2010年12月04日

◆ 医学部の学費値上げ(詭弁)

 面白い詭弁をたまたま見つけたので、紹介しておく。
  → 医学部の学費は値上げすべきだ
 この詭弁に、どう反論するか? (難問です。) ──

 医学部の卒業生は、どうせ高所得なんだから、学費を値上げしたって大丈夫だ。だから、学費をどんどん上げてしまえ。金さえ払えば誰でも医学部に入れるようにせよ。そうすれば、医師の供給が増える。(だから医者不足も解消する。)
 ……という趣旨。(本人が書いていない部分も補足している。)

 これは、直感的に、間違いだとわかる。詭弁だ。
 では、どう反論するか? 
 元のページにもコメントがいろいろ寄せられている。また、下記にも、簡単なコメントがある。
  → はてなブックマーク(コメント)
 ただし、例によって、下品な悪口が多く、論理的な指摘はない。(字数がないから当然だが。)

 ──

 そこで、私が簡単に、どこがおかしいかを指摘しておこう。
 実は、たいていの詭弁に共通するが、この論理は、形式的にはおかしくない。特に最後の結論は、
 学力検査を廃止し、定員割れする寸前まで学費を上げ、金さえ払えば誰でも医学部に入れるようにすべきである。
 ということは、供給改善策としては、ちゃんと成立する。つまり、このようにすれば、医師不足という問題は解決する。
 現在、あちこちで医師不足という問題が話題になっているが、上記ページで紹介された方法を取れば、医師不足という問題はあっさり解決するのだ。その意味で、「医師不足への解決案」として、上記ページで紹介された方法は、一応は成立する。
 
 ──

 では、それは正解か? 正解ではない。なぜなら、次のようになるからだ。
 「そのことによって、医師不足の問題は量的には解決するが、質的には別の問題が起こる」


 要するに、大量の医師が誕生して、量的な問題は解決するのだが、同時に、その大量の医師は質的に大幅に低下してしまうのだ。
 理由は、次の通り。
  ・ 学費が大幅に値上げされれば、生涯の実質所得は低下する。
  ・ つまり、医師はもはや高所得者にはならなくなる。
  ・ 医師になる動機が低下するので、応募者が減る。
  ・ 知能の高い人間は、儲からない医者にはなりたがらない。
  ・ 他の職には就けないような馬鹿ばかりが、医者になる。


 結果的に、馬鹿な医者が大幅に増えるから、医療は崩壊する。量的には問題ないが、質的に崩壊する。病院は、病気を治すところではなく、体を壊されるところになる。(ヤブ医者ばかりだから。) 患者は病院へ行くと、治療のおかげで体調が良くなるどころか、誤診のせいで体調が悪化する。

 馬鹿な、と思うかもしれないが、さにあらず。上記ページの原文を読めばわかる。
 無意味な勉強に、多くの費用と時間が費やされてしまっている。
 学力検査の点数を入学者選抜に使うと、格差の再生産を助長してしまう。
 この言葉からわかるように、高校時代の学力を否定するという、反・知識の発想を取る。(毛沢東時代の中国みたいですね。あるいはポルポト時代のカンボジア。) その結果、知識を軽視して、あえて知識のないバカボンばかりを入学させる。
 たいていの大学では、大多数は学力で入れた優秀な受験生だったが、ごく一部は多額の寄付金で補欠入学したバカボンである。ところが、それを逆転させて、学力のある受験生は不合格となり、多額の寄付金を払えるバカボンばかりが入学できるようになる。当然、学生のは大幅に低下する。

 ──

 これに対して、「将来の所得を担保に高額の金を貸与すればいい」というのが、上記ページの発想だろうが、将来の所得なんて、たいして当てにならない。医者が高所得になるというのは、幻想だろう。実際、たいていの勤務医は、開業医になりたくても、開業資金の1億円を捻出することができない。そのせいで、「開業医になりたい」と思っている勤務医は、いつまでたってもその低所得状態から抜け出せない。
 つまり、高所得になるには、初めに高所得である必要がある。
 「誰でもお金持ちにしてあげますよ。ただし最初にお金持ちであれば」
 と言っているのも同然だ。これじゃ、意味ないですね。

