異常気象の原因はラニーニャだ、という報道がある。
「世界気象機関(WMO)は、各国に異常気象をもたらしている今季のラニーニャ現象が観測史上で最大規模とみられると発表した。」( → 読売 )
「最大規模とみられると発表した。ラニーニャは南米ペルー沖の海面水温が低くなる現象で、最近ではオーストラリアなどで洪水を引き起こす原因となったとされる。」( → 日経 )
しかし、観測から得られることは、「この二つに相関関係がある」もしくは「連動している」ということだけだ。因果関係は判明していない。観測の順序で言うと、ラニーニャの観測は早期に観測され、異常気象の観測はそのあとで長く観測されることが多いが、観測される順序で因果関係が決まるわけではない。
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気象学的に言えば、両者は「連動関係がある」というだけであり、因果関係は判明していない。そのことは Wikipedia に説明されている。
海水温や気圧の異常を引き起こす根本的な原因を突き止めようと研究が行われているが、根本的な原因はいまだに詳しく解明されていない。──
エルニーニョ現象とラニーニャ現象はお互いにコインの表と裏のような密接な関係にあり、切り離して考えることはできない現象である。この海域の海水温や気圧の変動に関する研究が進むにつれ、エルニーニョやラニーニャは海洋と大気の相互作用によって起こることが明らかにされた。
相互作用とは、太平洋の赤道付近の大気や海洋にはエルニーニョ・南方振動(ENSO)と呼ばれる1種の連動システムがあるとする考え方で、エルニーニョやラニーニャは常に変動を繰り返しているこのシステムの中で起こる現象とされる。
( → Wikipedia )
私の考えを言えば、上の報道は、原因と結果を取り違えている。先なのは、ラニーニャではなく、異常気象だ。では、異常気象とは何かというと、Wikipedia で言うところの「振動」だ。
つまり、そこには「因果関係」を見出すよりも、一種の「振動」を見出すべきなのだ。
比喩的に言おう。
振り子が右に振れたり左に振れたりする。これを次のように認識する発想がある。
「右に振れるときは、右に行く特別な力がかかったのだ。また、左に振れるときは、左に振れる特別な力がかかったのだ。それぞれ、特別な異常な理由が発生したせいで、振り子は右に振れたり左に振れたりするのだ」
しかし、まともな人ならば、こう発想する。
「振り子には、右に振れたり左に振れたりするような、原理がある。その原理があるときには、振り子は自然に右に振れたり左に振れたりする。つまり、振り子が右に振れたり左に振れたりするのは、特別な異常な理由があったからではなく、特別な異常な理由何もなかったからなのだ」
異常気象も同様だ。特別な異常な理由があったからではなく、何もなかったからこそ、振動は起こる。このような振動は、常に起こっている。
→ Wikipedia の図
ただし、その振幅には、ある程度の変動がある。特に近年では、その振幅(変動の幅)が大きい。それには地球温暖化も影響しているかもしれない。
しかし、変動があることそれ自体は、特に異常な理由はない。もともと振動はあるものなのだ。
そして、その振動の結果として、異常気象やラニーニャが起こる。
具体的に言えば、赤道付近で偏東風が強まるので、ペルー沖の表層海水が西部に移行する量が増え、深部にある冷たい海水(深部)が表層に湧き上がる量が増える。そのせいで、海水温は低下する。
→ Wikipedia (上記項目)
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では、このような気象の振動は、どうして起こるのか?
Wikipedia によれば、理由は不明だとのことだ。
しかし、私は、次のように考える。
「ここには、因果関係はない。次の二つがある。
・ スパイラル関係
・ 頭打ち
ある変動が起こると、スパイラルによって、その傾向が増加する。しかしやがて、上限に達して、頭打ちになる。その後は、逆方向にスパイラルが進む。そこで、下限に達して、底打ちする。その後はふたたび、上向きのスパイラルが起こる」
一般的には、これが振動の原理だ。多くの自然現象に当てはまる。(マクロ経済にも部分的には当てはまる。特にインフレには当てはまる。デフレには当てはまらない。)
この件は、前に述べたことがある。
→ 気温の非周期変動モデル
この項目で述べたのは、気温や経済のモデルだったが、一般に、多くの自然現象に当てはまる、と考えていいだろう。(振動する場合には。)