2010年12月09日

◆ あかつきのセラミック

 金星探査機 あかつき が失敗した。その失敗の理由は、エンジン噴射口がセラミック製だったことらしい。 ──
 
 金星探査機 あかつき が失敗した。その失敗の理由は、まだ判明していないが、エンジン噴射口がセラミック製だったことらしい。
 あかつきのエンジン噴射口は、世界で初めて開発されたセラミックス製。高温に耐えられる一方で、通常の合金製より割れやすい欠点もある。
( → 朝日新聞
 この噴射口は、スラスターと呼ばれるもので、京セラ製のセラミック。金属製に比べて、耐高温性に優れているが、割れやすい。
 → http://twitpic.com/3e1m08
 → http://twitpic.com/3e34j3
 → http://www.sorae.jp/031009/4000.html
 → http://journal.mycom.co.jp/news/2010/07/06/084/index.html
 → http://www.astroarts.co.jp/news/2010/07/07akatsuki/index-j.shtml
 → http://journal.mycom.co.jp/articles/2010/12/09/planet-c_detail/index.html


 私の感想を言えば、「セラミックを使うなんて、本質的に馬鹿げている」となる。
 地上実験で微粒子をぶつけて大丈夫だった、ということだが、何を考えているんだか。宇宙のことを全然わかっていない。地上と宇宙では全然違う。宇宙では高エネルギーの宇宙線が大量に走っている。そのせいでたいていの機器は破損してしまう。小惑星探査機「はやぶさ」も、満身創痍だったが、別に、何かの破片と衝突したわけではない。長期間、宇宙の放射線を浴びていたから、満身創痍になっていたわけだ。
 それでも、金属ならば、粘性がある。だから、あちこちに放射線の穴があいても、構造は破壊されない。目に見えない微小な穴が無数にあいて、穴あきチーズみたいになっても、金属ならば構造は破損しない。しかし、セラミックは違う。宇宙線を浴びて、あちこちに微小な穴があいたら、そこには結晶欠陥ができる。そして、セラミックの場合、粘性がないので、結晶欠陥の場所には、ものすごく大きな力がかかって、そこから ひび割れる。
 ゆえに、高エネルギーの宇宙線が飛び交う宇宙では、セラミックなんて、言語道断だ。仮に使うとしたら、ごく短期間だけ使う「打ち上げロケット」などだろう。たとえば、スペースシャトル。これならば、短期間しか使わないので、セラミックでも問題はない。また、スペースシャトルのタイルは、外部の被覆材(耐熱材)として使っただけで、構造材として使ったわけではないから、大きな力がかかるわけでもない。 
 しかし今回は、エンジン噴射という莫大な力がかかる構造材に、セラミックを使った。耐熱材として使うだけでなく、構造材として使ってしまった。これでは、破損するのは、当り前だ。

 今回の失敗の理由は、京セラ製セラミックなんかを構造材に使ったことだ。何だって、そんな馬鹿げたことをしたのか? 「世界初」というが、「初」じゃない。今後も真似する例が出現するとは思えない。同じ愚を重ねる阿呆がいるとは思えない。「世界初の例」ではなく、「世界唯一の愚行」と見なすべきだろう。
 だいたい、地上実験を繰り返したというのが、わけのわからないことだ。その前に、宇宙実験をする必要があった。たとえば、軌道上の宇宙ステーションの外部に、そのセラミックを放置して、数年間を経ても、まだ構造に欠陥が生じないか、というテストだ。そういうテストもしないで、地上実験だけでいきなり部品として採用するなんて、あまりにも宇宙をなめている。というか、宇宙のことを何も理解していない。
 こういう愚行が、日本に限ってどうして起こるのか、その検証をする方が先だろう。たぶん、外国の宇宙関係者は、呆れて馬鹿にしているはずだ。