 しかも、である。開業医になれば自動的に高所得になれるわけじゃない。開業医として高所得になるには、条件がある。それは、「無駄な診療をやたらとする」ということだ。たとえば、不要な検査をいろいろやるとか、薬が不要でも処方箋を出すとか。
 また、昔ならば、薬をいっぱい処方すると、薬価の差益を稼げたが、今ではそれもできなくなっている。
 要するに、真面目にやっている限り、医者というのはあまり儲からない。地方の良心的な医者では、貧乏している人がとても多い。

 私が思うに、医師は金持ちだというのは、ある程度は成立するにしても、かなり成立しがたくなっている。30年ぐらい前なら、医者も歯医者もやたらとボロ儲けしていたが、今ではそういうこともないようだ。
 それでも、年収 2000万円を超える医者はけっこう多いが、そういう医者は残業もまた半端じゃない。彼らと同じレベルの学力の高校同級生が、週休二日制を満喫して夏休みもあるのに、年収 1500万円ぐらいもらっている。彼らよりずっと馬鹿だった高校同級生だって、週休二日制を満喫して夏休みもあるのに、年収 1000万円ぐらいもらっている。
 なのに、ずっと頭の良かった秀才が、年収 2000万円を超えるにしても、やたらと残業して、当直して、休みもなく、生命を削っているのでは、「命を売る代金」としては、とても割に合わないだろう。
 当直などの不規則労働については、次の記事を参照。
  → 時差ボケは脳に悪影響:神経新生が半分に
  → 時差ぼけで早死にする
 
 医師というのは、3K(キタナイ・キツイ・キケン)の代表みたいな職業だ。にもかかわらず、一応は高所得だということで、優秀な人材を得ている。しかるに、学費を高額にしたら、唯一のメリットである高所得という点が実質的に失われてしまう。となると、医師になるのは、低劣な人間ばかりになるだろう。つまり、質の低下だ。
 こうして、「質の低下」という結論が得られる。そして、量を増やせば増やすほど、質の低下が起こる。



 【 補説 】
 論者の問題点は、どこにあったか? 
 一つは、ばかりを見て、を見なかったことだ。量を増やすことばかり考えていて、質の低下を見なかった。
 もう一つは、供給ばかりを見て、需要を見なかったことだ。供給量を増やすことばかり考えていて、需要が減るということを見失った。
 市場原理では、供給が増え、需要が減れば、価格は低下する。あまりにも価格が低下すると、原価割れとなり、デフレとなる。……これが現在の経済状況だ。
 上記ページの理屈は、医師の世界に「デフレ」(という最悪状況)を人為的に起こそうという案だ。そこで言う「原価割れ」というのは、「医師としての最低限の資質を満たさない」ということになる。名ばかりの医師であり、患者を治せない医師だ。

 一般に、(自由な競争ばかりを唱える)市場原理主義に従うと、デフレという状況に対処できなくなる。それと同じことを医師の世界で成立させようとした(人為的にデフレを起こさせようとした)のが、上記ページの論旨だ。
 その意味で、市場原理をやたらと信じると、いかにメチャクチャな主張になるか、という反面教師みたいな役割を、上記ページは示している。馬鹿の見本となることで、彼の信じている市場原理の欠陥を示している。
 上記ページを掲載しているアゴラというサイトは、市場原理を過度に信奉する池田信夫たちによって運営されている。そして、彼らの信奉する市場原理に従うと、いかに滅茶苦茶なことが結論されるか、ということを、今回の例でも示してくれる。
 馬鹿げた詭弁は、それなりに、有益でもあるのだ。緻密な論理によって馬鹿げた結論を示せば示すほど、そのことで、最初の原理(市場原理主義)がいかに狂っているかを、論理的に示すことになるからだ。
 このように、市場原理主義(市場原理万能主義)の愚かさを示しているというのが、上記ページの本質である。そして、その具体的な形として、「質の無視」「需要の無視」という難点が暴露されたわけだ。

