成功した例は、Google の検索広告だ。最初は何の収益もないと思われたネット検索だが、検索連動型広告という方法によって、巨額の収益をもたらした。
そこで、これを真似て、「広告収入狙い」の事業がたくさん出現した。「柳の下のドジョウ」を狙おうとしたわけだ。よく見かけるところでは、新聞社のサイトにある「 Amazon アフィリエイト」がある。
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さて。同様にして、「ラブひな」を無償公開する、という試みがなされた。作品中に広告を出して、そのリンクをクリックしてもらうことで、クリックによる収入を得るという。これも新たなビジネスモデルだ。
このビジネスモデルについて、「成功する」と述べるブログもある。
→ 404 Blog Not Found 「Jコミがはじまる前から成功している理由」
しかし、よく読めばわかるように、そこで言う「成功」とは、「事業としての成功」ではなくて、「実験としての成功」であるにすぎない。1円も収入にはならなくても、実験は成功している、という意味だ。
一方、ビジネスとしてはどうか? 報道によれば 200万以上のダウンロードがすでになされたようだが、当の漫画家は自虐的にこう叫んでいる。
ち、ちょっと!45万ダウンロード超えてるのに、ラブひな巻末の「アマゾン・アフィリエイト」購入者数がゼロってどういうわけ?!(笑) これじゃテストにならないので、誰か一人で良いから買ってぇ〜!(><)つまり、ビジネスとしては、収益性が乏しい。
( → 上記ブログ内の孫引き )
【 追記 】
コメント欄で教えてもらったが、その後、著者による訂正があったそうだ。
「どうやら私、アマゾンのアフィリエイトの仕組みが全く分かっていなかったようです。m(_ _)m
結果の反映までに時間がかかる。そして反映は1日ごとに集計。反映は、午前2〜3時にまとめて行われるようです。結局の所、初日だけでかなり売れていました。」
とのことだ。つまり、ゼロではなかったらしい。といっても、たいした額になるとは思えないが。
一方で、「ブラックジャックによろしく」の方はどうか? 同じように無償ダウンロードが可能だが、それは旧作や一部のみに限られる。新作その他は有償である。
この場合は、十分な販売収入が見込めるので、それなりに成功していると言える。
以上をまとめれば、こうだ。
「ネットにおける宣伝効果は大きい。一部を無償をしてマーケットをひろげて、新作の販売収入を得る、というビジネスモデルは成立する。しかし、すべてを無償にして、広告収入で利益を得る、というビジネスモデルは成立しない」
意外かもしれないが、これが現実だ。
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実を言うと、「広告収入で利益を得る」というのが成立する場合は、ごく限られている。
(1) 広告ターゲットとの連動性が高くて、高い広告金を支払える場合。
具体的には、検索連動型広告だ。「ホテル」のような用語を検索する人は、ホテルの情報を求めていて、その検索語には高い価値があるから、広告主は高い金を払う。
一方、新聞社のサイトの広告スペースは、見る人と商品との関連性が薄いから、高い広告料を払う広告主は少ない。そのことは、ネット上の新聞が十分に利益を出していないことからもわかる。アメリカの新聞社は、ネット上でビジネス収入を求めているが、広告料はたいした金額にはならない。紙の新聞上の広告収入(読者からの料金とほぼ同額の売上高)には遠く及ばない。
(2) サイト主が零細事業者である場合
サイト主がたった一人の事業者である場合には、その人の生活費ぐらいにはなることもありそうだ。具体的な例としては、上記の 404 Blog の 小飼弾 がいる。彼一人だけの事業だから、彼一人を養う程度には収入を得ることができる。
とはいえ、彼の場合も、「書評を書いて、書籍を売る」という形であり、(1) を併用している。本を買う人を狙った「書評」という記事だ。それだからこそ、十分な収益を得ることができる。
一方、池田信夫の場合には、ブログ上にたくさんのアフィリエイトの本を並べているが、その本とブログ記事との関連性は薄いから、書籍の売上げは大したことはないだろう。つまり、池田信夫の例を初めとして、「サイトにアフィリエイトを置く」(記事との関連性が薄い)という場合には、たいした収入にはならないのだ。せいぜい小遣い程度だろう。とうてい本業にはならない金額だろう。
