2011年03月30日

◆ スマートエアコン(スマート家電)

 スマートメーターに対応する「スマートエアコン」を提唱しよう。その狙いは、捨てた電力の回生だ。(価格による需要の制御ではない。)
( ※ ついでに、さらに高機能な「ロボットエアコン」も提唱しよう。) ──
   《 本項は技術的な話題です。理系の人向け。 》

 
 スマートメーターというものがある。これは、電力の需給状態に応じて、電気料金を可変的に変更する。それを見た人が、電力を OFF にできる。このことは、電力逼迫時に有効だ。
  → スマートメーター

 スマートメーターは、それを見た人間の意思によって ON-OFF する。これでは効率が悪い。
 そこで、スマートメーターに対応した機器が自動的に設定を変更する、という方式も考えられている。米国では規格もある。
 電力利用のピーク時には自動的に家庭やオフィスの空調の設定温度を変更する機能を持たせることで(これは空調機器側の対応も必要になりますが)、ピーク時間帯に使われる石油の消費量を抑制し、社会全体の省エネを推進する。
( → 基本説明

 米国の電力事業者は2008年前半に,家庭内の機器を電力メーターから制御するための標準仕様「OpenHAN(home area network)」を策定している。
( → 米国の事情

 無線通信を利用した電力計としては,欧米を中心に導入が進む「スマートメーター」がある。東京電力は今回の新型電子式メータに関して,「双方向通信を利用した電力計という意味で,スマートメーターと大きな違いはない」(同社)とする。ただし,欧米で検討されているような,スマートメーターを用いて住宅内の電力利用を制御するといった試みを「実験する予定はない」(東京電力)という。
( → 東電の実証実験
 研究は進んでいるが、東電の実験はあまり進んでいないようだ。

 ──

 さて。以上はいずれも、「需要を制御しよう」という発想のものだった。しかし、私は全く別の発想のものを提案したい。それは、「ボトルネック」という発想に基づいて、「ピーク電力を平準化する」ということを狙いにする。

 そもそも、現状の電力需要には、超短期的な変動がある。瞬間的に急激に需要が増えたりすることがある。
 この問題を回避するために、電力会社は常に電力供給に余裕を見ている。発電力が 100だとして、そのすべてを使うことはなく、90ぐらいしか使わない。
 では、残りの 10は? 無駄になって いる! 
 何ともったいないことか。

 そこで、この無駄をなくすことを目的としたい。つまり、無駄になって いる電力を有効利用したい。そのためには、どうすればいいか? 私が提案するのは、こうだ。
 「スマートメーターに制御されるスマートエアコン」

 つまり、電力需要が急上昇したときに、エアコンの電力を自動的に OFF にしてしまうのだ。(完全に OFF ではエアコンが壊れるから、冷房機能だけ OFF にして、ファンや室外機などは OFF にしない。あくまで電子制御による、機能のみの OFF だ。電源 OFF ではない! もちろんその微妙な制御は、エアコンの側がやる。どこかの制御センターがやるのではない。……これが「スマート」であるゆえん。)
   
 ──

 スマートエアコンを導入する意義は何か? 次のことだ。
  ・ 夏の電力需要のピークは、冷房による。だから、冷房機能だけを切ればいい。
  ・ 冷房機能は、一時的に切っても、たいして問題がない。
  ・ 状況に応じて、瞬間的に電力を切れる。(リアルタイム性がある。)


 ひるがえって、現行の「ピーク電力のときの電力使用停止」は、難点がある。
  ・ ピークには責任のない、生産設備用の電源を切る。
  ・ 生産設備用の電源を切ると、機械が止まったりして、問題となる。
  ・ 即時に電気を切ることはできない。(リアルタイム性がない。)


 現行の「ピーク電力のときの電力使用停止」は、それはそれなりに有効だが、責任がない生産設備を止めるのも問題だし、リアルタイム性がないのも問題だ。悪くはないが、弊害もあるし、能力的にも不十分なのである。

 その点、スマートエアコンならば、問題がない。エアコンなんて、電力需要が急増したときに 30分ぐらい切れても、それまでの涼しさがあるから、特に大問題にはならない。また、日本中で非常に多くのエアコンが使われているから、対象となるエアコンが多く、効果も大きい。

 ──

 というわけで、「スマートメーターに対応したスマートエアコン」を提案したい。
 その狙いは、「ピーク電力対策」というよりは、「無駄になって いた電力を有効利用すること」(回生すること)である。
 このことにより、需要が1割減った( or 供給が1割増えた)というのと、同程度の効果が見込める。



 [ 付記1 ]
 無駄になって いた電力を有効利用するのだから、スマートエアコンの利用者に対しては、その分の電気代をゼロにしてもいいだろう。たとえゼロでも、そのことで毎年夏の停電を避けやすくなるなら、十分に効果はある。
 現実には、ただというわけには行かないから、8割引ぐらいが妥当だろう。

 ただし、無駄になって いた電力を有効利用する量は、全体の1割ぐらいだ。だから、スマートエアコンの利用者の全員に「8割引」という料金を呈示することはできない。「先着順で 300万Kw 分」というふうにするのが妥当だろう。
 そのあとさらに、「二番目として、次の 200万Kw 分は5割引」というふうにしてもいい。
 ともあれ、このような形(電気代の大幅割引)で、急速にスマートエアコンを普及させることができる。特に、事業所向けには、有効だろう。(電力消費量が大きいから、電気代が馬鹿にならない。)