( ※ この問題は、かなり難しかったかもしれない。経済学的な知識がある程度は必要だからだ。とはいえ、経済学的な知識がなくても、「質の低下」という点は理解できるはずだ。上記ページは、論旨としては間違っているのだが、それを批判する人々もまた、「質の低下」を指摘していないという点で、十分な反論とはなっていない。)
( ※ はてな には「主張におかしいところがいろいろあるのは事実だが、批判ブコメは趣旨が読めてない人が多すぎる」というブコメがあった。これだけがまともだ。あとはまともな批判になっていない。その意味で、論者も批判者も、目くそ鼻くそか。)
( ※ なお、上記ページの論者が、特に頭が悪いというわけではない。「市場原理は正しい」という立場を取る限り、「供給拡大策」ばかりを取るのは当然だし、その際に「質の低下」を見ないのも当然だ。つまり、このような発想は、「市場原理主義者」という経済学的な立場を取ることから、必然的に発生する。その意味では、経済学の世界のかなり多くの人々が、この発想を取っているし、特別に奇矯だということはない。彼のなした間違いは、古典派経済学者の多くも、同じようになしているからだ。簡単に言えば、小泉の「構造改革」を信じた人々[= 大多数の人々]も、誰もが大同小異なのである。人のことを笑えたものではない。)



 [ 補足 ]
 本項の趣旨は、「詭弁の一例」の指摘であり、「市場原理主義に染まると、詭弁の穴に落ち込む」ということだ。論理的な問題の一例を示すことが目的だ。つまりはケーススタディである。
 この点、著者個人への攻撃をしているわけではないので、勘違いしないように。私はトンデモマニアじゃないので、下品な個人攻撃はしません。
 何か難点があるとしたら、アゴラというものに難点がある。アゴラに引き寄せられる人々は、市場原理という 誘 蛾 灯 に引きつけられるようなものだ。そこには 蛾 みたいなものばかりがたくさん集まっている。そういうこと。
posted by 管理人 at 14:23 | Comment(16) | 一般(雑学)1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
南堂さんへ。
あなたも、私の論旨を一部読めてない。
>国公立と私立との間では、入学者の「学力」には大きな差があるが、卒業者の能力に差はない。国家試験の合格率は、国公立が91.2%、私立が87.1%である。」
 国家試験だけではなく、入試の点数と入学後の成績、大学の入試偏差値と卒業後の能力差の相関も認められないというのが、医師の多数派の意見です。
 入試点数と入学後の成績に関しては、医学教育学会における定量的な研究があり、「無相関」と結論づけられてます。
Posted by 井上 晃宏 at 2010年12月04日 19:57
その話もちゃんと読みましたよ。しかし、それによって「入試点数と(学生の)能力が無相関だ」ということにはなりません。常識的に言って、ありえないでしょう。

 (1) 国家試験は合格点数がとても高く、かつ、大多数が合格できる。つまり、「足切りテスト」ふうになっている。その場合には、国家試験の点数と入試点数との相関はなくても、当然だ。(国家試験は能力差を示さない。入試点数は能力差を示す。両者は別々だ。)
 (2) 「大学の入試偏差値と卒業後の能力差の相関」も同様だ。医師というのは、「能力の高い人ほど優秀だ」というような職業ではなくて、「一定の実力があればほぼ全員が医師になれる」という職業だ。
 (3) 「入試点数と入学後の成績」も同様で、合格者だけを比べても意味がないでしょう。入試は「合格者と不合格者」を区別するものであり、合格者のなかで優劣を区別するためのものじゃない。

 要するに (1)(2)(3) の論点からは、「不合格者を合格にしても、不合格者は医師になれる」ということを意味しない。
 具体的な例として、猿を受験者にすればいい。猿は医学部に合格しない。では、「合格者について(1)(2)(3)が成立する」ということから、「金持ちの猿を医学部に合格させれば、猿は医師国家試験に合格できる」と言えるか? 
 論理が狂っているんですよ。