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以上のことからして、次のように結論できる。
「広告収入で利益を得る」というのが成立する場合は、上の (1)(2) のような、ごく限られている。
ひるがえって、一般の企業ビジネスとしては、「広告収入で利益を得る」というのは成立しない。広告収入など、微々たるものなのだ。それで一人の生活費を得ることすら困難だ。( 小飼弾 以外にはほとんどいないだろう。英語圏までひろげれば、いくらかは増えそうだが。)
実は、この問題は、Google もまた悩んでいる。Google は、ストリートビューを初めとして、多くの事業をしているが、それが収益性を上げるには至っていない。Google の収益のほとんどは、検索連動型広告に依存する。Google ほどの巨大な企業でさえ、「広告で収益を上げる」というビジネスモデルを成功させていないのだ。(一部を除いて。)
ちなみに、YouTube には、
一方、テレビならば、大きな広告効果が見込める。10%の視聴率でも、1000万人とか数百万人とかに見せることが可能だ。しかも、否応なく強制的に見せつけることができるから、効果も高い。……こういう広告であれば、十数万円程度の広告料(スポット広告15秒)を払う価値が出るだろう。(これはまあ、テレビ局が偉いからというよりは、電波の独占効果が高いからだが。)
テレビならば電波を独占できる(数社で寡占状態にできる)が、インターネットでは無数のサイトが乱立している。こういうところでは、広告効果は、特別の場合以外には大したことがない。そこでは「広告収入で収益を得る」というビジネスモデルは、ほとんど成立しない。
インターネットで収益を上げるとしたら、「無償ダウンロードでマーケットをひろげてから、有償販売をする」という形だけだろう。
その意味で、「ラブひな」のビジネスモデルは、最初から失敗している。一方、「ブラックジャックによろしく」のビジネスモデルは、十分に成功と言えるだろう。……ただし、その場合も、大成功とは言えない。また、一般人がそれを真似て大儲けできると思えない。
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現在、「電子書籍」が結構話題になっているが、すでに参入者が多くなりすぎている。それでいて、電子書籍の(日本語版の)フォーマットすら定まっていない。
こういうところに零細事業者が参入しても、失敗は目に見えている。池田信夫みたいに、個人レベルで電子書籍販売の事業に乗り出しても、失敗するしかないだろう。彼にとって最善の策は、今すぐ撤退することだ。(そうすれば赤字を最小化できる。)
Google は「サービスの無償提供と広告収入」というビジネスモデルで、高成長した。しかし、それと同じことが他の場合にも成立すると思ったら、大間違いだ。
しょせん、他人の真似をしようという発想では、うまく行かないのである。真似でうまく行くことがあるとしたら、せいぜい二番手か三番手の場合であり、世間の人々が気づいていない場合だ。(たとえば YouTube の事業者。)
一方、電子書籍みたいに、すでに参入者がたくさんいる市場では、同じようなことをやろうとしても、儲かることはあり得ない。ラブひなの作者も、今ごろになって新しいビジネスモデルを出すつもりなのだろうが、それはすでに「他の先行者が検討して、さっさと捨てた愚策」であるにすぎない。
結局、簡単に言えば、「サービスの無償提供と広告収入」というビジネスモデルは、一部の例外を除いて、ほとんど成立しないのである。
( ※ ビジネスにするなら、有償にするしかない、ということ。)
( ※ 有償にできない場合には、ビジネスにはならない。趣味にはなるが。)
[ 付記 ]
ウィジェット(ガジェット)を無償提供、というビジネスモデルがある。(読売・朝刊 2010-12-15 )
これは、一応成立するが、次の形になる。
「そのウィジェット(ガジェット)を開発した会社が、企業に有償販売して、企業がユーザーに無償提供する」
企業は広い意味の宣伝の形で、ウィジェット(ガジェット)を無償提供する。しかし、ここでは企業がソフト会社に金を払う。ソフト会社がユーザーに無償提供しているわけではない。
なお、ここでは一応ビジネスが成立するのは、ウィジェット(ガジェット)というものが常に画面上にあって、宣伝効果が高いからだ。「1回読んだらそれでおしまい」というような漫画作品では、とうてい成立しないだろう。
