2010年12月19日

◆ 太陽熱発電

 日本政府(特に民主党)は、太陽光発電に熱中している。
 一方、その間に、欧州企業は太陽熱発電に集中して、事業を成長させているという。 ──

 日本政府(特に民主党)は、太陽光発電に熱中している。
 だが、私はこれを批判してきた。「電力の安定性がない。ゆえにバックアップ発電が同量必要となり、無駄だ」という趣旨。
  → 太陽光発電のコスト計算
  → 電力コストの計算法
 
 一方、その間に、欧州企業は太陽熱発電に集中して、事業を成長させているという。朝日の記事を引用しよう。
 太陽熱発電は、ボイラーのような原理で熱をためこむことで24時間、ムラのない電力を供給できる。
 太陽熱発電をひっさげて欧州が動き出している。その中心にいるのはドイツ勢だ。
 サハラ砂漠と中東を太陽熱発電の一大拠点にし、地中海に大容量ケーブルを敷設して欧州に電力を運ぶ。2050年までに欧州の電力の 15%を供給することを目指す。
 実は、太陽熱発電の技術で日本が世界の先端だったことがある。石油ショック後 80年代はじめに四国で実験に成功した。しかし、その後、「太陽の弱い日本には適さない。コストも高すぎる」との理由から政府の後押しがなくなり、開発は途絶えた。「あのまま続けていれば、間違いなく世界一になっていた」と日本の業界関係者は嘆く。
 9月下旬、モロッコの首都ラバト。日本のメーカーや商社、経済産業省などの 50人が訪れ、技術を売り込んだ。しかし、太陽光発電パネルはまだしも、20年を上回る空白ができた太陽熱発電は追い上げはじめたばかりだ。
 自然エネルギーで、日本がドイツに差をつけられたのは2回目だ。2000年代はじめ、ドイツは自然エネルギーを高値で電力会社に買い取らせる制度を導入し、太陽光発電を伸ばした。同様の制度の導入を検討しながら見送った日本は、まもなく太陽光世界一から転落し、「失われた10年」に陥った。
 独政府系研究機関 所長は、「自然エネルギーは、すでにドイツ経済の1%をしめる。そんな機会があったのに、日本政府は理解できなかった」と話す。
( → 朝日新聞 2010-12-19
 この記事は適切だ。太陽熱発電は、太陽光発電や風力発電と違って、安定性がある。その意味で、太陽熱発電は、太陽光発電や風力発電よりも、はるかに優れた電力源なのである。(後述の [ 付記 ] を参照。)

 とすれば、これを推進するべきなのだが、現実には、日本政府は太陽熱発電を推進していない。太陽光発電ばかりに熱中している。上記記事の最後でも触れられているとおりだ。
 これは間違った方針なので、私としては、「太陽光発電は駄目だ」と主張するだけでなく、「太陽熱発電に注力せよ」と主張したい。
 これまでは、「太陽光発電は、まだ普及段階ではないので、普及のために莫大な補助金をかけるよりは、研究開発に金をかけよ」と主張してきた。
 それはそれでいいのだが、さらに、次のように言いたい。「太陽光発電の研究はそれなりに続けていいが、太陽熱発電の研究と普及のために注力せよ。こちらはすでに実用段階に達しているからだ」と。

 この件については、日経 BP に優れた記事がある。(3月の記事。)引用しよう。
 1キロワット時当たりの発電コストは、太陽光発電の約18セントに対し、太陽熱発電は石油火力発電に匹敵する10セント前後にまで下がった。
 東京工業大学とコスモ石油、三井造船、コニカミノルタオプトが手がける「ビームダウン」と呼ばれる方式だ。この方式を採用した実証プラントが、既にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国で動き出している。
 ビームダウン方式は構造上、発電コストでタワートップ式よりも優れるとされる。大量のヘリオスタットを並べる点ではタワートップと同じだが、タワーの構造が異なる。まず、太陽光をタワーの上部に集めて、そこにある鏡でタワーの下部にある集光器に向けて再反射する。集光器では、熱を集める媒体として使う溶融塩を、タワートップの約450度を上回る約600度にまで熱することができる。このため、効率よく蒸気を発生できる。
 玉浦教授がビームダウン方式を開発したのは1990年代前半のことだが、これまで実用化は叶わなかった。それが、なぜ今になってアブダビで花開いたのか。
 実は玉浦教授は、実用化を目指して2006年頃から数々の日本企業に声をかけ、太陽熱発電に関する私的な勉強会を開催してきた。その上で提案書をまとめ、実証プラントを建設するための支援を求めて、何度となく政府に働きかけをしてきた。だが、「いくら世界で太陽熱発電が注目されているかを説明し、日本企業の競争力強化のために支援してほしいと要望しても、なしのつぶてだった」と玉浦教授は言う。
 日本政府が2009年度に太陽電池の導入補助に投じた予算は、200億円以上に及ぶ。なぜ、数億円の予算すら太陽熱発電に振り向けられなかったのか。
( → 日経BP転載
 良く書けた記事だ。最後にも触れられているが、太陽熱発電にこそ、日本政府は金をかけるべきなのだ。