 「金持ちの猿を医学部に入れれば、猿が医師国家試験に合格できる」
 と思うよりは、
 「大学入試に合格した猿を医学部に入れれば、猿が医師国家試験に合格できる」
 と思う方が、論理としてはまともです。この論理が狂っているとしたら、入試がおかしい場合だけでしょう。
Posted by 管理人 at 2010年12月04日 20:23
私は以前医療の問題。医師不足の問題で南堂さんに質問をして、回答を頂いたことがある。

私は首都圏はともかく地方では医師不足が深刻化している問題が気になって、医師になるための参入障壁は下げるべきではないか。

という趣旨の質問をしたと思います。それに対して、南堂さんの回答は医師の仕事の範囲を明確にして、医師には余分な仕事をさせない必要がある。看護師に従来の医療の仕事の一部を引き受けさせて医師の負担を軽減する必要がある。というようなものだったと思う。

南堂さんは医師の質の低下の問題を懸念なさっていますが、諸外国と比較したら日本は人口1000人あたりの医師数は少ないほうですよね。

http://www.kochi.med.or.jp/pamphlet.pdf


それから、多くの人が指摘していますが産婦人科医も不足していますし、これも深刻な問題です。

だから医師の総数は少しずつでも増加させるようにするべきだと思います。無闇には増やせないでしょうけども、可能な限り医師数の増加を図るべきです。

井上さんの意見すべてに賛同するわけではないですが、医学部の学費は幾分か値上げしたほうがいいと思います。

医学部の正規の学費を値上げして、奨学金を用意できるようにするべきだと思います。そして、低所得の家庭出身でありながら有能な学生が返済不要な奨学金を獲得できるようにすればいいと思います。

そういう方策はあってもかまわないのではないでしょうか。
Posted by まえやま at 2010年12月04日 22:52
>将来の所得なんて、たいして当てにならない。
その通りです。
学費値上げ論は永遠に医師が高所得であることが
前提ですね。
 医師の供給が過剰になり、競争が激化すれば
このビジネスモデルは崩壊します。
 弁護士なんかは供給過剰で居弁にもなれない
人がいっぱいいる。
 ついでに調べたら、今でも医学生は、高額の
ローンが組みやすくなっています。
 さらに、補助金について調べてみた。
日本医科大学は学部生一人当たりの年間補助金
が700万円。補助金なくしたら学費が2.5
倍程度になりますね。 6年間の学費が6,500万円必要になり自宅を担保に取った
って、これでは、とても低利でのローンなんか
発売できません。
Posted by mugu at 2010年12月04日 23:19
まえやま さんへ。

医師不足の問題は、医学部生の数を少し増やすぐらいでは、全然解決できません。最低でもあと6年かかります。しかもその時点で現状の医師総数の1割(毎年の卒業生の数倍)を増やすわけにも行かない。
 逆に言えば、毎年の卒業生を3割ぐらいアップすることは必要でしょうが、それによって増える医師数はあまりにも少ないので、医師不足を解決する方法にはなりません。
 
 医師不足の状況を短期間で解決するには、医学部卒業生を増やすという方法では百年河清を待つようなものです。
 医学部卒業生を増やすという方法は、今現在のための方法ではなくて、10〜20年後の日本のために役立つ方法でしょう。
 また、授業料を少し上げるぐらいでは、医学部の財政の足しにはなりません。焼け石に水。ほとんど無効。

 なお、「看護師を増やして、医師の能率をアップする」という方法は、「看護師のかわりに助産師を医師に添えて、産婦人科医の能率をアップする」という形で、すでに実現されています。下記のコメント欄。(私への反論という形だが。)

http://openblog.meblog.biz/article/3209133.html
Posted by 管理人 at 2010年12月05日 00:06
>国家試験は能力差を示さない。入試点数は能力差を示す。両者は別々だ。
 その場合、入試点数の「能力差」が医師の能力と相関しているかどうかが重要となります。相関していない、という話が業界における定説です。
 一方、国家試験における点数(合格率で近似して示される)は、医師の能力と大いに相関している。ああいう、実務的な知識をちまちまと憶えている人でないと、危なくて臨床を任せられない。

