2010年12月10日

◆ 宇宙人の存在確率

 宇宙人の存在する確率はどのくらいか? ──

 リンではなくヒ素を用いる細菌がいる、と NASA が発表した。
  → ヒ素食べる細菌、NASAなど発見 生物の「常識」覆す
 
 実は、これは本題ではない。記事中には、次の文章がある。こちらが本題だ。
 今回の発見では、NASAが記者会見「宇宙生物学上の発見」を設定したため、「地球外生命体発見か」と、CNNなど国内外の主要メディアがニュースやワイドショーで取り上げるなど「宇宙人騒動」が起きていた。
 宇宙人は、いるとしたら、どのくらいの確率でいるのか? あまり当てにならないのだが、できる範囲内で考えてみよう。

 ──

 有名な例は、過去に見積もりがある。
 (星間通信ができる文明社会を持つ星の数)=(銀河系で1年に誕生する恒星の数)×(惑星系を持つ恒星の割合)×(生命の誕生と進化に適した惑星の数)×(生命が実際に発生し、進化した惑星の割合)×(生命が知的生命体なる割合)×(知的生命体が星間通信が出来るようになる割合)×(そのような文明の寿命)
 もっともらしいが、どれもが曖昧な数値であるので、ただの「言葉の言い換え」にすぎない。全然科学的ではない。

 ──

 科学的に言うなら、天文学的に考える必要がある。
 「地球のような惑星は、どれだけあるか?」 
 というのは、天文学的に、ある程度は推察できる。
 しかし、問題は、その先だ。地球のような惑星があったとしても、そこに生物が誕生するかどうかは、別問題だ。

 第1に、微生物ならば、比較的容易に出現すると考えられる。地球だって、46億年前に誕生してから、それが冷えたあとで、比較的早期に微生物は出現した。それが 40億年前だ。このくらいのことならば、他の惑星でも十分に起こるだろう。
 
 第2に、知的生物だ。これが誕生するためには、いくつかの特別な条件が必要となる。それを示そう。

 ────────────

 (1) 多細胞生物の誕生

 
 単細胞生物ならば比較的容易に出現する。その後、真核生物が生じるのは、容易ではないが、何とか可能になるかもしれない。
 しかし、その先が大変だ。ただの微生物ならばともかく、さまざまな器官をもつ多細胞生物が出現するのは、容易なことではない。では、多細胞生物が出現するには、何が条件か? 
 それは「性」である。性が出現したときに、多細胞生物もまた出現することが可能になった。下記で述べたとおり。
  → 性の誕生(半生物を越えて)
  → 有性生殖の意義

 では、性はいかにして出現したか? その途中過程では、ゾウリムシの「接合」がある。これは単細胞生物における「中途半端な性」だ。ここを経由して「性」ができたのだろう。
 だが、問題は、途中が何かということではない。いかにして性が出現できたのか、ということだ。

 性が出現したのは、多細胞生物が出現した時期とほぼ同じであり、それは全地球凍結が起こった直後だ。
  → Wikipedia
  → 書籍 ( 全地球凍結 (集英社新書)詳しい単行本

 逆に言えば、多細胞生物が出現するためには、このような特別な環境が必要だったことになる。しかも、それは、歴史上で一度だけであったことが必要だ。(さもなくばせっかく誕生した生物が全滅してしまう。)
 このような特殊な条件は、かなり稀だ。

 さらに言えば、地球生命の歴史では、大量絶滅という事件が何度もあった。
  → Wikipedia(大量絶滅)
 このような大量絶滅という事件のたびに、進化は劇的に起こった。たとえば、白亜紀末に恐竜が大量絶滅したあとで、その空白領域で哺乳類が大幅に適応放散をなし遂げた。

 全地球凍結を初めとして、何度かの大量絶滅という事件を経て、ようやく、知能というものをもつ哺乳類が出現するようになったのだ。(それ以前の哺乳類は、ネズミみたいなサイズの単孔類であり、知能というものをもつほどではない。爬虫類と大差ないレベルだ。)
 このような全地球凍結・大量絶滅が起こることは、かなり稀であろう。どこの惑星でも起こるようなことではない。つまり、多細胞生物がたまたまうまく誕生するような条件は、かなり稀だとわかる。地球と同じような条件の星が他にあったとしても、そこでは多細胞生物が出現している可能性は少ないし、まして、哺乳類のように発達した生物が出現している可能性はきわめて少ない。


