2011年01月08日

◆ 航空による救援活動

 ドクターヘリによる航空救急は有効だが、救難飛行艇による救難活動も有効だ。ただし、これによる世界的な救難活動を阻害するものがある。武器輸出三原則だ。 ──

 ドクターヘリによる航空救急は有効だ。Wikipedia から引用しよう。
 重篤な患者が発生した場所に医師と看護師をいち早く派遣して、初期治療を開始し、救急搬送時間の短縮による救命率の向上や後遺症の軽減、へき地における救急医療体制の強化、災害時の医療救護活動の充実を目的としている。
 日本に先んじて導入されたドイツでは、国内に73機配備されており、国内何処にでも要請から15分以内に到着できる。ドクターヘリ導入後、交通事故の死亡者が1/3に激減したと言われている。
( → Wikipedia
 ヘリコプターだけでなく、救難飛行艇も有効だ。たとえば、離島である小笠原諸島には空港がなく、重大な事故などの救急時には救難飛行艇に頼っている。「空港を設置してくれ」という声もあるが、適当な場所もないし、費用も巨額だ。しかし、救難飛行艇があれば、この問題を一挙に解決できる。飛行機の定期便なら、予定時刻までグズグズしている間に患者が死んでしまうかもしれないが、救難飛行艇ならば、即時に救援に向かうことができる。貢献度は多大だ。
  → 救急患者搬送600回 海自父島分遣隊に感謝状

 用途としては、救急医療のほか、海難救助にも有効だ。前進機の US-1,1A は、1981年(昭和56)に出動100回を達成し、2005年(平成17)7月までに745回以上の出動によって、730名以上を救助している。これほどにも人命救助に貢献しており、航空自衛隊の飛行機では最も国民に貢献していると言われる。コスト的にも、空港を設置するコストを削減できているので、数千億円を節減するような効果がある。

 これほど優秀な救難飛行艇だが、世界には日本の US-1 およびその改良機である US-2 しかない。そこで世界最優秀の人命救助期である US-2 を輸出しよう、という意向もある。
 ところが、もともと自衛隊用に開発されたせいで、たとえ民生用途でも、武器輸出三原則に抵触するらしい。そのせいで、せっかくの人命救助の能力が、無駄に死蔵されてしまっている。Wikipedia によると、こうだ。
 新明和では、US-2を民間の消防飛行艇として販売する計画を持っており、2005年のパリ航空ショーで模型を展示、またパンフレットで詳細を発表した。20カ国ほどから興味があるとの打診を受けたという。この研究についてはすでにPS-1の5801号機で実験を行っており、データの蓄積は完了している。
 しかし、海上自衛隊向けの機体のため、日本政府の「武器輸出三原則」によって現状では輸出することは不可能であり、海外展開は三原則の緩和(あるいは解釈変更)を見越しての計画である。
 日本航空機開発協会 (JADC) では、本機開発にあわせて民間転用への開発調査を実施し、消防・監視・離島支援へのニーズがあることを確認した。今後は市場調査および機体構造の検討を予定している。
 2007年(平成19)12月初旬にマレーシアで行われたLIMA'07 エアショーにおいて、US-2(海自3号機仕様)の大型模型を展示し、森林消火や海難救助、災害時の緊急輸送活動といったニーズに応えられるとして提案した。
 せっかく民主党の政権になって、「何でも反対」というわけには行かなくなったのだから、ここで度量を発揮して、世界の救援活動に貢献してほしいものだ。
 
 この提言が、結論だ。(たいした話ではないが。)



 [ 余談 ]
 「平和を守る社民党(など)」が、人命救助を妨害する、というのが、現状のようだ。
 しかし社民党はすでに閣外に去った。民主党も、社民党みたいなことをする必要はなくなった。日本も世界の安全のために貢献してほしいものだ。
  


 【 追記 】
 コメント欄で教えてもらったが、この飛行艇以外にも、次の2種(いずれもロシア製)があるという。

 (1) A-42
  → http://obiekt.seesaa.net/article/106312650.html
 2008年の情報で、「2010年に配備予定」と記されている。
 しかし現時点でネットを検索したところ、英文情報を含めて、皆無である。2008年のころの古い情報はあるが、それ以後の情報はないし、実物についての情報もない。
 たぶん、開発中止か、大幅延期か、どちらかだろう。
 この機種は、無視していい。

 (2) Be-200
  → Wikipedia 「 Be-200 」
 これは現物が存在する。この情報が抜けていたのは、本文中の手抜かりだったと言える。私はよその記事を読んで、「他にはない」という情報を得たが、西側以外にはあったんですね。
 ただ、古い機種だ。最新鋭の電子システムを搭載している US-2 とは比べものにならないだろう。価格だけは安いかもしれないが、勝負になるまい。