>金持ちの猿を医学部に入れれば、猿が医師国家試験に合格できる

 猿の数が圧倒的に増えれば、国家試験合格率が低下しても、合格水準を維持することができます。
 90%という国家試験合格率は高すぎるので、受験者を増やして、合格水準を引き上げるべき。
Posted by 井上 晃宏 at 2010年12月05日 03:32
>>国家試験は能力差を示さない。入試点数は能力差を示す。両者は別々だ。
> その場合、入試点数の「能力差」が医師の能力と相関しているかどうかが重要となります。相関していない、という話が業界における定説です。

 先に述べたように、それは合格者だけを見た数字。不合格者には当てはまらない。

> 90%という国家試験合格率は高すぎるので、受験者を増やして、合格水準を……べき。

 国家試験の不合格者が増えるので、司法試験と同じ問題が起こりますよ。大量の不合格者は、医師にもなれず、社会人にもなれず、莫大な学費の負債ばかりが残る。当然、リスクが高いので、銀行は低利融資してくれません。利率 20%以上もらわないと。しかしそれでは違法になる。

>  猿の数が圧倒的に増えれば、国家試験合格率が低下しても、合格水準を維持することができます。

 猿というのは比喩じゃなくて、文字通りの monkey なんですけど。猿はいくら数を増やしても猿です。
 将来のお医者さんは、猿になるんですか? お猿の運転手のお医者さん版?
Posted by 管理人 at 2010年12月05日 08:56
学費の値上げはあまり影響無いでしょうが、
入学時の学力は高くしておく必要があると思います。
確かに卒業後の医師の能力との相関は無いかもしれませんが、医師が医師たる尊敬を他者から集めるために、学力は必要な要素だと考えます。

実際、医師の不足が問題になるのは、
団塊の世代が後期高齢者となり死亡するまでの今後20年程度では無いでしょうか?

その後は人口が減るので、医師は余る気がします。
(生む人が減るので産婦人科も余る)

なので「高齢者を診る専門医」を新設し、
通常の医師よりも免許取りやすくしてはどうでしょう。「医師2種」みたいなイメージです。
もちろん、看護師・介護士・薬剤師のような人が兼任できるようにし、爆発的に増える高齢者に20年間だけ耐える、という感じで。
Posted by ふやすにしても at 2010年12月05日 16:58
>実際、医師の不足が問題になるのは、
>団塊の世代が後期高齢者となり死亡するまでの今
>後20年程度では無いでしょうか?

 医者の役割は高齢者の介護ではありません。介護労働ならばその見解は当てはまりそうだが。

 ちなみに、今は少子化ですが、出生率が正常化して2倍ぐらいになれば、産婦人科医や小児科医は2倍ぐらい必要になります。

> 爆発的に増える高齢者

 人口構成の上からは、高齢者はすでに増えています。今後は増えるよりは減るでしょう。
Posted by 管理人 at 2010年12月05日 17:29
> 高齢者はすでに増えています。今後は増えるよりは減るでしょう。

 これは誤りでした。高齢者はすでに増えていますが、今後もいくらかは増えます。激増というほどではないが。

http://urenaiconsul.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_5e82.html

 推計によると、高齢者はいくらか増えて、その一方で、高齢者以外は急速に減っていく。差し引きすると、医者の必要数は、それほど大差はないようだ。
 ただし、少子化が改善して、出生数が大幅に増えれば、医師不足はきわめて深刻になる。

