2011年05月25日

◆ 太陽光発電の将来と地域

 菅首相は「サンライズ計画」と銘打って、太陽光発電の技術開発を推進する方針を示した。これは「補助金による普及促進」に比べて、はるかに正しい。
 ただし、現段階の普及については、地域の問題を考慮する必要がある。 ──
 

 1. サンライズ計画


 まずは記事を引用しよう。
 菅直人首相は……G8首脳会議の冒頭で、設置可能な全てのビル、住宅に太陽光パネルを設置する構想「サンライズ計画」を表明する意向を固めた。福島第1原発事故を踏まえ、太陽光や風力、バイオマス(生物資源)などの再生可能エネルギーを重視する姿勢をアピールするのが狙いだ。
 計画には、太陽光発電のコストを20年には現在の3分の1に、30年には6分の1まで引き下げることを盛り込む。
( → 共同
 「コストの引き下げ」をめざしている。これは、「コストが高いまま補助金で普及させる」という方針に比べて、はるかに好ましい。私がこれまで主張していたこととも合致する。この方針は正しい、と私は考える。日本政府も、菅直人の時代になって、ようやく正しい方向を向き始めたようだ。

 ──

 なお、当然だが、これは努力目標だ。現実にそれが達成されるかというと、大きくクエスチョンマークが付く。それでも、先のことはわからないから、目標だけは大きく掲げた方がいい。(たぶん実現しないだろうけど。  (^^); )
 「高い目標をめざして努力します」
 というのは、別に悪いことではない。「可能になるようにむやみやたらと技術開発費を投入する」という馬鹿げたことをするはずがないし。そもそも、技術開発の費用なんて、普及のための補助金に比べれば、スズメの涙にすぎない。どうってことはない。

 これで、この件は、おしまいとなる。実現できない目標に向かって努力することになるが、ま、せいぜい頑張ってください。  (^^);

( ※ なお、シリコンにこだわる限り、画期的なコストダウンは不可能だ。シリコン以外の系統で、画期的な技術革新を待つことになる。それがどのような技術かは、予断を許さない。候補はいろいろとありすぎる。)

( ※ それでも、青色 LED のように、あるときとき突然、画期的な技術画が開発されて、急速に普及する、ということは考えられる。……ただし、2020年にそれが普及しているためには、その技術はすでに開発されている必要がある。このことからすると、新技術が普及するのは、早くて 2025年で、現実にはたぶん 2030年以降だろう。)

( ※ 現時点では、太陽電池の価格は半減が達成されているが、これは、中国企業が参入して、人件費の安さで攻勢をかけているからだ。大幅な技術革新があったわけではない。また、この価格低下が、今後もずっと続くわけではない。 → 参考

 2.コストダウンが実現するなら


 太陽光発電のコストダウンが、本当に実現するなら、今はどうするべきか? 
 今は、何もしないのが正しい。つまり、次のようにするべきだ。
  ・ 今は何もしないで、貯金する。
  ・ 将来コストダウンが起こったら、そこで一挙に普及させる。

 たとえば、20億円の金があったとする。それで半額補助するとしたら、元の太陽電池は、20億円分だ。合計して 40億円分の太陽電池を購入できる。
 一方、コストダウンでコストが2分の1になったとする。同じ量の太陽電池は 20億円で買える。そのうち購入者が 15億円払うとすれば、国は5億円負担するだけでいい。20億円という予算があれば、4倍の量の太陽電池を普及させることができる。それだけ効果が大きい。

 つまり、コストが高いときには、補助金を出しても、その補助金は大部分が差額に費やされてしまうので、普及させる効果は小さい。一方、コストが低いときには、少しの補助金を出すだけでも、大量の普及が実現する。
 だから、どうせ補助金を出すなら、コストが下がってからの方がいいのだ。
 つまり、今は何もしないで、貯金だけしておけばいい。そして、コストが十分に下がってから、少額の補助金を出して、いっぱい普及させればいい。そうすれば効果的だ。

 例。
 液晶テレビの価格が下がったときにエコポイントを出すと、1万円ぐらいの補助金を出すだけで、大量の購入者が増えた。
 しかし、液晶テレビの価格が高かったとき(40万円ぐらいだったとき)には、10万円ぐらいの補助金を出しても、たいして普及しない。価格が高いときには、いくら補助金を出しても、それは無駄なのだ。
 補助金というものが効果的なのは、コストが十分に下がった後である。── このことをきちんと理解しておくべきだ。