 ──

 さらに、私が調べたところ、次の2機種もある。

 (3) A-40
  → Wikipedia 「 A-40 」
 ロシア製。実際に配備されている。 US-2 のライバル格かと思ったが、サイズが全然違う。旅客機のサイズのある大型機だ。用途はほとんどないと思える。牛刀を以て鶏を割く、のたぐい。
 
 (4) Bombardier 415
  → Wikipedia 「 Bombardier 415」Wikipedia 「ボンバルディア CL-415」
 ボンバルディア CL-415は、カナダ製の、古臭い飛行艇。US-1 のライバル格だ。時代遅れ。

 ──

 なお、(1) のページには、「飛行艇は不要だ。ヘリで代替できる」という評論家の説があるが、妥当ではない。
  ・ ヘリは遅すぎるので、緊急用途に向かない。
  ・ ヘリは運搬能力が低いので、大規模な運搬ができない。(消火の水など。)
 というわけで、ヘリはとうてい飛行艇のかわりにはならない。

 そもそも、ヘリコプターというのは、しょっちゅう墜落事故が起こる。気象条件の良くないところで運用することは、お勧めできない。逆に言えば、ヘリを持っていても、実際に稼働できる日数はかなり制約されそうだ。
 例。「父島で緊急患者が発生しました。ただちに救援に向かってください」
   「気象条件が悪いので、ヘリは運航停止です。明日まで待ってください」
   「待っていたら死んじゃうよ!」
   「お悔やみ申し上げます」

 ── 

 ついでだが、速度が遅いという点では、ヘリの難点を解決した特殊な輸送機もある。先日、沖縄に配備されたばかり。
  → V-22 (オスプレイ) - Wikipedia
 軍用ならばこれもいいが、海面に着水する海難救助には向かない。これは選択肢には入らない。V-22 は、自衛隊が持っていても、自衛隊のオモチャにしかなるまい。
posted by 管理人 at 12:10| Comment(12) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>世界には日本の US-1 およびその改良機である US-2 しかない。

それ以外にもあるよ。
http://obiekt.seesaa.net/article/106312650.html
Posted by 巫女の竜 at 2011年01月08日 18:17
Posted by 巫女の竜 at 2011年01月08日 18:31
上記コメントの情報を得て、加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2011年01月08日 19:41
A-42は、開発中止にはなってはいないみたいですね。
http://www.arms-expo.ru/site.xp/049051124054053054.html

またA-42はA-40の探索・救難機型ですよ。
Posted by 巫女の竜 at 2011年01月09日 00:37
そのページを日本語に翻訳すると、これ。
  → http://bit.ly/h0FcyV

 2015年の配備をめざしているようだ。
 ただし、完成しても、かなり大型機になるはずだから、ライバルにはならないだろう。
Posted by 管理人 at 2011年01月09日 00:56
US-1とUS-2が海難救助に活躍しているというお話ですが、その実績は船で発生した病人や怪我人の搬送が主ですね。

一般的に海難救助というと嵐で遭難した船からの救助を思い浮かべますが、US-1とUS-2では船が遭難する程の波になると着水できません。
一昨年、三重県沖でフェリーが高波で遭難して乗員乗客がヘリで救助される事故がありましたが、このときの波は4〜5mに達しており、US-1やUS-2が着水できる限界である3mを大きく超えていました。

もうひとつ、US-1やUS-2は夜間着水ができません。小笠原の急患輸送も夜間は硫黄島からのヘリで対応しています。

このように飛行艇はヘリに比べ、使い勝手が良くないし、価格も高いことから、世界的には海難救助はヘリで行うのが主流となっています。
Posted by Bun at 2011年01月10日 00:57
US-2はボンバルディアのCL-415より新しいから売れるという訳には行かないようですよ。

http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0120110106babb.html

このままでは売れそうもないから何とかしなきゃということなんでしょう。
Posted by Bun at 2011年01月10日 01:13
> 小笠原の急患輸送も夜間は硫黄島からのヘリで対応しています。 このように飛行艇はヘリに比べ、使い勝手が良くないし、価格も高いことから、世界的には海難救助はヘリで行うのが主流となっています。

 情報が不正確ですよ。
 小笠原の急患輸送は、高速な飛行艇が原則です。それができない例外的なときに限り、硫黄島までヘリにして、硫黄島から先は P3C にします。小笠原から本土までヘリにすることはありません。

 世界的には海難救助はヘリで行うのが主流となっているのは、飛行艇がないからです。ないものを使えるわけがないので。

> 価格も高い

オスプレイに比べれば高くないですよ。大量生産するオスプレイと、2年に1機だけの US-2 を比べれば、オスプレイの方がよほど金食い虫だ。 US-2 を輸出して量産すれば、かなり安くなります。

それに「ヘリと P3C」とのセットよりも安い。
Posted by 管理人 at 2011年01月10日 01:25
情報が不正確とのご指摘ですが、
小笠原の急患搬送に関して事実と違うことを書きましたでしょうか?