 ──

 高齢者医療の問題は、医者の数というより、末期医療をどこまでやるかという問題になるでしょう。「治療するための医者」ではなくて、「死期を3カ月伸ばすために数百万円を投じる末期医療をどこまでやるか」という問題。コストパフォーマンスが非常に悪いものをどこまでやるか、という問題。
 医師不足よりは、金不足に直面します。ひょっとすると、高齢者医療にかかる必要金額は、日本の働き手世代の GDP の総額を上回るようになるかもしれない。「6カ月ぐらい寿命を延ばす効果が確実にある薬の価格が 1億円」というふうな。
Posted by 管理人 at 2010年12月06日 00:42
南堂さんへ。
 歯学部って、期待される所得に対して学費が高いので、昔から入学定員割れが発生していて、国家試験合格率も70%そこそこしかなくて、結局合格できなくて諦める人も5%ぐらいいるんですけど、歯科医師の技術水準は必要十分ですし、5%程度は、あらゆる分野の専門家の養成において許容すべき犠牲だと思われます。
 医学部もその程度でいいんですよ。今の学力は過剰品質です。
Posted by 井上 晃宏 at 2010年12月06日 06:33
> 医学部もその程度でいいんですよ。

 医者の品質も歯医者レベルの品質でいいんですか? (げげげっ。)
 下手な歯医者はいっぱいいるけれど、それと同じレベルの品質で、自分の命を委ねられますか? 「歯の治療を間違えちゃった」というレベルで、「命の治療を間違えちゃった」で済ませられますか? 
 
 ただし、「医学部の学費も、現状の歯学部の学費と同じ程度でいい」というのでしたら、賛成します。ただしその場合、学費はかえって下がりそうな気もするが。   (^^);
Posted by 管理人 at 2010年12月06日 20:15
井上さんの主張を実行したいのであれば、次のいずれかがいいでしょう。

 (1)「誰でも容易に医者になれる」というふうに平易にした上で、医療費を大幅に引き下げる。(学費を上げるかわりに医療費を引き下げる。)それで浮いた金で、学費を下げて、医者をたくさん養成すればいい。
 というわけで、「医師診療報酬の引き下げ」を提案しましょう。たぶん医者以外の全員が賛成します。(それで品質は粗悪化するとしても、たいていの人は「安い」ものが好きだから。デフレ時代ですしね。「安物買いの命失い」だと気づくのは数十年後でしょう。)

 (2) 診療報酬を上限制にして、いくらでも値引きできるようにして、自由競争にする。同時に、医師免許を撤廃して、誰もが医者になれるようにする。完全な自由競争とする。池田信夫流の「免許撤廃による自由競争」だ。(それによって無免許医による詐欺的診療が続発するが、被害者が死んだあとでトンズラすれば、うまく金を奪える。詐欺の跋扈。)

 ──

 どうせ池田信夫龍の自由競争を主張するのなら、(1)(2)の方がいっそう効果的ですよ。メリットも大きいが、デメリットも破滅的なほど大きい。どうせ話半分なら、そちらの方が面白いでしょう。
Posted by 管理人 at 2010年12月06日 21:50
自由経済が放置されると、詐欺師が跋扈します。そのことはホメオパシーや、癌免疫療法や、その他のインチキ療法で話題になっています。

 このような詐欺師の問題を解決するには、自由経済とは逆の「規制」が必要となります。

 ところが、このような規制に反対する人々がいます。
 一つは、自由経済論者。池田信夫が代表。
 もう一つは、トンデモマニア。「トンデモだ」と悪口を言うことで状況が改善されると思い込んでいる。

 この両者に共通するのは、「自由競争によって状況は改善する( or 最適化する)」という発想です。前者は市場原理主義であり、後者はダーウィニズムです。
 その意味では、両者は、同じ穴のムジナです。そのせいで、詐欺師に対する規制はなされなくなり、詐欺師が跋扈することになります。

 一方、詐欺師への規制を主張しているのが私です。(たとえば薬事法によるホメオパシーの規制がその一つ。これは実効性があった。)
 私の立場は「悪党による被害をなくすには、悪党を規制せよ」ということです。
 生体のなかに癌が存在するように、ソフトの世界にウイルスが存在するように、市民のなかに犯罪者が存在するように、同じく、事業者のなかには詐欺師が存在します。彼らは金儲けを目的として、他人をだまして儲けます。それに対して、「自由競争こそ最適だ」なんて主張して、「規制緩和で状況改善」なんて叫べば、悪党がはびこるばかりです。
 