 [ 付記 ]
 同日、米国の民間宇宙線が成功した。そこでは「枯れた技術」が使われ、安定性を高めている。ロシアのソユーズもそうで、古臭い「枯れた技術」が使われ、安定性を高めている。
 ひるがえって、日本の例では、宇宙におけるテストもしていないセラミック部品を、いきなり本番に採用した。それも、ただの新技術というだけでなく、セラミックという根源的に危険きわまりないものを採用した。無謀というか、暴挙というか。……呆れるしかないですね。
 京セラに何か義理でもあったのだろうか? 京セラの宣伝に寄与したかったのだろうか? それとも宇宙開発の担当者が宇宙のことを何も知らないで、「高温に耐えればいいな」と思い込んだのだろうか? ……頭が痛くなってくるね。日本の技術開発力はここまで劣化したのだろうか? 劣化したのはセラミックじゃなくて、日本の技術開発力だった、というオチですかね。
 


 【 追記 】
 あとで次の記述が見つかった。
 あかつきは、可能な限り保守的に堅実に作ってある探査機だが、唯一技術試験要素として搭載したのがセラミックスラスターだった。予算削減でISASの軌道上工学実証の機会が事実上なくなってしまったために、唯一の工学試験として搭載したもの。
( → twitter
 この通りだとしたら、噴飯ものだろう。初めから失敗するつもりでやったというしかない。試験というのは失敗を前提にしてやるものだからだ。枯れた技術の金属を使わないで、試験もしていないものを本番に使うなんて、頭が狂っているとしか思えない。予算が削られてトチ狂ってしまい、失敗前提の大バクチで玉砕するつもりだったのだろう。初めから成功するつもりは全然なかったんですね。今回のあかつきの目的は、「金星探査」ではなくて、「セラミックが駄目であることを確認するための実験」にすぎなかったわけだ。それにしても、ちっぽけな実験のために、莫大な金と人員を、ずいぶん無駄にしたものだ。10億円ぐらいの部品実験をケチったせいで、百億円以上をかけた本番をセラミックの実験のために犠牲にしたわけだ。ひどいものだ。
 ま、それでも、何らかの成果が得られたのならいいが、実際には、「セラミックは使い物になりません」という知見が得られただけだ。そんなことは、最初からわかっていたことだが。結局、すべては無駄であった。何もかもが宇宙のゴミとなって消え果てた。
posted by 管理人 at 19:53| Comment(13) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2010年12月09日 20:53
私の厳しい否定的コメントを読んで呆れた人がいるようだが、……
 ま、私としては、担当者をいじめてやろうという意地悪な気持ちがあるわけじゃない。トンデモマニアみたいに、他人をいじめたいという意地悪ではありません。
 では何かというと、読んで面白おかしくなるように、読者向けにサービスしているだけだ。無味乾燥な文章じゃ、読むだけ退屈でしょ? 

 で、それで担当者が傷つくかというと……ま、傷つくでしょうけど、どうせ素人のたわごとなんか、聞く耳をもたないはずだ。私の話なんか無視するはずだから、どうでもいい。  (^^);
 
 ま、それでも、担当者は不満に思うかもしれないが、もともと「遊んで給料をもらえる」という楽しい仕事をしているんだから、そのくらいは我慢するべし。数年にいっぺんだけの成否が判明するだけで、普段は趣味みたいな研究……なんて、あまりにも浮世離れしている。税金で遊べるだけでなく、給料までもらえる。悪口を言われるぐらいは、我慢するべし。
 それがイヤなら、民間会社でセールスマンでもやっていればいい。顧客から山のような文句を言われるが。  (^^);
Posted by 管理人 at 2010年12月09日 22:00
本当に宇宙線の影響についてなんの調査・確認もなかったのでしょうか?
ど素人の私でも考えることなのに。

それと、瑣末なことですが金属に対して「粘性」は不適切かと。「延性」とすべきかと。
Posted by 館岡 at 2010年12月10日 10:39
セラミックス屋です。(京セラじゃありませんよ)
自分が不勉強なのかもしれませんが、宇宙線のセラミックへの影響を教えてください。
自分の知識では、基本的に共有結合からなるセラミック(酸化物か炭化物かはわかりませんが)に微小とはいえ穴をあける宇宙線というのが想像つきません。