( ※ なお、本当は、補助金というのは、効果はあるとしても、ほとんど意味がない。液晶テレビにしても、昨年 10月には 12万円でエコポイント1万円だったものが、今では9万円で買える。エコポイントの効果は、値下げ時期・普及時期を、数カ月早めたぐらいの意味でしかない。エコポイントを出さなくても、今現在の時点では、普及率は同様だっただろう。違いは何かと言うと、昨秋は客が殺到したせいで、家電量販店がボロ儲けした、ということぐらいだ。つまり、エコポイントの補助金の大半は、家電量販店の特別利益に化けてしまった。家電量販店の経営者はウハウハだが、国民的には、税金を無駄遣いしたというぐらいの意味しかなかった。)
( ※ 一般に、補助金というのは、たいして意味がないのだ。意味があったのは、初期のプリウスの補助金ぐらいだろう。あれは、世の中に初めてハイブリッド車が出たばかりのころの普及促進策だったから、意味があった。日産のリーフも同様だ。一方、今みたいに太陽電池がたくさん出回ったあとでは、補助金というのはほとんど意味がない。1割ぐらいの補助金ならともかく、半額負担の補助金なんて、多額すぎて、無駄遣いになるだけだ。)
 

 3.朝日の自然エネルギー推進


 朝日新聞夕刊 2011-05-25 に、「自然エネルギー どう増やす」という記事が出ている。
 「世界の自然エネルギーはもはや原子力に匹敵する」
 というふうに威張っている。  (^^);
 しかしその内訳は、
   風力:小水力:バイオマス:太陽光=5:2:2:1

 である。太陽光発電は、たったの1割でしかない。  (^^);
 また、ドイツでは自然エネルギーが電力の 17%だというが、太陽光は2%でしかない。

 以上の話から言えることは、こうだ。
 「太陽光なんて、まだまだ頼るに値しない。頼れるものがあるとすれば、風力だけだ」
 となる。
 しかしながら、風力は、国土(特に平野部)の広さを必要とする。この点で、日本では無理だ。ある程度までは増やせるが、あまり頼りにはならない。朝日は、人口に比例して自然電力を得られると思っているようだが、実際には国土の面積に比例して得られる。ここを勘違いしていますね。
 さらに言えば、モンスーン地域(台風が来る)の日本では、風力発電は壊れやすく、故障ばかりしている。この点の技術開発をしないと、まだまだ無理だ。……ま、せいぜい、「太陽光発電よりは、実用化が容易である」という程度。

 ま、朝日としては、自分の記事を読んだあとで、
 「太陽光は全然無理だから、ちょっとだけ無理の風力に乗り換えよう」
 というふうに主張するのが賢明だ。孫正義のように、「太陽光一辺倒」になると、自爆する。

 ( ※ 小水力は、国土の狭い日本では利用され尽くしている。バイオマスは、農業の弱い日本では無理。)

 4.太陽光発電と地域


 太陽光発電については、石油エネルギーに取って代わることは、必ずしも困難ではない。というのは、世界には日照量の多い土地があるからだ。
  → 世界の日照量
 熱帯地方やアメリカ西部(アリゾナ砂漠のあたり)では、日照量が非常に多いとわかる。これらの地域では、日本の倍ぐらいの日照量がある。とすれば、発電コストは半分ぐらいになる。その意味では、十分に採算に乗るだろう。

 ただ、日本や欧州では、事情は異なる。特に、ドイツは日照量が少ない。時間も短いし、太陽の角度も低い。太陽エネルギーは少ない。(上記地図)
 したがって、このような地域で太陽光発電を推進するのは、合理的でない。次のページ詳しい説明があり、こう結論している。
 仮に10年でFIT制度を打ち切りにしても、累計コストは実質で655億ユーロ(7.2兆円)という巨大な金額になる。実際には11年以後もこの制度が続けられており、この額はさらに増加する。日照時間の短い北国のドイツで、なぜこのように太陽光を優遇するのか、理解に苦しむところである。
( → 出典
 できもしないことを無理に推進すれば、金を食うばかりで無駄になる、ということだ。
 
 ──

 それでも朝日新聞は、「ドイツの真似をせよ」と主張したがる。そういう人のために、次の情報を示す。
  → 猛暑の日々に思い出す「エアコンの無い世界、ドイツ」
 この話は、とても興味深いので、ぜひ読むといいだろう。ドイツでも数日ぐらいは猛暑が訪れることがあるが、たった数日のためにエアコンを買う人はいない。そこで、すごく苦しむことになる。熱中症で 7000人もの死者が出た、というのは、すさまじい。
 で、日本が、ドイツの真似をしたら? ドイツ以上の暑さである日本では、とんでもない死者が出そうだ。
 というか、そもそも、「エアコンなしの生活」というのを、普通の人はできるのだろうか? よく考えた方がいい。「ドイツの真似をする」というのは、「電気代が今の2倍になって、電気をまともに使えない」という社会だ。夜は真っ暗だし、エアコンも使えない。そのせいで熱中症の死者が1万人以上出る。
 原発を捨てて、太陽光発電(など)に頼るというのは、そういう非文明社会なのだ。
 朝日新聞は、「ドイツの真似をせよ」と主張する前に、実際にドイツに行って、ろくに電気を使えない世界を体験するといい。