 [ 付記2 ]
 同じようでも、パソコンとか、テレビとか、照明とかは、対象にならない。これらの機器は、勝手に機能 OFF になると、いろいろと問題が生じるからだ。特に、エレベーターなどは、勝手に機能 OFF になると、すごくまずい。
 一時的に機能 OFF になっても問題ないのは、エアコンぐらいだろう。

 [ 付記3 ]
 スマートエアコンを使う室内では、「いつ切れるかわからないから、あらかじめ強めに冷房しておく」というふうになりそうだ。すると、全体の電力需要がかえって増えそうだ。
 しかし、それは問題ない。全体の電力需要が増えてもいいのだ。問題は、ピーク時だけである。ピーク時さえ電力を下げれば、それ以外の時間帯では需要が増えていても、構わない。

 [ 付記4 ]
 繰り返すが、「スマートメーターで節電を」という趣旨とはまったく違うので、注意。
 「無駄になって いた電力を有効に使う」というのが、本項の趣旨である。そのことで、電力の逼迫を予防できる効果もある。
 


 《 発展 》

 さらに発展させて、「ロボットエアコン」というものも考えられる。
 これは、エアコンが知能を持つものだ。

  ・ 電力の状況
  ・ その室内の状況
  ・ 天気予報
  ・ 他のエアコンの状況


 これらのデータを参考にして、多数のエアコンが集団として最適制御される。あるときはAグループが OFF になり、あるときは B グループが OFF になる。
 また、あるときは全体がインバータの能力を下げ、あるときは全体がインバータの能力を上げる。
 つまり、多数のエアコンがミツバチの集団のように規律正しく集団行動をする。頭いいですね。

 コストがかかるだろうと思えるだろうが、今では CPU なんてごく安価だ。そもそも、CPU なんて、もともとエアコンに入っているはずだ。(たぶん。)
 しかも、ここで使うのは、家庭用エアコンでなく、業務用エアコンだから、付加部分のコストなんか、はした金にすぎない。それよりは節電効果(電気代削減)の方が、圧倒的に大きい。コストは1カ月もたたずに回収できるだろう。いや、1日分にもならないかも。
 
 ──

 《 付言 》

 エアコンに限らず、あらゆる家電に適用することも可能だ。その場合には、「スマート家電」となる。
posted by 管理人 at 18:46 | Comment(4) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
つまり、エアコンはたまに切れてもかまわない、奢侈的消費だと認めていらっしゃるわけですね。
 同様のことはほかの家電製品にもあてはまりますよ。冷蔵庫の電源は1時間くらい切れてもどうというおとはないし、ピーク時にテレビがつかなくなってもかまわない。
Posted by 井上 晃宏 at 2011年04月01日 22:41
> エアコンはたまに切れてもかまわない、奢侈的消費だと認めていらっしゃるわけですね。

また自己流解釈。ちゃんと書いてあるでしょ。
「30分ぐらい切れても、それまでの涼しさがあるから、」

どうも日本語読解能力に根本的な問題があるようです。大学入試の国語問題で鍛えることをお勧めします。あるいは、言語能力より、コミュニケーション能力の問題かも。

なお、冷蔵庫は「開閉しなければ」という前提ではOK。
ただし夏の猛暑のときには影響があるかも。今は大丈夫だとしても。

> ピーク時にテレビがつかなくなってもかまわない。

これは別の話題。ただし、それは私も考えて、「ゴールデンタイムにはテレビ放送をやめよ」というタイトルで書こうとしたんだけど、計算すると効果が少なすぎるとわかったので、書くのをやめた。イヤミにはなるけれど。  (^^);
Posted by 管理人 at 2011年04月01日 23:17
冷蔵庫の場合はかえって電力消費が増えそうです。
 人間ならば、1度上がっても、それを我慢できる。
 冷蔵庫ならば、庫内温度を一定にする必要があるので、温度を上げれば、あとで強力冷気を送って補償する必要があります。
 その場合、断続的な運転になるので、効率が落ちます。自動車が減速と加速をするのと同じ。自動車は定速運転が一番省燃費。冷蔵庫も同様。切ったり、強力冷蔵したりすれば、省エネにはなりません。
Posted by 管理人 at 2011年04月02日 00:45
いつも拝見してます。

今回のテーマは、

使えず捨ててしまっていた電力を使い切る
=> 過度の電力消費の調整に一番影響が少なく電力消費の大きなエアコンをあてる
= ばかげた計画停電で失っていた電力を生産・生活電力に最大限振り分ける

と読みました。すばらしい案と思いました。

さて、今回は電力の有効利用の視点でのお話すが、この緊急時においては、従来より指摘されていた
ヒートアイランド現象対策も同時に考えることが大事と思いました。

ついで、その生産・施工力拡大に被災地域の方々に担っていただければ被災者の皆さんへの収入面、精神的
や近々の移住問題での支援にもなると思います。

今回はわかりやすくテーマ、視点を絞っていらっしゃるとは思いますが、
政治には地域面・産業面・時系列にわたり対極的な視点で行ってもらいたいと強く思うしだいです。

政権にはアタマの堅いお役人のような学者ばかりでなく広く提言を受け付けて欲しいものです。
これからもすばらしい提言をお願いします。
Posted by 兆 at 2011年04月02日 13:09
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