たとえば、新常用漢字をすべてパソコンで表現できるわけではない。文字コードやブログ会社に依存して、表示されない文字もある。(それを正字でなく略字で示すと) 「 叱 填 剥 頬 」 の4字だ。 ──
文字の一覧(196字)
新常用漢字が内閣告示された。一覧表示すると、これだ。
挨 曖 宛 嵐 畏 萎 椅 彙 茨 咽 淫 唄 鬱 怨 媛 艶 旺 岡 臆 俺 苛 牙 瓦 楷 潰 諧 崖 蓋 骸 柿 顎 葛 釜 鎌 韓 玩 伎 亀 毀 畿 臼 嗅 巾 僅 錦 惧 串 窟 熊 詣 憬 稽 隙 桁 拳 鍵 舷 股 虎 錮 勾 梗 喉 乞 傲 駒 頃 痕 沙 挫 采 塞 埼 柵 刹 拶 斬 恣 摯 餌 鹿 叱《?》 嫉 腫 呪 袖 羞 蹴 憧 拭 尻 芯 腎 須 裾 凄 醒 脊 戚 煎 羨 腺 詮 箋 膳 狙 遡 曽 爽 痩 踪 捉 遜 汰 唾 堆 戴 誰 旦 綻 緻 酎 貼 嘲 捗 椎 爪 鶴 諦 溺 填《?》 妬 賭 藤 瞳 栃 頓 貪 丼 那 奈 梨 謎 鍋 匂 虹 捻 罵 剥《?》 箸 氾 汎 阪 斑 眉 膝 肘 訃 阜 蔽 餅 璧 蔑 哺 蜂 貌 頬《?》 睦 勃 昧 枕 蜜 冥 麺 冶 弥 闇 喩 湧 妖 瘍 沃 拉 辣 藍 璃 慄 侶 瞭 瑠 呂 賂 弄 籠 麓 脇
このうち、4箇所で 《?》 と表現されている文字は、その直前に略字が記してある。たとえば最後の 《?》 の前には、「頬」という略字がある。
この4箇所の文字は、正字はシフトJISでは表現されない。かわりに、略字のみが使える。その略字を示すと、次の4個だ。
叱 填 剥 頬
これら4字(の正字)は、常用漢字ではあっても、シフトJISでは使えない。(文字化けして、表現されない。)
──
では、シフトJISでなければ、どうか? EUC-JP ならば、原則としては使えるのだが、ブロ会社によっては制限を受ける。具体的には、次の通り。
→ 新常用漢字 (FC2)
→ 新常用漢字 (goo)
前者では、4個のすべてが表示されている。
後者では、表示されない2個ある。次の2文字(の正字)だ。(略字で示す。)
叱 剥
なお、ユニコードを使えば、すべてが表示される。つまり、UTF-8 を使えば、4字とも表示される。(ただし UTF-8 を使っているブログ会社は多くはないようだ。)
個人でホームページを作っている場合は、いくらでも任意に UTF-8 のファイルをアップロードできる。(ただしブログ会社のファイル領域にアップロードする場合には、UTF-8 のテキストファイルをアップロードできないことが多い。たとえば、本ブログがそうだ。Seesaa もそうであるようだ。たぶん。FC2 は大丈夫だった。)
《 注記 》
パソコンで表示されない文字については、別に心配しなくていい。そのままパソコンの略字を使っていればいい。このように略字を使っていいということは、国語審議会なども示している。
ただ、印刷関係者は、パソコンで入稿された略字を、正字に置き換えることが好ましい。その点だけは注意しておくといい。
( ※ ただし、このような置き換えが必要なのは、新常用漢字のうちの上記4字だけだ。)
( ※ 他に、マイクロソフトがフォントの変更で対応した文字もある。これらは、すでにたいていのパソコンで修正されているはずだから、特に考慮する必要はない。Windows Vista や Windows 7 のパソコンならば、すでに修正済みである。)
代用漢字
新常用漢字といっても、もともとけっこう使われていたも字も多いから、特に気にすることもない、とも言える。
ただし、気にするべきことがある。それは、代用漢字の扱いだ。これまで、常用漢字がないという理由で、代用漢字が使われていた例がある。(漢字を かな で書くかわりに、代用漢字で表現していたわけだ。)
これらの代用漢字については、新常用漢字を使ってもいい。
元の漢字を代用漢字にした例としては、次の例がある。この2例については、朝日新聞では、代用漢字をやめる方針らしい。
毀損 → 棄損 (名誉毀損)
禁錮 → 禁固
このような代用漢字の例は、他にもいろいろある。ネットを検索したところ、Wikipedia にある。
そのうち、特に今回の新常用漢字の分を抜き出すと、次の通り。
闇夜 → 暗夜
肝腎 → 肝心
伎倆(技倆) → 技量
決潰 → 決壊
広汎 → 広範
破毀 → 破棄
理窟 → 理屈
臆断 → 憶断
臆病 → 憶病
毀損 → 棄損
合〓 → 合弁
買〓 → 買弁
※ 〓 は、(辛二つの間に力)
他にも例があるかと思ったが、ネットを探しても見つからなかった。あとは朝日新聞社の「用語の手引き」という本ぐらいか。
普通の人にとって一番わかりやすいのは、IME の機能に頼ることだ。変換したときに、常用漢字かどうか、代用漢字かどうかを、IME に表示してもらえばいい。
現時点では、それの最新版を掲載した IME はないはずだが、来年2月には、ATOK の最新版が出るはずだから、それを買えば何とかなるだろう。
来年の ATOK は、是非とも購入した方がよさそうだ。(ただし購入前に、「新常用漢字に対応」と示してあるかどうか、確認のこと。)
マスコミの対応
今回、新常用漢字が決まったが、マスコミの対応はどうか? すべての文字を使うか?
