この制度では、電気料金の引き上げが原資となるが、むしろ、原発保険料を原資とするといい。 ──
原発事故の処理について、賠償支援機構法案が閣議決定された。
《 福島第1原発:賠償支援機構法案を閣議決定 》ここでは「原子力事業者は機構に負担金を支払う」と記してあるが、それならその方針を徹底するといい。つまり、原発を稼働していない(停止させた)電力会社は、負担金を払わなければいい。
政府は14日、東京電力福島第1原発事故の損害賠償の枠組みを定めた「原子力損害賠償支援機構法案」を閣議決定した。東電に国などが資金供給して賠償支払いの迅速化を図ると同時に、電力の安定供給を維持させるのが狙い。今国会に提出し、成立を目指すが、政局の混迷で早期成立のめどは立っていない。
法案によると、政府は機構に対し、必要な時にいつでも換金できる「交付国債」を付与するほか、金融機関の融資に保証を与え、市場からの資金調達を支援。原子力事業者は機構に負担金を支払う。機構は調達した資金で東電を支援。東電の資産を一時的に買い取り、市場動向にあわせて売却する仕組みも導入。東電は機構の支援資金を長期間かけて返済する。ただ、返済負担で電力安定供給に支障が生じる場合は、国が補助する例外措置も設けた。
( → 毎日新聞 )
具体的には、中電と東北電だ。これらは原発をすべて停止させている。
→ 記事と図
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この方針を徹底すれば、次のように言える。
「電力会社は、稼働させている原発に応じて、原発保険料を支払え」
たとえば、関電は古くて危険な原発がたくさんあるから、それらを稼働させている限りは、高額の保険料を払えばいい。中電は、浜岡を稼働させなければ1円も払わなくていいが、浜岡を稼働させるなら年間2兆円を払えばいい。(ここ数年は特に危険なので、年間 5兆円ぐらいを払ってもらう。……そのくらいだったら、浜岡を止めるだろうが。 (^^); )
他に、北電や、北陸電や、四国電や、中国電や、九電も原発を稼働させているから、これらの電力会社には、原発の保険料を払ってもらう。総額で年間2〜3兆円ぐらいにはなるだろう。その金を、福島原発の処理費用に充てればいい。
( ※ その間に、他の原発が暴走しなければ、何とか帳尻が合う。)
では、それらの原発会社が「保険料なんか払うのイヤだ」と言いだしたら? そのときは、自然に全国の原発が止まる。「脱原発」が自動的に実行される。それはそれで、めでたい。
その場合には、事故処理の費用は、(東電でまかなえない分については)国が負担すればいい。(もともとの東電処理案と同じになるが。 (^^); )
国民は文句を言うかもしれないが、「脱原発が実現したんだから、我慢してください」と言えば、たぶん、納得してくれるだろう。
結局、次の二者択一となる。
・ 全国の原発を稼働させて、それで得た利益で、福島の補償金にする。
・ 全国の原発を停止して、そのための安全料として、国民全体が金を払う。
どっちでもいい。いずれも合理的である。少なくとも、冒頭の政府案のように、
「全国の原発を稼働させて、しかも、国民全体が金を払う」
なんていう案に比べれば、はるかにマシだ。
( ※ この場合は、利益は、東電の株主や社債保有者が頂戴することになる。一番悪い奴らが利益を得るから、その分、国民が損をする。)
[ 付記1 ]
池田信夫は、次の趣旨のことを述べている。
「原発を停止させると、固定費用が残るので、費用がかかる。原発を稼働させると、運転費用(限界費用)だけで発電できるので、低コストで発電できる。どうせ原発はあるのだから、稼働させないよりは稼働させる方が、利益を得る」
( → 池田信夫ブログ )
この見解は、まったく妥当である。
( ※ 実は、まったく同じことを、私も書こうと思っていた。ただし、小さな話題なので、何かのついでに余談として書こうと思っていただけだった。ところが、池田信夫はこれを一項目として、記事を書いてしまった。ま、私としては、書く手間が省けたが。 (^^); )
ただし、である。
たしかにコスト面では、原発を稼働させた方が、有利である。現状のように、既存の原発を残したまま、火力発電で新規に発電すると、そのために燃料費が年間1兆円ぐらい余計にかかる。すでにある原発は、「なかったことにする」わけには行かず、不稼働資産(遊休資産)として残るからだ。どうせ原発があるのならば、稼働させないよりは稼働させる方が、コスト面からはずっと有利だ。……池田信夫は、このことを強調する。
しかしながら、コスト面とは別に、リスク面がある。原発を稼働させれば、原発事故が起こるリスクがある。リスクを考えるならば、上記のように、原発保険料を支払うことを考慮しなくてはならない。(当り前だ。リスクを考えない池田信夫の発想は、「自動車の交通事故の保険に入らなければ、事故の保険料を支払わないで済むので、低コストで済む」という発想と同じだ。あまりにも無思慮だ。そんなことだと、いざ事故が起こったとき、破産する。)
池田信夫は「40年間にいっぺん、もう一度福島原発が起こっても、まだ原発の方が低コストで済む」とも述べている。しかしそれは、リスクというものを甘く見過ぎた発想だ。「過去の事故の最大値でしか事故は起こらない」という発想ならば、「柏崎の事故が起こっても大丈夫だったから、福島での原発事故は起こりえない」というふうになる。馬鹿げた話。
リスクを正しく考えるならば、次のように言える。
「浜岡原発で事故が起これば、首都圏が壊滅する恐れがある。その場合には被害額は 1000兆円になるかもしれない。福島事故の 100倍だ。なのに、『また原発事故が起こっても福島原発事故と同程度で済むはずだ』と思う池田信夫は、あまりにもリスクというものを軽んじている」
結局、原発については、コストだけでなくリスクというものを考えることが大切だ。そして、リスクを考えるがゆえに、「原発保険料」というものを徴収するのが妥当なのである。
( ※ 池田信夫には、リスクという概念がないがゆえに、「原発保険料」という概念もないが。)
[ 付記2 ]
もう少しわかりやすく述べよう。
まず、次の記事がある。
→ 家庭の電気代1000円アップ…全原発停止なら
これは、火力発電による燃料価格増加の分だ。そこで、池田信夫は、次の趣旨を唱える。
「 1000円アップを防ぐために 原発を稼働させよ。さもないと、電気料金の値上げによって、トヨタなどの産業が外国に逃げ出して、日本は空洞化する。そのせいで若者は低賃金に喘ぐ」( → 原文 )
しかしながら、原発を稼働させれば、燃料価格増加はないが、リスクの増加がある。その増加のために、原発保険料を払う必要がある。それは月に 2000円ぐらいになるかもしれない。
そこで、その金で、福島の原発事故の処理ができる、というのが、私の提案だ。
一方、原発を稼働させながら、増大したリスクに対して、保険料の支払いを踏み倒せば、トヨタなどの企業が大儲けできる。企業が大儲けできれば、労働者も雇用が守られる。
「だから企業を大儲けさせよ。そのために国民は原発の暴走のリスクを我慢せよ」という大企業保護論を唱えるのが、池田信夫だ。
水俣病の企業(チッソ)と同じですね。自然を破壊し尽くして、企業の利益を得る、という発想。企業の側は「俺様が労働者を雇用してやっているんだ。だから俺様の言うことを聞け」と威張り散らす。
同じことを考える人は、ウガンダにもいます。
→ 公害の輸出(?)
( ※ ウガンダの独裁者の庇護のもとで、ビクトリア湖の汚染。NHK 動画あり。)