後、夜間の急患搬送は例外事項なのですか?
24時間対応が原則だと思いますけどね。

>飛行艇がないからです。
これこそ「情報が不正確」ですね。
今飛行艇を生産している国は日本とロシアとカナダ位しかありませんが、昔はアメリカやイギリス他多くの国で飛行艇を生産していました。
飛行艇が必要ならば、生産を続けることもできたはずなのに、そうはしなかった。
飛行艇に見切りをつけて、ヘリに移行したのです。

>US-2 を輸出して量産すれば
汎用性の高いオスプレイと異なり、利用局面がごく限られるUS-2に大量生産は望めないでしょう。
輸出の先行きが不透明なのは私の紹介したニュースから読みとっていただけると思います。

>「ヘリと P3C」とのセットよりも安い。
「P-3C」には救難とは別に本来の任務がありますので、そういう比較には意味がないんじゃないでしょうか。
Posted by Bun at 2011年01月10日 11:44
> 飛行艇が必要ならば、生産を続けることもできたはずなのに、そうはしなかった。 飛行艇に見切りをつけて、ヘリに移行したのです。

 外国のやっていることをすべて正しいと思う発想だと、そう考えがちですが、正しくはそうではありません。
 第1に、ヘリに移行したのではない。ヘリは低速だし航続距離も短いので代替にはなりません。
 第2に、他国が飛行艇を開発しないのは、ニッチな市場だからです。また、海洋展開も少ない。広範な島嶼部を持つのは、日本や、太平洋の島国などだけです。
 たとえば米国なら、グアムやハワイには飛行場がある。小さな島はない。欧州諸国も同様。小さな遠い島はない。(小さな近い島はあるが、ヘリで足りる。)
 また、米国は大規模な海軍を維持することが大事であり、2年に1機しか生産しないようなニッチな市場には進出しません。それだけのこと。
 飛行艇の意義は、ニッチな市場だということです。不要だということではありません。そこを根本的に誤解していますね。

 ──

 そもそも、あなたの見解は、論旨として方向違いです。
 「飛行艇は不要だから米国は買うな」
 「飛行艇は不要だから日本は開発するな」
 という趣旨ならわかります。
 しかし、
 「飛行艇は不要だから日本は輸出するな」
 というのは、論理になっていないでしょう。飛行艇は不要だと思う国は買わなければいいのだから、あなたが何かを言う必要はない。一方、飛行艇は有益だと思う国があるなら、日本はそれを輸出した方がいい。
 また、飛行艇は有益だと思う国がないのなら、日本が輸出しようがするまいが、どこの国も買わないはずなので、あなたがいちいち何かを言う必要はない。放置しておけばいい。

 結局、あなたの主張は、軍事オタクの趣味的な見解になっており、本項の趣旨とは合致しません。
 だいたい、必要か否かなら、小笠原の人がよく知っているのだから、彼らに「ヘリだけでいいか?」と尋ねてみるといいでしょう。「本土まで行く途中で燃料切れで墜落しますけど」と補足しておくといいですよ。
Posted by 管理人 at 2011年01月10日 18:59
本項の問題は是正された。

 → http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130324/plc13032406580005-n1.htm

 以下、引用。
 ──
政府が、海上自衛隊に配備している水陸両用の救難飛行艇「US−2」をインドに輸出するための手続きに着手したことが23日、分かった。インドは日本側に救難活動や海賊対策でUS−2を導入する方針を伝えてきており、製造元は現地事務所を設け、インド政府との交渉に入った。日本にとり輸出による生産増で1機当たりの製造コストを下げ、自衛隊の調達費を低減させるメリットがある。
 US−2は機体から特殊な装甲や電波などによる敵味方識別装置を外せば「武器」とは認定されないが、自衛隊が運用する航空機だとして輸出はタブー視されてきた。だが、一昨年12月の武器輸出三原則の緩和で「平和貢献・国際協力」に合致するものであれば「武器」も輸出を容認したことに伴い、政府はタブーを取り払い、防衛産業の発展と防衛費の効率化を図る。
Posted by 管理人 at 2013年03月25日 06:16
本項の執筆は 2011年01月08日 だが、現時点(2013年6月23日)では、インドへの民生用輸出という方針が進んでいる。(すぐ上のコメントにも記してある。)

 そのさなかで、太平洋のヨット遭難の救出、という事例があった。

 波の高さは3メートル以上で、すごい荒天。
  → http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130622-00000530-san-soci

 強行着水した飛行艇は、4機のエンジンのうち1機が破損。
  → http://www.nikkansports.com/general/news/p-gn-tp0-20130622-1145938.html

 これほどの悪条件でも、無事、任務を達成した。たいしたものだ。
Posted by 管理人 at 2013年06月23日 17:34
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
過去ログ