広告収入に頼る形でのビジネスモデルというのは、ごく例外的な形でしか成立しないのだ。あまり当てにしない方がいい。
( ※ 下手に楽観して、自分で起業すると、ひどいヤケドを負うだろう。)
[ 余談1 ]
下手に ITを使おうとしない方がいい、という発想もある。
イケメン俳優の水嶋ヒロが小説を書いて、読売や毎日の記事でも「素晴らしい」という趣旨で紹介されたが、 Amazon の読者批評ではボロクソである。
→ Amazon
Amazon の読者批評で、特に面白かったのは、次の感想。
今話題とのことで購入しましたが、形状が本なだけで読み物の類ではないと思います。これが読み物な訳がありません。鍋敷きとして使ってます。まるで iPad みたいだ。 (^^);
ま、それはそれでいいのだが、水嶋ヒロが Twitter で自著の宣伝のつもりでつぶやいたら、言葉遣いが滅茶苦茶だと批判が殺到した。
→ 「右往左往」という熟語を知らないという批判
「右往左往」という言葉の意味も知らないし、「端的」のつもりで「短的」という言葉を使う。これは誤変換ではない。「短的」なんて語は IME にはないからだ。勝手に造語している。 (^^);
小説を書くというレベルではなくて、日本語力を身につけることすらできていないらしい。(帰国子女だから仕方ないかな。)
というわけで、編集者が校正してくれる著作ならともかく、誰も校正してくれない Twitter なんかでつぶやくと、実力が露呈してしまう。
いくら twitter が はやっているからといって、もとももと無知・無学な人は、下手に IT を使ったりして、馬脚を露わさないようにしよう。
[ 余談2 ]
それにしても、水嶋ヒロをいちいち持ち上げている読売や毎日も、ひどいレベルになったものだ。1日待てば発売した本を読めるし、そうでなくても新聞社ならば前もって本を読めるはずだ。なのに、本も読まないで、単に「タレントの書いた本」というだけで大きく記事に取り上げる。それを信じて本を買った読者がいたとしたら、詐欺にあったも同然だろう。
( ※ この本が 15日における Amazon ベストセラーの1位だということだから、被害者は莫大になる。詐欺の被害者をそんなに増やさなくてもいいのに。)
こうして、ネット時代に、新聞はますますその情報価値を喪失していく。「新聞よりもネットの方がずっと役に立つ」ということを新聞社がどんどん証明していく。馬鹿丸出し。「速報性よりは 情報の密度・正確性」ということを、新聞社が理解しないと、新聞はますます衰退する。
[ 余談3 ]
大量に刷って、評判が悪いと、売れ残りが大変だろう……と心配したら、さにあらず。出版社はちゃんと対策を練っていた。
ポプラ社は今回、売れ残れば仕入れ値と同額で返品できる通常の本とは違い、書店のマージンを増やす代わりに返品の際の負担も増える責任販売制を採用した。返品お断りの売り切り販売だ。
( → 産経 )
なるほど。この本は賞味期限が1日だけの生鮮食品みたいで、瞬間的に売れるとしても、その後は評判の悪さで売れ残りが大量に出そうだ、とちゃんとわかっているわけだ。クールですね。詐欺師はこうでないと。 (^^);
というわけで、金儲けをしたければ、熱くなって新事業の意欲なんかを語るよりは、だまして粗悪品を売りつけてさっさと逃げ出す、というクールさが大切だ。金儲けの上手な人とは、そういうクールな人である。ITを熱く語る人よりは、インチキ商売の上手なポプラ社を真似る方が、よほど金儲けに役立つだろう。 v(^^);
《 教訓 》
まともな作品(サービス)を無償で提供するなら、あくまで宣伝のためとわきまえるべし。
無償で提供したまま、金を巻き上げないのでは、魚に餌だけ取らせて逃げられるようなものだ。
最も利口なのは、無価値なものを、高額で販売することである。宣伝さえ巧みであれば、無価値なものであっても、ベストセラーの1位にすることができる。

筆者ご本人のサイト
http://www.ailove.net/diaries/diary.cgi
より
11月27日の書き込み
『
(※管理人様が引用された文面)
・・・などと思っていましたが、どうやら私、アマゾンのアフィリエイトの
仕組みが全く分かっていなかったようです。m(_ _)m
(1)結果の反映までに時間がかかる。そして反映は1日ごとに集計。
(中略)
(2)アフィで用意した商品以外のモノが売れても、お金が入る。
(中略)
それにしても私、事前の勉強が足りなすぎ。猛省中です。
』
11月28日の書き込み
『
うわ〜っ!!来た来た! 二日遅れて大量のアフィリエイト収入が来ました!