 なお、ドイツではエアコンが普及しないのは、基本的には、極北の地だからだ。すごく寒いことが問題であり、暑さはほとんど問題にならない。それゆえ、数年に1度の猛暑が来ると、エアコンのないまま、莫大な死者が出る。
 日本をドイツのようにしたければ、まずは寒いシベリアにでも行った方がいいでしょう。
 朝日の記者は、シベリアに行くといい。樺太あたりで暮らすといい。「朝日の記者収容所」というのを作って閉じ込めるといいかも。(そうすれば日本国民がひどい目に遭わずに済む。1万人もの死者を出さずに済む。  (^^); )
 


 [ 付記 ]
 各国の電気料金の比較は、下記。
  → 図録 電気料金の国際比較
   ※ ドイツの家庭向け電気料金は飛び抜けて高い。
   ※ 日本は近年、上昇しているが、為替レートのせい。そのうち下がりそうだ。
   ※ ドイツとイタリアが飛び抜けて高いが、いずれも、太陽光発電が多い。
       → 主要国の電源別発電電力量の構成比
 
 [ 余談 ]
 池田信夫が、「自然エネルギーという用語を使うのは馬鹿だ。再生可能エネルギーという用語を使え。英語もわからないのか」と息巻いている。(twitter で)
 しかしこれはピンぼけだ。日本人は英語ではなく日本語を使うのだから、再生可能エネルギーという面倒な単語よりは、自然エネルギーという用語を使うことにも、一理ある。どっちかが悪いということはない。
 池田信夫は「英語では natural energy なんて言葉は使わず renewable energy と言う」と述べているが、それは、 natural energy という用語が間違っているからではなくて、別の意味になるからだ。 natural energy というのは、 natural gas (天然ガス)の場合と同様で、「人工ではない天然のエネルギー」という意味になる。当然ながら、石油や石炭なども含まれる。いずれも天然の地下エネルギーだからだ。
 池田信夫は、「自然」と「 natural 」を等価だと思っているようだが、そんなことはない。
  ※ natural には「生まれつきの」という意味もある。「天然」という感じが強い。
    彼はたぶん、天然なのだろう。
posted by 管理人 at 19:53| Comment(5) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この記事を読んでちょっと思いついたのですが(既に専門の賢い人達が検討されていることであろうとは思いますが)、世界の日照量の多い土地で、太陽光発電で得られたエネルギーを使って空気中の2酸化炭素を酸素と炭素とに還元し、それをタンカーで輸送して(エネルギーがもったいないので酸素も運んで活用する)日本で火力発電のエネルギー源にするというのは非現実的でしょうかね。
Posted by マリウス at 2011年05月26日 00:52
太陽光発電でなく、太陽熱発電については、どういう見解をもっていらっしゃいますか?
Posted by Miz at 2011年05月27日 07:46
> 太陽熱発電

 すでに書いてあるとおり。目次ぐらい見たら? 検索でもいいけど。
Posted by 管理人 at 2011年05月27日 18:45
ニュースから。
──
《 橋下知事、新築住宅に太陽光パネル義務化検討 》
知事の構想では、新築住宅の屋根に太陽光パネルを取り付けることを条例で義務化し、平均約200万円の設置費用は自己負担とする。
 → http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110527-OYT1T00098.htm?from=main6
 ──

 大阪に引っ越すのはやめましょう。大阪で家を新築するのはやめましょう。
 大阪の名物は アホだけだ、と判明した。  (^^);
 
 ──

 なお、神奈川県知事も同じアホだが、強権的に押しつけはしない、という点が異なる。独裁者がいるのは大阪だけ。(議会でも過半数確保で、独裁政治。)
Posted by 管理人 at 2011年05月27日 22:29
新聞記事から。

>  1千万戸を設置するには多額の補助金が必要になるとみられる。
http://www.asahi.com/business/update/0527/TKY201105270556.html?ref=rss

 これは正しくない。1千万戸は、単独での目標ではなく、「コストが3分の1 〜 6分の1」とセットになった目標だ。
 コストが激減すれば、補助金は必要ない。「コスト低下」と「普及率アップ」は、論理的にはほぼ等価だ。「補助金」という概念は必要ない。

 マスコミは「補助金の財源を出せ」なんてアホなことを言わないでほしい。むしろ「目標は気宇壮大に」と語ればいい。それだけのことだ。
 馬鹿な受験生でも「東大合格」を目標とすれば、明大ぐらいには合格できるかもしれない。それで十分。「公約違反」などと文句を言うべきではない。目標と公約とは違う。
 マスコミは日本語を理解するのが先決だ。
Posted by 管理人 at 2011年05月28日 00:45
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