何の意味もない。というか、むしろ、有害である。できれば、次のようにするといい。
「昼間はシエスタとして、午後の何時間かを休みにする。その分、夜間の残業を増やす」
これならば、ピーク時間帯をはずすので、節電になる。つまり、残業を増やすことで、節電ができる。(スペインではそうしている。シエスタがあるので。)
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ともあれ、節電をするには、「ピーク時間帯(午前11時から午後5時)で節電すること」だけが意味を持つ。それ以外の時間帯で節電しても、何の意味もないのだ。
朝日の記事であれ、日経の記事であれ、単に電力を減らすことばかりを考えていて、「ピーク時間帯での節電」という概念がない。まったく馬鹿げた記事だ。
そしてまた、世間の多くの企業が、このように愚かな節電をしているのだから、呆れてしまう。
朝日や読売が記事にするのであれば、「無意味な節電をやめて、有効な節電をしましょう」という記事にするべきだ。
まったく。頭悪すぎ。子供でもわかるようなことを、どうして大人がわからないのだろう? マスコミも大手企業も、馬鹿ばかりになってしまったのだろうか? 日本没落か。
[ 付記 ]
夏の節電の王道は、「冷房の気温設定を上げること」だ。これについても言及しておく。
たしかに「冷房の気温設定を上げること」は、何よりも優先でなされるべきことだし、効果も大きい。
しかしこれには「能率の低下」という大きな代償が伴う。「早朝始業」ならば、ちょっとした代償で済む(あるいは涼しいのでかえって能率が上がる)が、「午後の冷房気温の引き上げ」には、「能率低下」という大きな代償が伴うのだ。詳しくは下記項目。
→ 省エネと作業能率
では、この二律背反を、どう解決するべきか? 実は、ちょっとうまい方法がある。それは「湿度を下げること」だ。
温度を下げなくても、湿度を下げることで、体感温度を下げることができる。だから、「湿度を下げる」というのを、目的とするといい。
湿度を下げるには、どうすればいいか? 次の方法が良さそうだ。
「冷房の風量を引き下げる」
このことで、冷房機の冷却金属の温度が下がるので、湿度を下げる機能が上昇する。気温はやや上昇するが、湿度はかなり下がる。
逆に、冷房の風量を上げると、熱伝達の点で冷房能率は上がるのだが、そのせいでかえって、冷房機の冷却金属の温度が上昇して、湿度を下げる機能が落ちてしまう。結果的に、温度は下がるのだが、湿度は上昇してしまう。これでは、体感温度が上昇してしまう。
というわけで、私としては、「温度よりも湿度を下げる」という方針を取ることを、お勧めしたい。
特に、個人住宅では、風量を絞って、冷気を人間一人に集中するといい。逆に、部屋全体を冷やそうとすると、冷気が熱伝達で逃げてしまうので、効率が悪くなる。
2011年06月20日
過去ログ
http://www.nhk.or.jp/asaichi/2011/05/31/01.html
http://news.livedoor.com/article/detail/5641280/