』
具体的な額面は分からないのですが、当初のご発言よりは収益があがられたようです。
参考までにご一報させていただきます。
それは、
> 購入者数がゼロってどういうわけ?!
には続きがあったからです。赤松氏は、通知が遅れてくることを知らなかったためで、この少し後に、実際にはそれなりの数クリックされていたので、話を進めることにしたという報告がありました。
それと、Jコミはそもそも、ビジネスというよりも、漫画家の救済が目的であるということのようです。Jコミを維持する分以外は、作者の収入になるのですから。
しかし数年以内に電子書籍市場が開けるはずで、そのときには5冊まとめて 100円で売ることもできるのですから、今のうちに無償提供することは、読者を減らす効果があり、将来の富を無駄に食いつぶすようなものです。
無償公開を基本とするのであれば、「著作権廃止」を唱えている人々は、自ら無償公開をすればいいはずだ。しかるに、彼らは無償公開をしない。(たとえば池田信夫)
ここでは、「著作権廃止」と「有償公開」という二つの主張が矛盾する。
そこで、どうするか? 「著作権廃止」という概念を、「複製禁止の廃止」というふうに置き換える。「著作権はあるが、自由に複製できるようにする」ということだ。
しかし、そうすると、自分の著作を自由に複製されてしまうので、有償公開が無効になる。それでは赤字になる。
この問題を回避するために、池田信夫は次のアイデアを取った。
「複製できないシステム(ストリーミングふう)にする」
具体的には、次のようにする。
「ファイルのダウンロードは不可能。ウェブブラウザ上で見ることができるだけ」
その結果は? 「見るだけ」だから、印刷はできない。せっかく著作を購入しても、それを印刷して読むことはできないのだ。
また、テキストファイルに落として、ポメラで読む、ということもできない。(ポメラは通信機能がない。テキストファイルを読めるだけだ。)
こうして、著しく不便な形態の電子書籍となった。
つまり、「著作権廃止」という年来の主張にとらわれるあまり、ユーザーにとっての利便性が著しく低下する。それでいて、価格は普通の電子書籍並みだ。
「無償」という主張を取りながら金儲けをしようとすると、結果的には奇妙なシステムを撮って失敗する、という見本だろう。
なお、「著作権廃止」という暴論については、次のような議論がある。
→
池田信夫の著作権廃止論は、下記。
→ http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/cc8d894624b1bf0b962fc16b419ac56b
池田信夫が社長となった会社の電子書出来は、下記。
→ http://www.agora-books.com/userguide.jsp
とありますがトップページにも小さくは出ておりますし、動画自体も企業
とのタイアップのものがございます。
また動画再生中にも画面下に広告が出ております。
何をもってこのような表現になったのでしょう。
いや、そんなことはなかった(本項を書いた日には本当に広告はなかった)という気もするが、ともあれ、現時点(2011-01-21)では、広告はあります。お詫びして訂正します。