 [ 付記1 ]
 太陽熱発電は、太陽光発電や風力発電と違って、安定性がある。このことはとても重要だ。
 太陽熱発電は、発電量の変動を抑えることができる。少なくとも1日の間の変動は抑えることができる。二日間や三日間の変動にも十分に対処しようとすると、蓄熱タンクの量を2〜3倍にする必要がある(もしくは発電量を 1/2 〜 1/3 にする必要があるので、現実的ではないが、それでも太陽光発電や風力発電よりもはるかに実用性が高い。
 現状では、急激な電力需要の変動に対処するために、常に余剰な量を発電している。その分は無駄に捨てられている。その量は発電量の1割内外に及ぶ。ここで、太陽光発電や風力発電を導入したら、急激な発電量の変動に対応するために、さらにその発電量の半分程度の分を無駄に捨てる必要がある。
 なお、このような「無駄に捨てる電力」がないと、発電量が急激に低下したときに、日本全体で電圧低下や停電が起こる。その場合の被害は、甚大となる。たとえば、ほんのわずかな電圧低下があっただけで、被害が甚大になる、という例が先にあった。
  → 電圧低下 0.07秒、月 100億円減収の恐れ 東芝工場 (朝日新聞)
 ついでだが、停電があると、IT系では、かなりの被害が考えられる。個人レベルでは、次のような話題が見つかった。
  → 突然の停電でソフトウエアが壊れてしまった (朝日新聞)

 [ 付記2 ]
 日本企業が何もやっていない、というわけではない。ネットで調べると、次の情報が見つかる。
  → JFEエンジ、太陽熱発電の実証試験
  → チュニジア共和国との共同プロジェクト
 
 前者の記事によると、「太陽エネルギーの 70% 以上を蒸気として回収することに成功した」ということだから、効率は高い。もはや太陽光発電なんか放っておいて、太陽熱発電に注力するべきだろう。
 民主党や朝日新聞は、「エコ、エコ」と唱えて太陽光発電に熱中してきたが、太陽光発電は本当はちっともエコではないのだ。「エコのために太陽光発電を」なんていう詐欺的なインチキを信じるのはやめよう。

( ※ よく読むと、70% というのは熱効率ではない。真の熱効率は、さらにそのあと、タービンの熱効率に従う。それでも総合的には、太陽光発電をはるかに上回るだろう。)
( ※ なお、タービンをガスで回すことでも発電できるので、天候に左右されない安定性のある発電装置にすることができるそうだ。……前者の記事による。)
 
 [ 付記3 ]
 太陽熱発電は、どうして効率が高いか? 光の波長に関係なく、そのエネルギーを利用できるからだ。(熱エネルギーの形。)
 一方、太陽光発電の場合、半導体によって光を電気エネルギーに変える。この場合は、特定の狭い帯域の波長のみが対象となる。となると、対象となる波長以外の光エネルギーは、無駄に捨てられることになる。
 というわけで、太陽光発電というものは、原理的に効率は低い。効率を少しずつ高めようとしても、現状の 15% から 20% 以上に高めるのに、さんざん苦労している。まして、効率を 30% 以上に高めるとしたら、特別な工夫が必要となる。(たとえば、プリズムによって波長を分けて、それぞれの波長ごとに最適化した半導体を使う。……しかしながら、そのような方法は試みられていない。また、そのような方法を取っても、たかが知れている。)
 太陽光発電が本当に実用化の段階に達するには、あと何十年もかかるだろう。当面、現実的なのは、太陽熱発電の方だ。
  
 [ 付記4 ]
 太陽光発電では、光エネルギーの多くは、熱エネルギーの形になって捨てられる。その際、捨てられた熱エネルギーが、地球を温めてしまう。
 どうせなら、黒い太陽光発電を屋根に付けるかわりに、屋根を白色にして、光を宇宙に反射する方が、地球温暖化を阻止できそうだ。この件は、前にも述べた。
  → 太陽電池の熱吸収
 


 【 後日記 】
 あとでよく考えると、太陽熱発電は、砂漠でのみ有効だろう。というのは、雨が降ると、鏡が汚れるので、光が散乱してしまって、集光の効率が下がるからだ。
 したがって、砂漠地帯のある国(アラブや中国やアメリカ)でのみ有効であり、モンスーン地帯の日本では無理だろう。
 技術開発だけはした方がいいかもしれない。輸出できるので。……とはいえ、日本では無理だ。
( ※ 自然エネルギーの発電は、あれもこれも現段階では無理だ。いずれも研究開発途上ということかな。せいぜい特別に適した土地では実用化されるというぐらいか。日本ではどれも無理。)
posted by 管理人 at 09:37| Comment(12) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ニュース。

伊藤忠が太陽熱発電に参入 スペイン企業と共同で
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/101220/biz1012201002002-n1.htm

