2011年02月27日

◆ リビア情勢とカオス理論

 リビアは情勢が緊迫している。ここで、どうするべきか? それを考えるとき、カオス理論の本質を考えるといい。 ──
 
 リビアは情勢が緊迫している。反体制側は東部を制圧しているが、体制側は傭兵で民衆を殺して恐怖のもとで体制擁護をしようとしている。近日中に内戦状態になると見込まれる。その場合、多数の死者が出るだろう。大変なことだ。

 では、どうすればいいか? ここでは、カオス理論の本質を考えるといい。

 ──

 カオス理論とは何か? 通常の解説では、次のように言われる。
 「初期値のわずかな変動が、最終的に大きな差異をもたらす」

 これは通常の物理過程とは大きく異なることだ。
 
 このような事象のモデルとして、いくつかの簡単な数理モデルを示せる。
 簡単な数理モデルとしても、いろいろあるが、単純なものとして、
    f(χ) = sin(1/χ)

 という関数がある。 χ=0 の近傍で、  f(χ)  は大きく変動する。
 これは、「収束」という概念とは正反対だ。微積分では、「収束する」という関数を扱うが、それとは逆に、収束しない関数を扱うのが、カオス理論だ、とも言える。
 
 数理モデルばかりでは面倒臭いので、もっとわかりやすい話で示されることがある。次のように。
 「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」

 この効果は、バタフライ効果 と呼ばれる。つまり、ごく小さな初期変動が、最終的には巨大な変動をもたらす、という意味だ。

 ──

 では、このバタフライ効果のようなことは、どういう場合に起こるか? たとえば、
 「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」
 というようなことが、現実にしばしば起こっているのだろうか? まさか。
 仮に、そんなことが起こるとしたら、世界中の何十万だか何千万だかの蝶の動きのたびに、世界中のあちこちで嵐が起こったり消えたりで、大変だ。だから、現実には、そういうことはほとんど起こっていない。
 しかし、まったく皆無だとも言い切れない。
 では、本当はどうなのか? 

 ──

 上記の問題には、数理モデル的に考えればいいのではない。物理学や数学らしく、モデルを使って学問的に仮説を出せばいいのではない。むしろ、目を閉じて、深く本質をとらえればいい。すると、次のことがわかる。
 「小さな変動が大きな差異を生むのは、事象の分岐点にいる場合だけである」


 モデル的に言おう。 ∧ 型の状態があったとする。
 この ∧ 型の状態の左辺または右辺にいるときには、位置が少しぐらいずれても、状態に大変動は起こらない。
 しかしながら、 この ∧ 型の状態の頂点にいるときには、位置が少しだけ右や左にズレることで、状態に大変動が起こる。右に落ちるか、左に落ちるか、という大変動が。
 
 現実にも、例を示せる。高い山の険峻な稜線を歩いていたとする。(いわば紙を二つ折りにしたときの折れ線部のようなところ。)
 ここで、稜線の狭い道を歩いていれば、何も問題はない。しかし、右に一歩踏みはずせば、右の斜面を転げて、谷底に落ちる。左に一歩踏みはずせば、左の斜面を転げて、谷川に落ちる。たった一歩の違いが、ものすごい差異をもたらす。それというのも、稜線という分岐点(のような線)をたどっているからだ。

 このように「分岐点にいると、わずかな差異が大きな変動をもたらす」ということがある。(これはカタストロフィー理論で扱われる。)
 そして、カオス理論のバタフライ効果が実際に適用されるのは、このように、事象の分岐点にいる場合だけなのだ。

 ────────────

 このことを、リビアの情勢にも適用できる。ここでは、次のように言える。
 「普通の状態では、外部から介入しても、安定状態を突き崩すことは難しい。しかし、もともと不安定な状態(事象の分岐点にいる状態)では、外部からわずかな介入をすることで、大きな変動をもたらすことができる」


 ここで、大きな変動をもたらすことができるからといって、状況を好き勝手に動かせるわけではない。稜線のモデルからわかるように、「右の谷底か、左の谷川か」という差異しか選択できない。つまり、もともと用意された選択肢(二つの安定状態)のどちらかしか選択できない。……ただし、そのどちらになるかは、決定しておらず、不安定な状況にある。
 ここでは、外部の力を入れることで、どちらか一方に動かすことは、可能だ。しかも、そのためには、最小のコストで済む。

 これを現実に当てはめると、次のように言える。
 「リビアの状況は、二つの状況のあいだで揺らいでいる。体制側の勝利で安定するか、反体制側の勝利で安定するか。そのどちらの状況になるとも決まらずにいる。ここでは、外部の力によって、一方の側に安定させることが可能だ。国際社会の要望が、カダフィ追放による民主主義政権の樹立であれば、その方向に進むように力を入れると、容易にその方向に進めることができる。(今のようなどっちつかずの状況であれば。)」
 「しかしながら、いったん状況が安定したあとでは、それを反対方向に動かすことは、非常に困難である。たとえば、カダフィ側が勝利したら、それをひっくり返すことは非常に困難である」


 ──

 このことから、具体策として、私としては次のことを提言したい。
 「国連主導のもとで(あるいは米国中心の主要国の連合で)、リビアに介入する。カダフィ側の傭兵を壊滅させる」

