エコ詐欺というのはいろいろあるが、これは特にタチが悪い部類だろう。ともあれ、記事を引用しよう。
《 「反原発」の島、エネルギー自給率100%構想 》──
瀬戸内海に浮かぶ人口500人弱の小さな島、山口県上関町の祝島(いわいしま)で、エネルギー自給率 100%をめざす野心的なプロジェクトが始まる。約4キロ対岸で進む中国電力の上関原発建設計画に28年間ほぼ島ぐるみで反対を続けてきた島民と、東京の環境NGOが手を組んだ。実現に向けた新組織を立ち上げ、企業やアーティストらの協力で資金を広く集める考えだ。
「祝島自然エネルギー100%プロジェクト」を進めるのは、島民の約9割が加わる「上関原発を建てさせない祝島島民の会」(山戸貞夫代表)と、東京のNGO「環境エネルギー政策研究所」(飯田哲也所長)。太陽電池などの設置や資金集めのため、「島民の会」を母体にした運営団体「祝島千年の島づくり基金」を14日に発足させた。
手始めに、企業やアーティストから特定商品の売り上げの1%を寄付してもらうプログラム「1% for 祝島」をスタートさせる。
試算では、島で必要な電力は約1千キロワット。1台3〜4キロワットの太陽電池を 100基設置するのを当面の目標に、し尿を生かすバイオマス発電や小型の風力発電、太陽熱温水器も順次導入。送電線も強化し、10年ほどで島内のエネルギー生産が使用を上回る「自給率 100%状態」をめざす。
飯田さんによると、一定区域で「自然エネルギー 100%」を目指す計画は欧州などでいくつかあるが、日本で本格的なものは初めてという。山戸さんは「持続可能なエネルギーで島が自立することが、原発計画を止めることにもなる」と意気込んでいる。
( → 朝日新聞 2011-01-19 )
「自然エネルギー 100%」「持続可能なエネルギーで島が自立する」というが、できるわけないでしょう。太陽光発電は、夜中には発電しない。雨や曇りでも、電力は大幅に下がる。風力発電は風任せだし、台風が来れば風車はストップする。バイオマス発電なんて、微々たるものだ。
結局、年間発電量がどんなに多くなっても、発電量が非常に不足することはたびたび発生する。ゆえに、「自然エネルギー 100%」「持続可能なエネルギーで島が自立する」なんてことは、原理的に不可能だ。
ま、それでも、どうしてもやりたいというのなら、「勝手にすれば」と言えば済む。そのときになって停電ばかりが発生することになるとしても、それは自業自得で済む。
しかし、である。今回のプロジェクトの方針は、悪質だ。自分の金でやるのならともかく、他人の金を集める。それも、原理的に実現不可能なことを目的として。
これは一種の「トンデモ詐欺」だ。科学的にまったく不可能なことを標榜して、夢見るエコ信者から、多大な金を集める。
比喩的に言えば、
「永久機関を実現するから、出資してください」
「水からエネルギーを出す発明をしたので、出資してください」
「徳川の埋蔵金の発掘をするので、出資してください」
こういう嘘八百を並べて、人々の金を集める、という詐欺と同じだ。
その点では、エコキャップ詐欺と同様である。
→ リサイクル詐欺(エコキャップ)
また、エコ馬鹿の朝日をうまく丸め込んで、馬鹿の拡大再生産をしようとしているのも、同様である。
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特にひどいのが、「自立」という言葉を使うことだ。
「自立」というのは、自分の力でやることを言う。しかし、今回のプロジェクトは、自分の力でやるのではなく、他人の力でやる。自分の金でやるのではなく、他人の金でやる。
比喩的に言えば、乞食が「自立しています」というようなものだ。他人の金を恵んでもらって立つことが、どうして自立なのか? 詭弁も甚だしい。
どこまで言っても、詐欺である。
詐欺の定義:
「嘘をついて、人をだまして、人の金を得ること」
この定義にぴったりと当てはまる。あらゆるエコ詐欺のなかでも、最も典型的だろう。(直接的に金を得るという点で、典型的な詐欺だ。エコキャップ詐欺でさえ、これほど露骨ではない。あれは間接的に金を奪うだけだ。)
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結論。
不安定な電力である太陽光発電や風力発電では、エネルギー自給 100%はとうてい不可能である。
不可能であることを実行すると標榜するのは、嘘である。
嘘を掲げて、人々から金を得るのは、詐欺である。
【 関連サイト 】
該当のサイトは、下記だ。
→ 祝島自然エネルギー100%プロジェクト
※ 「熱いハートのプロジェクト」と記しているが、その熱さで発電すれば?