日本の商社なのに、日本企業とは連携しない。日本企業を助けるかわりに、外国企業を助けている。せっせと日本の没落に手を貸す。
現在の日本の駄目状況を示す。
Posted by 管理人 at 2010年12月20日 12:10
私は、太陽光(熱)発電、風力発電共に不確定要素が多い発電システムですのであまり良い方法とは考えていません。。
私は、瀬戸内圏に住んでいますが、潮の流れが速いところがいたるところにあります。
潮力発電が良いと考えています。
1.潮の干満は永遠です。
1日に2回、潮の流れが1時間ほど止まるだけです。
2.海水と空気の質量差は比較にならないほど大きい。潮の流れのエネルギーは甚大です。
Posted by お〜ぃうどん at 2011年01月20日 09:19
4月6日(水)に関西テレビの『アンカー』という
報道番組で青山繁晴氏が
「日本では、太陽光発電や風力発電より
太陽熱のほうが適している」
と発言していました。

それで検索してこちらのHPに辿り着きました。

どうも詳細な記事を有り難うございます。

これからも、ガンバってください。
Posted by 古東正舟 at 2011年04月09日 12:37
小規模太陽熱発電システムの開発が急務と考えます(各家庭に設置可能な)
・エネルギー変換効率が高い
・低コスト
鏡面が汚れる問題はありますが、汚れを分解する触媒や汚れを落としやすい塗装などが考えられている世の中です、汚れにくい鏡面加工も不可能ではないのでは(開発可能)・・・・・
また、太陽電池・バッテリーには将来性がないのでは?
・エネルギー変換効率が悪い
・レアアースに頼るところが大きい(埋蔵量、安定供給の面で不安があります)

論点はずれますが太陽熱利用という意味で、(道)路面を集熱に利用するシステムの開発なんかできないものですかねぇ・・・アスファルト舗装がヒートアイランドや熱帯夜の原因になっているようですし、なんといっても面積が広い!
Posted by 泉正男 at 2011年05月20日 10:16
太陽熱発電は自動追尾装置が必要なので、小規模はコスト的に無理なようです。遠い将来は別として。
Posted by 管理人 at 2011年05月20日 12:09
はじめまして。

 斎藤武雄氏(元東北大教授)の、効率的な太陽熱発電についての研究が有ったのですが。
 その後、どうなったのでしょうか。
Posted by ポポイ at 2011年05月21日 14:49
斎藤武雄さんの太陽熱発電は、冷蔵庫サイズで家庭用電源となるということです。コストは太陽電池なら70万円のところが30万円だとのこと。
http://mutenkahouse.seesaa.net/article/13756656.html
Posted by Miz at 2011年05月23日 05:29
私が子供のころ
   「今日は、30度超えたんやて」
   「そら、暑いはずや」
夏にはこんな会話がされていました。40年前後昔の話です。それが今では40度の時代です。冬も暖かくなっています。年平均気温が 0.何度上昇 などとテレビ等で聞くたびに「そんなん嘘やろ」と言いたくなります。
氷河が後退し、北極の雪が減り白クマ・アザラシの生息の危機などと言われています。
コスト的に無理、などと言っていられる時代ではないと思うのですが・・・・・経済優先か環境優先か、選択しなければならないのでは?
自民党に続き民主党の政策も経済優先が明らかであり、国民の大半も無意識に経済優先があるように感じます。その象徴がエコカー・EVであり、エコ製品だと思っています。使えるものを買い替えることがどれだけ環境を破壊しているか・・・・・便利、快適な生活をしながら環境を守れるほど技術は進歩していないのでは?
今の生活を維持するには、少々高くついてもよりよいものを取り入れていかなければしかたないのでは?
それ自体が経済活動であり、技術開発に繋がります。
Posted by 泉 正男 at 2011年05月23日 13:50
>雨が降ると、鏡が汚れるので、光が散乱してしまって、集光の効率が下がるからだ。

 汚れを人力で除去したとしても、原発の圧力容器に入って定期検査するよりは安全だと思うのですが……。
 あと単純作業ゆえ、鏡の清掃作業はロボット化し易いともいえます。
 やはり充分に実用的だと思うのですが……?
Posted by けん at 2011年07月06日 16:50
人力はコストがかかる。ロボットは現状ではそんなに賢くない。
Posted by 管理人 at 2011年07月06日 18:57
初めまして。リンクから来ました。
質問させて下さい。
http://blogs.yahoo.co.jp/mitsue1118diary/20742406.html
こちらの記事のコメント欄で、そのブログ主の人は、太陽熱発電のことを「火力発電所より数倍危険」「原発と同じ」と言っていますが、800℃の温度になると云う太陽熱発電はそのように危険なのでしょうか?(yahooにログインしなければカキコミできないようですが)
Posted by モロオ at 2012年02月24日 09:16
原理的に言ってはるかに安全だと思いますが、断言できるほど専門知識があるわけじゃないので、私としては「専門外だ」と答えるしかありません。

 一般的には、アホの発言をいちいち相手にする気はありません。私はトンデモマニアや池田信夫じゃないので、アホをいじめて喜ぶ変態趣味はない。
Posted by 管理人 at 2012年02月24日 12:44
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