 (2) 自転軸の安定


 知的生命の誕生には、さらに特別な条件が必要となる。それは「自転軸の安定」だ。
 一般に、惑星というものは球体である。その自転軸は、何百万年か何千万年かたつうちに、変動する。つまり、あるときは北極であった場所が、あるときには熱帯になってしまう。……こうなると、生物は「北極から熱帯へ」というふうには移動できないので、たいていの生物は滅びてしまう。特に、南北の陸地がなくて、孤立した島であれば、そうだろう。(海を泳ぐ魚は別として。)
 例外的に、地球は、自転軸が安定している。北極は常に北極であり、熱帯は常に熱帯だ。そして、そういうことが成立するのは、自転軸を安定させるものがあるからだ。
 それは何か? 月だ。月があるからこそ、地球の自転軸は安定する。
 では、月は、どうやってできたか? 46億年前に、巨大な原始惑星が地球に衝突したからだ。こうして原始惑星と地球は衝突してバラバラとなり、その残骸から、地球と月が形成された。( → Wikipedia
 このような衝突は、珍しいことだと言える。他の星にも衛星はあるが、月のように大きな衛星は存在しない。それゆえ、他の星は自転軸が安定しない。それゆえ、他の生物では、高等生物は誕生しにくい。(誕生しても、自転軸の変動にともなって、滅びてしまう。)

  ────────────

 以上のことをまとめよう。知的生物の誕生のためには、次の二点が必要だ。
  ・ 全地球凍結を含む、数度の大量絶滅
  ・ 自転軸の安定 (月の存在)

 この二つの条件を満たすのは、かなり難しい。宇宙にたくさんの星があれば、こういうことは地球の他にもあるだろう、とは言いがたい。一番多くありそうなのは、「大量絶滅」ではなくて、「完全絶滅」である。全地球凍結みたいなことが何度かあって、生物が全部滅びてしまう。あるいは、巨大隕石の衝突が何度かあって、生命が全部滅びてしまう。
 地球の場合には、ちょうどうまく、恐竜が滅びて、哺乳類が生き残った。しかし、他の星では、哺乳類まで全部滅びてしまう、ということもあるだろう。そうなったら、最初の「多細胞生物の誕生」から、やり直す必要がある。
 また、たとえうまく多細胞生物が誕生したとしても、自転軸の変動にともなって、微生物以外の生物はみな滅びてしまうかもしれない。(水中生物を除いて。)

 ──

 多くの学説では、「宇宙人の存在確率」というのを考えるとき、上記の (1)(2) の点を無視している。しかしそれでは、あまりにも不正確だ。
 「地球と同じように水と大気のある惑星」というのは、他にも十分に考えられる。
 しかしその星では、「数度の大量絶滅」がないまま、知的生命は誕生しなかったかもしれない。あるいは「数度の完全絶滅」のせいで、知的生命は絶滅してしまったかもしれない。
 
 実を言えば、人類が人間的な知性をもつようになったのは、ここ3万年ぐらいの出来事にすぎない。それ以前は、「文明」というものをもたず、原始人のような(利口な類人猿のような)生活をしていた。
 そして、3万年の歴史は、46億年の歴史のなかで、ほんの一瞬にすぎない。他の星でも同じことが起こっているとは、とても言いがたい。

 結論。

 宇宙人の存在確率というのは、人々が予想しているのよりも、はるかに小さな値だ。

 そして、それを思えば、われわれが知性をもつ生物であるということに、とてつもない偶然を感じて、感謝の念をいだくだろう。



 [ 余談 ]
 冒頭では「リンではなくヒ素を用いる細菌がいる」という報道を示して、「これは本題ではない」と述べた。本題ではないのだが、ついでに軽く触れておこう。

 次の問題がある。
 「(根源的に)リンではなくヒ素を用いる生命が他の宇宙にいるか? 地球生命とはまったく異なる生命がどこかにいるか?」


 その可能性があると報道されたが、私は否定的だ。次の理由による。
  ・ ヒ素は DNA のような分子を構成するには適していない。
  ・ ゆえに、細菌ならばともかく(複雑な)多細胞生物では無理。
  ・ 今回の細菌は、リンではなくヒ素を代用することもできる、というだけだ。

