2011年01月19日

◆ 祝島のエネルギー自給(詐欺)

 祝島という瀬戸内海の小島が、エネルギー自給 100%をめざして、資金を広く集める方針だという。しかしこれは、ほとんど詐欺である。 ──
 
 エコ詐欺というのはいろいろあるが、これは特にタチが悪い部類だろう。ともあれ、記事を引用しよう。
 《 「反原発」の島、エネルギー自給率100%構想  》
 瀬戸内海に浮かぶ人口500人弱の小さな島、山口県上関町の祝島(いわいしま)で、エネルギー自給率 100%をめざす野心的なプロジェクトが始まる。約4キロ対岸で進む中国電力の上関原発建設計画に28年間ほぼ島ぐるみで反対を続けてきた島民と、東京の環境NGOが手を組んだ。実現に向けた新組織を立ち上げ、企業やアーティストらの協力で資金を広く集める考えだ。
 「祝島自然エネルギー100%プロジェクト」を進めるのは、島民の約9割が加わる「上関原発を建てさせない祝島島民の会」(山戸貞夫代表)と、東京のNGO「環境エネルギー政策研究所」(飯田哲也所長)。太陽電池などの設置や資金集めのため、「島民の会」を母体にした運営団体「祝島千年の島づくり基金」を14日に発足させた。
 手始めに、企業やアーティストから特定商品の売り上げの1%を寄付してもらうプログラム「1% for 祝島」をスタートさせる。
 試算では、島で必要な電力は約1千キロワット。1台3〜4キロワットの太陽電池を 100基設置するのを当面の目標に、し尿を生かすバイオマス発電や小型の風力発電、太陽熱温水器も順次導入。送電線も強化し、10年ほどで島内のエネルギー生産が使用を上回る「自給率 100%状態」をめざす。
 飯田さんによると、一定区域で「自然エネルギー 100%」を目指す計画は欧州などでいくつかあるが、日本で本格的なものは初めてという。山戸さんは「持続可能なエネルギーで島が自立することが、原発計画を止めることにもなる」と意気込んでいる。
( → 朝日新聞 2011-01-19
 ──

 「自然エネルギー 100%」「持続可能なエネルギーで島が自立する」というが、できるわけないでしょう。太陽光発電は、夜中には発電しない。雨や曇りでも、電力は大幅に下がる。風力発電は風任せだし、台風が来れば風車はストップする。バイオマス発電なんて、微々たるものだ。
 結局、年間発電量がどんなに多くなっても、発電量が非常に不足することはたびたび発生する。ゆえに、「自然エネルギー 100%」「持続可能なエネルギーで島が自立する」なんてことは、原理的に不可能だ。
 
 ま、それでも、どうしてもやりたいというのなら、「勝手にすれば」と言えば済む。そのときになって停電ばかりが発生することになるとしても、それは自業自得で済む。
 しかし、である。今回のプロジェクトの方針は、悪質だ。自分の金でやるのならともかく、他人の金を集める。それも、原理的に実現不可能なことを目的として。

 これは一種の「トンデモ詐欺」だ。科学的にまったく不可能なことを標榜して、夢見るエコ信者から、多大な金を集める。
 比喩的に言えば、
 「永久機関を実現するから、出資してください」
 「水からエネルギーを出す発明をしたので、出資してください」
 「徳川の埋蔵金の発掘をするので、出資してください」
 こういう嘘八百を並べて、人々の金を集める、という詐欺と同じだ。
 
 その点では、エコキャップ詐欺と同様である。
  → リサイクル詐欺(エコキャップ)
 また、エコ馬鹿の朝日をうまく丸め込んで、馬鹿の拡大再生産をしようとしているのも、同様である。

 ──

 特にひどいのが、「自立」という言葉を使うことだ。
 「自立」というのは、自分の力でやることを言う。しかし、今回のプロジェクトは、自分の力でやるのではなく、他人の力でやる。自分の金でやるのではなく、他人の金でやる。
 比喩的に言えば、乞食が「自立しています」というようなものだ。他人の金を恵んでもらって立つことが、どうして自立なのか? 詭弁も甚だしい。
 どこまで言っても、詐欺である。

 詐欺の定義:
 「嘘をついて、人をだまして、人の金を得ること」

 この定義にぴったりと当てはまる。あらゆるエコ詐欺のなかでも、最も典型的だろう。(直接的に金を得るという点で、典型的な詐欺だ。エコキャップ詐欺でさえ、これほど露骨ではない。あれは間接的に金を奪うだけだ。)

 ──

 結論。

 不安定な電力である太陽光発電や風力発電では、エネルギー自給 100%はとうてい不可能である。
 不可能であることを実行すると標榜するのは、嘘である。
 嘘を掲げて、人々から金を得るのは、詐欺である。
 


 【 関連サイト 】 

 該当のサイトは、下記だ。
  → 祝島自然エネルギー100%プロジェクト

 ※ 「熱いハートのプロジェクト」と記しているが、その熱さで発電すれば?
   もっとも、それも不安定で、すぐに発電が枯渇するだろうが。  (^^);