もっとも、それも不安定で、すぐに発電が枯渇するだろうが。 (^^);
※ 結局、実現は不可能なまま、集めた金をもってトンズラするのかな。
[ 付記1 ]
関係者の人々は、本項を読んで、憤慨するだろう。自分たちの善意を否定されたと感じるだろう。
しかし、どれほど善意があるとしても、他人に迷惑をかける行為は、悪なのである。
繰り返しになるが、引用しよう。
「どれほど善意があるとしても、結果が悪であるならば、その行動は悪なのである。」
→ リサイクル詐欺(エコキャップ)
関係者の人たちが本当に善意でやるのであれば、自分の金でやるべきだ。自分の行為は自分の責任でやるべきだ。そうすれば、どれほど愚かな行為であれ、他人は文句を言わない。
なのに、自分は善意をやっているつもりで、他人に金を出させるというのは、詐欺師も同然なのである。どうせ他人に金を出させるのであれば、「善をしているのではなく無意味なことをしている」と語るべきだ。そういうふうに正直に語れば、詐欺にはならない。
なお、無意味なことをしていることが、自分でもわからないのかもしれない。そうであれば、自分もまただまされていることになる。ただし、それならそれで、自分で金を出すべきだ。そうすれば、詐欺師にはならない。ただの阿呆であるだけだ。阿呆は罪ではない。
《 参考 》
太陽光発電がいかに非効率な無駄であるかは、本サイトではあちこちで多大に説明した。次を参照。
→ カテゴリ 記事一覧
[ 付記2 ]
一般の人々のなかには、エコという観念凝り固まって、「何が何でも太陽光発電や風力発電を普及させたい」と思っている人もいるだろう。(たぶん自分の金を払うつもりはないだろうが。)
なお、そういう人が、どうしてもその主義を取るにしても、祝島でやる必要はまったくない。「何が何でも太陽光発電や風力発電を普及させたい」と思うにしても、その設備が祝島にある必要はまったくない。むしろ、こんな島に置くことで、「最適地域に配置する」という方針が阻害される。
「何が何でも太陽光発電や風力発電を普及させたい」と思うのなら、その設備を、最適地域に配備すればいい。祝島に配備する必要はまったくない。どうしても祝島に金を出したいというのであれば、だまされていることになる。
ま、「アンチ原発」を唱える人々が、だまされて、金を奪われても、自業自得ではある。しかし、朝日みたいに、他人に金を出させるようなことは、やめてほしいものだ。それはほとんど犯罪的行為である。(倫理的には泥棒同然だ。)
自分では善なることをやっているつもりでいる犯罪者ほど、手に負えないものはない。
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>祝島を自然エネルギー100%で自立するには蓄電施設(揚水含む)、マイクログリッド構築、出力調整可能な再生可能エネルギー、EVかバイオエタノールとかも必須になる。単にバックアップを受けて発電自家消費+余剰電力売電量が島内消費電力を上回ったから100%でござる、では話にならないよ。
→ http://twitter.com/#!/northfox_wind/status/27914005167210497
この人の話には、本項の解説となる話があり、有益だ。
http://twitter.com/#!/full_frontal
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> 「祝島自然エネルギー100%プロジェクト」を 「嘘をついて、人をだまして、人の金を得る」からエコ詐欺だと批判してる人がいる。笑止。「原子力発電は地球環境に優しいと嘘をついて、消費者をだまし、電気料金を得ること」を問題にしたほうがいいのでは。額が何ケタも違うはずだが・・・
→ http://twitter.com/#!/yoshitaka_w/status/27923025575809024
詐欺師は何も渡さず金を奪うだけだが、電気料金の利用者は電気を使った「対価」として電気料金を払う。
この人は対価を払うのがいやだというのだから、無銭飲食並みで、泥棒をしたがっているわけだ。電気泥棒。これは法律的に有罪です。
詐欺師を肯定する泥棒の論理。
→ エコ詐欺で儲けるには 2
http://openblog.meblog.biz/article/3931598.html
反対行動と言う名の妨害・暴言
上関の恥です。
このサイトを読ませて頂いて、祝島がどれだけ愚かで、先を見据えて無いか解りました。
今も中国電力の電力を使っていながら中電を批判し、あらゆる媒体で、こきおろす。
こんな事がまかり通るあの人たちの神経が怖いです。
これからもブログ読ませていただきます。
ガンバてください。