 具体的には、降伏を呼びかけたあとで、次々と空爆して、傭兵を壊滅させればいい。
 この際では、地上軍は必要ない。民衆の側が味方に付いているのだから、情報はいくらでも入手できる。それに従って、傭兵の軍をピンポイントで殲滅していく。たとえば、ナパーム弾を使う。また、カダフィのいる宮殿については、爆弾で空爆する。

 このことによって、死者はかなり出る。しかし現状では、無実の罪が千人以上も次々と傭兵に殺されている。このままでは万人単位の市民が虐殺されるだろう。そうなるよりは、傭兵を殺す方が、よほどマシだ。また、最初の数百人を殺した時点で、傭兵は次々と投降するはずだ。(ナパーム弾で皆殺しにされたくないので。)

 大事なのは、死者の総数を減らすことだ。そのためには、圧倒的な軍事力を見せつける必要がある。「傭兵として戦うことは死ぬだけであり無意味だ」と教える必要がある。
 そして、このような小規模の介入をすることで、米軍側の死者や被害はゼロのまま、リビアの情勢を民主主義の側で安定させることが可能となる。(今ならば、だが。)



 [ 付記1 ]
 イラクの場合との違いも、わかる。
 イラクの場合は、府政支配という状況で安定していた。それを反対側にひっくり返すには、莫大なコストがかかった。(金や生命のコスト)
 リビアの場合は、状況は不安定である。どちらに転ぶかわからない。ここでは、状況を決定するためには、コストがかからない。

 モデル的に、「立てた棒が倒れる」というモデルを考えよう。
 ここでは、右に倒れたものを左に倒すことは困難だが、倒れる方向が右か左か定まらないときには、最小のコストで、倒れる方向を決定できる。

 イラク戦争の場合には、イラクも米国も莫大な損失を出し、最終的にも安定していない。
 リビアの場合には、ほとんどコストをかけないまま、カダフィ退陣という結果で安定するだろう。一方、介入をしなければカダフィ政権が持続するという結果も十分に考えられる。(どっちに転ぶかわからない状況。)

 [ 付記2 ]
 ついでだが、戦車はダメだ。今からやっても、間に合わない。だいたい、戦車なんて、よほど大量に持ち込まないと、面支配ができない。それに比べて、空爆は、早急に大面積を制圧できる。
 それというのも、もともと市民の側が反体制側であるからだ。(そうなっていなければ、空爆だけでは足りないが。)
 とにかく、現状では、小規模の空爆だけで、情勢を安定させて、死者の総数を大幅に減らすことが可能だ。
 そのことが、カオス理論の本質を知ることで、判明する。

( ※ 「戦車は意味がない」と唱えると、また軍事オタクが頭に血をのぼらせそうだが。)
posted by 管理人 at 19:34| Comment(4) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
市街戦にナパームで空爆て効率悪いでしょ。小隊規模で動かれたら見つけるのも大変だし、民衆もかなりの被害が出る。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%A0%E5%BC%BE

あと、傭兵をなめてない。

http://mltr.ganriki.net/faq12c02.html#04707
Posted by 巫女の竜 at 2011年02月28日 18:59
> 市街戦にナパームで空爆て効率悪いでしょ。

市街戦じゃないですよ。対ゲリラ攻撃と間違えているんじゃないの? ゲリラはこちら(市民側)ですよ。米軍はゲリラを支援・擁護するだけ。市街戦なんか、やるわけないでしょ。被害が大きすぎる。戦いの基本は、一方的な攻撃による敵兵の殲滅。グルジアでロシア爆撃機がグルジアの戦車隊を壊滅させたのと同じ。

> 小隊規模で動かれたら見つけるのも大変だし、

都市の出入口をブロック(検問)しているのだから、目立ちすぎだし、動きもしない。
あと、国民全体が監視者なのだから、ケータイか何かで簡単に情報を渡せる。

> 民衆もかなりの被害が出る。

だから、予告するんですよ。「近づくな」と。
ま、いわれなくても、体制側の正規兵に近づく国民はいません。近づけばどんどん殺される。

> 傭兵をなめてない。

傭兵というのは、プロは少なくて、「公務員として雇います」と言われてだまされて雇われた未成年たちが多い。いきなり武器を渡されて、戸惑っている人が多い。

本物の傭兵はすごく高給だから、数は少ない。また、そういうプロは、空爆のときには、一目散に逃げる。プロほど、勝ち目のない戦いはしない。プロは金が目的だから、命を捨てる気はさらさらない。
Posted by 管理人 at 2011年02月28日 20:26
重複投稿でしたら申し訳ありません。

本筋とは関係ないのですが、f(x)の記述に誤りがありませんか?
力学系になっていないのでカオス理論でいうところのカオスではないような気がします。

専門ではないので間違っていたらすみません。
Posted by k at 2011年03月11日 09:08
f(x) は、カオスのモデルにはなっていません。単に収束しないというモデルになっているだけで。
 その意味では適切ではなさそうです。ただ、カオスのモデルは、簡単な一次関数でも、「一目でわかる」というものではないので、ここでは示しませんでした。あまり数式っぽくするつもりはないので。

 ま、細かい話を知りたい人は、カオス理論の本でも見てください。本項の直接の話題ではないので、あっさり書き流しています。
Posted by 管理人 at 2011年03月11日 19:23
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