 ※ 結局、実現は不可能なまま、集めた金をもってトンズラするのかな。
 


 [ 付記1 ]
 関係者の人々は、本項を読んで、憤慨するだろう。自分たちの善意を否定されたと感じるだろう。
 しかし、どれほど善意があるとしても、他人に迷惑をかける行為は、悪なのである。

 繰り返しになるが、引用しよう。
 「どれほど善意があるとしても、結果が悪であるならば、その行動は悪なのである。」
   → リサイクル詐欺(エコキャップ)

 関係者の人たちが本当に善意でやるのであれば、自分の金でやるべきだ。自分の行為は自分の責任でやるべきだ。そうすれば、どれほど愚かな行為であれ、他人は文句を言わない。
 なのに、自分は善意をやっているつもりで、他人に金を出させるというのは、詐欺師も同然なのである。どうせ他人に金を出させるのであれば、「善をしているのではなく無意味なことをしている」と語るべきだ。そういうふうに正直に語れば、詐欺にはならない。
 なお、無意味なことをしていることが、自分でもわからないのかもしれない。そうであれば、自分もまただまされていることになる。ただし、それならそれで、自分で金を出すべきだ。そうすれば、詐欺師にはならない。ただの阿呆であるだけだ。阿呆は罪ではない。
 
 《 参考 》

 太陽光発電がいかに非効率な無駄であるかは、本サイトではあちこちで多大に説明した。次を参照。
  → カテゴリ 記事一覧
  
 [ 付記2 ]
 一般の人々のなかには、エコという観念凝り固まって、「何が何でも太陽光発電や風力発電を普及させたい」と思っている人もいるだろう。(たぶん自分の金を払うつもりはないだろうが。)
 なお、そういう人が、どうしてもその主義を取るにしても、祝島でやる必要はまったくない。「何が何でも太陽光発電や風力発電を普及させたい」と思うにしても、その設備が祝島にある必要はまったくない。むしろ、こんな島に置くことで、「最適地域に配置する」という方針が阻害される。
 「何が何でも太陽光発電や風力発電を普及させたい」と思うのなら、その設備を、最適地域に配備すればいい。祝島に配備する必要はまったくない。どうしても祝島に金を出したいというのであれば、だまされていることになる。
 ま、「アンチ原発」を唱える人々が、だまされて、金を奪われても、自業自得ではある。しかし、朝日みたいに、他人に金を出させるようなことは、やめてほしいものだ。それはほとんど犯罪的行為である。(倫理的には泥棒同然だ。)
 
 自分では善なることをやっているつもりでいる犯罪者ほど、手に負えないものはない。
posted by 管理人 at 19:15 | Comment(5) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
twitter に反響があった。二人紹介する。賛否両論。
 ──

>祝島を自然エネルギー100%で自立するには蓄電施設(揚水含む)、マイクログリッド構築、出力調整可能な再生可能エネルギー、EVかバイオエタノールとかも必須になる。単にバックアップを受けて発電自家消費+余剰電力売電量が島内消費電力を上回ったから100%でござる、では話にならないよ。
 → http://twitter.com/#!/northfox_wind/status/27914005167210497

この人の話には、本項の解説となる話があり、有益だ。
 http://twitter.com/#!/full_frontal 

 ──


> 「祝島自然エネルギー100%プロジェクト」を 「嘘をついて、人をだまして、人の金を得る」からエコ詐欺だと批判してる人がいる。笑止。「原子力発電は地球環境に優しいと嘘をついて、消費者をだまし、電気料金を得ること」を問題にしたほうがいいのでは。額が何ケタも違うはずだが・・・ 
→ http://twitter.com/#!/yoshitaka_w/status/27923025575809024

 詐欺師は何も渡さず金を奪うだけだが、電気料金の利用者は電気を使った「対価」として電気料金を払う。
 この人は対価を払うのがいやだというのだから、無銭飲食並みで、泥棒をしたがっているわけだ。電気泥棒。これは法律的に有罪です。
 詐欺師を肯定する泥棒の論理。
Posted by 管理人 at 2011年01月20日 13:01
翌日分(次項)に、続編を書きました。

 → エコ詐欺で儲けるには 2
  http://openblog.meblog.biz/article/3931598.html
Posted by 管理人 at 2011年01月20日 18:43
ここまで正しく祝島の島民を否定しているサイトを初めて見ました。

反対行動と言う名の妨害・暴言
上関の恥です。
このサイトを読ませて頂いて、祝島がどれだけ愚かで、先を見据えて無いか解りました。

今も中国電力の電力を使っていながら中電を批判し、あらゆる媒体で、こきおろす。
こんな事がまかり通るあの人たちの神経が怖いです。

これからもブログ読ませていただきます。
ガンバてください。
Posted by 正しい at 2011年02月04日 09:08
おっしゃる通りです。このプロジェクトに飛びついた朝日新聞は、2年後の検証記事を出すべきでしょうね。でも現状見れば、出せないだろうけどね。
Posted by M at 2013年03月15日 17:08
もう上記コメントから2年経ちましたね…今どうなっているのかな。
Posted by てんてけ at 2015年06月09日 15:23
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