実際のところ、打ち上げの振動で割れたと思うんですがね。(だから信頼性の問題というのはそのとおりでしょう)
Posted by めいさいらっぱ at 2010年12月10日 12:53
共有結合は関係ありません。焼結のところが問題です。
 穴というのは、ひび割れとかズレとかの意味です。ドリルみたいに穴をあけるわけじゃありません。

 ──

 続報。
 「燃料タンクや配管やバルブがおかしくなったと判明した」という続報が出ている。
 詳しいことは現時点では判明していないようだ。

 ま、本項は、科学的に何かを実証したというより、厳しい悪口を言うことが目的だから、見当違いだったとしても、別にどうでもいい。本項は学説というような扱いではありません。
Posted by 管理人 at 2010年12月10日 12:57
> 共有結合は関係ありません。焼結のところが問題です。
> 穴というのは、ひび割れとかズレとかの意味です。ドリルみたいに穴をあけるわけじゃありません。

ますますわかりません。
焼結体は多結晶体です。
大雑把に言うと、単結晶からなる結晶粒が粒界で隣接し、全体を形作っていることになります。
この結晶か粒界を破壊しなければいけないわけですが。

宇宙線でひび割れって、どういう現象ですか。
物理作用であればありえますが、宇宙線がそんな質量エネルギーを持っているとは思えません。(だから地上で「微粒子」という質量をもつものが衝突する試験を行ったんでしょう)
化学作用でひび割れはもっとありえません。
粒界部分が優先的に化学反応を起こすことは知られていますが、それをひび割れというのは強引ですし、そもそも宇宙線との化学反応ってなんでしょう。
宇宙線でズレって、どういう現象ですか。
転位のことですか?
こちらも物理的なエネルギーが必要です。

むしろ、宇宙空間でありがちな温度差による熱衝撃で割れたっていう方が説得力があります。

なんというか、セラミックについて根本的に認識間違いしているのではないでしょうか。
セラミックは、基本的に初期破壊が起こりにくいのですが、一度破壊が起きると脆性であるために全体破壊に結びつきやすい、というものですので、この初期破壊を曖昧にしてしまうと見当違いになりがちです。

ついでに一言。
宇宙ステーションでの暴露試験もやらないなんて宇宙を舐めてるとありますが、やってるはずです。
自分が記憶してるのは確か炭化珪素ですが。

一応、本項の「試験を探査機でやるな」というのを否定しているわけではありません。(賛成はしませんが、そういう意見もありだと思います)
ただ、この記事を読んで担当者が傷つくか、不満に思うかというと・・・なに見当はずれなこと言ってるんだ、と思うだけじゃないでしょうか。
Posted by めいさいらっぱ at 2010年12月10日 16:43
わからなければ Wikipedia の「焼結」の箇所でも読んでください。読めば勘違いに気づきますよ。

また、「宇宙線」の箇所も読んでください。

> 宇宙線がそんな質量エネルギーを持っているとは思えません。

ガンマ線だけじゃない、とわかります。

とにかく、初歩的なことでわからなければ、Wikipedia を読んでください。初歩的な質問はお断り。あなたのことは、下記ページで解説されています。

http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B6%B5%A4%A8%A4%C6%B7%AF
Posted by 管理人 at 2010年12月10日 19:27
今回の件について、JAXAの内情という観点から紹介しているコラムがあります。
そもそも、現在JAXAは、宇宙での実験ができない状況にあるようです。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20101209/217480/
Posted by 水響俊二 at 2010年12月11日 12:50
じゃあ、はっきり言います。
どうやらあなたは焼結体のことをご存知ないようなので、勘違い発言は撤回した方がいいですよ。
一応、私の知らないことがあるのかと思い教えてください、という形にしたのですが、残念ながらそういったことはないようで。

セラミック焼結体で、一般に言われるひび割れとかズレが生じることは非常に考えにくいものです。
脆性材料であるため、ヒビはそのまま全体破断に結びつきやすいのです。(ズレはもっと意味不明)
宇宙線は荷電粒子も含みますが、これは原子・中性子といったスケールの粒子であり、これが物質にぶつかってもひび割れは起きません。
何か起きるとしても、いわゆるドライエッチングに近い現象となるでしょう。