 これらの見解は、私だけでなく専門家も同様であるようだ。朝日新聞( 2010-12-10 朝刊特集面)に、似た内容の記事がある。

 あと、天文学的に、「ヒ素はあるがリンはない、という惑星は考えにくい(一部領域ならともかく)」という点もある。

 結局、ヒ素を用いる生命は、細菌レベルでは他の星でも存在する可能性が高いが、それが多細胞レベルになることはまずありえない。まして、それが知的生命になることなど、ほとんどありえないだろう。(その理由は、ヒ素ではなくて、本文中に述べた天文学的な理由。)

 【 追記 】
 記事には、続報がある。
 「リンではなくヒ素を用いる細菌がいる」という NASA の発表は、誤報であった可能性がある。下記の記事に詳しい。
  → 「砒素で生きる細菌」に疑問の声 ( WIRED VISION)
 この記事によれば、「これらの細菌は、砒素をDNAに利用しているのではなく、単に蓄積しているだけかもしれない」とのことだ。
 なあんだ、というわけ。新聞などでは大騒ぎして大々的に報じていたが、しかし、こっちの訂正ふうの話は、小さな記事の扱いになるか、まったく報道されないのだろう。たぶん。  (^^);
 要するに、マスコミが好きなのは、科学じゃなくて、ただのスキャンダル。海老蔵事件と同じレベルで報道しているのね。
  


 【 関連項目 】
  
 生命(生きること)のすばらしい価値については、下記項目でも論じている。

  → 性の誕生(半生物を越えて)
  → 自分の遺伝子 10 (生と死)
posted by 管理人 at 19:40| Comment(4) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2010年12月10日 22:47
環境や物質的な要素から存在可能性について論ずるだけではなく、DNAその他の物質を介して伝達される「情報」の側面から検討することも必要ではないかと思います。

ともすると、情報「媒体」に関する検討で済まされがちなような気がしまして。

ハードとソフト、両方の条件が適切に揃うことが必要不可欠と考えます。
Posted by けろ at 2010年12月11日 15:34
続報が出た。以下、引用。
 ──
 <「ヒ素で生きる細菌」に反論続々…米誌が特集>
 米航空宇宙局(NASA)などのチームが昨年12月、生命活動に必須のリンの代わりに、猛毒のヒ素を利用して生きる細菌をカリフォルニア州のモノ湖で発見したと発表したことについて、米科学誌サイエンスは27日、この結論に疑問を投げかける8本の論文を電子版で発表した。
 いずれの論文も、「ヒ素はデオキシリボ核酸(DNA)中では不安定」「生命活動に利用しているのではなく体内に取り込んだだけ」などと問題点を指摘、実験の過程でヒ素が混入した可能性なども挙げている。
 これに対し、NASAチームは反論する論文を同誌電子版に掲載。実験方法が適切だったことを詳しく説明し、「全体を考えても、やはり当初の結論が最も合理的な説明」としている。
(2011年5月28日09時14分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110528-OYT1T00217.htm

 ──

 私は最初から否定的だったが、それが肯定されたようだ。
Posted by 管理人 at 2011年05月28日 22:37
新たなニュース
 ──
 銀河系には生命存在の可能性がある巨大地球型惑星「スーパーアース」が数百億個も存在するという推計を、欧州南天天文台(ESO)が発表した。
 スーパーアースとは、質量が地球の10倍以内で岩石などを主成分とする地球型の惑星を指す。欧州南天天文台ではこうした惑星を持つことが多い赤色矮星について、水が蒸発も恒久凍結もしない状態で存在し得る圏内にある惑星の数を推計した。
 観測の結果、銀河系にある赤色矮星のうち40%が、生命の存在が可能な圏内を周回している地球型惑星を持つと推計。赤色矮星は太陽のような黄色矮星に比べて温度が低く、質量も小さい恒星のことで、銀河系にある恒星のうち約80%を占めることから、銀河系の中で生命の存在が可能な圏内にある地球型のスーパーアースは数百億個と試算した
http://www.cnn.co.jp/fringe/30006070.html
Posted by 管理人 at 2012年04月05日 12:36
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