 健康な人間を悪化させる病原菌をなくすには、医薬などの医療が必要です。「自由放任による自然治癒が最適だ」ということはありえず、「近代医学が最適だ」ということが成立します。
 詐欺師の跋扈する経済の分野で、「自由競争が最適だ」というのは、病原菌の跋扈する医療の分野で近代医学を否定するのと同じです。
 「自由競争こそ素晴らしい」というのは、「自然治癒こそ素晴らしい」というのと同じで、あまりにも前近代的な発想なのです。
 しかしながら、ホメオパシーを信じる無知もうまいな人々がいるように、「自由競争こそ最適だ」と信じる人々もまたいるわけです。

 経済音痴の医者が市場原理を主張するのは、医療音痴の経済学者が自然治癒を主張するのと同じです。
 無知ほど恐ろしいものはないですね。
Posted by 管理人 at 2010年12月06日 23:52
> 今の学力は過剰品質です。

 これに違和感を感じていたのですが、よく考えて書くと。
 今の医者は、品質的には、全然ダメでしょう。馬鹿ばかり。

 その証拠が、「簡易検査の使い方もろくにわからない」(陰性は罹患していないことを意味しないとわからない)ことがあります。厚労省や感染症学会が指針を示したのに、それを理解できない医者が多い。頭悪すぎ。

 また、その問題を指摘した私の見解について、全然別の方向で「こういう使い方では簡易検査も有効だ」と述べたトンデモマニアがいるが、これも見当違いのことを主張しているということで、頭が悪すぎ。(彼らの主張に従っても、簡易検査による死者を減らせない。論点が食い違っていることを理解できない、という頭の悪さ。そのせいで、簡易検査による死者を増やす。)

 さらには、「重症者にはペラミビルを」という方針をきちんと示さない医学界の問題もある。そのせいで、重症者にペラミビルを処方せず、タミフルだけを処方して、患者をみすみす死なせてしまう、という例が出た。また、今後も続発するだろう。

 私の想像は、この冬の死者総数は、昨冬の死者総数を、かなり上回ると思える。というか、例年並みになるだろう。(昨冬が異例に少なすぎた。)
 今後、ペラミビルを使えば、死者総数をかなり減らすことができるはずだが、その方針を医学界は示していない。医者の品質が低すぎる。
 この問題を解決するには、私立の医大を全廃して、すべて国公立に衣替えした方がいいかも。教授陣はそのままで、学費だけを大幅に引き下げる。そのことで、優秀な学生を招く。……せめて「ペラミビルで重症者を救える」という方針を示せる医者になってほしいものだ。

 ※ 「重症者にはペラミビルを」と主張しているのは私だけ。
    → http://bit.ly/hsqrOg
Posted by 管理人 at 2010年12月08日 00:13
参考情報。以下、転載。
 ──
 日本感染症学会はこのほど、1月27日に販売が開始されたラピアクタを含む3種類の抗インフルエンザウイルス薬について、使用適応と使い分けを患者の重症度別にまとめた提言を発表した。ラピアクタに関する記述が中心で、重症患者に対して、経口投与が困難な場合や確実な投与が求められる場合には、静脈注射のラピアクタの使用を考慮するよう勧めている。
https://www.cabrain.net/news/regist.do
 ──
(1) 重症患者ならば、経口投与ができるとしても、ラピアクタを投与する必要がある。重症者ではすでにタミフルが無効であることが判明しているのだから、別の薬を投与する必要がある。
(2) ラピアクタはタミフルやリレンザよりも薬効が強い。また、大量投与も可能だ。
(3) 「考慮する」のではない。頭ではなく手を使え。患者が重症化したら、ラピアクタが第1選択薬となる。グズグズしていたら、重症化した患者が死ぬ。重症化は、ただの高熱ではなくて、死の寸前だからだ。

 やはり、今の医学界は、品質が低すぎる。
Posted by 管理人 at 2010年12月08日 00:27
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