私のコメントに不満があるようでしたら、宇宙線でセラミック焼結体が破壊するメカニズムを明確にしてください。
私の知らないことであれば、自身の不明を謝罪し、新たな知見を提供いただけたことに感謝します。
Posted by めいさいらっぱ at 2010年12月12日 01:36
> 宇宙線でセラミック焼結体が破壊するメカニズムを明確にしてください。

 何だって私がそんなことを示す必要があるんですか? 見当違いの質問を勝手にしないでください。
 そんなことが証明されているのなら、誰も実験なんかしませんよ。証明されていないから実験するんでしょうが。実験とは何かという意味もご存じないらしい。

> 宇宙線は荷電粒子も含みますが、これは原子・中性子といったスケールの粒子であり、これが物質にぶつかってもひび割れは起きません。

 何らかの損傷が起これば、力をかけたときにはひび割れにも結びつくはずです。そもそも損傷がなくても、力がかかれば、ひび割れは起こることがある。(構造材の場合。)
 絶対に起こらないというのなら、そのことを証明してください。自分がそれを証明するべきなんですよ。私にその否定の証明を求めるのは間違い。

 なお、金属や半導体についてなら、宇宙線による損傷の例は山ほどありますよ。簡単に見つかるから、自分で調べれば? 

 あなたの言っていることは、次のことと同じ。
 「宇宙人が存在しないというのなら、それを証明してください。それを証明できないのなら、宇宙人は存在することになります」
Posted by 管理人 at 2010年12月12日 09:49


 放射線によるセラミックの損傷については下記に情報がある。

 → http://bit.ly/gLj8w0

 一般に、「照射損傷」という言葉で知られる。
 ま、ネットで検索すれば、すぐに見つかるのだが。
Posted by 管理人 at 2010年12月12日 23:13
本項の内容は、あくまで仮定に基づく感想であったが、その後、続報があった。

 ──

あかつき:燃料1割しか流れず

 金星探査機「あかつき」の軌道投入失敗を調査中の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は27日、原因と断定した逆流防止弁の不具合により、逆噴射のための燃料が予定の10分の1しか流れなかったとの分析結果を発表した。想定外の事態で逆噴射用のエンジンが破損した可能性もあり、JAXAは来年2月、地上で同型エンジンの燃焼試験を実施し、被害状況を見極める。

 この弁は米国製。直径2〜3センチ、長さ4〜5センチで衛星用の汎用(はんよう)品だ。JAXAが探査機から送られた記録を調べた結果、打ち上げ直後の5月21日、燃料タンクの圧力を調整した際には正常に働いたが、6月末のエンジンの動作試験時は噴射時間が短かったため、弁は作動しなかった。異常発生時期は不明で、どうすれば正常になるのかも分かっていないという。

 エンジンは、液体燃料と、燃焼のための酸素を含む酸化剤を1対0・8の割合で混ぜて燃焼させる。しかし燃料が少なかったため酸化剤との混合比が逆転、エンジンが過熱する状況になった。

http://mainichi.jp/select/science/news/20101228k0000m040080000c.html
Posted by 管理人 at 2011年01月06日 00:36
本項について「おまえの間違いだ」とうるさく文句を言っている人がいるが、勘違いだ。

 本項はあくまで、「らしい」という報道に基づいて、「感想」を述べたにすぎない。本文中に記してあるとおり。

 また、セラミックの試験はなされていない。なぜなら高エネルギーの宇宙線は、地球上では作成できないからだ。地球上で作成できる放射線のレベルは限られている。宇宙線はそれをはるかに上回るエネルギーを持つものがたくさんある。
 宇宙というものを舐めてはいけない。宇宙において、人間の力など、たかが知れているのだ。

 セラミックの割れやすさについては、現時点では、どのくらいのものかは、いまだに判明していない。
Posted by 管理人 at 2011年01月06日 18:56
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