朝日新聞社は、常用漢字のすべてを使うことはせずに、一部は使わずにおく方針だという。また、フリガナを併用することもあるという。……とりあえず当面の措置、という限定が付くらしいが。(朝日・朝刊・特集面 2010-12-01 )
これは納得できる。新たに採用された漢字のうちには、今のところ頻用されていないものもあるからだ。たとえば「憧憬」など。
そのうち普及するかもしれないから、当面は経過措置ふうにする、ということだろう。読者としても、そういう過渡的な方針を取ることをお勧めする。
なお、朝日がそのような方針を取ることにした文字は、その一覧が紙の新聞には掲載されている。しかし今のところ、ネットには上がっていない。
「ネットに上げてくれ」と要望しておいたので、そのうち何とかなるかもしれない。
( ※ 30日の朝に要望した。だが、30日の夜になっても掲載なし。ひょっとして、見込みなしか?)
( ※ 新常用漢字にはシフトJISでは表現できない文字が含まれているので、朝日新聞はちょっと戸惑っている可能性もある。朝日のサイトの文字コードは EUC-JP だから、表現できるかどうかは、システムしだいだとは思うが。)
【 補説 】
最初のあたりで述べたが、 「 叱 填 剥 頬 」 の4字は、シフトJISでは扱えない。
これを「大きな問題だ」と見なして、「シフトJISをやめてユニコードに移行することが必要だ」と見なす見解がある。
→ 新常用漢字表が迫るUnicode移行:ITpro
しかし、この見解は妥当ではない。仮にユニコードに移行しても、問題は完全には解決されないからだ。
たとえば、本ブログはシフトJISを用いている。そこで、本ブログの会社がシステムをユニコードに移行して、本ブログがユニコード対応になったとする。それで問題はすべて解決するか? 本ブログ内では解決する。しかし、世間一般(他のサイトやアプリなど)では解決しない。
あるサイトだけが修正して、「おれ様は対応したぞ」と威張っても、よそのサイトは対応していない。それでは万事解決とはならない。
また、ケータイだって対応していないケータイが多い。本ブログでユニコードで対応しても、ケータイで読んだら「文字が消える」「文字化けする」というのでは、とんでもないことだ。「略字しか表示されない」としても、それは「文字が消える」「文字が化ける」というのよりは、よほどマシだ。
では、どうするのが正しいか?
「パソコンでは上記の4文字は文字化けすることがある」
と認識すればいい。その上で、
「略字も正字も同じ文字だという扱いをする」
という方針を取ればいい。そして通常は、シフトJISの略字を使っていればいい。それならどのアプリでも表示可能だからだ。
その上で、印刷する( or 出版する)ときに限り、略字を正字に修正すればいい。そのことは、校正担当者が厳密に修正すればいい。校正担当者がいないような、普通の場合には、略字をそのまま使っても構わない。
大事なのは、「正しい文字を使うべし」という強力な規範意識ではなくて、「パソコン上では字体が正確に表示されないこともある」という事実認識なのである。その事実認識さえ共有しておけば、何も問題はない。どうせ4字だけなのだ。いちいち覚えるにしても、たいして問題はない。たったの4字も覚えられないような人は、そもそもユニコードだってまともに使えるはずはないのだ。
ともあれ、ここにその4字を再掲しておこう。このくらいは覚えておいてほしい。
叱 填 剥 頬
用例は下記。
・ 叱 …… 叱る,叱責,叱咤激励
・ 填 …… 充填,補填
・ 剥 …… 剥(は)がす,剥(む)く,剥離,剥製
・ 頬 …… 頬笑み,頬被り
【 関連項目 】
新常用漢字についての過去記事は、サイト内検索で。
→ 「新常用漢字」の過去記事
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